第2章 三著書にみる間所春の実践
第1節 『構成教育による新図画』に掲載された題材と造形要素
ここでは、武井と間所の共著である『構成教育による新図画』の間 所の著作部分に掲載されている作品を各学年、造形要素につき1点あ げて、内容を分析した。
1年生の作品
図25どの鬼が一番こわいか
障纏董幾
(月チζ男一) =7ケカノ蟹ルダ 周鳥十四第
図26ダルマノカケツコ
(躇九舅一) ピ ナ ハ 凹六廿蒼蘇
図27ハナビ
1年 掲載作品数 6点 時期 造形要素 取り扱い項目・内容 使用材料例 作品名 記載頁
4月 色彩 低学年における色彩指導 クレパス どの鬼が一番こわいか 226
6月 色彩 低学年における色彩指導 色紙・鉛筆 ダルマノカケツコ 231
9月 雛成(コムボジション) 形の構成 クレパス ハナビ 363
明暗0点、色彩5点、材料O点、構成(コンポジション)1点 色彩… 低学年における色彩練習
構成(コンポジション)・6・形の構成
一年であつかっている造形要素は、明暗練習はなく、色彩練習がほ とんどである。
図25「どの鬼が一番こわいか」は、色彩感覚の範囲の狭い幼年児童 に対して、色に関心を抱かせることで、視覚に訴えながら色の本質を 掴ませることを狙いとして設定された題材での作品である。どの色が よりこわいのかということを考えさせることで、比べてみるというこ とをさせている。比較対照して視ることで、眼の感覚を正しく導くこ とができるとしている。しかし、あくまでもこどもたち自身に気づか せる方法で学習を進めている。
図26rダルマノカケツコ」は、平面での総合的な構成練習を目的と しているが、複合的に色彩の感覚練習を兼ねている。「ダルマノカケツ コ」の前段階で、「積み木あそび」と題して、方眼を利用して色彩練習 をおこなっている。色彩感覚の範囲の狭い低学年の児童に対しては、
色に興味と親しみを持たせることを目標にしている。
図27「ハナビ」は、こども自身が考えた構図の問題として示してある。
船を描いた後の空問に、何か足りないものがあるという気付きを低学年の 児童からでも導き出せるという例である。
くβ囚葵二) 聾ど聖の狸 魑六百第
図28狸をどり
研五女二) 船 風 辰 翻七千玉藪都
図29紙風船
(月A貢二) 灯 駆 い 臼
図30白い提灯
図31白い提灯
2年生の作品
2年掲載作品数13点 時期 造形要素 取り扱い項目・内容 使用材料捌 作品名 記賎亙
4月 色彩 低学年における色彩指導 色紙 積木の模様 236
4月 構成(コムポジション) 構成の学習と児重面 クレパス 狸をどり 340
4月 構成(コムポジション) 形の構成 色紙 二枚の色紙のくみ合わせ 364
5月 構成(コムポジション) 単化練習 クレパス 紙風船 429
7月 構成(コムポジション) 線の構成 クレパス 防空演習 353
9月 明暗 明聰による写生の径礎的 1韓 クレパス 白い提灯 179
9月 構成(コムポジション) 配色 クレパス 白い提灯 432
10月 構成(コムポジシヨン) 構成の学習と児童画 クレパス 野球 344
2月 色彩 低学年における色彩権導 クレパス 積木の模様 234
明暗1点、色彩4点、材料0点、構成(コンポジション)8点 明暗… 明暗による写生の基礎訓練
色彩… 低学年による色彩指導
構成(コンポジション)… 構成の学習と児童画、形の構成、単化 練習、線の構成、
4月の色彩練習に続き、同じく4月にコンポジション練習に入って いる。クレパスを使って、想像画を描いたあと、色彩練習と兼ね形の 構成をおこない、その後、単化練習をおこなっている。
図28哩をどり」は動物の漫画を題材にした作品である。これは、
構成(コンポジション)練習で図の大小や位置の関係から、画面の動 勢(リズム)やバランスを感じさせることを目的にしている。幼年児 童にとっては、構図の問題は難しい原理を考えさせるのではなく、感 覚的に画面から受けるシュパヌンクを感じ取らせ表現に結びつけられ るとよいとしている。
形の構成の後、単化練習では、児童に形体に関する真剣な見方(意 識してみる態度)を身につけさせることを目的としている。図29は「紙 風船』と題名がつけられた練習作品である。紙風船の色にはあまり注 意を向けさせないで、紙風船の形に目を向けさせるように指導してい る。そのために、紙風船の向いている方向や背景の処理に注意させ、
紙風船の形に注目させている。
9月に「白い提灯」という題材で、二つの作品を異なる造形要素の 記述で紹介している。図30は、明暗による基本的な表現の練習である。
これは、図と地を明暗の表現により対照的に描くことで、画面をより 際立たせて、提灯はより強調されて表現されている。また、図31は図 29「紙風船」と同じ単化練習の記述部分で紹介されており、材料感覚
図32積木の模様
(視覚的触覚)と線による形体の表現により、明暗が強調されること で単化表現に結びつくとしている。しかし、このような記述と作品の 紹介の仕方は、読者側に混乱を招く可能性があると考える。
10月のコンポジション練習の中で、形体と関連づけて学習を組み 立てている。
2月に積木あそびとして、方眼を使った色彩練習をおこなっているが、
明暗を意識した作品づくりである。この図32r積木の模様」は4月に も同じ題材があり、4月では色紙を四角に切って画用紙に貼って、方眼 形の構成練習にしている。同じ題材を使用する画材を変えることによ
りくりかえし練習することで、積み重ね学習としての効果を試みてい
る。
方眼を使って造形要素の練習をおこなうのは構成教育の特徴ともい える。このように方眼を使うということは、明暗であるとか色彩のよ うな造形要素練習の場合、造形要素のみに感覚を集中させることによ り、理解を容易にしやすくする。同時にその他の技巧的なことに労を とられないので作業時間の短縮となり、短時間の練習的扱いに適して
いる。
3年生の作品
3年掲載作品数 13点
時期 造形要素 取リ扱い項目・内容 使用材料例 作品名 記載頁
6月 材料 材料の明暗のコムポジション クレパス 松の木 286
9月 構成(コムポジション) 単化練習 鉛筆 折り紙の単化練習 421
9月 明暗 明暗による写生の蕗礎的訓線 鉛筆 白い球 178
10月 材料 様式化と材料感の問題 クレパス 材料明暗による表現 290
2月 明暗 明暗による事物の特性表現 鉛筆 お友達 214
3月 材料 様式化と材料感の問題 布切れ すきな景色 295
3月 据成(コムポジション) 配色・単化練習 鉛筆 干魚 437
明暗5点、色彩O点、材料4点、構成(コンポジション)5点 明暗… 明暗による写生の基礎的訓練、明暗による事物の特性表 現
材料… 材料の明暗のコンポジション、様式化と材料感の問題 構成(コンポジション)… 単化練習、配色・単化練習
3年では、色彩練習はなく、明暗の練習がほとんどである。また、
コンポジション練習が、9月と3月に入っており、その内容は単化練
(月糞男憲) 質齢忙軍励級 折
図33折り紙の単化練習
月六男三)木 の 総 岡穴十{=矯
図34松の木
習である。9月で取り扱われている図33「折り紙の単化練習」では、
折り紙に折り目がついていることや形自体が単純であることから、抽 象概念を形成していく上での単化練習には適していると間所は考えた。
この図「折り紙の単化練習」は、折り紙を使うことで直線から作るこ とのできる、おそらく初歩的な単化練習である。この練習と同じもの が、『構成教育大系』と『構成教育による新図画』(武井著作部分)に ある。折り紙による単化練習は、その当時の構成教育をおこなうもの たちにとって共通の題材であったと考えることができる。
3月のものは、複雑な形からの単化練習といえる。ここであつかっ ている単化練習は、形体の学習と言える。
3年で、材料練習が始まっている。材料練習は、年度当初の春、そ して秋、年度終わりの3回あつかわれている。6月での内容は、写生 対象としての材料の感覚である。ここではモホリ=ナギのいうような、
触覚感覚としての材料体験ではなく、どちらかといえば、イッテンの 造形要素としての材料のあつかいである。それは、造形対象の本質を つかませるため材料のあつかいである。しかし、微妙に間所の独自の 観点が見られるのは、実物を写実的に描かせるのではなく、できるだ け造形素材として画面構成上の道具として捉えさせたいという意識が 見られることである。
間所にとって、材料という造形要素とは、そのものの本質にかかわ る問題だけでなく、造形素材としての材料という二つの意識が同時に あったようである。図34「松の木」と題したこの絵を解説する際に、
rrいろいろな描きぶり」という材料的意識をもって描いたのではなく どこ迄も「松の木」という具体的な物への記憶を表しています」(註54)
「自然物の示す所のリズム感というもの」(註55)という記述をして いるところからそれが窺える。