第 2 章 先行研究レビュー
2.5 労働災害の原因・分析
2.5.3 災害発生とヒューマンエラーの関係
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つながる要因となる(高木ほか, 2012b)。トラブルが生じた場合の経済的損失など、
多様な点からも検討が必要であり、同じ組織であっても、個人によって危険の捉え 方が異なるため、個人の安全に対する価値観の違いが社会的大事故につながること がある(綾部ほか, 1995)。
小松原(1992a ; 1992b)は、本人を処罰したり、注意喚起したりするだけでは、
ヒューマンエラーは減少しない、と指摘している。人間の確実性を低下させる要因 として、体調不良、時間不足・焦り、退屈・単調作業、慣れ・思い込み、不慣れな 操作が入ってくる(小松原, 2010)。そのため、河野(2006)が述べているようにヒ ューマンファクターを研究し、人間を中心にしたシステムを考えて実社会に活用で きる安全技術が必要となる45。
谷村 (2006)は、ヒューマンエラーを心身機能モデルで説明している(図
2-9
参照)。図 2-9 心身機能モデル
出典:谷村(2006), pp.12,118.を参考に筆者が一部加筆
作業遂行に必要な機能を「場面把握」、「思考の統合」、「感情・情動」、「作業行動」
の 4 つに分類している。「場面把握」は、取り扱う機械、設備の構造、性能に関す る知識である。「思考の統合」は、作業に必要な安全技術や作業手順に関する知識 である。「感情・情動」は、安全作業に対する動機づけや心構えの知識である。「作 業行動」は、機械・計器類の操作や作業前の点検等に関する知識である。
「場面把握」は、①よく見えなかった、②気づかなかった、③忘れていたである。
45 1962年の国鉄常磐線三河駅構内で発生した列車脱線多重衝突事故(死者160名、負傷者296名)
をきっかけに鉄道労働科学研究所の医学、心理学、人間工学の三部門からの観点でヒューマンフ ァクター工学が始まった(小美濃, 2009, pp.61)。
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「思考の統合」は、④知らなかった、⑤深く考えなかった、⑥大丈夫だと思った、
である。「感情・情動」は、⑦慌てていた、⑧不愉快なことがあった、⑨疲れてい た、である。「作業行動」は、⑩無意識に手が動いた、⑪やりにくかった(難しか った)、⑫体のバランスを崩した、である。以上の計12項目でチェックをおこなう。
この項目は、医師が診察のとき、患者に聞く問診的な項目と同様であり、本人の主 観的な訴えから、客観的な事実、問題点を引き出すことで、ヒューマンエラー防止 の対策につながる。これと似た考え方として、小松原(
2008b
)は、ヒューマンエ ラーを状況認識モデルで示している(図2-10
参照)。図
2-10
状況認識モデル 出典:小松原(2008b), p.102.「状況認識」では、まず、「状況を知覚すること(perception)」、次に「状況を理 解すること(comprehension)」、最後に「対応計画を立てること(projection)」、この 3 つのステップを踏んで将来予想と対応決定がなされていく。そして、状況知覚か ら意思決定には、個々の知識と経験が関連する。知識には過去の成功経験や失敗経 験などが含まれている。この知識によって現場の状況が変化しても、直ぐに計画を 修正して危険回避の行動が可能となる。
宮坂ほか(1999)は、知識の習得と理解によって個人が望ましい方向に行動が変
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容する、と言っている。すなわち、知識(Knowledge)の習得が、態度(Attitudes)
の変容をもたらし、結果として習慣(Practice)や行動(Behavior)に影響を与える。
コーンら(2000)によると、人的要因の分析には
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つのアプローチがあり、1 つは「重大事象分析」(critical incident analysis)と呼ばれ、なぜその現象が起きたか、そ の現象が取り巻いていた環境を分析するものである。もう