ロシア極東地域のヒグマは狩猟獣の位置を占めている。
狩猟規則によれば、ヒグマの狩猟期は
月日から月末 までである。これらの規制の下に、各地域ではそれぞれの 狩猟期を設けている。ヒグマの現況、個体数および分布に 焦点を当てた地域ごとのモニタリング計画があり、さら に、保全計画の努力および、個体群構成、個体群分布、個 体群生態学、採食資源、そして生息地状況に関する研究が ある。おそらく、ロシア極東地域で最も発展したモニタリ ングシステムは、ヒグマが重要な狩猟対象種となっている カムチャツカ地域のものである。ロシア極東地域におけるヒグマの研究と保全は、ロシア 科学アカデミー(極東支部):太平洋地理学研究所(ウラジ オストク、ペトロパブロフスク・カムチャツキー)、および 生物学土壌学研究所(ウラジオストク)、北方生物問題研究 所(マガダン)の科学プログラムの一環である。ロシア農 業科学アカデミーでは、全ロシア規模狩猟および狩猟管理 科学研究所(
)による研究活動が実施されている。野生動物のモニタリングと保護が、以下の自然保護区、す なわち、シホテ・アリン、ウスリースク、ラゾブスキー、
バスタク、ボロンスキー、ボルシェッケクチルスキー、
ボッチンスキー、ブレインスキー、ズグズルスキー、コム ソモルスキー、ゼィスキー、ヒガンスキー、クリルスキー、
ポロナイスキー、マガダンスキー、コリャクスキー、クロ ノツキーで実施されている。クマと狩猟資源の保護と規制 は、ロシア連邦農務省内部の、連邦獣医植物検疫局(
)の狩猟モニタリ ング課の管轄である。また、野生生物保全協会()や 世界自然保護基金()といった非政府組織が、ヒグマ の研究と保全にかかわっている。
ロシア極東地域のクマ類の研究と保全にかかわっている 学者として、
(以 上 ロ シ ア 連 邦 科 学 ア カ デ ミ ー)、
(
)
(以上)、そして
()があげられる。
野生生物と生息地の保全に関する教育プログラムは、生 態学指導員、自然保護区情報・教育センター、および非政 府組織の環境グループの責務である。教育は、ほとんど学 生、自然保護区のビジターを対象に行われている。カム チャツカでは、現在では
によって開発されたヒグマ 教育プログラムが存在し、ヒグマに関連する課題に関して良く準備された学習プランを提供している。
提 言
ヒグマの保全と個体群の健全な管理は以下に取り組むこ とで実現される。
()ロシア極東のそれぞれの地域の状況に合い、統計的に 信頼できるヒグマ個体群のトレンドを推定する手法の開 発。
()生息地の分断を緩和するため、特にロシア極東南部地 域の保護地域、保護区間に移動回廊のネットワークを設 立する。
()クマの部位の所持と密輸に対する罰則を強化する。
()とりわけヒグマの採食資源として極めて重要なチョウ センゴヨウとナラの森林における伐採活動を制限する。
()ロシア極東地域全てにおける密猟の水準を推定する。
()狩猟の管理法の改善と、特に政府および非政府組織双 方の狩猟区管理官のための基幹施設を改善する。
()地域ごとの狩猟免許の割り当てと、重要な生息地タイ プの考慮。
()合法的、非合法的なタイヘイヨウサケの漁獲高、マツ の実、ベリーの収穫高、さらにそれらのクマ個体群への 影響の評価。
()教育機会の増大と非致死的なクマ防除法の普及。
()ロシア極東地域におけるクマの移動、生息地利用と脅 威に関する情報を得るための
首輪による集約的研 究の実施。()狩猟資源だけではなく生態系の総合的な部分としての ヒグマの重要性に関する地域住民や狩猟者の教育。
引用文献
第11.1章:ロシア
(間野 勉訳)
生物学的特徴
ロシア極東南部に生息するツキノワグマ(
)は、ウスリーツキノワグマという亜種 とされる。ロシア極東はツキノワグマの分布域の北東縁に あたる。この種は黒い体色、胸部の鮮明な三日月模様、丸 く大きな耳殻で特徴づけられる。成熟したオスは体高 に達し、脂肪蓄積が終了した秋季には体重がに達す る。メスはオスよりも小型である。
ツキノワグマは、主に山岳広葉樹林とチョウセンゴヨウ
(
)・広 葉 樹 混 交 林 に 生 息 し( )、これらはアムール・ウスリースキー地域では河川沿 いの谷間や山岳斜面の標高〜
の場所に生育する。
ツキノワグマの最適な生息地は、谷間にある満州植生タイ プ(
)の広葉樹林であり、マンシュウ グルミ(
)、アムールキハダ( )、モンゴリナラ(
)、アムー ルシナノキ(
)を代表種とし、ブドウ(
)、シナノキ、ヘーゼルナッツ(
)、チェリー モドキ(
)、オオハナウド( )、 ニュウ(
)、フキ(
)などの 下層植生をともなう。結実するナラ林は、その中にチョウ センゴヨウやすでに述べた種、灌木やブドウなどの蔓茎類 があってもなくても、ツキノワグマにとっては二番目に重 要な採餌場である。ツキノワグマは疎林、湿地性の広葉樹 林、山岳のエゾマツ(
)やマツ(
)の針 葉樹林、カンバ(
)、ハンノキ(
)林で は滅多にみられず、森林のない場所を完全に忌避する。ま た、ツキノワグマは一般に落葉針葉樹の純林を避けるが、
第一、第二の食物が不作でベリーが豊富なときは例外的に みられる。結実するナラやチョウセンゴヨウの林が存在す る場合には、針葉樹林にも低密度で生息することができ る。
年間にわたる冬眠穴の分析から、%の事例(=
)では樹洞を、%が根返り木の根あるいは幹の下の地 上巣を、また%が洞穴を、%が地中を掘った穴を利用していた(
)。ただ例であるが、樹(樹 洞ではない)での冬眠も記録されている。クマは冬眠に巨 木を利用する。例の樹洞の冬眠のうち、シナノキが最 も多く(%)、次いでハコヤナギ(%)、チョウセンゴ ヨウ(%)、ナラ(%)、ニレ、トネリコ(ヤチダモ)と キイロカンバ(合計%)だった。沿海地方の地方にお い てヶ 所 の 既 知 の 冬 眠 穴 の 利 用 さ れ た の は わ ず か ヶ所(%)であった(
)。ツキノワ グマの密度が
頭
以上であるシホテ・アリン山脈 の東斜面では、土穴あるいは洞穴で%が、また樹洞で %が越冬する。からヶ所の好まれる冬眠穴のうち一 つだけが、それぞれの年に実際に利用される(
)。
伐採業者にとって樹洞がある木を伐採するのは無駄であ る。それで不良木は伐採すると定めた伐採規則があるにも かかわらず、樹洞のある木は一般に伐採されず残されてい る。日本海沿いで実施した我々の研究では、ツキノワグマ は、伐採されたモンゴリナラの根張りの下や洞を冬眠穴と して利用した。利用可能な冬眠穴は不足なく十分に存在 し、ツキノワグマはその年ごとに都合の良い場所で冬眠で きると考えられる。
現 状
ツキノワグマは、満州植生帯の北限で、オホーツク植生 帯に置き換わるビキン(
)およびサマルガ() 川上流を除く沿海地方全域に現在分布している。また、ツ キノワグマは、プリハンカイスキー(
)低地 帯、ウスリー川流域、そして沿海地方南部の工業地域周辺 のほとんどの地域には生息していない。ハバロフスク地方 で は、ツ キ ノ ワ グ マ は 沿 海 地 方 と の 境 界 か ら ボ ッ チ
(
)川まで北に連なる日本海沿いの針広混交林に生 息する。さらにアムール川右岸地域をコムソモリスクナア ムーレ市まで下った針広混交林地域にみられる。ボルシェ ケクチリスキィ()保護区には、ツキノ ワグマの孤立個体群がみられる。アムール川左岸では、ク
第11.2章:ロシア