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テンスからの解放・…・

ドキュメント内 現代日本語動詞のアスペクトとテンス (ページ 179-200)

172 第W部 宛成相非過去形のテンス

      第6章 テンスからの解放  173  旦くつがどうにそまると,だんだんぬかるみをおそれなくなる。(青銅35)

(1働 くらやみのなかで,政府軍とゲリラがうちあいをしてるときは,その   鉄砲のうちかたをきいていれば,どちらがゲリラか∠2璽。(やさp40)

(187) いえ,だれでもそうもうします。(高野39)

(1鋤 およぎの上手は川で死ぬ,で気象者は気象でかえってしぐじります。

      (思出48)

(189)それにこの世のなりたちが,私たちに悪をしいます。(出家48)

 3) なりたつ時間に関係のない命題のなかでの質的属姓

 なりたつ旧聞に関係のない命題である点で前項とおなじであるが,それが,

できごとでなく,ありさまをあらわす文であり,述語が質的な属性をあらわす ばあいである。動詞は,アスペクトから解放されている。動詞が形容詞化また はコピュラ化しているといってもよいだろう。

  (lee) 太平洋のあおさは,やはり瀬戸内海とはちがう。(旅の52)

  (191)大企業が,中小企業などを圧迫するのもこれにあてはまる。

      (問革147>

  (192) その町はずれに蛇堀川というすながわがあDまして,橋をわたると

    むかいまち

    向町になる。(破戒200)

  (193) (くすっとわらって)お人によります。(忍ぶ王0)

  (194) しかしそれもあるかもしれないが,それだけで解決をつけるのは簡     単すぎる。(友情57)

  (195)芸術はこれとことなる。(むら14)

  (lg.6) そのかぎり現象は偶然性をふくむ。(革命143)

  (197)女給さんのほうがとにかくうわべだけは素人なんですからね。なに     をするにもごまかしがききますよ。(つゆ64)

第2節 過去のことの,時間の側面を      きりすてた質化

 事実そのものは過去の特定の時間のことであるのだが,そのできごとの時間 的な側面はきりすてて,そこからぬきだした質的な側面だけを問題にしたばあ

174 第狸部 完成季麟三過去}形のテンス

いに非過去形をつかうことができる。これらは,時間の側衝をきりすてないで 過虫形でのべることのできるものもおおい。

 1) 名詞述語文に相当するもの

 過去のあるものごとが,どんなものごとであるか,また,なにであるかをの べる。動詞が動作をあらわさず,コピュラのようにつかわれて,それとくみあ わさる名詞といっしょになって名詞述語をつくっているものがおおい。ただし,

fAとBはことなる」のようなタイプの文になると,コピュラではないだろう。

  (198) そもそもは佐渡のうまれ,この山国におちついたは今から十年ほど     まえにあたる。(破戒101)

  (199> 明治二十年前後の自由民権時代には,墨時のインテリの一部が,自由     自由,とさけんだ。そこが,今度の時代と,ちがうといえばちがう。

       (自由41)

  (200) [捜査中に過去の事実に気づいて3「え?(思わず声をあげる)する     と,六月の二十葭と二十一Hの映画はちがう!」(砂の103)

  (291) わたしたち夫婦は同じ日にうまれたのですが,うまれた時劇はちが     います。

 名詞述語文にこのことがあることは,寺村秀夫1971がつぎのような例をあげ てのべている。

  (292) 昭和二十二年ハ戦後最大ノ二丁ノ年ダ。

 2)過虫のことについての解説,評価的ないいかた

 過去の事実が成立した事情を理解して,ナルポドという気もちをこめて解説 的にのべるばあい,非過去形でいうことのほうがおおい。

  (203) ま,ジイさんも立場上ああ言うわさ。(宵待47>

  (2鱒 男B「おやじににげられてから欲求不満らしいぜ」 兄貴にれじゃ     男もずらかるさ。しっかりしろよ。」(遊び23)

 評緬をこめていうばあいもある。

  (205) さすがにいいことをいうよ,あなたは。(多情48>

  (2働 こんな小さい子に焼酎をのませるなんて。あのおやじもひどいこと     をするねえ。

      第6章 テンスからの解放  175

(297)野富「おれな……彼女と婚約したよ。」野駈)まぶしげにみかえす宏   ヂやるう。」(ジェームズ・三木「さらば夏の光よ」47,年鑑代表シナリオ集76>

 3>過去の仮定

 過去の仮淀に対する帰結をのべる述語は,過去形と非過去形の両形をつかう ことができる。ふつうは一ハズダ,一画モシレナイ,一ダロウ,一トオモウ,

一ナ,一ネのような形になるが,なにもっかないばあいもあるだろう。

  (208) これなら十七時二十一分に米原を通過して名古屋ゾーンへはいるが,

    発信ゾーンは一致したはずだ。(森村誠一「新幹線殺人事件」)

  伽9) 「おれなら暗殺するナ……」安吉にかまわずに斉藤は一気につづけ     た。(むら47)

 このことについては,あらためて第VI部第3章第4節でとりあげるが,過去 の仮定に対する帰結の文の述語には,つぎのようなものがある。

  ア) オレナラ,ソウスルナ。

  イ) オレナラ,ソウシタナ。

  ウ) オレナラ,ソウシテイルナ。

  エ) オレナラ,ソウシテイタナ。

第3節 そ の 他

 1)操作てつづきの説明,撫示

 操作てつづきの記述や図表のあらわしかたなどには,完成相帯過去形がよく あらわれる。

 凡例や注記のなかでの動作には,非過去形と過去形の両方があらわれる。過 去形のばあいは,操作したことをできごととしてのべているが,非過去形のば あいは,アスペクトからも解放されているだろう。

  (210)図2−19にH鉄建材の職階溺年齢分布をしめす。また図2 一20に,各     職階の回答者の5%以上が属する年齢のはばを図示した。(国立国語研     究所「企業の中の敬語」67)

  (211)分類語彙表における意昧の分類の大体を示すために,本表分類各項     團に与えた見出しの語句を,分類番号の順で掲げる。(国立露語研究所

176 第N部 完成相非過去形のテンス    「分類語彙表」)

ルールのなかで,動作は非過去形でしめされる。

      にん      ひと

 (212)五,人……これは入とかく。六,天…七,声聞……声を聞くとかく。

       (間革142)

 (213) 「勉1とかいて,ツトムとよみます。

 (2王4> カケアシシテネ,ンーートネ,フクロヲネ,アシニ イレル。

       (年長幼児一「幼児語の形態論的な分析)

 (215)学問の自由は,これを保障する。(憲法23条)

方法を指示する文のなかでも,動作が非過宏形でしめされる。

 (216)☆図を参照して前身ごろを左右つづけて裁つ。4.5cm裁ち出したとこ    ろのえりぐりぬいしろは,身ごろえりにあわせて裁つ。☆そでは,図    のようにそで丈を延長する。☆前あきの始末は図を参照。☆前身ごろ    の左右にふたつきのポケットをつける。(主婦の友 80.7.付録)

 (217) 「すきみだら」は,表面をさっとあらい,水(流水のほうがよい)に    3〜4時聞つけます。(写真①)もどったら,残り皮をとり,小骨もと    って,きれいに掃除します。(写真②〉(主婦の友 72.12.付録)

これらは,ムード的な性格がよわいのではないかとおもわれる。

 2) 提示文のなかでの動作

 まえの文でことがらを提示し,あとの文がそれをうけてはなしを展開する。

そうしたまえの文につかわれる動詞のばあいである。これはいちおう文のかた ちをしているが,その陳述性はあとの文にまかせている。ということは,陳述 性の点からみると,不完全な文である。こういう文のばあい,脱テンス化して いることがおおい。

 これらは,ムード,テンス,ていねいさのどれについても欠陥があるので,

ふつうの文とみとめる必要はないかもしれないが,いちおうあげておく。

  (218) 自由ほんぽうにやりたいことをやる。いいだろう。(入月59)

  (219) まつるまつらないはべつにして,うけとるだけはいちおううけとる,

    こういうことでいいのではないかと(間革85)

  (220)はい,とにかくA子さんとの結婚だけについてかんがえる……こう     いうことですね。(間革173)

      第6章 テンスからの解放 177

(221) ポストの争奪をめぐって死闘する,これが企業合併の大前提で,合併   はポスト次第ということですよ。(華麗141)

(222) からだが衰弱して,職務を執るにたえないから退職する  それを   こちらでとめる権利はありません。(破戒25)

 3>そ の 他

 新聞の見出し,日記の文章などにもテンスばなれしたものがあるが,これら は場面が特殊なので,今回の調査からはずす。

 また,小説の地の文のなかでもテンスから解放されたようにみえるものがか なりある。しかし,小説のばあいには過去の事実が非過去形でかかれていても,

現在のことのようにしてかくことに意味があるばあいもある。そうしたことは,

文脈のなかで位置づけなければならないので,これも今圏の考察からはずした。

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第V部 完成相過去形のテンス

第1章 過去(1)一一過去の動作

 完成相過去形の基本的なテンス的意味は,過去に動作が完成したことをあら わすことである。完成相の基本的なアスペクト的意味は,動詞のあらわす動作 またはその一定の周面を始発から終了までふくめたまるごとのすがたでさしだ すことであり,その過門形は,時間的位置を過去にもつ基準時間をまたがない で,動作またはその局面をまるごとのすがたでさしだしているのである。

 完成相の過去形は過去の動作をあらわすことを基本的な任務とするが,その ばあい,つぎの二点において,いろんな様椙を呈することになる。

 そのひとつは,過玄という時聞位置が,悠久のむかしから,発雷の直前,あ るいは,発言終了の直前にまでひろがっていることとかかわる。といっても,

時間量を問題にするときりがなく,ここでは,主として,質的にみた発話時と の関係が問題になる。というのは,発話時とはなれているか,接しているか,

かさなっているかということで多少ことなったおもむきを呈するからである。

このことは,非過去形との対立のありかたに影響をおよぼす点で,醤語的であ

る。

 もうひとつは,完成相アスペクトが,動詞のあらわす動作過程全体でなく,

その一定の局面をとりだすこととかかわる。現在をふくむ大きなできごと過程 のなかで,現在以前に位置する小さなできごと過程としての変化の局藤を,完 成根過去形の変化動詞がさしだすと,そこにはたらく順次性によって,現在と いう時点がその結果の局面のなかにあることまで視野にいれてしまう。それが 鈴木重幸1979のいう「ペルフェクト的な過去」である。

 完成稲過去形のテンス的な意昧をあつかうばあいには,これらのことにふれ なければならない。

ドキュメント内 現代日本語動詞のアスペクトとテンス (ページ 179-200)