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最近の主な研究

ドキュメント内 Microsoft Word - 1.doc (ページ 81-84)

(平成23年度に検討した論文)

(岩崎民子委員)

Spycher BD, Feller M, Zwahlen M, Roosli M, von der Weid NX, Hengartner H, Egger M, Kuehni CE. Childhood cancer and nuclear power plants in Switzerland: a census-based cohort study. (スイスにおける小児がんと原子力発電:国勢調査に基づいたコホート研究)Int J Epideiol., 2011, 40(5): 1247-1260.[PMID:21750009]

原子力施設と小児がんに関するこれまでの各国における研究については異なる結果が得られ ている。スイスにおける原子力周辺住民の白血病あるいは小児がんについての関連性の有無に ついて、コホート研究を行った。1990年と2000年のスイスの国勢調査およびスイスの小児が ん登録から求めたがん症例を用いて、1985~2009年までのスイスで生まれた0~15歳の子供の リスクにある人-年を計算した。出生時の住居の地番をコードし、ポアソン回帰モデルを用いて、

原子力施設から5 km以内、5~10 km、10~15 km及び15 km以遠で生まれた子供のがんの罹 患率比(IRR)と95%信頼区間(CI)を求め、リスクを比較した。調査したがんの種類は、白 血病、リンパ腫、中枢神経系、網膜芽腫、腎、肝、骨、軟部組織、生殖器官等の腫瘍を含む。

追跡は21,117,524人年で、その間がんと診断された子供は2,925名で、953名(32.6%)が白血 病であった。0~4歳児が8人、0~15歳児が12人白血病と診断され、またがんと診断された子 供の18人と31人がそれぞれ5 km以内で生まれていた。15 km以遠で生まれた子供と比較し て、0~4歳および0~15歳における白血病のIRR(95%信頼区間)は、それぞれ1.20(0.60, 2.41) 及び1.05 (0.60, 1.86)であった。がんについては、IRRはそれぞれ0.97(0.61, 1.54)及び0.89 (0.63, 1.27)であった。距離と線量-反応関係の証拠は見られなかった(P>0.30)。結果は診断 と出生における住居、また種々な交絡因子(バックグラウンド放射線、電磁波、発がん物質、

肥料、社会経済因子)の可能性についても調整したが、結果には変わりが無かった。

結論として、これらの全国的コホート研究では、原子力施設周辺の住居と白血病リスク或い は小児がんとの関連性についての証拠は見られなかったといえる。

【コメント】

1980年代から今日まで、原子力発電施設周辺における小児がん発生率・死亡率についての研 究は多々なされてきた。最近注目を浴びているのが、ドイツにおけるKiKK研究(原子力発電 所周辺における小児がんの疫学的研究等)で、原子力施設から5 km圏内では5歳未満児の白 血病リスクが有意に高いということが示された。そこで、英国やフランス等でも、KiKK研究 に相当するような施設と距離との関係を取り扱った調査研究が行われたが、KiKK研究結果を

支持するような結果は得られなかった。本論文でも、KiKK研究と比較するべく、スイスにお ける原子力発電施設からの距離と小児白血病および小児がんについて調査を行なったのである が、特にサイトからの距離とリスクの間に関係は見られず、英国やフランスで得られた結果と 一致するものであった。

COMARE The European Radiobiological Archives: online acess to data from radiobiological experiments is avilable now Codes of practice on ELF EMFs COMARE 14 Report: Further consideration of the incidence of childhood leukaemia around nuclear power plants in Great Britain. (英国における原子力発電所周辺の小児がんの罹患率に関す る更なる検討) J Radiol Prot., 2011, 31(2) 269-271. [PMID:21628781]

1985年に設立されたCOMARE(環境放射線の医学的側面に関する委員会)は、今日までラ ドンやラドン崩壊物などの自然放射性核種或いは主要な原子力施設から放出される人工放射線 への被ばくに関し既に13報もの報告書を発表してきた。本第14報報告書は、ドイツでの原子 力発電所周辺の小児白血病発生に関する最近の発表(KiKK:原子力発電所周辺における小児 がんの疫学的研究、等)に関して、「KiKK検討サブグループ」が設置され、その内容の検討結

果がCOMAREに報告書として提出された。本報告書はそれらの情報を収録したものである。

本報告書では、英国はもとより、フランス、フィンランド等の国で、様々な方法で行われた 多くの研究から得られた結果について検討し、原子力発電所(NPP)周辺で小児白血病のリス クが上昇しているかどうかを調べた。また、英国については、新しく地理的データ分析を提示 した。さらに、がん登録の状況、原子炉の種類、それによる放射性核種とその放出により一般 人が受ける線量など、研究結果に影響を及ぼしたかもしれない追加的要因についても検討した。

疫学的研究にはそれぞれ長所・短所があり、これは研究設計の詳細や適用する範囲に大きく左 右される。特に小児白血病は稀な疾病で、サンプル数が少なく、ドイツのKiKK症例対照研究 では23年間にNPPから5km圏内の5歳未満児では37名であり、本報告書でも35年間に20 名であった。

英国でのこれまでの地理的研究では、NPPから25 km圏内で、小児がん或いは小児白血病 および非ホジキンリンパ腫(NHL)のリスクに有意な上昇は見られなかった。英国のデータに ついて、1969~2004年間にNPPから半径5 km内に住む0~4歳の子供の白血病とNHL罹患 率に限定して、更なる分析を行ったが、リスクに有意な増加は無かった。フランスやフィンラ ンドなど他の国々の研究でも、NPP周辺で小児白血病或いは小児がんの発生に一般的な増加は 報告されていない。

本報告書に示した英国の新たな地理的研究でも、5歳未満の子供にNPPへの近接性と白血病 リスクの間の関連を示す統計学的に有意なデータは得られなかった。従って、研究の限界はあ るにしても、英国の地理的分析からは、NPPへの近接性に伴う小児がんのリスク推定値がゼロ であるか、或いはゼロではないにしても、きわめて小さいことが示されたと結論できる。

KiKK症例-対照研究は、1980~2003年間のNPPから5 km圏内に住んだ5歳未満の子供に ついては、白血病のリスク上昇を示す証拠が存在したが、5 km 圏外の子供についてはそのよ

うな証拠は無かったと結論づけている。データの独自の分析でもこの結論は確認されている。

ドイツのより早い時期(1980~1990年、1991~1995年の期間)の調査で特定された症例がKiKK 研究の結果に大きな影響を及ぼしており、より最近のデータ(1996~2003年)ではリスク増加の 証拠は弱くなっている。

【コメント】

ドイツ以外の各国の研究結果は、ドイツのKiKK研究結果とは一致していない。KiKK研究 結果のみが異なる結果を得ているのはどうしてか疑問である。それについてはデータの取り方、

解析方法が本当に妥当であるかどうか詳しい検討が必要とされ、最近ドイツの放射線防護委員 会は、KiKK研究は交絡因子の検討が不十分であるとし、疫学、遺伝学、免疫学、分子生物学、

放射線医学などが連携して学際的研究を総合的に再調査する必要性のあることを提案している が、当然のことと思われる。

5.核実験による住民の被ばく

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