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上代日本語の音韻構造

第3章 上代日本語の音韻構造

3.3 上代日本語の音韻構造

以上,上代日本語の音韻構造について,『万葉集』を資料として述べてきた。『万葉集』

における和語名詞を拍数別に見ると,4拍の語が

32.0%で最も多く,次いで3拍の語が 26.5%で,二つを合わせて全体の 58.5%を占める。語の平均拍数は, 3.65

拍である。また,

『万葉集』の和歌を資料とし,巻第

17

からの歌のみを対象に,10000拍を採り,語に切る と,2693語得られた。平均拍数は

3.71

拍である。拍数別にみると,3拍の語が

32.0%で

32 最も多く,次いで5拍の語が

23.6%である。

和語名詞における音素分布を出現位置別に見ると,語頭では,/X/(単独母音拍の子音 部)が

23.1%で最も多く出現し,次いで/k/の 14.0%である。母音音素は,/a/が 41.0%

で最も多く,乙類の/I//E/はほとんど出現しない。語末では,子音音素は/m/の

18.1%が最も多く,/r/の 13.8%,/h/の 11.8%と続く。母音音素は,語頭と同様,最

も多かったのは/a/の

27.6%であるが,/i/も 27.4%で,ほとんど変わらない。乙類の

/I/の

4.7%を合わせると,/a/よりも多い。語全体では,子音音素は,/k/の 13.5%

が最も多く,次いで/m/の

13.3%,/t/の 11.9%と続く。母音音素は/a/が 36.6%で

最も多い。語末の拍では,/tO/以外の拍の母音は/a/か/i/である。語末において,

/ma//ri//ra//mi//ha//hi/など,子音/m//r//h/と,母音/a//i/の 組み合わせが多い。母音配列は,/a/の2連続が語頭,語末に多く見られる。/a/-/i

/の配列も語頭,語末に多い。3連続では,/a/-/a/-/a/,/a/-/a/-/i/が多 い。

テキスト類としての,『万葉集』の和歌を対象にした調査では,語頭では,/X/が

22.7%

で最も多く出現し,次いで/k/の

16.1%である。

母音音素は,/a/が

38.5%で最も多く,

乙類の/I//E/はほとんど出現しない。語末では,子音音素は/n/が

27.4%で突出し

ている。次いで,/m/の

13.9%,/t/の 9.5%,/r/の 8.7%と続く。母音音素で,最

も多かったのは/i/の

24.5%である。

乙類の/I//E/は,ともにわずか

0.9%しかない。

乙類の/O/が

19.4%と多く出現すること,/u/が 18.5%と語末に多く出現することが特

徴である。拍では,/nO/が最も多く,13.9%である。助詞「の」が多く使用されている ためである。

語全体では,子音音素は,/k/の

14.0%が最も多く,次いで/n/の 13.5%,/m/の 12.2%,/t/の 11.8%,と続く。母音音素は/a/が 28.8%で最も多い。母音配列は,和

語名詞と同じく,/a/の2連続が語頭,語末に多く見られる。/a/-/i/の配列も語頭,

語末に多い。3連続では,/a/-/a/-/a/,/a/-/a/-/i/が多い。多頻度拍は,

/nO//si//ni//ka//na//mo//tO//ki//mi//ta/である。

和語名詞と比較すると,語頭においてはほとんど差が見られない。しかし,歌として詠 まれた場合,用言は活用し,付属語を伴う場合もあり,平均拍数や語末に和語名詞の場合 と異なった特徴が現れる。

母音音素では,歌を資料とした場合,子音音素では,/n/の出現頻度が突出する。母音

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音素では語末に/i/や乙類の/O/が多く出現する。多頻度拍を見ても,歌を資料とした 場合は,/nO//ni//mo//tO//ki/が上位に現れ,助詞や助動詞の影響を思わせる。

しかし,母音連続では,上位に来る配列は変わらず,/a/-/a/-/i/,/a/-/a/-/a/が多い。

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