• 検索結果がありません。

日本のヒグマの生息状況

ドキュメント内 ナ津壺€晢ソス_ナクaナ・カ.ec6 (ページ 111-116)

クマの商業的利用

16.1  日本のヒグマの生息状況

間野 勉(編)

のヒグマのミトコンドリアのコントロール領域に

つのハ プロタイプがあり、それぞれ南部(石狩低地帯以南)、中央 部(石狩低地帯以東、釧路地域から道北地域)、東部(知床 半島から阿寒地域)に偏在していることを明らかにした。

()は、これらの

つのハプロタイプ 間で頭骨と歯の形態の比較を行った。その結果、南部のヒ グマは小さく東部のものは大きいことがわかった。とりわ け東部の個体(国後、択捉島産のものを含む)は中央部や 南部のものよりも有意に大きく、臼歯が小さく、幅広い顔 面を持っていた。この研究により北海道内の頭骨形態の地 理的変異には遺伝的な背景がある可能性が高くなった。

 北海道内における頭骨形態の地理的変異の要因の一つと して

)は食物条件の違いを示唆した。

一般的に食肉性のクマ類は雑食性や草食性のクマよりも小 さい臼歯を持つ傾向がある(ただし食虫性のものよりも大 きい)(

)。広い顔面と小さい 臼歯を持つヒグマが生息する北海道東部地域では、大量の サケ・マスが河川に遡上する。また近年、この地域ではエ ゾシカ( )の肉が重要な餌資源となっている

)。ただし、ヒグマの食物メニュー は数十年の間でさえ大きく変動することが知られており

)、食性の違 いが形態の変異をもたらした要因であるかどうかの結論は 容易に出せるものではない。北海道産ヒグマの頭骨形態の 変異の進化的意味については今後、再検討を要する。

(大舘智氏,釣賀一二三)

行動と生態

 北海道のヒグマは春から夏にかけて高茎草本類を、秋に は果実類を主に利用する植物質中心の雑食性であること、

また動物質としてはアリやハチなどの昆虫類を夏に利用す ることが明らかにされている(

北海道

山中・青井 

)。ヒグマが採食する種 数に関しては大雪山系で

種(伊藤 

)、知床半島で

種(山中ほか 

)などが報告されている。

 年代には駆除個体の試料を用いた全道レベルでの 食性解析や、同一調査地における時代間の比較が実施さ れ、特に

月にかけて農作物が広く利用されているこ と、北海道東部を中心にエゾシカの個体数が増加した結果 を反映し、エゾシカの利用割合が増加していることが明ら かとなった(

)。

 食性の地域性がもっともよくみられるのは、高茎草本類 の栄養価が減少し、秋の主要採食資源である堅果や液果類

の成熟にはまだ早い晩夏(〜

月)である(佐藤 

)。 この季節に、高標高域が利用可能な地域では高山植物を、

サケ科魚類が遡上する河川付近に生息していればそれら魚 類を利用することができる。しかし現在の北海道の多くの 地域で、ヒグマにとってこれらの資源は利用可能ではな く、代替資源として農作物が利用されており、これがヒグ マの駆除の主要な原因の一つとなっている。 

 ヒグマにとって、冬眠に備え脂肪を蓄積する秋の採食資 源は重要である。秋の主要採食資源である堅果類には年次 変動があり、その変動にあわせた農作物利用割合の変化が 報告されている(

)。

 北海道のヒグマの生活史に関する情報はまだ少ない。冬 眠中に生まれた仔グマはその後母親と行動を共にし、次の 冬には一緒に冬眠に入る。母親から独立するのは

歳半か ら

歳半にかけてであると考えられる(

)。親と別れた後、オスは出生地から分散すると考え られているが、断片的な証拠が数例みられるのみである

(小平ほか 

)。交尾期は、飼育個体の観察から

月上 旬から

月上旬であるとされる(坪田 

)。この季節に は頻繁な背擦り行動が観察されており、繁殖にともなう個 体間のコミュニケーションの機能があると考えられている

(佐藤 

)。生理的な繁殖可能年齢は、

渡島半島地域の捕獲個体の分析によりメスで

歳、ただし

歳以下のメスは仔育てに失敗することが多いという結果 が得られている(

)。また、繁殖間隔 は

年、一腹産子数は

歳以下で平均

頭、

歳以上 で平均

頭(最大

頭)という結果が得られている(

)。出生率は、知床半島でもっとも餌資源 が豊富であると考えられるルシャ地区で、

メ ス成獣・年という値が報告されている(小平ほか 

)。  北海道に生息するヒグマの行動圏に関する本格的な研究 は、

年代後半から渡島半島(

北海道環境科 学研究センター 

)、知床半島(山中ほか

)、苫小牧地域(早稲田 

)、浦幌地域(

小林

)で行われてきた。これらの結果から、メス成獣 の行動圏はオス成獣より小さいこと、複数年続けてほぼ同 じ地域を利用すること、行動圏は個体間で重複することな どが明らかとなった。また、最外郭法によるメス成獣の年 間行動圏面積は、知床半島で

程度、渡島半島で

程度、浦幌地域で

程度と北米や北欧 のヒグマに比べて小さい傾向にあり、また北海道内でも地 域により差がみられることが明らかとなった。こうした差 は、採食資源量や生息環境の違いなどを反映するものと考

えられるが詳細に検討されていない。オス成獣について は、行動圏が大きいことから連続して追跡された例が少な いが、苫小牧地域で追跡されたオス成獣の最外郭法による 年間行動圏面積は

程度、知床半島では

程度という結果がある。

 生息地利用の季節変化に関しては、夏に高標高地域を利 用するという例(山中ほか 

)や、森林内に生息してい る個体が夏に農地付近を利用するという例(

)な どが報告されている。選択的に利用する植生タイプに関す る 研 究 例 も い く つ か あ る(

小 林

横 山

)。年代に入ると、システムを用いたテレメ トリー調査の試行が渡島半島、知床半島で始まった(小平 ほか

間野ほか 

)。まだ十分な成果はまとめられ ていないが、今後の進展が期待される。

 冬眠に関する研究では、まとまった成果は報告されてい ない。月下旬から

月中旬にかけて冬眠に入り、

月下 旬から

月下旬にかけて活動を開始するとされる。冬眠後 の活動開始時期については、単独の成獣や亜成獣より仔連 れメスの方が活動開始時期が遅いことが指摘されている

(青井

)。冬眠開始時期については、食物 利用可能量が多い年に遅れると考えられている(間野

)が、実証的研究はなされていない。

 冬眠には、斜面の樹木の下などに自ら掘った土穴を利用 することが多いとされている(犬飼・門崎 

大河ほか

)。岩穴(大河ほか 

)や樹洞(小田 

)を利用 した冬眠穴も少数ではあるが観察例がある。

(佐藤喜和)

分子系統と遺伝学

 近年の研究から、北海道のヒグマには異なる

系列の集 団がみられ、それぞれ異所的に分布していることが明らか となっている。

()は、北海道全域か ら捕獲されたヒグマのミトコンドリア

コントロール

領域の分子系統地理を分析した。その結果、

個のハプロ タイプが検出され、ハプロタイプ間の遺伝距離に基づき高 い信頼度をもって

つの系列(クラスター

、、と名 づけた)に分類された。さらに、

() は、つのクラスターが北海道において異所的に分布して いることを見出した。つまり、クラスター

は北部と中央

部(道北〜道央)に、クラスター

は東部(道東)に、ク

ラスター

は南部(道南)に分布していた(図

)。各

クラスターが分布する領域間の境界線は明瞭であった。

クラスター

個のハプロタイプ(

)、クラ

スター

個のハプロタイプ(

)、クラスター

個のハプロタイプ(

)で構成された。道北

〜道央に分布域をもつクラスター

において、

から

つのハプロタイプは広く分布し、

は日高山 脈に、は石狩低地帯に、そして、から

は 道北に特異的に分布していた。道東に分布域をもつクラス

ター

については、

から

が知床半島(年

に世界自然遺産に登録された)に分布するのに対し、

は内陸部に分布していた。道南に分布域をもつクラスター

では、

から

がそれぞれ北部から南部へと異所 的に分布していた。

 ミトコンドリア

コントロール領域の進化速度に基

づいて計算すると、北海道ヒグマの

つのクラスターは今 からおよそ

万年前に分岐したと推定される。これは、

ク ラスターが北海道においてではなく、アジア大陸において 分岐したことを示唆している。各クラスターに所属するハ プロタイプの分布域は分かれているので、クラスター内の ハプロタイプの分岐という微小な進化は、各クラスターが 大陸から北海道へ渡来した後に起こったものと考えられる。

 北海道ヒグマ(

)、ヨーロッパ産ヒグ マ(

)および北米産ヒグマ(

)のミトコンドリア

データを合わせて、

()は世界に分布するヒグマの系統関係を 再構築した。その結果、北海道中央部に広く分布するクラ

スター

は東ヨーロッパ系列に近縁であった。興味深いこ

とに、北海道東部に局所的にみられるクラスター

は東ア

ラスカグループと同系列であった。北海道南西部のクラス ター

と同系列のヒグマはみつかっていない。以上の分子 系統学的データに基づくと、日本列島周辺に形成された陸

第16.1章:日本

図16.1.1:北海道におけるヒグマのミトコンドリア DNA タイプの 分布(Matsuhashi et al. 1999)

クラスターA(道北〜道央地方に分布)の DNA タイプは三角、クラスター B(道東地方)は丸、クラスターC(道南地方)は四角で示す.記号横の 番号は DNA タイプの番号を示す.

ドキュメント内 ナ津壺€晢ソス_ナクaナ・カ.ec6 (ページ 111-116)