証明 すべての nに対して第一式が成り立てば,それを第二式の右辺に代入して X
d|n
X
δ|d
µ µn
d
¶ F(δ)
δはdの約数なので, n d は n
δ の約数になる.したがって和の順序を逆にすると
=X
δ|d
F(δ)X
δ0|nδ
µ(δ0)
補題1 によってかっこ内の和で n
δ >1 のものは0になり,F(n)µ(1)のみが残る.
∴ X
d|n
µ µn
d
¶
G(d) =F(n)
つぎにすべてのnに対して第二式が成り立てば,同様に X
d|n
F(d) = X
d|n
X
δ|d
µ µd
δ
¶ G(δ)
= X
δ|n
X
δ0|nδ
µ(δ0)
G(δ) =G(n)
■ 特にF(n) =ϕ(n)のときはG(n) =nである.整数で定義された関数で定理19の等式(26)が すべての nについて成り立つものはオイラーの関数ϕ(n)のみである.そして
ϕ(n) =X
d|n
µ µn
d
¶ d
となる.実際 n=pαqβrγ· · · とすると
ϕ(n) = X
d|n
µ µn
d
¶
d=X
d|n
µ(d)n d
= µ(1)n+µ(p)n
p+µ(q)n
q +µ(r)n r +· · · +µ(pq)n
pq+µ(pr)n pr+· · · +· · ·+µ(pqr· · ·) n
pqr· · ·
= n−n p−n
q −n
r +· · ·+ n pq + n
pq +· · · − n
pqr − · · ·
= n µ
1−1 p
¶ µ 1−1
q
¶ µ 1−1
r
¶
· · ·
練習問題 6.4 解答25 整数で定義された関数F(n)が乗法的関数のときG(n) =X
d|n
F(d)で定 義された関数G(n)も乗法的関数であることを示せ.また,この事実を用いて補題1の別証を考 えよ.
練習問題 6.5 解答26 正の実数xを超えない自然数のうちでnと互いに素であるものの個数 を ϕ(n, x)とおく.ϕ(n, n) =ϕ(n)である.[x]で xを超えない整数を表すと定理19,定理20 の一般化として
X
d|n
ϕ(d, dx) = [nx]
ϕ(n, x) = X
d|n
µ(d)
·x d
¸
が成り立つことを示せ.
7 1の n 乗根
7.1 1の n 乗根
1のn乗根,すなわち方程式
xn−1 = 0 (28)
の根は n個ある.それらは cos2kπ
n +isin2kπ
n , (k= 0, 1, · · ·, n−1) (29) である.実際これらはすべて偏角の異なる複素数なので異なる.しかも n乗すると1になるので,
方程式(28)の解である.簡単のために α= cos2π
n +isin2π
n , (k= 0, 1, · · ·, n−1) とおくと,(29)はド・モアブルの定理より,
αk (k= 0, 1, · · ·, n−1)
と表される.このとき因数定理からxn−1 はx−αk を因数にもつ.したがって xn−1 は xn−1 =Q(x)(x−1)(x−α)· · ·(x−αn−1)
の因数分解をもつ.次数と最高次数の係数を考えるとQ(x) = 1がわかり,このn個がちょうど方 程式(28)の解であることがわかる.
ここでαn= 1なので,(29)においてkに与えるべき値はnを法としての一つの剰余系である.
さらに(k, n) = 1のとき(29)において 2kπ
n はn倍してはじめて2πになるので,αk はn乗し てはじめて1 に等しくなる.1のn乗根のうちn乗してはじめて1 のなるものを1の原始 n 乗 根という.
定理 21
1の原始 n乗根はϕ(n)個ある.それらは cos2kπ
n +isin2kπ n
において,kに nを法としての既約剰余系の値を与えて得られるものである.
証明 すでに述べたように(k, n) = 1のとき(21)において 2kπ
n は n倍してはじめて2πになる ので,αk は n乗してはじめて1 に等しくなる.つまりαk は原始n乗根である.
逆にβ が原始n乗根であるとする.β は xn−1 = 0の根であるからβ=αlと表される.
もし(l, n) =d >1 ならn=dn0, l=dl0 とおくとき cos2lπ
n +isin2lπ
n = cos2l0π
n0 +isin2l0π n0
なので, (αl)n0 = 1となり, n乗してはじめて1となる,という仮定に反する.ゆえに (l, n) = 1 となる.
ゆえにαk が原始n 乗根となるのは,nと互いに素なk を用いてαk と表されるときにかぎる ので,その個数はϕ(n)個である.ちなみにαlは原始n0 乗根である. ■
例 7.1 1の6乗根は
1, −1, −1±√ 3i
2 , 1±√ 3i 2 そのうち原始6乗根は最後の二つだけである. −1±√
3i
2 は原始3乗根,−1 は原始2乗根,1 は1乗根である.
定理 22
nの素因数分解をn=pαqβrγ· · · とし,
Fn(x) = (xn−1)(xpqn −1)(xqrn −1)· · · ·
(xnp −1)(xnq −1)· · ·(xpqrn −1)· · · (30)
= Y
d|n
(xnd −1)µ(d) (31)
とすれば,Fn(x)は1の原始n乗根のみを根とする多項式である.Fn(x)はϕ(n)次で,その最高 次数の係数は1,その他の係数もすべて整数である.ここにµ(n)はメービスの関数である.
証明 1の原始n乗根のみを単根とする方程式で最高次数の係数が1であるものをFn(x) = 0 と する.定理21の証明より,その他の n乗根はnの約数dに対し、原始 n
d乗根になるが,dが1 以外の約数を動けばn
d はn以外の約数を動くので,原始n乗根以外のn乗根はnの真の約数d を次数とする原始d乗根になる.原始n乗根と合わせた全体がちょうど1のn乗根の全体である.
つまり Y
d|n
Fd(x) =xn−1となる.xを十分大きく各Fd(x)が正の値をとるように固定する.そ れぞれの最高次数の係数が正なのでそれは可能である.その上で両辺の対数をとる.
X
d|n
logFd(x) = log(xn−1)
整数nとdに関する等式と見ればメービスの反転公式(6節定理20)が使え logFn(x) =X
d|n
µ(d) log(xnd −1)
つまり
Fn(x) =Y
d|n
(xnd −1)µ(d)
両辺xの多項式で,十分大きいxでつねに成立するのでxに関して恒等的に成立する.したがっ て(31)が示された.
Fn(x)の次数は定理21よりϕ(n)でその係数は(31)より明らかに整数である.式(30)の分子分 母の最高次数の係数はともに1なので分母を払って係数比較すればFn(x)の最高次数の係数が1
であることがわかる. ■
例 7.2
F6(x) = (x6−1)(x−1)
(x2−1)(x3−1) =x2−x+ 1
F12(x) = (x12−1)(x2−1)
(x6−1)(x4−1) =x4−x2+ 1 pが素数なら
Fp(x) = xp−1
x−1 =xp−1+xp−2+· · ·+ 1 Fpe(x) = xpe−1
xpe−1−1 =xpe−1(p−1)+xpe−1(p−2)+· · ·+ 1 練習問題 7.1 (解答27) Fn(x)の定数項はn= 1の場合以外+1であることを示せ.
練習問題 7.2 (解答28) Fn(x)の第二項(ϕ(n)−1次の項)の係数は−µ(n)に等しいことを示せ.
つまり1の原始n乗根の和はµ(n)である.
練習問題 7.3 (解答29) αを1の原始n乗根とすれば αk (k= 0, 1, · · ·, n−1)
がすべてのn 乗根で,そのうち(k, n) = 1なるkに対するものがちょうど原始 n乗根になるこ とを示せ.
練習問題 7.4 (解答30) 次のことを示せ.
(1) 互いに素な二つの整数a, bに対し,1の a乗根とb 乗根をすべての組合せについて掛けて 得られるab 個の積が1のab乗根の全部になる.
(2) 1の 原始a乗根と 原始b 乗根をすべての組合せについて掛けるなら1の 原始ab乗根の全 部が得られる.