第5章 中世日本語の音韻構造
5.2 研究方法
6.5.2 拍数別に見た語数
『中央公論』から採集した1万語を見出し語形に直し,語種及び品詞別に分類すると,
【表
6.5.0】のようになる。品詞の分類は『分類語彙表』による。
和語が
50.4%で,テキスト全体の半分を占める。漢語は,33.3%,外来語は 4.0%のみ
である。「長い単位」で切っているので,漢語サ変動詞は,すべて混種語となることもあり,
その比率はやや高く,混種語は,
12.3%である。その中でも,和語+漢語が最も多く, 9.5%
である。
108
【表
6.5.0a】語種及び品詞別(延べ)
品詞・語種 和語 漢語 外来語 和+漢 和+外 漢+外 和+漢+外 計
体の類 1528 2986 389 432 26 210 26 5597
用の類 2439 - - 501 8 - 2948
相の類 876 337 15 20 1 1 1250
その他の類 197 8 205
計 5040 3331 404 953 35 211 26 10000
ここでは,テキスト類として,『中央公論』を調査するので,延べの語種がわかればよい のだが,参考に異なりの語種及び品詞別に示したものも載せておく。【表
6.5.0b】は異な
りを語種及び品詞別に示したものである。延べ1万語で,異なりは4958
語得られた。和語 名詞は異なり565
語,延べ1528
語であり,漢語は異なり2280
語,延べ3331
語である。和 語名詞は平均2.7
回用いられるのに対して,漢語は平均1.5
回である。頻度が音素分布に どのような影響を与えるかについては,入江(2009)に記述がある。【表
6.5.0b】語種及び品詞別(異なり)
品詞・語種 和語 漢語 外来語 和+漢 和+外 漢+外 和+漢+外 計
体の類 565 2083 288 377 26 194 26 3559
用の類 551 0 0 349 7 0 0 907 相の類 216 195 13 16 1 1 0 442 その他の類 48 2 0 0 0 0 0 50
計 1380 2280 301 742 34 195 26 4958
1万語を拍数別に見ると,【表
6.5.1a】のようになる。上段は拍数,下段は語数である。
【表
6.5.1a】2006
年『中央公論』の拍数別に見た語数(1語平均4.96
拍)1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
24 1220 1831 2100 1947 932 678 433 312 140 116 86 47 38 23 14 17 18 19 20 21 22 23 24 25 34 39 44 45 64 67 96
13 11 6 3 5 4 4 2 3 1 1 2 1 1 1 1
非常に長い語が存在するのは,6.4.7 で述べたように,URLやメールアドレスを一語 としたためである。1語平均は
4.96
拍である。34
拍以上の8
語を除くと,4.92
拍となる。「あいだに」/Xa Xi da ni/,「藤原」/hu zi xwa ra/,「いたのだ」/Xi ta no da/,
109
「付き合う」/cu ki Xa Xu/,などの4拍語が最も多く
21.0%,次が「巨人ファン」/
kjo zi N fa N/,
「行政の」/gjo R se R no/,「指弾して」/sji da N sji te/などの 5拍語で19.5%,そして,
「方は」/ka ta xwa/,「畔」/ho to ri/,「深い」/hu ka Xi/,「見ろよ」/mi ro xjo/などの3拍語の
18.3%と続く。3つの拍数の比率はあまり変
わらず,3拍から5拍の間に偏り,全体の6割弱を占める。ここで,見出し語と実際にテキストで運用された形の出現形の拍数について,調査する。
延べ1万語で,和語名詞は異なりで
565
語である。辞書の見出し語数と比べると,少ない 数ではあるが,見出し語形に直して,拍数別に見ると,【表6.5.1b】のようになる。
【表
6.5.1b】
『中央公論』の和語名詞見出し語異なり(1語平均3.62
拍)拍数 1拍 2拍 3拍 4拍 5拍 6拍 7拍 8拍 9拍 10拍 合計 語数 12 123 165 143 58 32 20 9 2 1 565 百分率 2.1 21.8 29.2 25.3 10.3 5.7 3.5 1.6 0.4 0.2 100.0
最大
10
拍で,1語あたりの平均は,3.62拍である。6.2で『新潮現代国語辞典』を対象 に調査した結果は,【表6.2.1】より,見出し語数 13015
語で,1語あたりの平均拍数は3.71
拍であった。運用レベルで使用される和語名詞は,0.09拍短いことになる。辞書を対象に 同様の調査をすると,4拍語が最も多く,全体の45.4%を占めていたが,実際に運用され
た和語名詞をもとに,見出し語形にして調査をすると,4拍語よりも3拍語のほうが多く 使用されている。拍数の少ない語のほうが多く使用されているということになる。これに 使用頻度をかけたものが,【表6.5.1c】である。
【表
6.5.1c】
『中央公論』の和語名詞見出し語延べ(1語平均2.84
拍)拍数 1拍 2拍 3拍 4拍 5拍 6拍 7拍 8拍 9拍 10拍 合計
語数 39 778 353 220 68 37 20 10 2 1 1528
百分率 2.6 50.9 23.1 14.4 4.5 2.4 1.3 0.7 0.1 0.1 100.0
さらに,短い2拍語が約半分を占めている。平均拍数も
2.84
拍となり,さらに短くなっ た。しかし,実際には,名詞だけで運用されるわけではない。助詞がついて,テキスト内 で運用される。では,次に,出現形の調査を延べで行う。助詞の影響で,1拍弱の拍の増110 加が見込まれる。
【表
6.5.1d】
『中央公論』の和語名詞出現形延べ(1語平均3.90
拍)拍数 1拍 2拍 3拍 4拍 5拍 6拍 7拍 8拍 9拍 10拍 11拍 合計
語数 4 98 642 389 228 91 40 20 12 2 2 1528
百分率 0.3 6.4 42.0 25.5 14.9 6.0 2.6 1.3 0.8 0.1 0.1 100.0
辞書の見出し語,テキストで使用された語を見出し語に直したもの,それに,実際の使 用頻度をかけたもの,さらに,助詞がついて,運用された語,つまり出現形のままで調査 したものを比較することによって次のことがわかった。
『新潮現代国語辞典』においては,和語名詞は4拍語が最も多く,全体の
45.4%を占め
ていたが,『中央公論』で実際に使用された和語名詞から見出し語に直して,同様の調査を すると,3拍語が29.2%で,4拍語の 25.3%より多かった。さらに,使用された頻度をか
けると,2拍語が最も多く,全体の50.9%を占め,3拍語は 23.1%,4拍語は 14.4%で
あった。しかし,実際に運用される際は,助詞がつくので,出現形のままで調査をした。すると,3拍語が最も多くなり,42.0%を占めることとなった。出現形では,1語あたり の平均拍数は,【表