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新生児ラットを用いた 3 ヵ月間間歇(q3d)皮下/静脈内投与免疫毒性試験

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6.4 新生児を用いた試験

6.4.2 新生児ラットを用いた 3 ヵ月間間歇(q3d)皮下/静脈内投与免疫毒性試験

新生児ラットを用いた3ヵ月間皮下/静脈内投与毒性試験(4.2.3.5.4-1)で認められた免疫系へ の影響が、生後4日(ラットにおいて免疫系が未発達で、ヒトでの出生前の発達段階にほぼ相当

26),27))から投与を開始したことと関連しているのか否かを検討するために、本試験を実施した(表

2.6.7.15-2 毒性試験概要表、4.2.3.5.4-2)。さらに、本試験(4.2.3.5.4-2)では、最初に実施した新 生児ラット試験(4.2.3.5.4-1)で認められた感染症が免疫系パラメータでみられた変化に関与して いるか否かを検討するために、標準的なケージではなくマイクロアイソレーター内で飼育し、よ り厳密に微生物管理された施設で試験を実施した。本試験では2種類の投与スケジュールを設定 し、第一の投与スケジュールでは初回の新生児ラット試験(4.2.3.5.4-1)と直接試験成績を比較す るために生後4日から投与を開始し、第二の投与スケジュールでは生後4日より免疫系が十分に

発達し、ヒトの小児における免疫系の発達度により近い生後28日から投与を開始した。第一の投 与スケジュールでは、生後4~97日に投与量65 mg/kgで3日に1回(第1群)、第二の投与スケ ジュールでは生後28~97日に投与量20 mg/kg(第2群)及び65 mg/kg(第3群)で3日に1回、

計3群にアバタセプトを投与液量5 mL/kgで投与した。対照群(第4群)には溶媒として生理食 塩液を生後4~97日に3日に1回、投与液量5 mL/kgで投与した。離乳前の生後4~28日の期間

(投与回数:第一の投与スケジュールで9回、第二のスケジュールで1回)は皮下投与し、それ 以降の生後31~97日の期間(第一及び第二の投与スケジュールともに投与回数23回)は静脈内 投与した。さらに第5群として、1群当たり雌雄各10匹のラットにKLH免疫の3日前からシク ロスポリンを投与量15 mg/kgで9日間連日投与し、T細胞依存性抗体応答評価時の陽性対照群と した。別途、1群当たり雌雄各40匹のTK評価用サテライト群を設け、生後4日から溶媒及びア バタセプト65 mg/kgをそれぞれ投与し、生後28日に採血した。TK評価群以外の群は、各投与群 のラットを2つのコホート(A及びB)に分けて評価した(表 6-4)。コホートAでは投与終了時 の生後98日に、またコホートBでは3ヵ月の休薬期間終了時の生後189日に剖検を実施した。

表 6-4: 各コホートにおける評価項目

コホート 1群当たりの評価動物数(匹) 評価項目

A 雌雄各10 ・投薬期間中(生後 47 日)の血液学的検査及び末 梢血リンパ球フェノタイプ検査

・投与期間終了時(生後88~91日)のTK

・生後42~56日のT細胞依存性抗体応答

・生後42(雌)/48(雄)及び98日の血清Ig量及

び血清抗核抗体測定

・生後98日の免疫原性評価

・生後98日の末梢血リンパ球フェノタイプ検査

・生後 98 日の臨床病理学的検査、肉眼病理検査及 び病理組織学的検査

B 雌雄各10 ・投与期間終了時(生後88~90日)のTK

・生後42(雌)/48(雄)及び189日の末梢血リン

パ球フェノタイプ検査及び血液学的検査

・生後165~179日のT細胞依存性抗体応答

・生後189日の血清Ig量及び血清抗核抗体測定

・生後123, 155及び189日の免疫原性評価及び曝露

量測定

・生後189日の臨床病理学的検査、肉眼病理検査及 び病理組織学的検査

生後4日及び28日のいずれの投与開始日においても、65 mg/kg投与群の生後88日における平

均AUC0–72hは同程度であった(表 6-5)。曝露量は投与量20及び65 mg/kg間で、用量比をやや下

回って増加した。生後28日の曝露量には性差が認められなかったが、生後88日では雌より雄で 曝露量がやや高かった(雌と比較して雄で1.1~1.3倍)。また、静脈内投与でバイオアベイラビリ ティが高くなることを反映して、生後28日と比較して生後88日では高い曝露量を示した。さら に、本試験(4.2.3.5.4-2)で得られた曝露量は初回の新生児ラット試験(4.2.3.5.4-1)とほぼ同程

度であった。

表 6-5: 新生児毒性試験における生後28及び88日のラットの曝露量とヒトの曝露量の比較

ヒトa ラット

測定日 生後28 生後88

投与

開始日 生後4 生後4 生後28

65 65 20 65 投与量 (mg/kg) 10

AUC

(TAU) 37929 23000 22500 49700 38900 20200 17900 49400 41100 曝露量

(μg·h/mL) AUC

(28d) 37929 213900b 209250 b 462210 b 361770 b 187860 b 166470 b 459420 b 382230 b ヒトに対する

ラットの曝露量比 – 6 6 12 10 5 4 12 10

a アバタセプト10 mg/kgを月に1回投与した若年性RA患者で報告されているAUC予測値の95%点(海外臨床 試験IM101-033

b 4週間の曝露量を算出するために、AUC(TAU)(TAU=3日間)を9.3倍した。

出典:4.2.3.5.4-2

投与期間中の曝露量は雌より雄でやや高値を示し、休薬期間中も雌より雄で血清中薬物濃度が 高かった。この結果は、アバタセプトの t1/2が雌(7~8 日)より雄(9~10 日)で長いことと合 致していた。さらに、投薬群のラットで生後155日に初めて検出されたアバタセプト特異抗体は、

アバタセプトの t1/2 に影響を与えなかった。投薬期間中及び投薬期間終了直後においては、血清 中の高濃度のアバタセプトがアバタセプト特異抗体の検出を妨げていた可能性も否定できないが、

休薬期間中にアバタセプト特異抗体が検出され始めたことはアバタセプトの薬理作用による免疫 抑制との関連を裏付ける変化と考えられる。

投薬に関連した死亡は65 mg/kg群で生後4日に投与を開始した雌1例及び生後28日に投与を 開始した雄1例の2例のみで認められ、休薬期間の約3週目から尾の病変が認められたため生後 134又は155日に安楽死させた。上記の2例以外にも65 mg/kg群で生後4又は28日のいずれか に投与を開始した3例(雄1例、雌2例)で尾の病変が認められ、臨床所見として皮膚の発疹及 び発赤、自咬あるいは炎症、肉眼病理所見として数例で滲出液を伴う潰瘍/痂皮がみられた。尾 の病変が認められた生存例の尾には、3 種の抗生物質を局所投与した。尾のぬぐい液あるいは組 織の培養でPantoea agglomerans, Pasteurella haemolytica及びProteus mirabillisを含む数種類の病原 体が非病原性微生物とともに検出されたことから、尾の病変は薬理作用による免疫抑制に起因し た二次的な日和見感染症による変化と考えられた。病理組織学的検査では、数例の尾の病変部で 細菌及び中等度の慢性炎症が認められたが、体重及び摂餌量には投薬に関連した変化は認められ なかった。

雌雄いずれにおいても、投薬に関連して認められた免疫学的パラメータの変化に投与量及び投 与開始日齢との関連性は概して認められなかった。免疫学的パラメータの変化として、1)薬理作 用による免疫抑制に起因し、ときとして血清グロブリン量の減少を伴う血清IgG量の減少(生後

48日:雄で対照群と比較して0.50~0.77倍、生後98日:雌雄で対照群と比較して0.04~0.08倍)

及びKLHに対するT細胞依存性抗体応答の抑制(IgM:対照群と比較して0.01~0.06倍、IgG:

対照群と比較して0.001~0.004倍)、2)制御性T細胞(CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性)数の減 少(対照群と比較して0.33~0.50倍)、3)T細胞(CD3陽性)総数及びヘルパーT細胞(CD4陽 性CD8陰性)数の増加(対照群と比較して1.29~3.46倍)とそれに伴うリンパ球数の増加(対照 群と比較して1.19~2.39倍)が認められた。

免疫学的パラメータの変化に伴い、投与期間終了後の検査時(生後98日)にリンパ系器官及び 非リンパ系器官で病理学的変化が認められた。生後4日から投与を開始した65 mg/kg群の雌で、

病理組織学的変化を伴わない胸腺の絶対・相対重量の増加がみられた。一方、投与量及び投与開 始日に関連なく、雌雄のリンパ系組織(脾臓及び腸間膜/下顎リンパ節)で病理組織学的変化が 認められた。リンパ系組織の変化は、T細胞領域(脾臓のPALS及び下顎リンパ節の傍皮質領域)

の拡大又は発達並びにリンパ節での胚中心(B 細胞領域)数の減少を特徴としていた。T細胞領 域の拡大と脾臓相対重量の増加(雌のみ)には関連があると考えられた。また、これらの変化は 血清IgG量の減少及び末梢血ヘルパーT細胞数の増加と一致する変化であった。

非リンパ系器官では、病理組織学的変化としてリンパ球浸潤が甲状腺(生後4日から投与を開 始した投薬群で32%、生後28日から投与を開始した投薬群で8%)及び膵島(生後4日から投与 を開始した投薬群の雄で 5%、生後28日から投与を開始した投薬群の雄で 13%)で認められた。

また、甲状腺あるいは膵島の炎症が投与量、投与開始日のいずれにも関係なく発現した。リンパ 球細胞表面マーカーを用いた免疫蛍光染色では、これらの組織のリンパ球浸潤にT細胞(CD4陽 性及び CD8 陽性)及びB細胞が混在していることが示され、これらの所見は自己免疫を示唆す る変化であった。また、雌雄で生後98日に組織での炎症と一致する末梢血の顆粒球数及び単球数 並びに血漿フィブリノーゲンの増加が認められた。

3 ヵ月の休薬期間終了後の投薬に関連した変化の回復性の程度はそれぞれ異なっていた。リン パ球/ヘルパーT細胞、血清IgG量及びリンパ系器官の組織構造に対する影響には、概して回復 傾向が認められた。しかし、脾臓及び胸腺重量の変化は継続し、生後 4 日に投与を開始した 65

mg/kg群の雄ではさらに生後189日にも脾臓の相対重量増加が認められた。制御性T細胞サブセ

ットの減少は完全に回復し、生後189日では投薬群の数例で制御性T細胞数が対照群を上回った。

IgG及びIgMのKLHに対するT細胞依存性抗体応答の抑制にはいずれも回復傾向が認められ(雄 のみ休薬期間中の回復性について評価した)、生後28日から投与開始した20及び65 mg/kg群で の回復性が最も高かった。休薬期間中にリンパ球性炎の発現頻度上昇が甲状腺(生後4日から投 与開始したラットで83%、生後28日から投与開始したラットで36%)及び膵島(生後4日から 投与開始したラットで 50%、生後 28日から投与開始したラットで 25%)で認められた。生後4 日から投与開始した65 mg/kg群では甲状腺の重量増加も認められた。組織での炎症に関連した顆 粒球数及び単球数の増加も継続して認められたが、フィブリノーゲンの変化は回復した。さらに、

休薬期間終了後の雄で投薬に関連した変化として、概して投与量及び投与開始日と関連性のない ハーダー腺、前立腺及び精嚢の単核細胞浸潤あるいは慢性炎症の発現頻度増加が認められた。

以上より、投与開始日(生後4又は28日)にかかわらず、投与量65 mg/kgでは本薬の薬理作

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