第5章 中世日本語の音韻構造
6.6 現代日本語の音韻構造
113
10.9%,
/s/の9.5%と続く。
母音音素は,/a/が22.7%,
/o/が19.8%,
/i/が18.2%
である。拍では,撥音の出現率が最も高かった。
114
3拍語と4拍語で全体の四分の三弱を占める。1語平均は,3.71拍である。和語名詞だけ でなく,動詞,形容詞,形容動詞,副詞についても調査した。これら5品詞の中で,名詞
が
63.7%と最も多く,動詞の 24.3%と合わせると,全体の9割弱を占める。名詞,形容動
詞,副詞においては,4拍語が最も多いが,動詞,形容詞は5拍語が最も多い。
漢語は,全部で
33406
語である。最も多い漢語は,2字漢語である。全33406
語のうち,29805
語であり,全体の9割近く(89.2%)を占める。その中でも2拍+2拍が最も多く,17416
語で,2字漢語29805
語のうちの58.4%,全漢語のうちでも 52.1%を占める。つま
り,全漢語のうちの半分が2拍+2拍の4拍2字漢語である。1語平均は,3.62
拍である。現代の音韻構造を調査するにあたり,外来語に出現する音素をこれまで設定した音韻体 系の中にどう組み込むか,再考した。新しく,/c//f/の音素を追加することにより,
これまで,「シ」は,/s/+/i/としてきたが,/si/は,「スィ」とし,「シ」は半母音 を加えた/sji/とした。「チ」も同様である。
1906
年から2010
年までの101
年,11年度分の『中央公論』を調査対象とし,外来語の 音素分布を調べた。その結果,異なり語数1542
語が得られ,1語平均は,5.30拍で,和 語名詞3.71
拍,漢語3.62
拍よりも,1拍以上長いことがわかった。音素分布では,新し く設定した外来語音の出現率は,全拍数のうち,わずか2.6%であった。テキストの中で
の,外来語もどの年度も数パーセントの使用にとどまっており,外来語音を考えて,音素 体系を見直したが,外来語の影響は少ないと言える。そこで,新しく設定した,/c/は/t/と,
/f/は/h/と考察するときに,合算して,これまでの調査と比較することにする。テキスト類として,『中央公論』の語彙調査を行った年度の中で,最も新しい年度である
2006
年の1月から12
月に発行された雑誌『中央公論』から抽出した1万語を対象に,こ れまでと同様の調査をした。和語が50.4%で,テキスト全体の半分を占める。漢語は,
33.3%,外来語は 4.0%のみである。混種語は,12.3%である。和語+漢語が最も多く,
9.5%である。1万語を拍数別に見ると,4拍語が最も多く, 21.0%,次が5拍語で 19.5%,
3拍語の
18.3%と続く。数値はあまり変わらず,3拍から5拍の間に偏り,全体の 58.8%
を占める。1語平均は
4.96
拍である。『新潮現代国語辞典』における和語名詞の音素分布では,語頭では,子音音素を伴わな い/X/が
20.8%と最も多く,次いで,/k/の 16.1%,/h/の 13.0%と続く。母音音素
では,/a/の34.5%が最も多い。語末では,子音音素は/r/が多く,20.0%,次いで,
/k/の
14.2%,/m/の 12.0%,/t/の 10.6%と続く。語頭に多く出現した,/h/が,
115
ハ行転呼音が理由で語末では少ない。語中語末で,単独母音拍が来るのを避けていたが,
次第に,語中語尾にも単独母音拍が出現するようになる。ただし,語頭では
749
例と多く 出現した単独母音拍/Xa/が,語末では出現しない。ハ行転呼音とは,ハ行がワ行に変化 し,さらにア行に変化するのであるが,/wa/が/Xa/に変化することはなかったことも,/Xa/が語末に現れないことに影響しているだろう。母音音素では,/i/が最も多く,全
体の
43.4%を占める。/u/は語末で少なく, 4.7%しかない。/u/で終わる和語名詞は少
ないことがわかる。母音音素では,/i/ /e/が語頭に比べて多い。これは,動詞連用形 名詞の影響が大きい。
また,和語名詞だけではなく,動詞,形容詞,形容動詞,副詞の音素分布についても調 べた。語頭における和語名詞の音素分布の特徴として,子音を伴わない単独母音拍が
20.8%で,多く出現することを述べてきた。動詞,形容詞,形容動詞も語頭において,最
も多いのは,単独母音拍である。名詞のみの特徴ではなく,他の品詞についても同様であ ることがわかる。副詞は,音象徴語を多く含むことから,他の品詞とは異なる特徴を示す。語頭においても,濁音が他の品詞より多く出現する。/p/が
6.9%と多いことも特徴であ
る。『新潮現代国語辞典』における漢語の音素分布では,語頭で最も多く現れる子音音素は,
/s/の
19.9%である。次に多い子音音素は/k/の 19.2%,そして,/h/の 9.8%,/t
/の
9.7%と続く。また,語頭では母音音素は/o/が 28.9%,/a/が 22.8%,/i/が 17.1%,
/e/が16.7%,
/u/が14.6%の順に出現する。
語末では,引き音節/R/が28.9%
で最も多い。全体の3割弱を占める。次に多いのは,撥音の/N/で
21.6%である。この
二つは特殊拍である。したがって,語末における母音の音素分布では,母音Ø
が約半分を 占めることになる。すべての漢語の子音音素を調査した場合,最も多い子音音素は/k/の16.2%である。次いで,引き音節/R/が 15.6%,撥音/N/12.7%,/s/11.9%,単独
母音拍
8.2%,と続く。語頭では子音3位だった/h/は全体では8位であり,語頭により
多く出現する音素であると言える。すべての漢語の母音音素を調査した場合,特殊拍が多 いので,母音
Ø
が最も多く29.9%,
最も多く用いられる母音音素は/o/の16.8%である。
ついで,/u/15.6%,/i/15.2%,/a/12.9%,/e/9.8%となる。ただし/o/は
60.4%
の割合で次に引き音節が来る。なお,本調査では/a/の次には引き音節は来なかった。イ の引き音節も著しく少ない。すべての漢語の拍を調査した場合,最も多く用いられる拍は 撥音/N/6.1%,次いで,引き音節/oː/5.8%,/Xi/5.4%,,/ku/5.2%である。
116
1906
年から2010
年までの101
年,11年度分の『中央公論』における外来語の音素分布 の調査では,「イェ」「クァ」「クィ」「クェ」「グァ」「グェ」「グォ」「スィ」「ズィ」「ドゥ」「テュ」「ニェ」「ヒェ」「フュ」が,調査範囲の中では出現しなかった。これは,表記との 関連もあり,実際に使用されていないという意味ではない。また,新しく外来語音とした 音素の出現率は,外来語すべてにおいて,わずか
2.6%であり,テキストの中での外来語
の使用率と合わせて考えてみても,その影響はわずかであり,これまでの音韻体系で問題 はないと考えた。テキスト類として,『中央公論』から抽出した1万語を対象にした音素分布の調査では,
語頭においては,/X/が,19.4%と最も多く,次いで,/k/の
16.8%,/s/の 15.6%
と続く。母音音素は,/a/が
27.7%で最も多く,/o/の 26.1%,/i/の 24.9%,/u
/11.6%,/e/9.7%の順になる。語末においては,子音音素は,/n/が
23.9%で最も
多く,次いで,/t/の18.1%,/X/の 11.5%,/r/の 9.1%と続く。母音音素は,/o
/が