• 検索結果がありません。

無脊椎動物

ドキュメント内 62. Coal Tar Creosote コールタールクレオソート (ページ 131-134)

9. 実験室および自然界の生物への影響

9.1 実験室

9.1.2 水生生物

9.1.2.2 無脊椎動物

Table 33 に種々のクレオソートが無脊椎動物に及ぼす急性毒性データをまとめた。軟体

動物では、96時間EC50(アメリカガキ

Crassostrea virginic

aの殻の成長の減退)が0.7 mg/L と確認されている(Borthwick & Patrick, 1982)。甲殻類のEC50/LC50は、0.018 mg/L(アミ 類

Mysidopsis bahia

、Borthwick & Patrick, 1982)~4.3 mg/L(オオミジンコ[

Daphnia magna

]、IUCLID, 1995)まで報告されている。ロブスター

Homarus americqanus

の幼生 は、成体より感受性が高く、96時間EC50は、それぞれ0.02および1.8 mg/Lである(McLeese

& Metcalfe, 1979)。オオミジンコで試験した 2 種の異なるクレオソート製品の 48 時間 EC50(不動化)は、1.0および4.3 mg/Lと異なっていた(IUCLID, 1995)。

ミジンコの1種

Daphnia pulex

のクレオソートWSF(Ace Hardware、WSF濃度1およ

び1.8%)に対する生涯暴露(約90日)によって、生長速度の低下、および1腹の仔数の減少、

脱皮障害、発育不全の増加などの生殖障害が生じた(Geiger & Buikema, 1982)。

異なる場所(河口、沿岸、河川、湖)から採取した主としてクレオソートに汚染された底質 は、たとえばカキ(Chu & Hale, 1994)、甲殻類(Sundström et al., 1986; Swartz et al., 1989;

Sasson-Brickson & Burton, 1991; Pastorok et al., 1994; Padma et al., 1998, 1999;

Hyötyläinen & Oikari, 1999a,b)、その他の無脊椎動物(Metcalfe & Hayton, 1989)などを含 む水生軟体動物に対する毒性があることが示されている。

エリザベス川(米国ヴァージニア州)はチェサピーク湾の高度に汚染された副河口として 知られ、流域にはクレオソート工場、石油タンク集合地域、係船ドックや乾ドックなどが 存在し、複数のクレオソート漏出事故の影響も受けている(Bieri et al., 1986)。1950年代か ら1992年までクレオソートを使用していた木材処理施設も、近傍の汚染に大きくかかわっ ている(Padma et al., 1999)。Huggettら(1992)によると、クレオソート関連の芳香族有機 化合物の底質中濃度は15 g/kg乾燥重量と高値を示した。さらに、著者らは川の汚染物質の

133

地域分布および報告された生物学的反応は、クレオソート化合物の濃度との相関関係がも っとも高かったとしている(Huggett et al., 1992)。

エリザベス川底質の 0、15、30%希釈 WSF に暴露させたアメリカガキ(

Crassostrea

virginic

a)では、感染症への感受性が増大することが示されている。この底質の総 PAH 平

均濃度は2.4 g/kg乾燥重量であった。WSF中の芳香族化合物(100種以上の化合物)の平均

濃度は4.08 mg/kgで、ナフタレン、アセナフテン、2-メチルナフタレン、フェナントレン、

フルオレン、ジベンゾフラン、1-メチルアフタレン、カルバゾールがおもな化合物(濃度0.15

~1.51 mg/kg)であった。これらの化合物画分への56あるいは68日の暴露で、寄生原生動 物

Perkinsus marinus

による既往感染症(Dermo病)を増悪させ、実験的に誘発させた感染 症へのカキの感受性を用量依存性に増大させた(Chu & Hale, 1994)。

甲殻類では、表在底生性のアミ

Mysidopsis bahia

をエリザベス川のクレオソート汚染さ れた底質(木材処理施設近傍で採取)に暴露して急性(Padma et al., 1998)および亜致死的 (Padma et al.,1999)影響を調べた。底質WSFで同定された総芳香族有機化合物の48時間 LC50(名目濃度、半止水式条件下)は0.7 mg/Lであった。クレオソートの種類別にWSFで 同定された総芳香族有機化合物の96時間LC50の0.018 mg/L(Table 33参照)と比較すると、

底質WSFは急性毒性が低い。化学分析で、ふたつのWSFのおもな相違が明らかになった が、とくに著しいのは、底質WSFでは検出されなかった含窒素複素環式化合物(>80%、低 分子量芳香族有機化合物)がクレオソート WSF に濃縮されて存在していたことである。底 質WSFはPAHの割合が高かった。著者らは、クレオソートのWSFの毒性が高いのは、

含窒素複素環式化合物の存在が少なくともその一因であると示唆している(Padma et al., 1998)。同一地点からの底質WSFを亜致死的濃度で

Mysidopsis bahia

に7日間暴露したと ころ、乾燥重量増の有意な減少および雌の抱卵率の有意な低下がみられた。同定総芳香族 化合物のEC50は0.015 µg/Lであり、これはWSF1%に相当する(Padma et al., 1999)。

イーグル港(米国ワシントン州)も、クレオソートに特徴的なPAH混合物に汚染されてい る。試験した底質中のPAH13種の総濃度は6461 mg/L乾燥重量であった。この底質およ び間隙水に端脚類

Rhepoxynius abronius

を暴露したところ、100%の急性死亡率であった。

非希釈底質床に暴露させた端脚類

Rhepoxynius abronius

(

n

=20)は全数10~60分以内に死 んだ。Yaquina 湾(米国オレゴン州)の非汚染底質を希釈して試験したところ、4 日間 LC50 は666 mg/kg湿重量であった(Swartz et al., 1989)。

木材処理(クレオソート)施設(米国オレゴン州)の近傍の川から採取(1980~1992)した底質 を用いて端脚類

Hyalella azteca

の死亡率(ASTM:米国材料試験協会に従った10日間止水式

134

バイオアッセイ)を調べた。試験した48ヵ所中、7ヵ所の底質は地域の対照地点の底質と比 較して有意に(

P

≤ 0.05)毒性が高く、6ヵ所の底質はほかの対照底質(Wilsonville)に比較し て有意に(

P

≤ 0.05)高かった。死亡率がもっとも高い(31~100%)のは、クレオソート(積み 下ろし)ドック、クレオソートドックに隣接する上流海岸線、および鉄道橋の区域であった。

PAH以外のおもな汚染物質として、塩素化フェノール、PCDD/PCDF、砒素などの有毒化 学物質が限られた量であるが底質中で確認された(濃度は報告されず)(Pastorok et al., 1994)。

クレオソートを含む数種の汚染物質の影響を受けている川(米国オハイオ州)の底質は、実 験室において48時間止水式で暴露したニセネコゼミジンコ(

Ceriodaphnia dubia

)の生存率 を有意に低下させた(上流の対照地域の生存率93~100%に対し生存率0~42%、

n

=7件)。

下流の汚染された底質の汚染物質は、14種のPAH(15~213 mg/kg乾燥重量)、およびクロ ム、カドミウム、銅、鉛、亜鉛など数種の金属であった(Sasson-Brickson & Burton, 1991)。

フィンランドの湖(Lake Jämsänvesi)から採取した底質の一部は、1976年まで20年間操 業していたクレオソート含浸施設によって汚染されていた。1990 年に 16 地点で採取した

135

数種の底質試料の溶出液(底質/水 1:4 v/v)は、オオミジンコ

Daphnia magna

に 急性毒性を 示

した(Hyötyläinen & Oikari, 1999a,b)。もっとも毒性が高い試料(第13地点、深度0~10 cm) の運動抑制試験による24時間EC50は21%(±1.0%)(溶出液=100%)で、総PAH濃度1421 µg/L、BaP濃度1680 ng/Lであった(Hyötyläinen & Oikari, 1999b)。相当する底質中総PAH 濃度は、3294 mg/kg乾燥重量である。残留する総PAH濃度が0.7 µg/L未満の場合は、そ の溶出液には毒性がない。ほかの湖(Lake Palosjärvi)の参照底質はPAHを含有せず(検出限 界0.5 µg/kg乾燥重量)、

Daphnia

試験で毒性が認められなかった(Hyötyläinen & Oikari, 1999a)。

10~20 年前にクレオソートに汚染されたスウェーデンおよびノルウェーの底質(生態系

不記載)からのアセトン抽出物は、甲殻類ソコミジンコの1種

Nitocra spinipes

に対して強 い毒性を示した。96時間LC50は、それぞれ0.51(95% CI = 0.42~0.57)および0.55 (95% CI

= 0.42~0.72) mg/L(抽出可能な有機物に基づく)で、クレオソート原液のLC50と同程度で あ っ た が(Table 33 参 照)、 す べ て の 抽 出 物 が ア セ ト ン に 再 溶 解 し た わ け で は な い (Sundström et al., 1986)

カナダのThunder Bay港の木材処理作業施設の近くで採取された、クレオソート(油脂お よびグリース含有量7600~80000 mg/kg)、PCP、金属類、その他の毒性物質で高度に汚染 された底質は、実験室での10 日間の暴露試験でカゲロウ

Hexagonia limbata

およびヒル

Nephelopsis obscura

に対して急性毒性を示した(Metcalfe & Hayton, 1989)。

ドキュメント内 62. Coal Tar Creosote コールタールクレオソート (ページ 131-134)