第6章 タイ国における割賦販売金融の歴史―現在の割賦販売金融
6. 最近のトピックス (追加)
1から5までは、2010年5月に起草したものであるので、それ以降の状況を本節に追加し ておく。
(1)自動車の生産動向
新車の販売は、2011 年に若干減少したが、2012 年には、前年比 80.9%増加の 1,436 千台を記録 した。大きく伸びた背景には、大洪水後の実需の増加の他、政府の “first-time car buyer scheme” がある。このスキームは、初めて車を購入した者には、最大で 100,000 バーツの税金の 還付を受けることができるというものである。対象車種は、1,200-1,500cc の乗用車、ダブルキ ャブ・トラック、通常のピックアップ・トラツクの3種類である。トラックの排気量は、
2,500-3,000cc である。
[表 7] 新車販売と登録台数の推移
2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 新車販売台数 (台) 615,270 548,871 800,357 794,081 1,436,335
同 前年比 (%) △ 2.5 △ 10.8 45.8 △ 0.8 80.9 自動車登録台数 (台) 8,740,576 9,159,128 9,783,837 10,542,327 11,711,971 同 前年比 (%) 5.1 4.8 6.8 7.8 11.1 [出所:SBCS 社資料より作成]
(2)割賦販売融資の動向
新車の割賦販売金融は、経済成長、そして新車のマーケットとともに、拡大している。2012 年 は、とくに新車販売の大幅な伸びに伴い、商業銀行の割賦販売融資残高は、820,710 百万バーツ と、前年比 33.9%、3 年前に比し、倍増以上と大幅に増加した。2012 年の大幅な伸びは、政府の
“first-time car buyer scheme”によるところが大きく、新車販売拡大に呼応したものである。
[表 8] 商業銀行の割賦販売融資残高
2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 融資残高 (百万バーツ) 359,331 385,292 498,980 612,714 820,710
同 前年比 (%) 22.9 7.2 29.5 22.8 33.9 [出所:SBCS 社資料より作成]
(3)割賦取扱条件
[表9 ] は、2013 年 3 月時点での主要割賦金融会社の新車取扱条件である。最低金利は、ト ップの T BANK は、2.65%であるが、ディーラーの販売促進のため、キャプティブ会社は、それよ り低い金利を適用している。割賦賦間は、もともと 48 ヶ月が標準的であったが、競合により、60 ヶ月から 84 ヶ月まで大幅に延長されてきている。頭金は、10%からとなっている。
[表 9] 主要割賦金融会社の新車取扱条件 (2013 年 3 月) 系統 ローンブランド 最低金利
(年率%)
最少頭金
(%)
最大割賦 期間(月)
T Bank 旧 FC 2.65 20 96
Ayudya C.A.L. 商銀 Krungsri New Car 2.65 10 84 TISCO BANK 旧 FC 3.15 15 72
Toyota L.T トヨタ 2.49 15 84
Siam C.Bank 商銀 SCB Auto Finance 3.00 20 60 Kiatnain Bank 旧 FC 2.75 20 72 Kasikorn Leasing 商銀 K-Auto Finance 3.00 20 72
[出所:SBCS 社資料より作成]
[表10 ] は、2013 年 3 月時点での主要割賦金融会社の中古車取扱条件である。新車販売が 急拡大し、競争が激化したため、新車の割賦金融の収益性は低下した。そのため、各社は、より 高い金利を適用できる「中古車」についても積極的に取り組んでいる。中古車については、対象 者の購買力が新車に比し低いので、取扱の柔軟性があれば、購入チャンスが拡大する。
[表10] 主要割賦金融会社の中古車取扱条件 (2013 年 3 月) 系統 ローンブランド 最低金利
(年率%)
最大貸出 金額(%)
最大割賦 期間(月)
T Bank 旧 FC 3.75 80 84
Ayudya C.A.L. 商銀 Krungsri Used Car Krungsri Cash2 Car
3.75 3.75
80 90
84 72
TISCO BANK 旧 FC 3.75 80 60 Toyota L.T トヨタ Toyota Sure * * 60 Siam C.Bank 商銀 SCB Auto Finance 3.75 80 60 Kiatnain Bank 旧 FC 3.75 80 72 Kasikorn Leasing 商銀 K-Auto Finance * * 72
* 車の状態等による
[出所:SBCS 社資料より作成]
[表11] は、中古車の登録年による「適用金利」を示している。年代が古くなるほど高くなる が、商用車は乗用車に比し高くなっている。
[表11] 中古車の登録年による適用金利 (T Bank)
登録年 乗用車(年利、%) 商用車(年利、%)
2008 - 3.75 4.25
2006 – 2007 3.75 4.50
2004 - 2005 4.00 4.65 [出所:SBCS 社資料より作成]
(4)新たなローン
新車の割賦金融の収益性低下により、中古車に各社が重点を入れてきたことを前述したが、こ れに加え、「債務なしの自動車 (debt-free cars)」に対するローンの取扱が伸びてきている。
リースバック形式のものは、中古車の割賦販売金融と似ている。通常のローンの借入レートが 高いため、債務のない自動車を所有している人は、この形式により、借り入れるようになった。
ただし、中古車割賦金融のものより、適用レートは高くなっている。
また、「免許証」に対するローンもあり、これは、所有権を自動車所有者から移転させないため、
適用金利は、さらに高くなっており、リースバック方式に比し、ローン残高は大きくない。
[表12] 適用金利比較
新車割賦金融 中古車割賦金融 リースバック 免許証ローン T BANK 2.65% 3.75% 3.18 – 4.75% --- Ayudya C.A.L 2.65% 3.75% 4.25%
---TISCO BANK 3.15% 3.75% --- 6.60%
[出所:SBCS 社資料より作成]
(5)主要割賦金融会社の動向
① マーケット・シェア
上位5社の中で順位の変動はあるものの、メンバーは同一である。
[表4]には、2009年までのシェアを示しているが、上位5社のウェイトはさらに高まり、2011年
末には、74.8%となった。
トップのThanachart Group は、傘下のT BANK が永年ディーラーとの関係を強化している。
第2位のBAY Groupは、傘下のAYCALは、土日もローン承認するだけでなく、数日を要してい
た審査時間を30分程度までに圧縮した。
[表13] 主要割賦販売金融のシェア (2011 年 12 月)
グループ名 マーケットシェア (%) Thanachart Group 27.3 %
BAY Group 13.4 % TISCO Group 12.1%
SCB 11.3%
TLT 10.7%
小計 74.8%
BAY : Bank of Ayudhaya Public Co., Ltd.
TISCO : TISCO Bank Public Co., Ltd.
SCB : The Siam Commercial Bank Public Co., Ltd.
TLT : Toyota Leasing (Thailand) Co., Ltd.
[出所:SBCS 社資料より作成]
② 業績概要
2011 年の新車販売は前年比微減とはなったが、その台数は、800 千台と高水準であり、各社と も、取扱の増加に伴い、大きく資産も増やしている。
[表14] 主要割賦販売金融会社の業績 (単位:百万バーツ)
会社名 年月 資産 負債 自己資本 売上高 経費 純利益 TBANK 2010.12
2011.12
482,063 878,053
415,326 807,169
66,736 70,884
25,442 36,863
19,723 30,195
5,718 6,667 AYCAL 2010.12
2011.12
120,537 151,186
107,862 136,056
12,674 15,130
13,183 15,233
10,080 12,059
3,103 3,174 TISCO 2010.12 162,346 150,134 12,211 10,841 8,848 1,993
2011.12 211,517 197,713 13,804 14,394 11,764 2,629 SCB 2010.12
2011.12
1,476,734 1,877,836
1,321,629 1,690,653
155,105 187,183
86,371 144,750
62,043 108,442
24,328 36,308 TLT 2011.03
2012.03
118,793 147,519
105,775 134,597
13,017 12,922
6,972 7,995
5,595 6,782
1,376 1,212 TBANK : Thanachart Bank Public Co., Ltd.
AYCAL : Ayudhaya Capital Auto Lease Public CO., Ltd.
TISCO : TISCO Bank Public Co., Ltd.
SCB : The Siam Commercial Bank Public Co., Ltd.
TLT : Toyota Leasing (Thailand) Co., Ltd.
[出所:SBCS 社資料より作成]=
おわりに
第4章、第5章、そして、本章と 1960 年代からの自動車割賦販売金融の歴史を取り纏めてきた。
最後に簡単な纏めを付して、おわりに致したい。
2012 年には、大洪水後の実需の増加の他、政府の “first-time car buyer scheme”などによ り、新車販売台数が 1,436 千台と、急激かつ大幅な新車販売台数の増加があり、前年比 80.9%も 増加するなど、自動車割賦販売金融業界も大変な活況を呈している。この結果商業銀行の割賦販 売金融残高は、前年比33.9%も増加し、驚異的な大きな伸びを実現し、一挙に商業銀行のド ル箱部門へと成長している。数字での把握は困難であるが、当然、ディーラーによる自社割賦も、
(車種や、メーカーによって異なるが)同等に近いほどの取り扱いがあった筈で、相当な利益を ディーラー各社に齎した筈である、と考えられる。
反面、競争の激化により、収益性は低下傾向を示し、そのため、金融各社は中古車にも積極的 に取り組み始めた。中古車については、表面的に収益性は増すものの、担保とした中古車の価値 などリスクも高くなっている。中古車割賦販売金融の健全な拡大のためには、中古車査定の知識 と経験がより重要となっている。また、担保処分の観点から、中古車ディーラーとの良好な関係 を構築することも、リスクを軽減することにつながっている。
Debt-free Cars のローンは、今後も大きな伸びが期待される分野である。たまたま担保が自動 車であるだけで、商業銀行の個人ローンなどとも競合する。担保査定の巧拙も取扱増加に影響す るものとみられる。このように、業界も変化を続けている。
5節(2)で記したように、タイの社会が急速に消費社会化しており、家計債務の増加状況に 懸念を示す新聞記事も増加している。このように最近の状況を見ると、割賦販売金融業界の果た す役割が、近年急上昇していることが確認される。筆者が、この分野をテーマに研究を開始した 10年ほど前には、この分野が、これほどタイの社会に根付くとは、凡そ想像が付かなかった、
という感想を以って本章のおわりに致したい。