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最近の主な研究

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(平成 23 年度に検討した論文) (吉田 聡委員)

Bergdahl IA, Jonsson H, Eriksson K, Damber L, Järvholm B. Lung cancer and exposure to quartz and diesel exhaust in Swedish iron ore miners with concurrent exposure to radon

(スウェーデンの鉄鉱夫におけるラドン曝露下での石英とディーゼル排気への曝露と肺がん)

Occup Environ Med., 2010, 67 (8): 513-518. [PMID:20519746]

地下鉱夫に関する研究はラドン曝露に係るリスクの上昇を示しているが、共存する他の物質 への曝露の影響も受けている可能性がある。1923~1998年に雇用された8,321人の鉄鉱夫につ いてのコホート研究が実施され、1958~2000年にかけて肺がんが追跡された。ラドン、結晶性 シリカ、ディーゼル排気への曝露歴が評価された。ラドンへの曝露が大きく、ラドン、石英、

ディーゼル排気に同時に曝露しているようなその他の鉱山に関しても再解析した。

鉱夫の肺がんリスクには増加が見られた(227,000 人年 の112例に基づくと標準化罹患比;

SIR= 1.48(95%信頼区間:1.22, 1.78))。リスクの増加はラドンもしくはディーゼル排気への 曝露では説明できないが、結晶性シリカへの曝露と関連していた:0, 0-2, 2-5 及び >5 mg 年/m3 のそれぞれの条件に対して標準化罹患比;SIR=0.96 (0.53, 1.62), 1.45 (1.10, 1.87), 1.99 (1.31, 2.90) 及び 1.77 (0.92, 3.10) 。その他の鉱山のデータの再解析の結果、石英はラドンと肺がんの関係 を解析する際の交絡因子となり得る事がわかった。最も高いラドン曝露グループにおいて、相 対リスク(RR)の点推定は、石英の同時曝露に合わせた場合5.65から3.90に下がった。

発がん物質として知られている結晶性シリカは、おそらく鉄鉱夫の肺がんリスクに影響を与 えている。今回の結果は、地下の鉄鉱夫のラドンと肺がんの線量-効果関係の解釈に主として 影響を及ぼす。ラドンと石英に対する曝露はしばしば相関しているため、石英への曝露は重要 な交絡因子である。

Mousavi SM, Pourfeizi A, Dastgiri S. <Review> Childhood cancer in iran(イランにおける 小児がん(総説))J Pediatr Hematol Oncol., 2010, 32 (5): 376-382. [PMID:20588194]

この研究ではイランの小児がんについての発生、生存およびリスク係数を明らかにする事で ある。1974年11月から2008年10月にかけて発表された論文を異なるサーチエンジンを用い て収集し、レビューした。イランにおける小児がんの発生率は、全ての地域を含めて考えた場 合、100万人あたり、男子で48~112、女子で51~144であった。0~14歳の小児の最も一般的な がんは白血病(発生率:100万人あたり8~62)、リンパ腫(3~23)、中枢神経腫瘍(3~22)で あった。小児がんの死亡率は、2004年において、100万人あたり、男子で42、女子で49であ った。小児白血病に対して正の関連性が見られたのは、ABO血液型、家族のがん履歴、妊娠中 の薬の使用、父親の職業、放射線被ばくの履歴、両親の喫煙習慣である。小児がんの発生率と 高い死亡率に対する地理的条件の違いの影響を明らかにする事が今後重要である。

Tripathi RM, Sahoo SK, Jha VN, Kumar R, Shukla AK, Puranik VD, Kushwaha HS.

Radiation Dose to Members of Public Residing around Uranium Mining Complex, Jaduguda, Jharkhand, India(インド、ジャールカンド州、ジャドゥゴダのウラン鉱業団地周 辺に居住する一般人の放射線被ばく)Radiat Prot Dosimetry, 2011, 147(4): 565-572, Nov.

[PMID:21186219]

インド、ジャールカンド州、ジャドゥゴダ地方におけるウラン鉱業は過去 50 年間続いて来 た。鉱山、鉱石処理施設、及び尾鉱からの放射能の放出は、鉱業団地周辺住民の自然放射線被 ばくを増加させる可能性がある。従って、ウラン鉱業団地周辺の放射能の状態を調査し、住民 に対する被ばく線量を評価する事が必須である。この研究により、鉱業団地周辺の村の住民に 対する全ての経路を考慮した平均被ばく線量は年間2.5 mSvであり、そのおよそ50 % がラド ン及び子孫核種の吸入によるものであった。大地放射線および宇宙線による外部被ばくは年間

1.1 mSvであり、全被ばく線量の40 % であった。また、飲食物の摂取による被ばくは総被ば

く線量の3 %にすぎなかった。

Bi L, Li WB, Tschiersch J, Li JL. <Review> Age and sex dependent inhalation doses to members of the public from indoor thoron progeny(屋内のトロン子孫核種による吸入被ばく に対する年齢と性別の影響(総説))J Radiol Prot., 2010, 30(4): 639-658. [PMID:21149944]

ヨーロッパ、北アメリカ、アジアで見られる屋内トロンレベルの増加は、トロン及びその壊 変生成物への曝露が、ある環境では無視できない事を示している。トロントとその子孫核種の 寄与は、ラドンとトロンによる全被ばくの重要な要素である。ここでは、線量測定アプローチ により、異なる年齢と性別の一般住民について、異なる生活形態におけるRn-220子孫核種によ る被ばく線量を評価した。典型的な屋内環境における線量換算係数は、幼児の 107 nSv (Bq h m−3)−1から成人の81.7 nSv (Bq h m−3)−1までの範囲であった。この研究の結果により、同じ環境 であれば小さい子供は成人に比べて 25 % 多い被ばくを受ける事、運動中は睡眠時に比べて

100 % 多い被ばくを受ける事が明確になった。この研究の結果は、ラドンとトロンの濃度が高

い地域に居住する一般公衆について、トロンによる被ばくリスクを評価するために重要である。

Chen J, Dessau JC, Frenette E, Moir D, Cornett RJ. Preliminary assessment of thoron exposure in Canada(カナダにおけるトロン被ばくの予備的評価)Radiat Prot Dosimetry, 2010, 141(4): 322-327. [PMID:20966201]

ラドンは喫煙に次ぐ肺がんの原因である事が知られている。Rn-222(ラドンガス)とRn-220

(トロンガス)はもっとも一般的なラドンの同位体である。この研究では、最近実施された、

3つのコミュニティにおけるラドン/トロンサーベイの結果をもとに、カナダにおけるトロン 被ばくを評価した。ほとんどの家屋でトロンが検出され、トロンの子孫核種は調査した全ての 家屋で見いだされた。トロン濃度の変動はラドンに比べてより大きかった。Rn-222 濃度と

Rn-220濃度の間に明らかな相関は見られなかった。260家屋の調査結果から、屋内ラドンによ

る被ばくの約7 %がトロンによるものであった。屋内計測および大地ガンマ線のサーベイ結果 は、Rn-222とRn-220 の間の相関を示しておらず、広く利用可能である屋内ラドンの情報から

トロンの濃度を予測する事はできない。カナダにおけるトロン被ばくとカナダ人に対するトロ ンのリスクを、多くの地理的地域においてより正確に評価するためには、トロン子孫核種の計 測をより多く実施する必要がある。

Mohner M, Gellissen J, Marsh JW, Gregoratto D. Occupational and diagnostic exposure to ionizing radiation and leukemia risk among German uranium miners(ドイツのウラン鉱夫 における電離放射線の職業被ばくおよび診断被ばくと白血病リスク)Health Phys., 2010, 99(3): 314-321. [PMID:20699692]

肺がんはウラン鉱夫におけるラドン被ばくの良く知られた影響である。しかし、鉱夫の放射 線被ばくによる白血病の誘発についてはほとんど分かっていない。さらに、鉱夫は通常、職業 的な健康診断を受診して胸部X線検査を受ける。そこで、本研究の目的は、診断目的のX線被 ばくを考慮しつつ、鉱夫の白血病リスクを再評価する事である。使用したデータは、既に解析 が行われた個人が特定されている症例・対照研究からのものであり、東ドイツにおける元ウラ ン鉱夫のもので、377の症例と980の対照を含む。加えて、大部分の被験者についてはX線診 断の記録が医療記録から抽出された。最後に、赤色骨髄に対する吸収線量が職病被ばくと診断 被ばくの両方を加味して計算された。条件付ロジスティック回帰モデル(conditional logistic

regression models)を利用する事により、二つの被ばく源からの複合曝露量が200 mGyを超える

線量範囲では、中程度であるが統計的には有意ではないリスクの上昇が見られた(オッズ比

=1.33, 90%信頼区間:0.82, 2.14)。最近20年間の被ばくを除外すると、最大の被ばく線量範囲

(>105 mGy)でのリスクが最大であった(オッズ比;OR=1.77, 90%信頼区間:1.06, 2.95)。診 断被ばくを除外しても同じ結果が得られた。最大の被ばく線量範囲(被ばくからリスク発現ま での時間を20年と仮定した(lagged by 20y)時の吸収線量)において、リスクは2倍以上とな った(オッズ比;OR=2.64, 90%信頼区間:1.60, 4.35)。

【コメント】

ラドンによって白血病のリスクが増加するという明確な知見はこれまで得られていない。こ の研究においても、両者の相関関係は非常に弱く、リスクの増加が見られるのは最大の被ばく 線量の範囲のみである。今後より多くの研究がなされる事が望まれる。

Thompson RE. Epidemiological Evidence for Possible Radiation Hormesis from Radon Exposure: A Case-Control Study Conducted in Worcester, MA(ラドン曝露による放射線ホ ルミシスの可能性についての疫学的証拠:マサチューセッツ州ウスターにおけるケース-コント ロール研究)Dose Response, 2011, 9 (1): 59-75. [PMID:21431078]

マサチューセッツ州ウスターにおいて実施された肺がんと屋内ラドン曝露の症例・対照研究 によるデータが紹介されている。肺がんリスクは条件付ロジスティック回帰モデル(conditional logistic regression models)を利用して評価し、それは、人口統計学、喫煙、及び職業被ばくとも

変動による影響を受ける。lowess補正(lowess smoothing)を用いた試験的な解析の結果、曝露 と肺がんの対数確立との間の非線形の関係が明らかになって来た。この非線形性をモデル化す るためにラドンの曝露は線形のスプライン曲線(linear spline terms)で記述した。データに対す る線形スプライン曲線モデルのベストフィットは、ラドン濃度70 Bq/ m3における肺がんの対数 確立の正から負へのシフトを予測した。観測された最小のラドン濃度である参照曝露量4.4 Bq/

m3と比較した場合、≦157 Bq/ m3において曝露の増加によって統計的に有意な肺がんリスクの 減少が見られた。調整オッズ比(adjusted odds ratio)0.42, 95%信頼区間:0.180, 1.00, p = 0.049。

こ の 結 果 は 、 ラ ド ン 曝 露 を 三 次 ス プ ラ イ ン 曲 線 に よ っ て 解 析 し た こ れ ま で の 研 究 結 果

(Thompson, RE et al. 2008, PMID: 18301096)と一致する。さらに、このモデルによって調整オ ッズ比(OR)が予測され、それは、ベースラインをこえる参照曝露に比べて、ラドン濃度が 545 Bq/ m3までは数学的に1.0より小さかった。

Alam L, Mohamed CA. Natural radionuclide of Po210 in the edible seafood affected by coal-fired power plant industry in Kapar coastal area of Malaysia(マレーシア カパール

(Kapar)の沿岸地域の石炭火力発電所による影響を受けた食用海産物中の自然放射性核種 Po-210)Environ Health, 2011, 10: 43.[PMID:21595985]

Po-210は海産生物を含む多くの環境物質に蓄積し、海産食品を通した自然放射線による被ば

くに寄与している。海洋環境中の濃度は石炭火力発電所の稼働によって影響を受け得るが、研 究例は少ない。そこでこの研究では、石炭火力発電所に非常に近いマレーシアのカパールの沿 岸地域で採取された海産生物中のPo-210濃度を明らかにし、海産食品消費者への寄与を評価す る事を目的とした。海産食品の可食筋肉部分と水試料中のPo-210は、化学分離後にアルファス ペクトロメトリーによって分析した。

水の溶存成分におけるPo-210の放射能は0.51 ± 0.21 ~ 0.71 ± 0.24 mBq/ lの範囲であり、粒子 状成分では50.34 ± 11.40 ~ 72.07 ± 21.20 Bq/kgであった。生物試料中のPo-210濃度は、魚(Arius maculatus)で4.4 ± 0.12 ~ 6.4 ± 0.95 Bq/ kg(乾重量)、エビ(Penaeus merguiensis)で45.7 ± 0.86

~ 54.4 ± 1.58 Bq/ kg(乾重量)、貝(Anadara granosa)で104.3 ± 3.44 ~ 293.8 ± 10.04 Bq/ kg(乾 重量)であった。

魚と軟体動物に対する移行係数は IAEA の推奨値よりも高かった。海産食品の消費に伴う

Po-210の摂取量とそれに伴う被ばく線量を評価したところ、それぞれ2083.85 mBq/人日 およ

び 249.30 µSv/年であった。これらの値は他の国で報告されているものより比較的高い。さらに、

人体中でのPo-210の挙動を評価した結果、相当量が内蔵に分配される事が明らかとなった。が んに関する生涯死亡率と罹患率は、それぞれ24.8×10-4と34×10-4であり、これはICRPの推奨 限度よりも大きかった。これらの結果は海産食品の安全な摂取量を評価し、かつ、環境の健全 性を監視するために有用である。しかし、見積もられた被ばく線量と発がんリスクが安全基準 を越えているため、リスクを低減するための現実的な方法を見つける事が急務である。

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