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状態の持続のなかにあるすがた一…・

ドキュメント内 現代日本語動詞のアスペクトとテンス (ページ 132-139)

 1) 状態の持続のなかにあるすがた

 継続相のかたちで持続過程のなかにあることをあらわしていても,その持続 過程が動作の局面でないばあいがある。

  (220)寝台のうえはわらぶとんをむきだしにして,さむざむとしていた。

      (真空63)

  (221)額はややふとめの赤い絹のうちひもでつるすようになっている。

      (桑の114)

  (222)路地のしき石にはうち水があり,そうじがゆきとどいていた。

      (無限81)

 これらは,基準時間がその持続過程のなかにあることをあらわしている点に おいて,継続相の基本的なアスペクト的意味と共通である。けれども,アスペ クトというものが動詞のあらわす動作(変化)の過程のなかの一定の局面をと りだして,そのすがたをあらわすものであるとすれば,ここであらわしている ものは動作の局面ではないので,アスペクトだといえない。これは,第II部第 3章でのべたものと同様,アスペクトに準じるものとしてとらえるほうがよい

だろう。

 この準アスペクトの用法は,完成相にくらべて継続相のほうがはるかに多く の用例をもっている。それは,この用法のもつ意味が継続相の基本的なアスペ クト的意味と共通の側面をもっているからだろう。じっさい,この二つのあい だには,中農的なものもかなりあるのである。

 2)結果の局面のなかにあるすがたと,状態持続のなかにあるすがた

 結果の局面のなかにあるすがたと状態持続のなかにあるすがたとの間には中 問的なものがあって,きちんとふたつにわけきるのはむりである。

 おなじ動詞の継続相の形式がどちらの意昧を実現する用法をももっているの

126 雛II部 継続秘のアスペクト

は,ふつうにみられることである。つぎのア)やウ)は結果の局面のなかに あることをあらわしているし,イ)やエ)は,状態持続のなかにあることを あらわしている。

   ア) くぎがまがっている。

  {

   イ〉 みちがまがっている。

   ウ)ほっぺたにめしつぶがついている。

  {

   エ) はなはかおのまんなかについている。

 ここで,それぞれ濁者のちがいをきめているのは,統語論的なレベルで,で きごとをのべているか,ものの状態的な性質をのべているかのちがいである。

ア)やウ)のばあいは,変化の過程があるので,ここでは,結果の局面をと りだしていることになるし,イ〉やエ)は,それがコンスタントな属性(状 態的な性質〉をあらわしているので,状態の持続過程のなかにあることになる のである。

 けれども,じっさいには,どちらかわからないこともある。たとえば,ある ひとをゆびさしてオ)のようにいうとき,事実問題としては,ホクロなのかゴ

ミなのかが,いつもわかっているわけではない。

  オ)あのひと,ほっぺたにくろいものがついているね。

 こうしたことは,この両者がきわめてちかいごとをものがたっている。けれ ども,こうしたことがあるからといって,この爾者の区甥が無意昧なわけでは ない。変化動調の継続穏は,ほんらい結果の局面のなかにあるすがたで動作を さしだすものであり,この章のような用法は特殊だということを,いつもここ ろえていなければならないだろう。

 3>運動の局彌のなかにあるすがたと,状態持続のなかにあるすがた

 動作と状態をわけるものは,動的か静的かという属性のありかたのちがいで ある。つぎのカ)は動作の局面のなかにあることを,キ)は状態持続のなかに あることをあらわしている。

  カ) あしがつるつるすべっていた。

  キ) 表面がつるつるしていた。

運動のあるものは,動作過程としてとらえることができる。

  (223) だが,清原と泉田がかおをみあわせ,もじもじしている。欄革145)

      第4章 状態の持続のなかにあるすがた127       こうぎょう

  (224) 「あ,そう」聖業さんはちょっとどぎまぎしていた。(無限120)

 けれども,つぎのようなものは,動作か状態かよくわからない。

  (225) ながいことクリームをかおへぬらないので,かおのひふがひりひり     している。(放浪35)

  (226)灯台長の家は,ひるねでもしているのか,ひっそりしている。

      (潮騒25)

 動作ならば,そのおなじ動作の局面を,完成相をつかって,まるごとのすが たでさしだすことができるはずである。そのような点から完成相へのいいかえ をこころみてみると,「ひりひりした」のほうはいえそうだが,「ひっそりした」

のほうは,いえそうでない。このへんにさかいめがあるのだろう。

 4)状態である性質と,性質の実現した状態

 継続根形式でものごとの質的な属性をあらわすことがある。

  (227) 世のむかうところにしたがうが,むしろ当を得・ている。(総長348)

  (228)このまよいのために,死をはやめるのはばかげている。(野火61>

 この2例のような属性は,現実のできごと過程からひっぱりだした二次的な 属性であって,アスペクトから解放されている。けれども,おなじく質的な属 性であっても,その属性のもちぬしであるものごとが長期にわたって存在し,

そのものごとがコンスタントに呈している状態がそのものごとの属性となって いるばあいは,その属性はできごと過程をなしており,そのなかに基準時間が おかれると,この用法になる。従来「単なる状態」といわれてきたものは,お おくがこれである。

  (229)竹矢来をむすぶなわもくちた色をしている。(娩と3)

  (230) みると,彼のくつしたには,赤い線が二本はいっていた。

  (23i) 華喬のlllTは,その橋をわたってから,海岸にそってながくっついている。

      (・」希婁艮β14)

 ほんらいは,できごと過程から解放された関係をあらわす動詞であっても,

この種の文の述語のなかでつかわれると,アスペクトから完全に解放されない で,準アスペクトの様根をていする。

  (232) この門は,ほかの門とちがっている。

 「ゆきとどいている」なども,ほんらいは状態をあらわす単語ではないが,

128 第III部 継続相のアスペクト

(222)のようにつかわれると,状態持続のなかにあることをあらわす。

 5) コンスタントな質的属性をあらわすもののアスペクト的な性格

 まえの項でのべたヂ状態である性質」と「性質の実現した状態」は,ともに コンスタントな質的属性であるということができる。この種のものは,コンス タントである点で準アスペクトの側面をもち,性質である点で脱アスペクトの 側面をもつ。そして,どちらかいっぽうにおしこめると,すこしかたよりがあ るようにおもえる。いまのところ,これを両者の中間のどこに位置づけるのが よいかについて,確信がない。そこで,この報告では,両方のたちばをとって みた。つまり,この99111部では,第4章,第5章をとおして,かなり準アスペ

クトよりに位置づけてみたが他の部では,だいたい,アスペクトから解放され たものとしてあつかったわけである。そのため,全体としては,記述に矛盾を 生じることになった。

 こうしたくいちがいは論文としては,みぐるしいことであるが,研究段階の 正直な反映であり,統一的な記述は,今後の研究の成果にまちたい。

第2節 状態持続のなかにあるすがた      をあらわす継続相形式

 1)「している」の形で状態をあらわす動詞

 「している」の形でいつも状態をあらわす動詞がある。こうしたものは,形 容詞化しているということができるだろう。

(2認)

(2鍛)

(235)

(236)

(237)

〔患部のてざわりが〕こんにゃくよりざらついている。(本日97)

かれのすることは,しばいがかっている。

九郎兵衛は,九十ちかい老人だが,かくしゃくとしている。(娩と105)

あおざめていたが,自若としていた。(帰郷323>

古藤はくり戸のガラスごしに,切りわりのがけをながめて,つくねん     としていた。(躍る9)

 「(部分を)している」「(側面を)している」などは,この連語形式が状態ま たは状態的性質をあらわす形式となっている。

  (2謝 腕はまるで二十才の娘のはだをしている。(娩と125)

       第4章 状態の持続のなかにあるすがた 129

(239) 隠岐達三はやや甲高く,年齢よ})も若い声をしていた。(帰郷315>

(240)電子顕微鏡写真でみると,タバコモザイクウイルスは,マッチ棒のよ   うな形をしている。(略一畢156)

(241) 彼は怜悌1なかおをしていた。(冬の44)

 2) 「している」の形で質をあらわす動詞のばあい

 「している」の形で質をあらわす動詞は,その質のもちぬしが持続過程のな かに存在するものであるばあいにこの意味が実現する。

  (242) とにかく,主人はかわっている。(機械12)

  (243) イギリスのほこりとする大学町は,ケムブリッジとオックスフォー     ドだ。いずれも片いなかに偏在して,俗塵を超脱している。(総長351)

  (243)彼は惟倒なかおをしていた。(冬の44)

 3) 「みえている」「きこえている」など

 知覚活動をとおしてモノや現象の存在をあらわす動詞は,継続網の形で状態 持続のなかにあることをあらわす。

  (244) どことなく不安の色がみえていた。(本日83)

  (245) 黒菅の城内では,琴の音がきこえていた。(落城17)

  (246> その花のにおいだけでなく,どの木も華もにおっている。土もにおっ     ている。(帰郷8>

  (247) それにぶた小屋そっくりの,むねがすぐゲエときそうなにおいがし     ていた。(カニ10)

  (248) そとでははげしい雨音がしていた。(暗夜51)

  (249) その初秋の一一一 H,赤城山麓は,まだ草いきれがむんむんしていた。

      (IH石305)

 これらは,雰過去形のばあい,完成相の形をとったものとおなじことをあら わすことになる。(第H部第3章第1節)

4> f存在している」ギすんでいる」など

存在をあらわす動詞の継続相は,状態持続のなかにあることをあらわす。

 (2謝 私たちはうまれている。そしてこの世界は存在している。(出家48)

ドキュメント内 現代日本語動詞のアスペクトとテンス (ページ 132-139)