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新生児ラットを用いた 3 ヵ月間皮下/静脈内投与毒性試験(GLP 適合)

ドキュメント内 Microsoft Word - A-262_01_101_ doc (ページ 40-44)

6.4 新生児を用いた試験

6.4.1 新生児ラットを用いた 3 ヵ月間皮下/静脈内投与毒性試験(GLP 適合)

アバタセプトが新生児ラットの免疫系、神経行動及び生殖器官の発達に及ぼす影響を評価する ために新生児ラットを用いた毒性試験を実施した(表 2.6.7.15-1 毒性試験概要表、4.2.3.5.4-1)。

1群当たり雌雄各97匹のラットに投与量20, 65及び200 mg/kgでアバタセプトを生後4~94日の 間3日に1回投与した。対照群のラット(雌雄各107匹)には、溶媒として生理食塩液を投与し た。離乳前の生後4~28日(投与回数全9回)は、動物が小さいため皮下投与し、それ以降の生

後31~94日の期間(投与回数全22回)は臨床投与経路である静脈内に投与した。各投与群のラ

ットをさらに4つのサブグループに割り付けて評価した(表 6-2)。

表 6-2: 各サブグループの評価項目

サブグループ 番号

1群当たりの評価動物数

(匹) 評価項目

1 雌雄各32 ・皮下投与期間終了時(生後28~31日)のTK

2 雌雄各20~25 ・投与期間中(生後42~56日)のT細胞依存性抗

体応答、血清Ig量及び血清抗核抗体測定

・投与期間終了時(生後93日)の臨床免疫学的検 査、臨床病理学的検査及び病理解剖学的検査

3 雌雄各20~25 ・投薬期間中(生後47日)の血液学的検査及び末

梢血リンパ球フェノタイプ検査

・投与期間終了時(生後88~91日)のTK

・休薬期間中(生後125~180日)のアバタセプト の免疫原性評価

・休薬期間終了時(生後183日)の臨床免疫学的検 査、臨床病理学的検査及び病理解剖学的検査 4 雌雄各25 ・投与期間中(生後28~94日)の行動学的検査、

性成熟検査、発情周期検査、聴覚性驚愕反射試験、

機能観察総合評価(FOB)、行動活性及び水迷路 による学習/記憶検査

・投与期間終了時(生後94~125日)の交配及び受 胎能並びに帝王切開による評価a

臨床免疫学的検査には、T細胞依存性抗体応答、末梢血リンパ球フェノタイプ検査、血清Ig量測定あるいは血清 抗核抗体検出を含む。臨床病理学的検査には、血液学的検査、血液化学的検査及び血液凝固検査を含む。病理解 剖学的検査には、肉眼病理検査、器官重量測定、精子検査及び病理組織学的検査を含む。

a ラットは無処置動物と共に最長2又は3週間同居させた。雌は、投薬の有無にかかわらず妊娠20日に帝王切 開し、妊娠状態について検査した。

生後88日の投与量 20及び65 mg/kgにおける Cmaxを除き、全投与量で曝露量(Cmax及び

AUC0–72 h)は用量比を下回って増加した(表 6-3)。生後88日のAUC0–72 hは生後28日のAUC0–72 h

と比較して2~3倍高値を示し、静脈内投与でバイオアベイラビリティが増加することと一致して いた。生後28日のAUC0–72 hでは性差はみられなかったが、生後88日の曝露量は全投与量で雌と 比較して雄で約1.3倍高値を示した。休薬期間中において、アバタセプト濃度は30日ごとに約85

~99%低下した。雌より雄でt1/2が長いこと(雌:6~8日、雄:8~10日)と一致して、低下した 濃度においても雄の薬物濃度が一貫して高かった。また、アバタセプト特異抗体(免疫原性)は 投薬したラットで生後125日に最初に検出された。このことは、アバタセプトの薬理作用による 免疫抑制に関連した変化と考えられたが、投薬期間中及び投薬期間終了直後においては血清中の 高濃度のアバタセプトがアバタセプト特異抗体の検出を妨げていた可能性も否定できない。血清 中薬物濃度の低下に伴って免疫原性の発現頻度及び程度が概して増加したが、薬物特異抗体によ るt1/2への影響は認められなかった。

表 6-3: 新生児毒性試験における生後28及び88日のラットの曝露量とヒトの曝露量の比較

種 試験 TK

測定日

投与量 (mg/kg)

AUC(TAU)

(μg·h/mL) AUC(28d)b

(μg·h/mL) ヒトに対する ラットの曝露量比 ヒトa 反復静脈内投与 (qm) – 10 37929 37929 –

生後28日

(雄)

20 65 200

10300 26800 67000

95790 249240 623100

3 7 16 生後28日

(雌)

20 65 200

10100 29600 69800

93930 275280 649140

2 7 17 生後88日

(雄)

20 65 200

25200 68100 148000

234360 633330 1376400

6 17 36 ラット 反復皮下/静脈内投与

生後88日

(雌)

20 65 200

20100 52900 117000

186930 491970 1088100

5 13 29

a アバタセプト10 mg/kgを月に1回投与した若年性RA患者で報告されているAUC予測値の95%点(海外臨床 試験IM101-033)

b 4週間の曝露量を算出するために、AUC(TAU)TAU=3日間)を9.3倍した。

出典:4.2.3.5.4-1

アバタセプトはいずれの投与量においても神経行動及び生殖機能の発達に影響を及ぼさなかっ た。しかし、生後34~161日に27例が投薬に関連して死亡又は切迫屠殺され、死亡及び瀕死状態 の発現率は全体で4.6%であり、用量依存性はみられなかった(サブグループ1を除外すると6.9%、

投与量20, 65及び200 mg/kgでそれぞれ10, 5及び12例)。死亡/瀕死例のうち雌が7例であった のに対し雄が20例と多く、また死亡/瀕死例は主に休薬期間中に発現した(27例中21例が生後

100~161 日に死亡あるいは切迫屠殺された)。これらの死亡/切迫屠殺例の多くでは、初期の臨

床徴候として約 1~3週間継続する体重減少が認められ、体重の 19~37%が減少した。それに引 き続き、急性の臨床徴候として脱水、眼瞼下垂、被毛の乱れ、円背姿勢、活動性低下、冷感、軟 便/液状便、呼吸困難及び色素涙が認められ、その直後に死亡あるいは切迫屠殺された。これら のうち数例では、中等度ないし重度の摂餌量減少も断続的に認められた。

これらのラットの死亡/瀕死状態には、アバタセプトの薬理作用による免疫抑制に起因する二 次的な細菌感染が関与していると考えられた。これら死亡/切迫屠殺例での細菌感染を裏付ける 主な所見として、1)持続的な体重減少、下痢(軟便あるいは液状便)、脱水及び低体温(冷感)、

2)生後118~161日に切迫屠殺した11例中4例の瀕死状態のラットの血液培養での日和見病原体

(Klebsiella oxytoca, Pseudomonas aeruginosa, Enterobacter cloacae又はEscherichia coli)の存在、

3)生後118日に切迫屠殺した2例中2例の直腸/肛門周囲の組織における多数の蟯虫(Syphacia obvelata)の成虫又は卵の存在、4)死亡例の消化管での細菌感染を示唆する肉眼所見(粘膜表面 の暗赤/赤色領域、腸管壁の肥厚化又は蒼白化、硬い暗赤色の腫瘤、白く隆起した領域、盲腸肥 大及びガス/粘液による膨満)、5)腸管壁、リンパ節及び前立腺での出血/浮腫を伴う急性炎あ るいは細菌(小型の球桿菌)侵入を示す組織学的所見が認められた。

一方、剖検予定日まで生存していたラットは良好な忍容性を示し、体重及び摂餌量には投薬に 関連した影響は認められなかった。投与初期の数週では、全投薬群で脱水の発現頻度が増加した が、その後減少した。その他の投薬に関連した臨床徴候としては、投与量20及び65 mg/kgの雄 及び全投薬群の雌で、低頻度の眼/眼瞼部腫脹あるいは発赤が認められた。これら眼の変化はほ ぼ休薬期間のみに認められ、neosporin点眼薬投与で症状改善がみられたことから、結膜炎と考え られた。

全投与量の雌雄で免疫学的パラメータの変化が認められた。末梢血標本では、これらの変化が

生後42~56日(評価した最も早期の期間)から認められ始め、投与期間終了時(生後93日)に

概してより明らかに認められた。免疫学的パラメータの変化として、1)薬理作用による血清IgG 量の減少(対照群と比較して0.03~0.44倍、雄ではこれに関連して血清グロブリン量の減少)及 びKLHに対するT細胞依存性抗体応答の抑制(対照群と比較して、IgMで0.16倍以下、IgGで 0.04倍以下)、2)制御性T細胞(CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性)数の減少(対照群と比較して

0.14~0.29倍)、3)ヘルパーT細胞(CD4陽性CD8陰性)数の増加(対照群と比較して1.6~3.6

倍)及びT細胞(CD3陽性)総数の増加(対照群と比較して1.5~3.1倍)とそれに伴うリンパ球 数(対照群と比較して1.24~2.66倍)及び白血球数の増加(対照群と比較して1.26~2.51倍)が 認められた。これらの増加の程度に用量依存性はみられなかった。投与期間終了時(生後93日)

の剖検では、これらの血液学的/臨床免疫学的変化に関連したリンパ系器官及び非リンパ系器官 での病理組織学的変化が認められた。

リンパ系器官では、全投与量で胸腺の絶対重量増加(対照群と比較して1.2~1.5倍)及び脾臓 の絶対重量増加(対照群と比較して1.1~1.3倍)が用量に依存せず認められたが、病理組織学的 検査では胸腺の異常は認められなかった。一方、検査したすべての脾臓で辺縁帯拡大及び PALS の発達がみられ、腸間膜/下顎リンパ節で傍皮質領域拡大及び胚中心数の減少が認められた。細 胞特異的マーカーを用いたリンパ系器官の免疫蛍光染色の結果、軽微ないし中等度のT細胞領域 の拡大/発達及びB細胞領域の縮小が認められた。これらの変化は上述した末梢血中のT細胞及 びヘルパーT細胞数の増加、抗体応答の低下及び血清IgG量の減少とそれぞれ合致した。

非リンパ系器官では、全投与量で甲状腺及び膵島のリンパ球浸潤(総発現頻度として、甲状腺:

24%、膵島:9%)が認められた。これらの変化は自己免疫による所見と考えられ、対照群では観 察されなかった。さらに、投薬群のハーダー腺及び前立腺で単核細胞浸潤あるいは炎症の発現頻 度が増加した(それぞれ、対照群5%に対し50%、対照群40%に対し100%)。これら非リンパ系 器官における変化の発現頻度及び程度は、概して用量及び性別に依存しなかったが、膵島のリン パ球浸潤は雌より雄で顕著であった。これらの組織での炎症に関連して顆粒球数及び単球数の増 加(全投薬群の雌雄)、血漿フィブリノーゲンの増加(全投薬群の雌)及び血液化学的検査値の軽 微な変化(全投薬群の雄でアルブミンの減少、65及び200 mg/kg投与群の雌でコレステロール及 びトリグリセリドの増加)が生後47あるいは93日に認められた。

3 ヵ月の休薬期間終了後における投薬に関連したこれらの変化の回復性はそれぞれ異なってい た。血液学的/臨床免疫学的パラメータ及びリンパ系器官の変化には概して回復性が認められた が、3ヵ月の休薬期間においても生物学的に作用を示す濃度のアバタセプトが存在していたため、

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