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現状の日本企業の対応

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補論 2. 廃棄債務と偶発事象の会計

2.4. 現状の日本企業の対応

2.4.1. 原子力発電施設解体引当金

日本では米国のような廃棄債務会計の制度はないが,原子力発電所関連の廃棄債務は環境 に対する影響と政策的な観点から廃棄債務会計が省令で定められており,将来の原子力施設 解体費用に備えている.

「原子力発電施設解体引当金に関する省令」1989年5月

原子力発電施設の解体に必要な費用を,施設の運転開始から停止までに見込まれる想定総 発電電力量で割った額に,毎年の実際の発電電力量を乗じたものを積み立てるもので,累積 発電電力量が想定総発電電力量に達した時点で,所要の額が全額積み立てられる仕組みであ る.

「総合エネルギー調査会原子力部会中間報告」1999年5月

2000 年度税制改正において,解体放射性廃棄物処理処分費用についても本準備金制度の 対象費用とすることになった.(租税特別措置法第57条の4  原子力発電施設解体準備金) 東海発電所廃止措置 

東海発電所(茨城県)は日本原子力発電株式会社が開発した日本で最初の商業用原子力発 電所(1966年7月25日営業運転開始)であり,1998年3月31日に31年余の営業運転を終了 し,2001年12月4日より日本初の原子力発電所廃止措置を行っている.廃止措置終了予定 時期は2018年3月(工期17年間)を予定している.また,ふげん発電所(日本原子力研究開発 機構)も2003年より廃止措置を行っている.

原子炉領域以外の撤去 2001年-2016年 熱交換器等撤去工事等 2006年-2011年 原子炉本体等解体撤去工事等 2011年-2016年 建屋等撤去工事等 2016年-2017年

原子力発電所の廃止措置とは,発電所の運転停止後にとられる施設の解体,保有する核燃 料物質の譲渡し,核燃料物質による汚染の除去,核燃料物質又は核燃料物質によって汚染さ れた物の廃棄,その他の措置であって,発電所内に残存している放射性物質による周辺公衆

への放射線被ばくのリスクを安全で合理的なレベルまで低減する行為をいう.

廃止措置を開始する際には,発電所の運転を停止するとともに,再び運転することが出来 ない措置をとる83

使用済燃料再処理等引当金(使用済核燃料再処理引当金) 

使用済核燃料再処理引当金については,従来,使用済核燃料再処理引当金に関する省令

(1983年通商産業省令第21号)の規定に基づき,再処理費の期末要支払額の60%を使用済

核燃料再処理引当金として計上してきた.しかし,「バックエンド事業に対する制度・措置の 在り方について」(総合資源エネルギー調査会電気事業分科会中間報告2004年8月30日)

により,再処理等を行う具体的な計画を有する使用済燃料について,再処理施設の廃止措置 費用等,従来,未確定であった部分のバックエンド費用も合理的な見積もりが可能となった ことから,使用済核燃料再処理引当金に関する省令を廃止する省令(2005 年経済産業省令 第83号)が施行されるとともに,電気事業会計規則(1965年通商産業省令第57号)が改 正された.このため,2006年3月期から,改正後の電気事業会計規則により,使用済燃料 の再処理等の実施に要する費用の見積額を原子力発電所の運転に伴い発生する使用済燃料 の量に応じて現価方式により使用済燃料再処理等引当金に計上する方法に変更している84. 廃止措置費用 

廃止措置費用については資源エネルギー庁が試算しており,110kW 級の軽水炉の場合,

約300億円(1984年価格:放射性廃棄物の処分費用は含まれず)と報告されている(1985年 総合エネルギー調査会原子力部会中間報告書).また,廃止措置に伴って発生する放射性廃 棄物の処理処分費用は,110万kW級沸騰水型原子炉(BWR)で178億円,同加圧水型原子炉

(PWR)で192億円と見積られている(1995年総合エネルギー調査会原子力部会中間報告).こ

れらの費用は「原子力発電施設解体引当金」制度によって電気事業者による引当てが行われ ている85

現在,日本では一般電力事業者86のうち沖縄電力を除く9社と電力卸売専門事業者の日本 原子力発電が原子力発電所を所有している87(図表 31).2006 年 3 月決算時点で,原子力発 電施設解体引当金が1.1兆円,使用済燃料再処理引当金が3.2兆円引当てられている.

83「東海発電所の新たな役割(廃止措置)」  日本原子力発電  http://www.japc.co.jp/haishi/index.htm

84 「平成18年3月期個別財務諸表の概要 重要な会計方針」  http://www.kepco.co.jp/ir/brief/h18/

kessan18.html

85 資源エネルー庁  「原子力政策の現状について」  http://www.enecho.meti.go.jp/policy/nuclear/

nuclear00.htm

86 電気事業法上,一般電力事業者に分類されるのは,北海道電力㈱,東北電力㈱,東京電力㈱,

中部電力㈱,北陸電力㈱,関西電力㈱,中国電力㈱,四国電力㈱,九州電力㈱および沖縄電力㈱

の10社.

87 この他,電源開発㈱が2012年完成に向けて大間原子力発電所を計画中.

図表 31  原子力発電関連の引当金状況 

電力会社 原発所在地 原子力

発電設備

原子力発電施設

解体引当金 核燃料 使用済燃料

再処理等引当金 北海道電力 泊(北海道)       77,909       31,283       65,651       76,471

東北電力 女川(宮城県)

東通(青森県)       562,894       36,151       141,003       105,973

東京電力 福島第一(福島県)

福島第二(福島県)

柏崎刈羽(新潟県)       792,017       376,448       917,143          1,258,212 中部電力 浜岡(静岡県)       398,972       89,093       250,199       261,018 北陸電力 志賀(石川県)       370,882       13,457       77,527       26,062

関西電力 美浜(福井県)

大飯(福井県)

高浜(福井県)       370,260       249,754       512,407       649,675 中国電力 島根(島根県)       67,093       46,239       122,046       106,615 四国電力 伊方(愛媛県)       131,010       58,305       112,907       133,169

九州電力 玄海(佐賀県)

川内(鹿児島県)       284,368       119,626       234,358       353,389 日本原子力発電 東海第二(茨城県)

敦賀(福井県)       153,356       124,546       141,003       233,407 合計          3,208,761          1,144,902          2,574,244          3,203,991

※単位:百万円

出所:電力各社2006年3月決算の有価証券報告書連結貸借対照表[7]をもとに作成

2.4.2. 店舗閉鎖引当金

小売業のように多店舗展開している業態では,店舗新設と平行して店舗閉鎖を計画的に行 っている.このような企業では店舗閉鎖の意思決定後,閉店損失引当金を貸借対照表に計上 している.

具体的にイオン株式会社では,有価証券報告書・設備の状況・設備の新設,除去等で開示さ れた閉鎖店舗に対して,15,481百万円の閉店関連損失見積額を引当金計上する旨が書かれて いる.これは経営の意思決定(取締役会)として店舗の閉鎖が決定し,将来の義務(地権者やテ ナント等に対する違約金等)が発生したと考えられる.

2.4.3. その他の事例

耐火性や吸音性の効果を果たすとして建物等に広く使われてきたアスベストに,発ガン性 物質が含まれていたことが明らかとなり,現在社会的な問題となっている.2005 年 7 月 1 日からは,「石綿障害予防規則(厚生省令)」が施行され,使用中の建物等のうちアスベスト の飛散の可能性がある場合,建築物の所有者や貸与者は  ①除去,②封じ込め,③囲い込み,

いずれかの措置を行なわなければならないことが法的に義務付けられた.

このアスベストの除去費用は,一般的に1㎡当たり20,000円前後かかるといわれている が,税務上,修繕費として一時の損金に算出することができるのか,それとも資本的支出と して取得費に加算後償却されるのかが問題になる.この点について税務研究会が当局に確認 をしたところ,アスベストの除去等は法的な義務付けに伴うものであることから,原則とし

て除去費用の全額を一時の損金に算出することが認められるそうである.したがって,アス ベストが吹き付けられている壁紙を除去するために,いったん壁紙を取り外し,新たに別の 壁紙を取り付けるような費用については,その固定資産を維持・管理のためのものであるこ とから修繕費とすることが認められる.しかし,アスベストの除去工事に伴い,建物の模様 替え等改造や改装を行なった場合等,明らかに固定資産の価値を高めるような改修を行なっ た際に要した費用については,資本的支出と判断され一時の損に算出することが認められな

い(法令55  132  法基通7-8-1〜6)88

88 税務研究会  「アスベスト除去費用は原則として修繕費に-厚労省の除去義務化で確実に」 

『税務通信』No.2883  2005

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