()森林の劣化:この問題には、択伐も関係する。大資本 による伐採、製材所オーナーによる伐採、および村人に よる自給用の利用が含まれる。人口増加にともなう住宅 や家具の需要増や木炭生産の増加に影響される。
()森林の開発:都市部富裕層が利用するリゾートや別荘 地への森林の転換が、加速度的に起きている。開発業者 や投資家が地元民を雇って森林を切り払い売却する。
()森林の利用区分が不明確なこと:このために、どこ で、農業や森林産物の採集などそれぞれの土地利用をす べきか、すべきでないか混乱し議論が錯綜している。
()インフラの開発:大規模な公共インフラが、国家政策 および世界銀行やアジア開発銀行など国際開発機関主導 プログラムの協力の下に、財政的に支援され、政治的に 推進されつつある。舗装道路、ダム、送電線、国際的な 水資源分配の水路などが、主要な森林地帯およびその周 辺地域を含むタイの全地域で計画されている。これらの 開発は、森林の利用転換を促進し、商業的狩猟者の入込 みを容易にするので、総合的にみてクマや他の大型哺乳 類に対するもっとも深刻な脅威をもたらすであろう。
人間とクマの関係
地元におけるクマの呼び名
タイの言葉でクマは
である。それぞれの種は、その 特徴に応じて、身近な家畜の名をとり、マレーグマは「犬 グマ」を意味する、ツキノワグマは「水牛グマ」
を意味する
という愛称で呼ばれている。カレン 族の言葉では、マレーグマは
、ツキノワグマ は
と呼ばれる。(カレン族は、残存する森林 の大部分が位置するタイの西部国境地帯に住む民族であ る)。しかし、カレン族が森に(つまりクマに近い所に)い る時は、どちらのクマも「おじいさん」を意味する特別な 敬称
の名前で呼ぶ。
クマの民族学
タイでは、クマの胆は何十年にもわたって薬として使わ れてきた。ここ
年の間、タイでは近代医薬品の普及にと もなって伝統的なタイの医薬品の人気は衰退し、クマの胆 の需要も減った。一方、クマの前足は、健康を増進すると 信じている中国系タイ人や一部外国人が、今でも食べてい る。タイでは、生活のためのクマ猟はあまりみられない。一方で、クマの胆と前足を目的とした商業的狩猟はここ
年と比較的最近になって発達したものである。狩猟者への聞き取り調査では、種類の狩猟方法が明らかになった
(
未発表)。一つは、クマを鹿肉や豚肉などの餌 で誘き寄せ樹上で待ち伏せて撃つもの。もう一つは、雨季 に森の中での、カシの実が沢山生る場所などに、クマが集 まるのを狙って獲るものである。
タイの文化では、クマは特に何かのシンボルにはなって はいない。しかし、クマは大きくてパワフルな生き物のイ メージがあるので、タイ人は大きくて強い男をクマに例え る。
人間との軋轢
森林保護区に隣接するトウモロコシ畑や果樹園では、ク マによる農作物被害がみられる。 国立 公園および
国立公園の近隣では、雨季にな るたび、クマによるトウモロコシ畑の被害が〜件報告 される。また
国立公園の近くでも、果樹園の被害 が報告されている。しかし、これらの農作物被害は広範囲 な問題でも深刻な問題でもない。
クマの商業利用
タイではベア・ファームの存在は知られていない。しか し、クマはしばしば公立(タイ政府の動物園機構運営)動 物園、あるいは私立動物園で飼育されている(表
)。国 立公園・野生生物保護局が運営する野生動物繁殖センター でもクマが飼育されている。これらの施設で飼育されてい るクマの多くは、年以降クマの違法取引が発覚した際 に押収されたものである。タイ東部の
野生 生物保護区では、この種の飼育施設のクマを再導入する試 みが計画されている。最後に、クマを個人や寺院が飼って いる例がある。寺院で飼われているクマの典型例は、成獣 になったクマをもう飼いたくないという個人オーナーから 譲り受けたものである。
際貿易を禁じる
の附属書Ⅰにその名が掲載されて いる。
クマの保護に関わる組織および科学者の一覧
()
−国立公園・野生生物保護局野生生物
保護事務所 所長
()
−国立公園・野生生物保護局 野生生物研究課 生物学研究員
()
−国立公園・野生生物保護局野 生生物研究課 保護官
クマ類の頭数 州 機 関
マレーグマ ツキノワグマ
動物園機構
Bangkok 3
3 Dusit Zoo
Chiengmai 2
7 Chiengmai Zoo
Chonburi 15
9 Khao Khiew Zoo
Nakornrajasrima 4
9 Nakornrajasrima Zoo
Songkhra 5
6 Songkhra Zoo
29 34
小計
野生動物繁殖施設
Chiengrai 0
2 Mae Lao Wildlife Breeding Center
Mae Hong Song 0
13 Pang Tong Wildlife Breeding Center
Chiengmai 0
2 Huai Yang Parn Wildlife Breeding Center
Chiengmai 0
9 Am Koi Wildlife Breeding Center
Petchubun 2
13 Khao Koa Wildlife Breeding Center
Chaichaaphum 1
8 Pu Khiew Wildlife Breeding Center
Sakraw 4
0 Chong Gum Bon Wildlife Breeding Center
Chachangsao 3
13 Kra Bok Ku Wildlife Breeding Center
Chonbuti 27
65 Bang La Mung Wildlife Breeding Center
Petburi 4
1 Huai Sai Wildlife Breeding Center
Pang Nga 1
3 Pang Nga Wildlife Breeding Center
42 129
小計
民営動物園
Chonburi 0
1 Sriracha Tiger Zoo
Chonburi 1
0 Nong Nut Village
Kanchanaburi 2
4 Safari Park and Resort
Bangkok 0
30 Safari World
Phuket 2
1 Phuket Zoo
Samut Prakarn 7
7 Crocodile farm and Samutprakarn Zoo
Ubon Ratchatani 0
1 Trakarn Tiger Park
Bangkok 5
1 Pata Zoo
Lopburi 4
2 Lopburi Zoo
Pataya 0
1 Millenian Stone Park and Pataya Crocodile farm
Chiengmai 12
6 Night Safari
33 54
小計
情報なし 39
85 個人所有
143 302
合計
表6.3:2006年でのタイにおける動物園および繁殖施設でのクマ類の飼育頭数
()
−国立公園・野生生物保護局
野生生物飼育センター 主任
()
−国立公園・野生生物保護局 野生生物 飼育課 課長
()
−世界自然保護基金タイ 生態学者
()
博士−
動物園 獣医
師
一般人への教育
年以来、野生生物保護に関する一般人への教育は、
国立公園野生生物保護局野生生物保護事務所の活動の一部 であった。その一例として、本、ポスター、その他のメ ディアを学校に配布してきた。また、多くの国立公園で は、訪問者の教育を目的としたネイチャーセンターを持っ ている。
クマの窮状が国民的関心を得た最初は、
年の観光客 などにクマの前足を供する野生動物料理レストランに対す る大掛かりな取り締まりであった。この時には、多くのマ レーグマやツキノワグマがレストランや商人のもとから救 出され、飼育センターに送られた(表)。野生生物保護 事務所とタイ野生生物基金(、地域の)は、新 聞、ビラ、広告、デモなどを通じ、一年間に渡る全国 的な教育キャンペーンを展開した。その結果、クマ肉の消 費や売買は減少した。年に、は
(英国)と共同で、トラ、ゾウ、クマ、サイ、ウミ ガメの保護キャンペーンの一環として映画を制作した。こ の映画は、野生動物の肉の消費を減らす目的で、韓国、台 湾、マレーシア、シンガポール、香港、およびタイで放映 された。年にはフォローアップキャンペーンも実施 された。年代後半以降、タイでは、クマに焦点を当て た教育キャンペーンは行われていない。
提 言
保護区の管理
()クマによる農作物被害は、まだ深刻な問題にはなって いない。しかしながら、耕地面積の拡大と人間による森 の利用の拡大は、この種の軋轢をより頻繁にする可能性 がある。保護区の管理者は、この種の問題への対処準備 として、クマが利用する地区とトウモロコシ農家が利用 する場所の分離を考えるべきである。
()保護区全域に渡るパトロールおよびモニタリングの実 施は、現在の段階では困難かつ非現実的な仕事である。
この問題をより解決可能にするには、重要な保護地域に いくつかの小さな「生息回復地域」(各
〜以下)を 設 け る こ と が 考 え ら れ る。そ う す る こ と で、レ ン ジャーによる巡視をその地域に集中することができる。
「生息回復地域」としては、クスノキ科やブナ科の樹木 などのクマの食料がふんだんにある場所が好ましい。こ のような「生息回復地域」によって、保護区のスタッフ の努力を地理的に明確で生物学的にも意味のある地域に 集中させることが可能になり、またその業務量も現実的 なものとなる。その結果クマや他の野生生物種の生息数 の回復に結びつくと期待される。
研 究
()保護地区内の、さまざまな生態学的および管理的条件 下にある地域で、標準化された手法による痕跡調査やカ メラトラップ調査などを実施し、クマの生息や生息密度 の増減傾向をモニターすること。このような調査によ り、どのような条件がクマの保護にとって有益あるいは 無益なのかについての比較検証が可能になり、保護努力 の成果が評価できる(例えば、保護努力の成功の証拠と してのクマの生息域拡大や生息密度増加など)。
()種子散布に果たすクマの役割を研究すること。クマは 森林における最大の種子散布者であるが、その大切なプ ロセスにおけるクマの役割はほとんど知られていない。
()森林更新地におけるクマの再定着および生息数回復の プロセスを研究すること。少なくとも
ヶ所で、この研 究が開始されている(県)。
野生動物の貿易と教育
()中国伝統医薬品の関係者および消費者と連携し、クマ の胆の代替品の普及を推進すること(すでに多くの代替 品が存在している)。
()現状、「クマの胆」と銘打った品物は、野生動物市場で 極めて普通にみられるが、それらのうちどれだけが本当 にクマの胆のうで、どれだけが他の動物の胆のう、ある いは偽造品であるかは実際わかっていない。この問題の 影響を正確に見積もるために、全国各地の野生動物市場 の「クマの胆」のサンプルを試験し、本物と偽物の割合 を見積もる必要がある。
()国境地域の野生動物製品消費者を対象にした教育プロ ジェクトを実施する。
狙いは、潜在的消費者に、クマの美しさ、保護の現状、
および消費者の行動が与える影響を自覚させることで、
第6章:タイ