第 7 章 安全知識実践の検証
7.2 アンケート調査による安全知識実践の検証
アンケートの設問は、受講者へのヒヤリングに基づいて質問項目と質問紙を作成 した。質問紙はフェースシートと本編から成り、フェースシートの基本属性は、氏 名、年齢、経験年数、現場での役割の
4
項目である。本項では、①危険感受性シー トを用いた安全教育は事故防止活動に役立ったか(5択式)、②5択の中から一つに マル(○)を付けた理由(自由記述)、③安全教育前後の変化(自由記述)、④安全 教育後に現場の危険予知(KY
)活動で具体的に実践していること(自由記述)、の4
項目で総計8
項目であった。前章で示したように安全教育は、2014 年
6
月~7 月までに東部地区(東京都)、 西部地区(大阪府)、中部地区(名古屋市)を含めて合計16
回実施した。それに基 づきアンケート調査は、2014年12
月18
日~2015年1
月30
日の期間に東部地区、西部地区、中部地区で実施した。表
7-1
にアンケート有効回収数の概要を示す。アンケート調査の分析は、安全管理者(筆者)がおこなった。
ID
番号は、アンケ ートを調査した日付の順に付け、情報通信工事部門であることを示すため、英文字 のSD
を番号の前に付けた。図
7-1
に示すように「危険感受性シートを用いた安全教育は事故防止活動に役立 ったか」は、「役立った」が32
件(58%)、「どちらかといえば役立った」が17
件(31%)、「あまり役立たなかった」が
3
件(5.5%)、「役に立たなかった」が2
件(3.6%)、「無回答」が
1
件(1.9
%)であった。受講者の89
%が役立ったという回答が得ら れた。129 表 7-1 アンケート有効回収数の概要
地区・件数 有効回収数の内訳
東部地区:28件
現場代理人:2件(平均年齢41.5±23.3歳、平均経験年数10.5±6.3年)
職長:10件(平均年齢47.8±10.9歳、平均経験年数20.3±4.3年)
作業員:9件(平均年齢45.4±13.2歳、平均経験年数17.0±9.3年)
SE:7件(平均年齢32.7±5.9歳、平均経験年数7.7±5.7年)
西部地区:20件
現場代理人:9件(平均年齢39.9±8.2歳、平均経験年数17.2±8.5年)
職長:5件(平均年齢46.2±8.5歳、平均経験年数23.2±9.8年)
作業員:6件(平均年齢41.2±8.8歳、平均経験年数16.0±11.5年)
中部地区:7件
現場代理人:5件(平均年齢45.4±4.0歳、平均経験年数21.4±5.0年)
作業員:2件(年齢43.0±2.8歳、経験年数20.0±1.4年)
合計:55件
現場代理人:16件(平均年齢41.8±9.1歳、平均経験年数17.7±7.7年)
職長:15件(平均年齢47.8±9.8歳、平均経験年数21.3±6.4年)
作業員:17件(平均年齢43.8±10.7歳、平均経験年数17.0±9.3年)
SE:7件(平均年齢32.7±5.9歳、平均経験年数7.7±5.7年)
出典:筆者作成
図 7-1 「危険感受性シートを用いた安全教育は事故防止活動に役立ったか」
出典:筆者作成
危険感受性シートを用いた安全教育が役立った理由の自由回答記述では、「危険 箇所の再認識」は
25
件、「危険箇所の共有化」は13
件、「危険感受性の向上」は13
件であった(表7-2
参照)。130
表 7-2 危険感受性シートを用いた安全教育が役立った理由
出典:筆者作成
「危険箇所の再認識」では、作業員は自分の経験知と照合し、見落としていた危 険箇所が再確認していた。現場代理人と
SE
は、「危険箇所の共有化」と「危険感受 性の向上」が役立ったことが報告された。「危険箇所の共有化」については、安全 教育を通じて危険を回避する知識が学習されていた。「危険感受性の向上」については、自分の経験知と他人の経験知を互いに共有す ることで、危険に対する意識が向上したことが考えられた。また、「あまり役立た なかった」、「役に立たなかった」の理由については、設問の写真がわかりにくい、
安全教育後に現場で作業をおこなっていない、などの回答であった。
安全教育後に現場で気をつけるようになった点では、「危険箇所の抽出」と「危 険に対する意識の向上」であった(表
7-3
参照)。131
表 7-3 安全教育後に現場で気をつけるようになった点
出典:筆者作成
「危険箇所の抽出」は、作業員の経験知を言葉にして形式知とし、それを共有す ることで安全作業につながっていた。「危険に対する意識向上」は、作業現場にお ける危険予知(
KY
)活動を通じて、作業員同士が頻繁に安全知識を共有することで 不安全状態や不安全行動を防ぐ効果があった。安全教育後に現場の
KY
活動で具体的に実践している自由記述式回答を分析する と、「危険箇所の安全対策」と「コミュニケーションの充実」であった(表7-4
参照)。「危険箇所の安全対策」では、配線ラック内の危険箇所が再認識されていた。例え ば、稼働中の機器との誤接触を防ぐために従来よりも慎重に行動しているという意 見があり、安全教育によって安全知識が移転されたことを示している。「コミュニ ケーションの充実」では、危険予知(KY)活動時に現場管理者と作業員の経験知を 引き出して、作業場の危険箇所に関する知識を共有していた。
132
表 7-4 現場の
KY
活動で具体的に実践していること出典:筆者作成