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毒性発現機序に関する試験

ドキュメント内 Microsoft Word - A-262_01_101_ doc (ページ 57-61)

マウスにおけるアバタセプトの免疫調節作用とマウス腫瘍ウイルスであるマウス乳癌ウイルス

(MMTV)による前がん病変の発現及び乳腺腫瘍発生との関連を検討するための試験を実施した。

さらに、免疫毒素融合蛋白(BR96sFv-PE40)に対するアバタセプトの免疫原性抑制作用及びサル 腎移植モデルに複数の免疫調節薬を反復投与した場合の安全性について検討するための試験を実 施した。

8.3.1 I/LnJマウスにおける9ヵ月間間歇(qw×40)皮下投与検討試験-MMTVによる乳腺腫瘍 発生に及ぼすアバタセプトの影響(GLP不適合)

マウス腫瘍ウイルスであるMMTVを内在するCD-1マウスを用いたがん原性試験(4.2.3.4.1-1)

での乳腺腫瘍発生率上昇には、アバタセプトによる長期間の免疫抑制作用が関与している可能性 が考えられたことから、本薬の免疫調節作用とマウスにおける MMTV による前がん病変及び乳 腺腫瘍発生との関連を検討するために、投与開始28日前にMMTVを感染させたI/LnJ雌マウス

(MMTV抵抗性に重要な免疫応答を有することが知られている系統45))18及び19匹に、それぞ れ溶媒及びアバタセプトを投与量200 mg/kgで週1回40週間皮下投与した(表2.6.7.17-1 毒性 試験概要表、4.2.3.7.3-1)。評価項目は生死、臨床徴候観察(腫瘍の触診を含む)、体重測定、アバ タセプトの曝露量測定、肉眼病理検査、病理組織学的検査及び MMTV 特異抗体の中和活性測定 とした。投与期間中の63日目に1群当たり8例、投与終了時の285日目に残りすべての生存動物 を剖検した。なお、剖検の約 2 時間前に細胞増殖の指標として用いるブロモデオキシウリジン

(BrdU)を腹腔内投与した。

50 日目及び280 日目の血清中のアバタセプト濃度はそれぞれ 190 ± 50 μg/mL 及び 119 ± 60

μg/mLで、アバタセプトの曝露が確認された。血清中のアバタセプト濃度は概して50日目で高か

ったが、両測定日における薬物濃度はCD-1マウスを用いたがん原性試験(4.2.3.4.1-1)の血清中 薬物濃度の範囲内又はそれを上回る値であった。

アバタセプトを週1回40週間投与しても、投薬に関連した死亡例や臨床徴候及び体重の変化は みられなかった。免疫学的解析では、投薬開始後にアバタセプトが抗MMTV多価抗体及びIgG2a 抗体濃度の上昇を予防することが示されたが、投薬開始前 4 週間に発現した低レベルの MMTV 特異抗体応答はほとんど抑制されなかった。中和抗体のバイオアッセイでは、これらの抗体の機 能的特性として、溶媒及びアバタセプト投与群から得られた抗血清の200倍希釈の濃度まで、非 感染マウスで MMTV 感染力を抑制するのに必要な中和活性が保持されることが示された。した がって、アバタセプト投与群の I/LnJ マウスの乳腺組織ではウイルス量の増加並びに前がん病変 及び腫瘍発生はみられなかったが、これは残存する中和抗体により乳腺におけるウイルス感染の 拡大及びそれに続くMMTVによる腫瘍発生が十分抑制されたためと考えられた。本試験では285 日目に剖検したアバタセプト投与群の7例中2例のI/LnJマウスの胸腺で悪性リンパ腫、1例のマ ウスの胸腺で中等度のリンパ球の過形成が認められ、この発生率はがん原性試験の発生率と同程 度であった。

以上より、アバタセプトを投与量200 mg/kgでI/LnJマウスに週1回投与すると、ウイルス感染

後のMMTV特異抗体応答の亢進は抑制されたが、MMTVの感染力を抑制するのに必要な低レベ ルのMMTV中和抗体までは抑制されなかった。本試験条件下では、MMTV特異抗体応答が完全 には抑制されなかったことで、これらのマウスでは MMTV による前がん病変あるいは乳腺腫瘍 の発生が十分予防できたものと考えられた。

8.3.2 CD-1 マウスにおける 6 ヵ月間間歇(qw×26)皮下投与検討試験-MMTV 特異抗体応答 に及ぼすアバタセプト投与の影響(GLP不適合)

マウス腫瘍ウイルスであるMMTVを内在するCD-1マウスを用いたアバタセプトのがん原性試 験(4.2.3.4.1-1)での乳腺腫瘍発生率上昇には、アバタセプトによる長期間の免疫抑制作用が関与 している可能性が考えられたことから、MMTVとCD-1マウスにおける乳腺腫瘍発生との関連を 明らかにするために、本試験ではまずウイルス抵抗性に重要であることが知られている MMTV 特異抗体(IgG2aを含む)がCD-1マウスで産生されるか否かについて検討し、次いでMMTV特 異抗体応答に対するアバタセプトの抑制作用について検討した(表 2.6.7.17-1 毒性試験概要表、

4.2.3.7.3-2)。1群当たり10及び20匹のCD-1雌マウス2群に、それぞれPBS及びMMTVを1日 目に皮下投与した。107日目にMMTV非感染又は感染群からそれぞれ4~6匹選択してサブグル ープとし、生理食塩液及びアバタセプトを投与量200 mg/kgで週1回26週間皮下投与した。評価 項目は生死、臨床徴候観察、体重測定、臨床病理学的検査、肉眼病理検査、病理組織学的検査

(MMTVの増殖を評価するための免疫蛍光染色及びin situハイブリダイゼーション並びに細胞の 増殖を評価するためのBrdU染色を含む)並びにMMTV特異抗体応答の亢進及び中和活性測定と した。288日目にすべての生存マウスを剖検し、剖検約2時間前にBrdUを腹腔内投与した。

MMTV感染及びアバタセプトの週1回投与のいずれでも、それらの処置に関連した死亡例、臨 床徴候及び体重・臨床病理学的パラメータの変化はみられなかった。MMTVに特異的な多価抗体

(総Ig)応答は感染後6~12週目に20例中19例のマウスで発現し、20例中10例では感染前の

ベースライン値と比較してIgG2aの抗体活性が50%以上上昇した。個体間の抗体応答には変動が みられたが、抗体価は減衰しないか、数例では少なくとも27週にわたり抗体価が上昇していたこ とから、持続的な抗体応答が確認された。機能的解析結果より、CD-1マウスにおける抗体応答は 中和活性を有し、MMTV 感染を抑制するには十分であることが示された。16 週目の投与開始か ら、アバタセプトは MMTV 特異抗体応答を明らかに抑制したが、消失はさせなかった。本試験 条件下では、アバタセプト投与群においてin situハイブリダイゼーションによるウイルスの増殖

(免疫蛍光染色では評価できず)及び BrdU 染色による細胞の増殖のいずれの評価でもウイルス 及び細胞の増殖はみられず、投薬に関連した前がん病変又は腫瘍の発生も認められなかった。

以上より、CD-1マウスは機能的なMMTV特異抗体応答を発現させることが示された。さらに、

本試験成績より MMTV 特異抗体応答が確立してから長時間経過したとしても、アバタセプトは 抗体応答を軽度ではあるが明らかに抑制することが示唆された。

8.3.3 BMS-191352 のイヌにおける 2週間間歇(q3d×5)静脈内投与抗原性及び薬物動態試験

-デオキシスパガリン及びアバタセプト併用投与の影響(GLP適合)

BMS-191352(免疫毒素融合蛋白 BR96 sFv-PE40)は蛋白合成阻害に関与する緑膿菌外毒素

(PE40)の一部とBR96抗体の結合ドメインを有する組換え融合蛋白製剤である。本薬はヒトの 上皮性悪性腫瘍との結合で高い特異性を有し、腫瘍細胞内に移動して蛋白合成を停止させること により、腫瘍細胞に対して殺細胞効果を示すことから、抗悪性腫瘍薬として開発が行われた。し かし、BR96 sFv-PE40 は試験で用いたすべての動物種に強い免疫原性を示し、さらに、BR96

sFv-PE40 に対する明らかな抗体応答は、投与直後に急性過敏反応を引き起こす可能性があった。

急性過敏反応は一般的に血清補体価(CH50)の著しい低下と関連があることから、血清中の補体 を活性化し、アナフィラトキシンC3a及びC5a産生を誘導する血管内の薬物と抗体による免疫複 合体が急性過敏反応に関与していると考えられている。このため抗体応答を抑制することにより

BR96 sFv-PE40の長期投与が可能となり、その結果治療上の有益性が得られる可能性があると考

えられた。このためBR96 sFv-PE40(BMS-191352)を3日に1回計5回(q3d×5)静脈内投与し た場合及び3週間の休薬後に惹起投与した場合に発現する抗体応答が、免疫抑制作用を示すアバ タセプト又はデオキシスパガリン(DSG)の静脈内投与により改善されるか否かについて検討し た(表2.6.7.17-1 毒性試験概要表、4.2.3.7.3-3)。

1群当たり雌雄各2又は4匹のビーグル犬4群に、BR96 sFv-PE40を投与量0.12 mg/kgで3日 に1回計5回(q3d×5)静脈内投与した。1群にはBR96 sFv-PE40のみ、2群にはDSGを異なる 投与量及びスケジュールで併用投与し、残りの1群にはBR96 sFv-PE40投与日にアバタセプトを 投与量10 mg/kgで併用投与した。3週間休薬後の34日目に、BR96 sFv-PE40投与群の生存動物に

BR96 sFv-PE40を単独あるいはDSG又はアバタセプトと併用で惹起投与した。

BR96 sFv-PE40を単独投与したすべてのイヌで、q3d×5の投与期間中の10又は13日目からBR96

sFv-PE40抗体が産生された。アバタセプト投与により抗体応答の発現は概してq3d×5の投与スケ

ジュール終了後まで遅延した(平均抗体価を 90%以上抑制)。ほとんどの動物で 21 日目までに

BR96 sFv-PE40特異抗体応答がみられたが、抗体価は概してBR96 sFv-PE40単独投与群よりも低

値であった。34日目まででは、DSGと比較してアバタセプトはBR96 sFv-PE40特異抗体応答を 最も効果的に抑制した(平均抗体価を83%抑制)。惹起投与時に、アバタセプトはBR96 sFv-PE40 に対する抗体再応答を一部抑制したが、DSGでは抗体再応答は抑制されなかった。

BR96 sFv-PE40単独投与群のイヌではBR96 sFv-PE40に対する抗体が産生されることで13日目

にBR96 sFv-PE40の急速な消失がみられたが、アバタセプト投与によりそれが抑制又は予防され

た。さらに、34日目の惹起投与後のBR96 sFv-PE40特異抗体によるBR96 sFv-PE40の消失はアバ タセプト投与により明らかに遅延したが、BR96 sFv-PE40特異抗体応答は消失しなかった。

アバタセプト及びDSGは、q3d×5の投与期間中BR96 sFv-PE40による過敏反応の発現を予防し たが、34日目のBR96 sFv-PE40の惹起投与ではアバタセプトをBR96 sFv-PE40と併用投与した4 例中2例のイヌで過敏反応がみられた。このうち1例のイヌでは、虚脱及び多量の血様下痢又は 赤色粘液便が認められたことから、過敏反応発現後6時間目に人道的理由により安楽死させた。

当該動物ではアバタセプト投与 30分後にBR96 sFv-PE40を投与したことにより、過敏反応が悪

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