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中古日本語の音韻構造

第4章 中古日本語の音韻構造

4.3 中古日本語の音韻構造

以上,中古日本語の音韻構造について,『源氏物語』を資料として述べてきた。『源氏物 語』における和語名詞を拍数別に見ると,4拍の語が

30.3%で最も多く,次いで3拍の語

23.3%で,二つを合わせて全体の 53.6%を占める。語の平均拍数は,3.96

拍である。

また,『源氏物語』の「桐壺」の巻を冒頭から

10000

拍を採り,語に切ると,2109語得 られ,平均拍数は

4.74

拍であった。拍数別にみると,3拍の語が

19.6%で最も多いが,

4拍語も

19.0%で,その差はあまりなく,二つを合わせて 38.5%である。2拍や5拍から

7拍の語も多く見られる。

和語名詞における音素分布を出現位置別に見ると,語頭では,/X/が

21.5%で最も多

く出現し,次いで/k/の

17.2%である。母音音素は,/a/が 35.1%で最も多く,次いで,

/o/の

22.3%,/i/の 21.0%である。

語末では,子音音素は/r/の

17.1%が最も多く,/m/の 14.0%,/s/の 13.0%,/

t/の 12.5%と続く。母音音素は,最も多かったのは/i/の 36.1%であり,次が/a/の

50

25.9%である。拍では,/ri//sa/が,それぞれ 7.5%,7.3%の出現率である。

語全体では,子音音素は,/k/の

13.5%が最も多く,次いで/t/の 12.6%,/m/の 11.0%,/s/の 10.2%と続く。母音音素は/a/が 32.3%で最も多い。母音配列は,/a

/の2連続が語頭,語末に多く見られる。/a/-/i/,/o/-/o/の配列も語頭,語末 に多い。3母音音素の連続として,/o/-/o/-/o/が最も多いのが特徴的である。その 他,/a/-/a/-/i/,/a/-/a/-/a/,/o/-/o/-/i/も多く用いられる。多頻 度拍は,/ka//si//to//ta//sa//ma//ko//mi//hi//ki/である。

テキスト類の調査としての,『源氏物語』の「桐壺」の巻の調査では,語頭では,/X/

30.2%で最も多く出現する。次いで/k/の 16.3%,/m/の 10.4%と続く。母音音素

は,/a/が

33.4%で最も多く,次は,/o/の 30.8%である。

語末では,子音音素は/n/が

21.2%で最も多く,/t/の 16.1%,/r/の 10.4%と続

く。母音音素で,最も多かったのは/o/の

35.9%であり,次が/i/の 22.2%である。拍

では,/no//ni//to//te/や,/ru//ri/などが多い。これは,助詞や,動詞,

助動詞「る」「らる」「り」「たり」「けり」「なり」「めり」の活用語尾の影響であろう。

語全体では,子音音素は,/t/の

13.3%が最も多く,次いで/k/の 12.4%,/n/の 11.1%と続く。母音音素は/a/が 28.0%で最も多く,次が/o/の 24.6%である。母音配

列は,/o/の2連続が語頭,語末に多くみられる。/a/-/i/,/i/-/o/の配列も語 頭,語末に多い。3母音音素の連続の組み合わせが多いのが,『源氏物語』の特徴である。

/a/-/a/-/i/,/a/-/e/-/a/,/o/-/o/-/i/,/o/-/o/-/o/,/a

/-/a/-/a/,/a/-/a/-/u/,/i/-/a/-/a/が多く用いられる。多頻度拍は,

/ta//si//ma//to//ka//na//no//ni//ri//ko/である。

以下,『万葉集』との比較である。

素材レベルの調査では,『源氏物語』における和語名詞と『万葉集』における和語名詞に は,全体的に見て,顕著な差は見られない。あえて,異なる点を挙げるとすれば,語末に おける子音音素の分布である。『万葉集』においては,/m/が

18.1%で最も多く,次いで

/r/の

13.8%,/h/の 11.8%と続く。

『源氏物語』と比較すると,/r/と/m/の順位 が異なり,/h/の出現率も

9.0%となり,子音全体の6番目となる。名詞の数としては,

260

語増えただけであるが,/r/の出現率が,『万葉』の

13.8%から 17.1%と 3.3

ポイン ト上がり,歯茎音/s//t/が,それぞれ,13.0%,12.5%で,両唇音であった/h/の

9.0%を上回っている。両唇音の出現率が低くなり,歯茎音の出現率が高くなっている。母

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音音素では,最も多い母音は,/i/の

36.1%で,/a/の 25.9%がこれに次ぐ。甲乙の区

別をしなければ,『万葉集』では,/i/は

32.1%であるから, 4.0

ポイント,/i/の出現 率が高くなっている。拍は,『源氏物語』では,/ri/が最も多く出現し,7.5%である。

『万葉集』では,/ri/は,2番目に多く出現し,5.9%であったから,1.6ポイント増え ている。

運用レベルの調査では,『万葉集』の和歌の調査では,1語平均が,

3.71

拍であった。『源 氏物語』の

1

語平均は,

4.74

拍であるから,約1拍長い。音素分布・音素配列については,

第7章で述べることとするが,あえて,異なる点を挙げれば,語頭において,子音音素は,

/X/の出現率,甲乙の別を考えなければ,母音音素/o/の出現率が,『万葉集』に比べ,

『源氏物語』のほうが高くなっていることが特徴である。『万葉集』では,/X/22.7%,

『源氏物語』では,/X/30.2%で,/X/は,

7.5

ポイント,『万葉集』では,/o/21.5%,

『源氏物語』では/o/30.8%で,/o/は 9.4 ポイント,ともに『源氏物語』のほうが,

多くなっている。これは,接頭辞「御/Xo/」の影響が考えられる。

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