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7.1 波形の処理

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第 7

実験データの解析

5月のビームテストで得られた85 MeV/cと105 MeV/cのデータについて解析を行う。解 析の流れとして、まず(1)WFDで得られた各波形から電荷に相当する量を取得し、(2)宇宙線 を用いたエネルギー較正を行い、(3)電荷量をエネルギーに変換し、合計のエネルギーデポ ジットを得る。最後に(4)データとMCと比較する事でGSOの分解能を測定する。

第7. 実験データの解析 7.1. 波形の処理

となるため、電荷量のペデスタルPki は以下により計算される*1

Pki = Bki ×1023 (7.3)

以上から正味の電荷量Ck,acci

Ck,acci = Qi −Pki (7.4)

となる。acc (accumulated)は後述する波形フィッティングから得られる電荷量Ck,fiti と区別す るためである。尚、今回の解析ではk = 100とし、特に断らない限り、以降ではこの値を用 い、Cacci ≡Ck=100,acci とする。

電荷量Ci(Cacci もしくはCfiti )が得られた後、エネルギーに変換する。各chのエネルギー 較正因子 ci (MeV/212V/ns)が得られていれば、エネルギー Ei (MeV)及び全エネルギー Etot (MeV)は

Ei =ci ×Ci (7.5)

Etot = ∑

i

Ei (7.6)

で与えられる。(7.6)の総和記号は有効なチャンネル全ての総和であり、プリアンプが故障し たチャンネルなど不都合なものは省く。ci の値は、結晶のエネルギー応答性が線形である仮 定の下で、宇宙線の測定から得られるCi のMPVピーク値CMPVi と、MCで得られるスペ

クトルのMPVEMC,MPVi ( 表6.1)から以下で与えられる。

ci = EMC,MPVi

CMPVi (7.7)

7.1.2 波形フィッティング

今回の解析では、前述した総和によって電荷量を算出する方法ではなく、波形関数を波形 データにフィットさせることで電荷量を得る。この操作により、比較的電気ノイズに耐性の ある解析を行う事ができる。予め用意した波形関数を波形のデータにフィットさせることで、

その関数のパラメータとして前述のCacci に代わるCfiti を得る。今回利用した波形関数 f(x) は、以下で定義される非対称ガウス関数である。パラメータは5つあり、p0は信号ピークの 位置、p1 は信号幅、p2 は非対称度、p3 は電荷量、p4 はベースラインである。

*1当然だが、k=1023のときはQi=P1023i となる。

第7. 実験データの解析 7.1. 波形の処理

time (ns)

0 200 400 600 800 1000

400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200 2400

wf_run004175_event000007

p 4

p 0

p 3

p 1 p 2

図7.1: 波形フィッティングの様子

f(x)=







 A p3

p1

2πg(x)+p4 (p2X(x)>−1) p4 (otherwise) A= sinh(

p2log(4)) p2log(4) g(x)= exp





−1 2







(log (1+ p2X(x)) p2

)2

+(p2)2













X(x)= Ax− p0 p1

(7.8)

波形フィッティングの様子を図7.1 に示す。赤線がフィッティング関数である。幅 p1 と 非対称度 p2 は原理的に、同じ結晶と読み出し回路を用いている限り、定数となるため、予 め実際に測定したデータサンプルから平均的な値を取得し、実際の解析では固定した値を用 いる。今回はGSOについて、p1 = 39.4270、p2 = 0.745766を用いた。以上から、実質的な フィッティングパラメータは p0,p3,p4の3つである。初期値には、まず先の方法から求めた 値を用いて p3 = Cacci , p4 = Bk=100i とする。p0 については単純に、ベースラインからのずれ

|wfi[j]−Bk=100i |が最大を示すi= jmaxを探索し、p0 = jmaxとする。ただしこの時探索する範

囲は100〜400 nsに制限する。さらにフィッティングの自由度を jmax±50の範囲に制限す

る。フィッティング後に得られる電荷量 p3 をCfiti と定義する。

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第7. 実験データの解析 7.1. 波形の処理

7.1.3 電荷量 Q

i

の例

ノイズデータの電荷量

ノイズデータについて、Q24 を図7.2に示す。信号は含まれないので Q24はペデスタルの 分布を意味している。しかし正確にはガウス関数ではなく、若干非対称になっている。非対 称ガウス関数(7.8)でフィッティングを行ったところ、非対称度が10%程度ある。原因は読 み出しのエレクトロニクスに存在すると考えられる。

Q_24

Entries 10000

Mean 5.359e+05

RMS 1247

/ ndf

χ2 70.84 / 67

p0 5.357e+05 ± 2.020e+01 p1 1213 ± 9.8 p2 0.0913 ± 0.0088 p3 1.319e+06 ± 1.360e+04 p4 0.4743 ± 0.3114

Q24

530 532 534 536 538 540 542 544

103

0 × 50 100 150 200 250 300 350 400

450 Q_24

Entries 10000

Mean 5.359e+05

RMS 1247

/ ndf

χ2 70.84 / 67

p0 5.357e+05 ± 2.020e+01 p1 1213 ± 9.8 p2 0.0913 ± 0.0088 p3 1.319e+06 ± 1.360e+04 p4 0.4743 ± 0.3114

図7.2: ノイズデータのQ24

テストパルスデータの電荷量

テストパルスのデータについて、Q24を図 7.3に示す。先のノイズデータとは違い対称性 の良い形状をしている。ガウス関数の幅はノイズのデータに対して14%程度小さくなって いる。

ビームデータの電荷量

信号が波形に含まれる場合の電荷量の例として、105 MeV/cデータの Q24 を図7.4に示 す。左側にペデスタルのピークが見える。信号による要素が高エネルギー側にテールをひい ている。

7.1.4 動作が不安定なチャンネル

上記のノイズデータについて、Q40を 図7.5に示す。入力が無いため、本来なら図7.2と同 様の分布が得られるはずであるが、離れて2つのピークが対称に現れている。時間変化を見 るために、Q40 とイベント番号の対応をプロットしたものが図7.6 である。縦軸がQ40 、横

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第7. 実験データの解析 7.2. エネルギー較正

testpulse_Q_24

Entries 99647

Mean 2.402e+06

RMS 1042

/ ndf

χ2 61.99 / 75

Constant 4584 ± 17.8 Mean 2.402e+06 ± 3.298e+00 Sigma 1040 ± 2.3

Q24

2398 2400 2402 2404 2406 2408

103 0 ×

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

testpulse_Q_24

Entries 99647

Mean 2.402e+06

RMS 1042

/ ndf

χ2 61.99 / 75

Constant 4584 ± 17.8 Mean 2.402e+06 ± 3.298e+00 Sigma 1040 ± 2.3

q[24]

図7.3: テストパルスデータのQ24

e105MeV_Q_24

Entries 206846

Mean 5.426e+05

RMS 2.911e+04

/ ndf

χ2 274.4 / 2

Constant 1.087e+05 ± 3.169e+02 Mean 5.357e+05 ± 4.605e+00 Sigma 1967 ± 3.7

Q24

500 550 600 650 700 750 800

103 1 ×

10 102 103 104 105

e105MeV_Q_24

Entries 206846

Mean 5.426e+05

RMS 2.911e+04

/ ndf

χ2 274.4 / 2

Constant 1.087e+05 ± 3.169e+02 Mean 5.357e+05 ± 4.605e+00 Sigma 1967 ± 3.7

図7.4: 105 MeV/cデータのQ24

Q_40

Entries 10000

Mean 4.844e+05 RMS 1.059e+04

/ ndf

χ2 32.21 / 31

p0 4.844e+05 ± 3.740e+01 p1 1043 ± 30.2 p2 0.1089 ± 0.0269 p3 5.61e+05 ± 1.91e+04 p4 13.05 ± 2.69

Q40

460 470 480 490 500 510

103 0 ×

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220

240 Q_40

Entries 10000

Mean 4.844e+05 RMS 1.059e+04

/ ndf

χ2 32.21 / 31

p0 4.844e+05 ± 3.740e+01 p1 1043 ± 30.2 p2 0.1089 ± 0.0269 p3 5.61e+05 ± 1.91e+04 p4 13.05 ± 2.69

図7.5: ノイズデータのQ40

event number (~time)

0 2000 4000 6000 8000 10000

40Q

460 465 470 475 480 485 490 495 500 505 510

103

× Q_40_timedep

Entries 10000 Mean x 5000 Mean y 4.844e+05 RMS x 2887 RMS y 1.059e+04 Q_40_timedep Entries 10000 Mean x 5000 Mean y 4.844e+05 RMS x 2887 RMS y 1.059e+04

time dependence of Q40

図7.6: Q40の時間変化

軸がイベント番号で時間に対応する。図からは比較的ランダムにQ40 が中央の値から変動し ており、特別特徴的な時間構造を確認する事はできない。さらにこのch40だけでなく、ch35 からch48の全てがこのヒストグラムに似た形状を示した。図5.11におけるchとプリアンプ ボードの対応関係から、プリアンプボードの5番と8番の読み出しチェーン上に何らかの原 因があると考えられる。同様の状態はノイズデータのみでなく、実験期間中のあらゆるデー タに見られた。この不安定性は波形フィッティングの精度劣化、データの質の悪化を促し、

MCでの再現を困難にする。以上から今回の解析ではこれらのチャンネルをデッドチャンネ ルとして扱う。

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 68-72)

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