• 検索結果がありません。

2031 年

5. 廃棄物対策分野の戦略プラン

5.3 現行中長期ロードマップにおける取組の現状と評価・課題

固体廃棄物に起因するリスクの低減に向け、廃炉の進捗に伴う固体廃棄物の適切な保管管理を 着実に進めるとともに、処理・処分方策ついて、中長期的視点に立って検討を進めることが重要 である(3.3.1 節を参照)。保管管理については、固体廃棄物の発生量の低減及び安全確保のため の取組が不可欠であり、東京電力が原子力規制庁や地元との調整に基づいて、当面の保管管理計 画を作成している。処理・処分方策については、固体廃棄物の性状把握、固体廃棄物の特性を踏 まえた処分方策、及び処分方策と整合する処理に係る取組が必要となるため、現在、性状把握を 中心とした研究開発の取組が進められている。以下に、これらの取組の現状、その評価及び今後 の廃棄物対策の取組に影響を与え得る課題について述べる。

5.3.1 保管管理 (1) 発生量低減

a. 取組の現状

廃棄物管理部門は体制強化が図られるとともに、廃炉に伴う工事計画策定の段階から関与して、

廃棄物管理が推進されている。

敷地内への梱包材や資機材等の持込抑制、再使用、再利用などの固体廃棄物の発生量低減対策 が推進されている。

b. 取組の現状に対する評価・課題

現状の固体廃棄物に係る発生量低減対策は、廃炉に伴う工事に係る計画策定の段階から廃棄物 管理部門が関与することにより持込抑制、構内再利用等の取組がなされ、一定の成果を上げてい る。

今後更なる発生量低減を図るべく、対策を継続的に検討し実施することが重要である。

(2) 保管管理 a. 取組の現状

固体廃棄物は、ガレキ等と水処理二次廃棄物に大別される。このうちガレキ等はガレキ類、伐 採木、使用済保護衣等に分類し保管されている。このうち、ガレキ類は、遮へいや飛散防止の観 点より、線量区分ごとにエリアと保管形態を分けて保管されている。また、伐採木は、火災の発 生リスクや線量の観点より、幹・根と枝・葉に分けて保管されている。廃炉に伴う工事によるガ レキ撤去等により、保管量が増加し、保管量は、ガレキ類が約 18.5 万 m3、伐採木が約 8.4 万 m3に至り、保管容量に対する保管割合は、それぞれ67%、79%となっている。(2016年4月30 日時点)32

ガレキ等の減容処理については、雑固体廃棄物焼却設備が設置されて、使用済保護衣等の焼却 可能なものの処理が2016年3月から開始されている33

一方、水処理二次廃棄物は、吸着塔類、廃スラッジ及び濃縮廃液に分類し保管されている。こ のうち、吸着塔類は、その種類に応じた保管形態(ラック、ボックスカルバート)で保管されて いる。汚染水処理の進展の結果、水処理二次廃棄物の吸着塔類の貯蔵量は3,165本となり、保管

容量の51%を占めている。(2016年5月19日現在)32

ガレキ等及び水処理二次廃棄物の管理状況を添付5.1図A5.1-1に示す。

吸着塔類のうち、多核種除去設備前処理設備から発生するスラリーは、HIC(高性能容器)に 入れられボックスカルバートに保管されているが、一部で HIC 上蓋外周部にたまり水が確認さ れる事象が発生した。対策として HIC へのスラリーの充填水位を低下させるとともに簡易型の

32東京電力、資料3-4 放射性廃棄物処理・処分「ガレキ・伐採木の管理状況(2016.4.30時点)」、 廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(第30回)、平成28年5月26日

33東京電力、資料3-4「放射性廃棄物処理・処分スケジュール」,p1、廃炉・汚染水対策チーム会 合/事務局会議(第28回),平成28年3月31日

水抜装置による HIC 上澄み水の抜き取りが行われており、今後水抜装置(本設)を設置し、上 澄み水抜き取りの加速化が進められている。

東京電力は、廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議において、2027 年度頃までの次のよ うなガレキ等保管イメージを提示している。(添付5.1図A5.1-2参照)

保管管理計画を策定するに当たり、中長期ロードマップに記載されている工事等により発生す る固体廃棄物の物量予測を行っている。この予測により、当面10年程度の期間に発生する固体 廃棄物は、既存の固体廃棄物の保管容量を超えて増加していくことが明確となったため、遮へ い・飛散抑制機能を備えた施設を導入し、継続的なモニタリングにより適正に保管していく方針 としている。

導入する施設については、ガレキ等を可能な限り減容することとし、発生廃棄物の物量に見合 った処理容量で計画されている。本保管管理の実施により、固体廃棄物貯蔵庫外で一時保管され てきた固体廃棄物や新たに発生する固体廃棄物を可能な限り減容し、線量率の高いガレキ類から 建屋内保管へ集約し、固体廃棄物貯蔵庫外の一時保管エリアを解消していくことで、より一層の リスク低減を図る計画である。

固体廃棄物貯蔵庫については、現在、保管容量約3万m3の第9棟を建設中であり、今後10 棟(2020年度)~13 棟等を順次建設することによって保管容量を約14 万m3増加させる計画 である。一方、焼却・減容設備については、処理量7.2トン/日×2基の雑固体廃棄物焼却設備に よって使用済保護衣等の焼却が開始されている。さらに、伐採木、ガレキ中の可燃物を対象とし た処理量95トン/日×1基の増設雑固体廃棄物焼却設備が2020年より焼却開始する計画となって いる。また、ガレキ類中の金属及びコンクリートの減容処理設備の建設が予定(2020年度竣工)

されており、減容能力が強化される予定である。これによって、現状のままの保管状態では2027 年度頃までに約75万m3に増加すると予想される屋外における一時保管量を、約20万m3(主

に0.005mSv/h未満)程度に抑えられる計画である。

なお、水処理二次廃棄物についても、建屋内へ保管等のリスク低減策を施し、一時保管エリア を解消していく方針であるが、建屋内保管に移行する際に、減容処理方策等を今後検討していく ものとしている。

b. 取組の現状に対する評価・課題

発生した固体廃棄物については、処理及び処分方策が具体化されるまで、適切に保管管理を行 う必要がある。

屋外に集積されている伐採木(幹根)については、暫定的には火災防止対策が講じられており、

さらに、恒久的には、増設雑固体廃棄物焼却設備の設置が計画されている。計画通りの推進が重 要である。

水処理二次廃棄物については、保管容器の健全性を考慮したうえで、さらなるリスク低減対策 の必要性について引き続き検討していくことが重要である。

5.3.2 処理・処分 (1) 性状把握

a. 取組の現状

固体廃棄物の性状把握に関して、ガレキ、伐採木、土壌等の分析、水処理二次廃棄物の性状評 価、難測定核種の分析手法の開発等が行われている34, 35。固体廃棄物の分析の実施状況を表5.3-1 に示す。これまでの分析に関する取組を通じて、原子炉建屋内試料等に関しSr-90とCs-137等 一部の核種の放射能濃度に相関関係が認められること、号機や建屋内の位置により汚染状態が異 なることなどの知見が得られつつある。現状の分析試料数は、新たな機関の協力を得て、年間約 70 試料 36となっている。加えて、高線量下にある廃棄物(建屋内高線量エリアのガレキ、水処 理二次廃棄物等)の試料採取方法についての検討が行われ、その一部については試料採取も行わ れた。さらに、固体廃棄物の処理・処分における安全性の見通しを確認する2021年度頃までの 期間を中心として分析計画が立案された。

これまでの分析結果に基づき、水分析結果及びガレキ分析結果のとりまとめが行われるととも に、建屋内のガレキやサイト内土壌のデータが追加されるなど、取得データの更新も行われてい る。また、性状評価に基づき廃棄物情報カタログの整理が進められている。

廃棄物インベントリ評価については、汚染核種が燃料由来、放射化由来等であり、移行経路が 循環水、大気経由等であることを踏まえ、輸送比及びインベントリ評価手法の検討並びにインベ ントリ評価結果の更新が行われている。インベントリ評価の解析的モデルの検討として、滞留水 への核種の移行割合に対し、分析値の導入により不確実性が低減された。廃棄物のインベントリ の推定結果は処分の安全評価の検討に反映された。

34技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(IRID)平成26年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費 補助金 (固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)」 中間報告 平成28年4月

http://irid.or.jp/_pdf/201509to10_12.pdf?v=4

35技術研究組合国際廃炉研究開発機構/日本原子力研究開発機構、資料3-4「福島第一原子力発電 所構内で採取した瓦礫の分析」、廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(第29回)平成28 年4月28日

36原子力規制委員会 第2回特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会、資料4 東京電力「福島第 一事故廃棄物の分析能力について」、平成28年2月12日