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クマを崇め、クマを狩る人々

ドキュメント内 ナ津壺€晢ソス_ナクaナ・カ.ec6 (ページ 136-147)

今後の課題

16.5  クマを崇め、クマを狩る人々

田口洋美

例として扱う傾向にあったが、近年の研究では日本人の肉 食に対する禁忌は農耕に用いられる家畜に対するもので あって野生鳥獣には及んではいなかったことが明らかにさ れてきている。アイヌやマタギは「クマを崇め、クマを狩 る人々」(田口 

)と称することができるが、彼らが経 てきた歴史社会的プロセスを列島の農耕化プロセスの中に 位置づけ、より詳細に紐解くことによって自然資源の持続 的利用のあり方を含め学び取る必要がある。また今後日本 国内で生じる人口減少と集落の廃村化、これによる自然に 対する人為的利用圧の低下後退という現象のなかでの野生 鳥獣の保護管理問題を再考する上で多くの示唆を与えるも のと考えられる。

引用文献

第16.5章:日本

ВасильевЕА

МедвежииПраздник

С оветскаяЭтнографця

大林太良() 北方の民族と文化.山川出版社 田口洋美()マタギ‐森と狩人の記録‐.慶友社.

田口洋美()クマを崇め、クマを狩る者.ビオストー リー. 

 この報告書は、アジアのクマ類の生息と保全の状況につ いて最新の知見を共有し、この地域での調査研究と保護活 動の促進を図ることを目的に制作された。この報告書が対 象としたのは

の国と地域であり、アジアでクマが生息し ている

の国と地域の約半数にとどまった。しかし、それ ら限られた地域からの報告によっても、アジアのクマ類が 実に多様な自然環境の中で生活していること、いずれの地 域においてもクマ類の生活が人間活動の大きな影響下にあ り、私たちアジアに生活する人間にはこの地域のクマ類の 将来に大きな責任があることが理解できた。

の国と地域のうちで、もっとも危機的状況にあるのは、

韓国とモンゴルのクマ類である。韓国では残存する野生の ツキノワグマは20頭程度であり、北朝鮮やロシアからの個 体の導入による個体群の回復計画が開始されている。ま た、モンゴルのゴビ砂漠ではわずか数十頭のヒグマが孤立 して生息しており、政府による飼育下での繁殖計画が検討 されている。

 この二つの地域でクマ類がこのような危機的な状態に至 るにはさまざまな原因があったわけであるが、それぞれの 国や地域でのクマ類の生存への脅威をまとめてみる。まず あげられるのは、合法、非合法を問わず、過剰な捕獲が もっとも深刻であるとされていた国と地域が

におよん だことである。このような捕獲の主な動機としては、クマ の胆などクマの体の部位が高値で取引されることが指摘さ れていた。特に、中国の隣接国では中国向けの密輸が捕獲 を促進し、それらの国々のクマ類の生存にとって大きな脅 威となっていることが指摘されていた。また、ダンシン グ・ベアやベア・ベイティングといった見せ物への需要

(ヶ国)、クマによる人身・農林業被害(ヶ国)が捕獲 を促進する要因として指摘されていた。

 将来的な懸念がある地域も含めると、被害をめぐる人間 との軋轢はアジアにおける重要なクマ問題のひとつであ る。アジアのほとんどの国において、クマの生息地への人 間活動の拡大が人間との軋轢増加の大きな原因だと考えら

れている。しかし日本においてはその逆であり、人口減少 により人間活動が中山間地域から撤退しつつある一方で、

クマの分布域が拡大していることが問題の背景にあると指 摘されている。

 生息地破壊もアジアのクマ類にとっては、依然として深 刻な脅威であり、

の国と地域で指摘されていた。その具 体的な内容としては、商業伐採(ヶ国)、材木以外の林産 物の過剰な採取(ヶ国)、農地開拓にともなう森林開発

(ヶ国)、ダムや道路など国の生産基盤の整備にともなう 森林開発(つの国あるいは地域)、森林火災(ヶ国)が あげられていた。

 これらの問題の対策については、の国と地域のうち、

で立法や新たな保護区の設定よりも、取り締まり機関の 能力を高めるとともに、住民や行政の意識を高め、現在あ る法律の実行力を強めることが重要であると主張されてい た。新たな保護区の設定など制度の充実が必要だとしてい るのは

ヶ国のみであった。

 法律を行使して管理する側の意識、装備の向上を図るこ とも必要であろうが、いたずらに管理を強化すれば住民の 反発を買って事態が悪化することもあると考えられる。ま た、貧困や文盲がクマをめぐる問題の背景にある地域は多 い。もっとも重要なことは、地域で起きていることを正確 に把握し、法律を地域の社会、経済状況、文化、住民の生 活習慣に合わせてきめ細かく弾力的に運用していく体制を つくることにあると思われる。アジアのクマ類の保全につ いて国際的な協力を進めていく上においても、クマと共に 実際に生活する地域社会への配慮が重要だと考えられる。

 各国、各地域の諸条件の違いにより、クマ類をめぐる問 題には多様な相がみられるが、被害、過剰利用、生息地破 壊と取り組むべき課題の多くは共通している。そのような 問題は地域社会や経済のあり方と大きく関わっているこ と、生息地の現状や生態についての調査研究が不足してい ることも共通している。また、クマ類をめぐる問題は、ア ジアの哺乳類の中でゾウやトラなどのようにより希少で、

第 17 章 まとめ −アジアでの協働に向けて−

大井 徹

1

、佐藤喜和

2

、間野 勉

3

、山晃司

4

象徴的な扱いをされる動物とは異なり、行政、

による

活動双方から軽視されがちなことも共通である。アジアの クマ類の生息国同士お互いに学べることは多いと考えられ

る。今後、さらに情報交換、議論の場を設け協働していく ことがアジアのクマ類の将来にとって必要である。

第17章:まとめ

図17.:アジアにおけるクマ類の分布と存続への脅威

アンブレラ種(umbrella species):食物連鎖の高次消費者 などで、生存に広い面積が必要な種。アンブレラ種の保全 により、おのずと広い地域で多様な種とその生息地の保全 が可能となる。

ウルドゥー語(Urdu):インド亜大陸を中心に約

億人が 使用する国際語。アラビア語、トルコ語、ペルシャ語、ヒ ンディー語などを起源とする。

影響緩和伐採法(reduced impact logging):森林の伐採前、

伐採中、伐採後を通じて、森林の損傷、質の低下を最小限 にする森林伐採の方法。マレーシアでは、熱帯雨林の持続 可能な管理を達成するための選択肢となっている。

衛星テレメトリー法(satellite telemetry system):動物に 取り付けた電波発信器の信号を衛星が受信し、動物の位置 を検出するシステム。この分野では、システムが よく用いられる。

エル・ニーニョ(El ni

o)

:〜

年おきに起こる南アメ リカ大陸の西岸沖の海水温が上昇する現象。インドネシア やマレーシアの一部では、エル・ニーニョによって、厳し い旱魃が起こり、森林火災が大規模になって森林生態系に 深刻な影響を与える。

大型植食動物(megaherbivore):ゾウ、カバ、サイなどの 植物食の大型動物種。

カチン族(Kachin):ミャンマー連邦北部に居住する民族 のひとつ。

カシミール語(Kashmiri):インド・アーリア語派の言語の ひとつ。パキスタンの

とカシミール地方、イ ンドのカシミール地方に居住するカシミール人が使用する。

カメラトラップ法(camera-trapping, camera trapping): 赤外線センサーを利用し、カメラトラップの前を生物が通 り過ぎた時に自動で写真撮影をする調査技術。動物の分布 や、標識再捕法を適用して個体群密度を推定することがで きる。

ガロ族(Garo):バングラデシュとインドに居住する民族。

バングラデシュのチッタゴン管区、シルヘット管区の

に居住していた初期オーストラロイドとモン ゴロイドの混合が起源であるとの説もある。

臼歯列:クマ類では食物の破砕に用いられる口腔内後部の 大型の歯の列。

クマ香油(bear balm):ベア・バーム。クマの体の部位を 煮て抽出した脂質を含んだ香油または軟膏。

クラスター(cluster):系統樹上において他よりも系統的に より近縁な個体や種などのグループ。

口蓋骨幅(palatal width):口腔内の上部を形成する口蓋骨 の最大幅。

更新世(Pleistocene):約

万年前から

万年前までの 地質時代。

コミュニティ・リザーブ(community reserve):インドの 保護区のひとつ。従来の保護区付近に存在する野生生物の 生息地を保護区へ組み込むときや、二つ以上の離れた保護 区を連結するために設定される保護区で私有地や共有地が 対象となるもの。

コンサベーション・リザーブ(conservation reserve):イ ンドの保護区のひとつ。従来の保護区付近に存在する野生 生物の生息地を保護区へ組み込むときや、二つ以上の離れ た保護区を連結するために設定される保護区で公有地が対 象となるもの。

固有種(endemic species):ある特定の地域に分布が限定 されている種。

コントロール領域(control region):ミトコンドリア

のコントロール領域で、「ループ領域」とも呼ばれる。哺 乳類のコントロール領域のサイズは約

塩基対である。

この領域はアミノ酸をコードしていないため、他のミトコ

ンドリア

の領域よりも変異性が高い。

用 語 解 説

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