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5.1 実験施設

5.2.1 構成

COMET実験用電磁カロリメータのプロトタイプとして、7×7個の結晶アレイを構築した。

結晶アレイは図5.3で示すブロック構造をもつ。2×2、2×3、3×2、3×3でまとめられた結 晶がそれぞれ一つのブロックを形成する。特に中央の3×3の結晶について、COMET実験で 使用する形状、20×20×150 mm3 のGSOを用意した。しかし周りの40本については、20

×20×120 mm3のGSOを用いた。

電磁カロリメータからの信号を処理する読み出し回路についても、本実験での採用を見据 え、プロトタイプの新規開発を行った。

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第5. ビームテスト実験 5.2. COMET実験用電磁カロリメータのプロトタイプ

読み出し preamp.

読み出し preamp.

読み出し preamp.

読み出し preamp.

読み出し preamp.

読み出し preamp.

e

r 2x2

2x2 2x2

2x2 2x3

2x3

3x2 3x3 3x2

図5.3: 結晶アレイのブロック構造

5.2.2 結晶のブロック化

各ブロックの内部構造は、第4.3.1章で述べたCOMET実験用電磁カロリメータのモジュー ルデザインのためのプロトタイプである。この構造に必要な部品及び手法は全て、ロシアに

あるBINP研究所のCOMET実験共同研究者により提供された。製作手順を図5.4の順で説

明する。(a)各結晶にAPDをとりつける。APDと結晶の光学接続には、厚さ1 mmのEljen Technology 社のEJ-560シリコンクッキー*4を用いる。(b)各結晶は2層のテフロン(PTFE) テープで覆われ、APDも含めて押さえつける形で固定する*5。テフロンテープは厚さ76µm で、Saint-Gobain社の BC-642を用いた。(c)テフロンで梱包された結晶をまとめる。(d)ま とめた結晶をアルミナイズドマイラーでできたケースに収納する。さらに APDを囲うよう に真鍮でできた固定材を設置する。(e)マイラーケースを中に折り込み、その上から挟み込む ようにもう一つの固定材を取り付ける。このマイラーケースは熱すると収縮する特性を持っ ており、この状態でアイロンで熱して収縮させ、より強く結晶を固定する。(f)最後に上部よ りカバーをつける。プリアンプは、後述するプロトタイプを用いており、図4.1 と異なって いる。

*4シリコンを含んだ、APDと結晶間を光学的に結合するための樹脂シート

*5APDの位置は結晶毎に異なるが、これによりAPDに至る光量の差は無いという研究結果が、共同研究者によ り報告されている。

第5. ビームテスト実験 5.2. COMET実験用電磁カロリメータのプロトタイプ

(a) APDとシリコンクッキー (b)テフロンを巻いた結晶にAPDを乗せた状態

(c) APD含め梱包した結晶を2×2に固めた様子 (d)固定材とアルミナイズドマイラーのケース

(e)マイラーを折り込んで固定した様子 (f)外カバーを取り付けた状態 図5.4: 2×2結晶とAPDの梱包過程

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第5. ビームテスト実験 5.2. COMET実験用電磁カロリメータのプロトタイプ

図5.5: プリアンプボード

5.2.3 プロトタイプ読み出し回路

APDから得られる信号は微弱であり、ノイズに弱いため、すぐさま信号増幅をする必要が ある。増幅経路上のデバイスは、プリアンプボード(図5.5)とバックエンドVMEボード

(図5.6)の二つに分けられ、これらもBINP研究所により開発、提供された。これらによる 二段階の増幅ゲインは約2 V/pCである。

プリアンプは1枚あたり7つの APDを取り扱う事ができるため、今回のビームテストで は7枚用いた。このプリアンプは、前述したパイルアップの識別のために、約7 nsという短

いshaping time*6を持っている。外部からは、各APDのための電圧ケーブルと、後段に控え

るバックエンドVMEボードとの接続ケーブルが接続される。バックエンドとの接続ケーブ ルを通して、プリアンプの動作電圧やテストパルスが入力され、増幅された信号が出力され る。出力は差動信号となっている。

バックエンドVMEボードには、一枚あたり2つのプリアンプボードを接続する事ができ るため、今回は4枚使用した。プリアンプから入力される差動信号の差を増幅することで、

プリアンプとバックエンドボード間で同等に混入するノイズの除去が容易になる。

プリアンプを通して APD には正電圧が供給される。電源にはNIM デバイスの Hoshin

RPH-030を用いた。この電源をBINPグループから提供されたHV分配器(図5.7)を用い

て49個に分配し、ケーブルを通してプリアンプに接続する。ただしこのHV分配器は欠陥の ため各APDの電圧調整ができず、各APDのゲインの調整ができなかった。

*6プリアンプの積分時定数のこと。

第5. ビームテスト実験 5.3. DATA ACQUISITION (DAQ)

図5.6: バックエンドVMEボード 図5.7: APDに供給するためのHV分配器

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 44-48)

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