演習問題 38 (解答38) [00上智大後期理工]
aを正の無理数とする. a0=aとおく. a0 に対して,a0 を超えない最大の整数をk0 とおき,
a0=k0+ 1 a1
によって a1 を決める. このようにしてan まで決めたとき,このan に対して,an を超えない最大 の整数を kn とおき,
an=kn+ 1 an+1
によって an+1 を決める.
また,数列{Pn}(n= 0, 1, 2, · · ·, ),{Qn}(n= 0, 1, 2, · · ·, )を次の漸化式で定義する.
P0= 1, P1=k0, Pn+1 = Pn−1+knPn (n= 1, 2, · · ·) Q0= 0, Q1= 1, Qn+1 = Qn−1+knQn (n= 1, 2, · · ·) このとき次のことが成り立つことを示せ.
(1) PnQn−1−Pn−1Qn= (−1)n (n= 1, 2, · · ·)
(2) n >= 1のとき, Pn と Qn の最大公約数は1 である.
(3) a= Pn−1+Pnan
Qn−1+Qnan (n= 1, 2, · · ·) (4)
¯¯
¯¯a− Pn
Qn
¯¯
¯¯< 1
Q2n (n= 1, 2, · · ·)
15 数の幾何
15.1 格子点と近似分数
格子点
後により一般的な格子点は後に定義する.ここではまず高校数学で登場する格子点から考えはじ めよう.
xy座標平面の点で,x座標,y 座標とも整数である点を格子点という.「格子」という言葉の意 味を知らない人も多いと思われるので,平安時代の「格子」のある絵を紹介する.
「格子」とはもともとこのように細い角材を縦横に組み合わせ て作った建具.寝殿造りの建具である蔀(しとみ)のこと.『竹 取物語』に「かうし共も、人はなくしてあきぬ」などとある.さ らに細い木や竹などを、縦横に間をすかして組んで、窓や戸口 の外などに打ちつけたものをいう.
このような格子点を最初に研究したのはガウス(Gauss,1777-1855)である.それを引き継ぎ整 数問題の各方面に応用したのが,ミンコフスキー(H.Minkowski,1864-1909)である.彼はドイツ の幾何学者で,彼は幾何学的考察を整数論に適用し,いわゆる『数の幾何』なる分野を開拓した.
ミンコフスキー の定理
さて,一定の(連続な)曲線で囲まれた平面領域が凸形であるとは,その領域内の任意の2点を 結ぶ線分の全体がこの領域に含まれることをいう.Minkowski は一般的にn次元空間での凸形の 研究をし,「ミンコフスキーの定理」と呼ばれる定理を得た.それはさらに進んだ整数論で有用な 定理なのであるが,ここでは二次元の場合について証明しその応用を考えよう.
定理 48 (ミンコフスキーの定理)
平面上の格子点を対称の中心とする点対称な面積4の凸形は,その内部あるいは境界線上に,中 心の格子点以外の格子点を少なくとも一つ含む.
これを拡張した次の定理を証明する.
定理 49
s を任意の正数とする.平面上に面積s の任意の平面図形F がある.F に適当な平行移動を おこなって,F の内部か周に含まれる格子点の数kを sよりも大きくすることができる.
証明 図形F をxy 平面上に置く.m とnを任意の整数とし,図形 F を直線群x=m,y=n を引き,いくつかの一辺の長さ1の正方形に含まれる小領域に分割する.分割の境界は分割された 双方に入れる.
小領域を含むこれらの正方形をおのおの平行に移動し,一つの正方形の上に重ねる.このとき F の面積がsであるから,一般にsより多くの小領域が重なっている点が存在する.なぜならも しどの点での重なりも sより少なければ,一辺の長さが1の正方形を十分細かな小片に細分して,
各小片上の重なりがsより少なくできる.従ってそれらの面積の総和もsより小さくなるからで ある.sが整数のとき分割された境界でのみ重なりがsを越えることがあり得るが,この場合はそ
の境界上の点をとる.sが整数で,領域が正方形s枚ちょうどからできているときにかぎり,s個 の点の重なりしかないがこの場合ははじめから平行移動する必要がない.
従って自明な最後の場合を除き,領域の重なりがsより大きい点が存在する.そのときの重な りの個数をk とする.s < kである.
この点を分割された各正方形に記し,これらの正方形を元の位置に戻す.すると F 上に点列 P1, P2, · · ·, Pk ができ,これらの任意の2点間のx座標,y座標の差はどれも整数である.P1 が 格子点に来るように平行移動させれば,P1, P2, · · ·, Pk はすべて格子点である. ■
これをもとに定理48を証明しよう.
証明 図形F は,面積が4で,原点 Oを対称の中心とするとしてよい.
Oを中心に F を 長さで1
2 に縮小した図形をF0 とする.F0 は面積が1であるから,F0 の内 部あるいは周上に,2点P(x, y)とP0(x0, y0)で,その差x−x0, y−y0 がともに整数であるもの が存在する.
F0 もOに関して対称であるから,Pの対称点Q(−x, −y)もF0 の周か内部にある.さらにF0 も凸形であるからP0Qが F0 に含まれ,特にその中点M0
µx0−x
2 , y0−y 2
¶
も F0 に含まれる.
PとP0 は異なる点なのでM0 はOと異なる.
そこでOM0 を2倍に拡大した点を MとすればMは F の周か内部にあり, M(x−x0, y−y0)
であるから確かに格子点である. ■
実数を有理数で近似するという問題に関して,ミンコフスキーの定理は非常に有効である.
定理 50
α, β, γ, δ は実数で∆=αδ−βγ6= とする.またh, kは正数で hk=∆とする.このとき ( |αx+βy|<=h
|γx+δy|<=k は x=y= 0以外の整数解を有する.
証明 この連立不等式が定める領域をF とする. F に点(x, y)が属すれば(−x, −y)も属する から原点対称である.
F の面積は
0<=αx+βy <=h , 0<=γx+δy <=k
で定まる平行四辺形の4倍である.この平行四辺形の一つの頂点は原点で,その両隣の頂点はそれ
ぞれ (
αx+βy=h γx+δy= 0 ,
( αx+βy= 0 γx+δy=k の交点で,それは
µδh
∆, −γh
∆
¶ ,
µ
−βk
∆, αk
∆
¶
である.したがってF 面積は
4×
¯¯
¯¯δh
∆ αk
∆ −γh
∆ βk
∆
¯¯
¯¯= 4×(αδ−βγ)hk
∆ = 4
ゆえにミンコフスキーの定理から,F は原点以外の格子点を含む. ■
ここで,ωを与えられた無理数とする.このときα=ω, β =−1, γ= 1, δ= 0とすれば∆= である.よってh= 1
n, k=nとすれば,
|ωx−y|<= 1
n, |x|<=n
となる原点以外の格子点(x, y)が任意の正数nに対して存在する.nを消去すると
|ωx−y|<= 1 x
となる.ゆえにこれは近似定理(定理42)の別証明になっている.
練習問題 15.1 (解答52) a, b, cは実数で,a >0, D=b2−4ac <0 ならば,
ax2+bxy+cy2<=2√
−D π は (0, 0)以外の整数解をもつ.