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免疫毒性試験

ドキュメント内 Microsoft Word - A-262_01_101_ doc (ページ 53-57)

アバタセプトは選択的免疫調節剤であるために、免疫系に対して影響を与えることが予測され る。単回及び反復投与毒性試験でアバタセプト及び belatacept 投与による免疫学的影響について 検討したことに加え、マウス及びサルを用いた免疫毒性試験を数試験実施した。さらに、結核菌 慢性感染モデルマウスにおけるアバタセプト投与の影響についても検討した。

8.2.1 マウスにおける単回静脈内投与免疫調節作用検討試験(GLP不適合)

アバタセプトの毒性及び免疫調節作用について検討するために、10 mMリン酸ナトリウム及び

130 mM塩化ナトリウム緩衝液に溶解したアバタセプトを、1群当たり5匹のB6C3F1雌マウス2

群に投与量36 mg/kg(分析結果に基づき投与量を修正)で単回静脈内投与した(表2.6.7.17-1 毒 性試験概要表、4.2.3.7.2-1)。1群は2日目に剖検し、残りの1群は9日目に剖検した。1群当たり 5匹の雌ラット2群にリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を投与液量25 mL/kgで投与し、対照群とし た。臨床病理学的検査のために2及び9日目に採血し、ex vivoでのT細胞及びB細胞の幼若化反

応並びにex vivoでのIg産生及びリンパ球サブポピュレーションフェノタイプの免疫学的評価の

ために脾臓を摘出した。

いずれの動物にも毒性徴候はみられなかった。アバタセプト投与群のマウスでは2及び9日目 に対照群と比較して白血球数の減少がみられたが、これは主としてリンパ球数の減少(約50%)

に起因する変化と考えられた。9 日目に可逆的な脾細胞の軽度減少(20%)がみられたが、血液 化学的パラメータ、血清IgG・IgM量及び脾臓リンパ球サブポピュレーションの相対数(B細胞、

T細胞、ヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞)には本薬投与に関連した変化は認められなかっ た。さらに、ex vivo試験では脾臓のT細胞及びB細胞の幼若化並びにB細胞の抗体産生細胞への 分化増殖には明らかな変化はみられなかった。これらの成績より、アバタセプトは免疫調節作用 を有するが、リンパ球に対しては明らかな毒性を示さないことが示唆された。

8.2.2 マウスにおける5日間静脈内投与免疫毒性試験-Ex vivo試験(GLP不適合)

溶媒(PBS)に溶解したアバタセプトを、1群当たり5匹のB6C3F1雌マウス4群に投与量7 mg/kg

(分析結果に基づき投与量を修正)で5日間連続静脈内投与した(表2.6.7.17-1 毒性試験概要表、

4.2.3.7.2-2)。対照群のマウス3群には、溶媒(PBS)を投与液量10 mL/kgで投与した。対照群及

び投薬群のマウス1群ずつをそれぞれ6及び13日目に剖検した。残りの対照群1群及び投薬群2 群には溶媒又はアバタセプトを26日目に惹起投与した後、27日目に剖検した。各剖検時に採血 し、臨床病理学的検査に供した。さらに、ex vivoでのT細胞及びB細胞の幼若化反応並びにex vivo での B 細胞分化及びリンパ球フェノタイプについて検討するために、剖検時に脾臓を摘出した。

26日目にアバタセプトを惹起投与したマウスの腎臓、肝臓及び肺組織は、病理組織学的検査に供 した。1, 5, 6, 7, 9, 12, 19, 26及び33日目に血清IgG量、アバタセプト特異抗体及びアバタセプト の血清中濃度を測定するためのマウスを試験に追加した。

26日目に惹起投与したマウスを除き、投薬に関連した毒性徴候や体重に及ぼす影響はみられな かった。惹起投与群のマウスでは、惹起投与後2分以内に活動性低下及び呼吸促迫がみられたが、

その後毒性徴候は消失し、60分以内にすべての動物が正常状態に回復した。投与終了後2週目に アバタセプト特異抗体が検出され、惹起投与後に毒性徴候が観察されたことと関連していると考 えられた。26 日目に惹起投与されたか否かにかかわらず、アバタセプト投与群のマウスでは 27 日目に白血球数の減少(約50~70%)がみられた。また、アバタセプト投与群のマウスでは可逆 的な脾臓リンパ球数の軽微な減少(10~15%)がみられたが、リンパ球フェノタイプには変化は みられなかった。惹起投与群のマウスの肺・肝臓・腎臓には、病理組織学的変化は認められなか

った。投薬群のマウスから採取した脾臓リンパ球では、6及び13日目にex vivoでT細胞マイト ジェンによるT細胞の幼若化反応が認められたが、B細胞ではみられなかった。さらに、脾臓リ ンパ球によるex vivoでのIgG産生は減少したが、in vivoでの血清IgG及びIgM量には影響は認 められなかった。In vivoで明らかな免疫学的影響がみられなかったことから、ex vivoでみられた 所見の生物学的意義については不明であった。

以上より、マウスにアバタセプトを投与量7 mg/kgで5日間連続静脈内投与すると、いくつか

ex vivoでの免疫学的パラメータの軽微な変化及び総白血球数の減少がみられたが、これらの変

化と投薬との関連性は不明であった。いずれの群にも死亡例はみられなかったが、投与終了後 3 週目に惹起投与されたマウスで一過性かつ急性の毒性徴候が観察された。これらの変化には、投 与後約2週目から産生されたアバタセプト特異抗体が関与していると考えられた。

8.2.3 結核菌慢性感染モデルマウスにおける感染再燃検討試験(GLP不適合)

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)慢性感染モデルマウスにおけるアバタセプト投与の影響に ついて検討した。C57BL/6 マウスに結核菌を慢性感染させるために、約 15 コロニー形成単位

(CFU)の結核菌をエアロゾルで吸入させた(表2.6.7.17-1 毒性試験概要表、4.2.3.7.2-3)。肺で 慢性肉芽腫性感染症が発症した後(感染4ヵ月後)、無作為に1群当たり44~46匹の雌マウスを 3群に割り付け、最長16週にわたりアバタセプトを投与量0.5 mg/animal(投与量約20 mg/kgに 相当)で週1回皮下投与、抗マウスTNF-α 抗体(クローンMP6-XT22、陽性対照)を投与量0.5

mg/animal(マウスで慢性結核を再燃させることが知られている投与量)で週2回腹腔内投与又は

PBS(溶媒対照)を投与液量0.2 mL/animalで週1回皮下投与した。評価項目は生死・臨床徴候の

観察、体重測定、菌数、肺・脾臓の病理組織学的検査、肺・リンパ節における細胞浸潤のフロー サイトメトリー解析及び肺・リンパ節におけるT細胞によるインターフェロン(IFN)-γ産生と した。各薬物投与前並びに投与後1, 2, 3, 4, 6及び8週目にそれぞれ4例の生存マウス、16週目に 各薬物投与群でそれぞれ6例の生存マウスを剖検した。統計学的に十分な検出力を確保するため に1群当たりの動物数を15例とし、16週の投与期間中の生存率を算出した。

溶媒対照群と同様に、アバタセプト投与群のすべてのマウスが試験期間終了時(16週目)まで 生存し、結核菌の慢性感染を持続的に制御することが確認された。一方、抗TNF-α抗体投与群で は結核菌感染により9週目以前にすべてのマウスが死亡した。溶媒対照群と比較し、アバタセプ ト投与群のマウスでは 16週目まで有意な体重減少はみられなかったのに対し、抗TNF-α抗体投 与群のマウスでは投与後7~8週目までに有意な体重減少(15~25%減少、P < 0.0001)が認めら れた。16週目まで生存したマウスでは、アバタセプト投与群の肺・リンパ節・脾臓のCFU数に は溶媒対照群と比較して有意差は認められなかった。一方、投与開始後4週目における抗TNF-α 抗体投与群のマウスのCFU数は、溶媒対照群と比較して肺で16倍(P < 0.05)、リンパ節で36倍

(統計学的に有意差なし)及び脾臓で10倍(P < 0.05)高値であった。病理組織学的検査では、

アバタセプト投与群と溶媒対照群の肺及び脾臓には差異はみられなかった。抗TNF-α抗体投与群 のマウスでは、投与後4週目に対照群と比較し肺及び脾臓で単核細胞浸潤の増加、肺で肉芽腫の 不明瞭化及び脾臓で肉芽腫数の増加がみられ、結核菌感染の再燃が確認された。アバタセプト投

与群のマウスの肺及びリンパ節で対照群と比較しIFN-γ産生の明らかな増加がみられなかったこ とから、アバタセプト投与群のマウスでは結核菌感染の再燃が抑制されていることが示された。

一方、抗 TNF-α 抗体投与群のマウスでは試験後半に菌数の増加に応じて、肺及びリンパ節での

IFN-γ産生が増加した(それぞれ約200%及び325%)。

アバタセプトを8週間以上投与しても、マウスの肺及びリンパ節におけるCD4陽性細胞、CD4 陽性・CD69陽性(活性化)細胞、CD8陽性細胞及びCD8陽性・CD69陽性(活性化)細胞比率 は、溶媒対照群と比較し有意差はみられなかった。抗TNF-α抗体投与群のマウスでは、4週間以 上の投与により溶媒対照群と比較して肺におけるCD4陽性細胞(115%、P = 0.019)、CD8陽性細 胞(101%、P = 0.030)及びCD8陽性・CD69陽性(活性化)細胞(194%、P = 0.032)比率が有意 に上昇し、統計学的に有意差は認められないもののCD4陽性・CD69陽性(活性化)細胞も同様 に増加(86%)した。なお、CD11b陽性・GR1陰性・CD11c陰性(マクロファージ)、CD11b陽 性・GR1陽性・CD11c陰性(好中球)及びB220 陽性(B細胞)の発現率(%)には、アバタセ プト投与群、抗TNF-α抗体投与群及び溶媒投与群間で明らかな差異はみられなかった。

以上より、慢性感染モデルマウスにアバタセプトを投与しても、結核菌の慢性感染に対する宿 主の防御能は損なわれないことが示された。

8.2.4 サルにおける7日間静脈内投与試験(GLP不適合)

サルにおけるT細胞活性化調節に及ぼすアバタセプト投与の影響について検討するために、10 mMリン酸ナトリウム及び130 mM塩化ナトリウム緩衝液に溶解した本薬を、1群当たり雌雄各1 匹のサルに投与量5.7及び17.2 mg/kg(分析結果に基づき修正した投与量)で7日間連続静脈内 投与した(表2.6.7.17-1 毒性試験概要表、4.2.3.7.2-4)。対照群の動物には溶媒(PBS)を投与液

量2.4 mL/kgで投与した。血清中アバタセプト濃度及びアバタセプト特異抗体を、初回投与前、7

日の投与期間中に1回及び100日目までの休薬期間中に数回測定した。評価項目は、臨床徴候観 察、体重・摂餌量測定、臨床病理学的検査及び臨床免疫学的検査(リンパ球幼若化反応及びリン パ球フェノタイプ解析を含む)とした。臨床病理学的検査及び臨床免疫学的検査のために、8 及 び23日目に採血した。

いずれの投与量でも毒性徴候はみられず、投薬に関連した体重・摂餌量及び臨床病理学的パラ メータの変化は認められなかった。臨床免疫学的検査では、末梢血リンパ球サブポピュレーショ ン(T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞及びB細胞)比率及び投薬群の動物から採取し たリンパ球のex vivoでの幼若化反応には明らかな影響は認められなかった。アバタセプト投与群 の動物では、58日目からアバタセプト特異抗体が産生されたが、免疫原性蛋白で一般的にみられ るよりも抗体応答の程度は弱く、応答のピークは遅延した。

以上より、アバタセプトをサルに7日間連続静脈内投与すると、投与量17.2 mg/kgまで忍容性 が認められた。薬物特異抗体応答の遅延はアバタセプトによる一次液性免疫応答の抑制と一致し、

サルで長期の反復投与毒性試験を実施する場合、本薬の免疫原性が重大な問題となる可能性は低 いことが示唆された。

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