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タイ日野自動車販売の「3S運動」について

ドキュメント内 タイの自動車ディーラーの総合的研究 (ページ 105-113)

第3章 タイ日野自動車販売の歴史(後編)

2. タイ日野自動車販売の「3S運動」について

(1)タイ日野自動車販売「3S運動」とは

タイ日野自販では、その1962年の設立以来、自動車販売における「品質向上」運動として

「3S」運動を開始して、その徹底に努力してきた。それが、当社のタイ国での成功の鍵であっ たと『30周年史』『50周年史』で繰り返し、記述している。しかし、一般的には、第1章の「タ イ国自動車産業小史」で議論したように、こうしたタイの自動車産業における品質向上を目指し た取組みは、1980年代中葉に、政府による国産化部品の使用が強制され、国産化比率達成の ため、日系部品企業のタイ進出が大幅に加速化されたこの時期、日系部品企業に於いて、「増産体 制と国産化体制の確立のために、これまで以上に品質管理と生産管理が必要とされる時期にいた った」2とされている。そして、小林教授は、日系部品企業での多くの事例を紹介している3。し かし、同時に、こうした日系進出企業、即ち所謂「一次サプライヤー」の下請企業であるタイ地 場の「二次サプライヤー」に於いては、当時未だ品質向上運動が定着していない実態をも解明し

1 この当時の、タイ日野製のトラックの稼働台数については、第7章の2.(4)の脚注に於いて、ある程度現実 的な仮定を置いて、筆者は試算しておいた。それに依れば、90年初頭に約85千台動いていたとすれば、19 97年当時は14万4千台で、此の10年間で約70%も増加していて、サービス顧客は確実に増加している。

詳しくは第7章をご覧頂きたい。

2 小林英夫著『日本企業のアジア展開』187 頁、日本経済評論社、2000 年

3 小林英夫前掲書、173 頁~180 頁

ている。4

トヨタ、いすゞ、日野5などの組立メーカーの工場などでは、日本式の工場管理は日本本社の指 導を受け、その進出当時からなんからの形で取り組まれて当然であると考えられるが、系列の部 品企業や「販売部内」という大変にローカル色の強い分野での取り組みは、生産部門よりやや遅 れたと考えるのが普通である。したがって、当社がこうした取り組みをかなり早い時期から行な っていたことは、当時としてかなり異色であったのであろう。当社の『30周年史』に、当時社 長であった、大橋氏は、自ら先頭に立って、1960年代から実践してきた「3S」の指導状況 を『30周年史』の中で詳しく述べている。これまで述べてきたように、タイの社史の構成とし ては、やや異例なので、その要約を紹介する。しかし、残念乍ら、取り組みの時期や、その内容 など、やや具体性を欠く点があるので、後段の(4)大橋元社長との「3S」を巡るインタビュー に於いて、本人から直接伺い、その点を補うことにした。

(2)『30周年史』における「3S」運動の哲学

タイ日野自販『30周年史』には3S についてその概略を以下の通り述べている。少し長くな るが、概略を紹介する。

3S 哲学とは、タイで事業が開始された時に、日野自動車(東京)により導入されたものであ る。この哲学はタイにおける日野の事業に長年継続されており、優れた実績、成功をもたらして いる。この哲学は日野グループの従業員の心に沁み込んでおり、日野の顧客は当社に信頼を置い ている。

最初のSはSales、2番目のSはService、3番目のSはSpare Partsの略である。この3点

は当社事業にとって重要かつ不可欠ものである。

① Sales

タイ日野自販は、タイにおける唯一の日野のトラック、バスの販売会社であることに誇りを もっている。それは、日野の車両すべての製品の質、優秀な機械の性能に信頼が置けるからで ある。当社はタイ全土に販売網を構築し、顧客に対して満足のいく、素早く、親しみやすいサ ービスを提供している。それゆえ、日野の顧客のいるところには、日野の人々がいつもそばに いることとしている。

これを確実なものとするため、当社は販売を3部に分け、それぞれが責任を持つ体制として いる。各部はディーラーを担当し、それぞれの地域の責任を負っている。現在では、全土に3 7のディーラー(1992年初頭)が存在する。

「我々の顧客は我々の雇用主である」との方針は、我々従業員を顧客のために誠実、正直に 親身に働かせている。この方針は日野のトラックに、3トントラック以上において、1979

-1980年にタイでのトップのマーケットシェアを獲得させ、さらに日野の10輪車は19 85年から7年連続タイ市場でナンバー1のトラックとさせた。

4小林英夫前掲書、180 頁~185 頁

5 タイ日野工業における QC 活動については「タイブリヂストン、タイ日野工業における QC 活動」『日タイ協通信』

№14、32 頁~38 頁、(社)日タイ経済協力協会、1987 年 12 月、において、当時の担当役員アツチャリン氏が、1976 年頃から当時(1987 年)迄の取り組みの歴史を語っている。

当社は常にディーラー、顧客との良好な関係を築くことに重点を置いてきている。アイディ アの交換のためセミナーや会合の組成、当社幹部の顧客への定例訪問、“Hino Night”パーティ ーなどにより、当社の顧客との間はよりよい関係が築かれている。このイベントはディーラー の位置する各地にて開催されている。

また、当社は従業員に対し、新しい知識や能力の開発を奨励している。これは、知識、スキ ルを向上させ、日野の顧客に大きな便宜を与えることにもなり、販売部門のモットーである「あ なたの利益を増加させたいなら、よい車両を使いなさい、日野を使いなさい」と同じことであ る。

② Service

販売後のサービスにおいては、顧客満足が最重要である。従業員は常にメンテナンスと修理 の質の向上についての新しい方法に取り組んでいる。今日、よりよいサービスを提供する不断 の努力により全土に41のサービス、メンテナンスセンターが配置されていて、たとえ顧客が 地方の離れた地域にいても、「日野と共に進んでいきます」と言えるようになっている。

日野の41サービスセンターは最善の道具、熟練整備士、日野の純正部品で装備されている。

我々は年間を通じて国内外における特別な訓練も含めスタッフの訓練プログラムを開始してい る。毎年の「日野サービススキル・コンテスト」はサービスの質の改善を、より効率的に利便 的にできる従業員の数を増やすために、励みになっている。

とくに今年は30周年に当り、タイ日野自販はより大きな顧客満足を目指し、新しい方針を 導入する。

ⅰ)日野サービスステーションの独立した同一性の創造

すべてのサービスセンターの外装を最新式に統一し、整備士のユニフォームを新しくデザ インし、サービス提供という事業意識を強調する。

ⅱ)顧客満足を創造する

最大限に効率的なサービスを提供するため、日野のサービスセンターは「モバイル・サー ビス・ユニット」を設置する。これは、日野のサービスセンターから離れたところに居住 する顧客に対しても、現地のサービスの利便性の提供を可能にする。このサービスは3ヶ 月毎に分析され、効率を高め、より大きな顧客満足が得られるよう改善していく。

ⅲ)管理システム及び技術面の管理の改善

新しい技術知識の伝達や提案、種々なセンターに対し新しい知識や技術を広げるための「モ バイル・トレーニング・ユニット」の設置を含むものである。

今年、30周年の年にあたり、我々日野グループのすべての人は、モットーの「日野はどこ も、だれでも、いつでもサービスを提供する」にあるように、顧客に出来る限りの満足を与え たいと願っている。

③ Spare Parts

過去30年、日野はすべてのトラックがより効率的、永続的に使用出来るように努力を継続 してきた。日野のスペアパーツ部門はそれぞれのトラック及び部品は顧客のビジネスにとって 重要であることを充分認識している。このため日野のスペアパーツ部門は全ての車両の純正部 品を供給できるように準備している。顧客から依頼された部品は何時でも直に利用できるよう

に、現在、金額にして2億バーツ以上、20,000種以上の在庫がある。

日野の純正部品の入手のため、郵便注文、宅配サービス、もしくは電話やファクス、また本 社や37の日野のディーラー、サービスセンターからも注文が可能である。より便利に、迅速 に対応するため、スペアパーツ部門は在庫部品の管理を完全にコンピュータ化されたシステム を利用している。タイ国内の全てのセンターを結ぶネットワーク化は進行中である。自分のセ ンターで必要部品の在庫がなくても、このシステムで他のセンターへの注文が可能である。そ れでもない時には、日本の本社に連絡して、航空便で即座に送るように依頼できる。このサー ビスは全ての日野の顧客に適用されるものである。

スペアパーツ部門は、「日野の純正部品を使えば、より長く車両を使うことができる」という モットーにあるように、各顧客の最良のサービスを提供することに心掛けている。

(3)『50周年史』における「3S」運動の哲学

「3S」の哲学は、その後も引き継がれ『50周年史』にも頁が割かれ説明されているが、具体 的な記述は大変少ない。そして、冒頭次のように述べられている。

「3S」の哲学は、タイ日野の創業より現在に至るまで、成功の鍵となった。「3S」の哲学は、

顧客が、日野のトラックが期待通りの働きをし、買替えの時も日野のトラックを選んでくれるよ うな、after‐sales servicesの気持を教えてくれるものである。

そして、「3S」の内容を分かり易すく、次の様に説明している。

Sales with professional manner Service for Excellence

Spare Parts of Supreme

ただ、『50周年史』においては、この20年間における具体的な取り組みが明示されていない のが残念である。

(4)大橋元社長への「3S」運動についてのインタビュー

『30周年史』『50周年史』をベースに、その詳細を大橋元社長にインタビューした。

① 「3S」の具体的な活動について

Q1.『30周年史』に「3S」の哲学について、種々述べられていましたが、もう少し具体的 な活動状況をお話し下さい。

A.タイ日野自販では、「一台目はセールスマンが売り、二台目はメカニックが売る」とい

う標語が示すように、セールス→サービス→スペアパーツの繋がりを大切にしている。そし て、この3S を意識した活動を続ければ、ユーザーとディーラーとタイ日野自販の繋がりが 緊密になり、CS(customer satisfaction、顧客満足度)を高めることが出来、最後は当社の 業績に反映されてくる、と考えている。具体的には、重点的に取り組んだ、CS大会、タイ日 野純正部品など、について語っておきたい。

Q2.3Sは何時頃から始めたか。また、特別な宣言はしたか。

A.1965年に、本社のスタッフとして、ビクトリー社の再建のためにタイに送り込まれて、

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