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最近の主な研究

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2. 心疾患

3.2 最近の主な研究

(平成 23 年度に検討した論文) (放射線影響協会 荻生俊昭)

Ron E, Brenner A. Non-malignant Thyroid Diseases after a Wide Range of Radiation Exposures(様々な線量の放射線被ばくによる良性の甲状腺疾患)Radiat Res., 2010, 174(6) 877-888. [PMID: 21128812]

放射線被ばくにより甲状腺がんのリスクは高くなるが、良性の甲状腺疾患については不明であ る。本稿では高~低線量放射線による甲状腺の器質的疾患(濾胞腺腫)、機能的疾患(無症候性 甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症)及び自己免疫性甲状腺炎の発生について、主な疫学調査 の結果をまとめ、最近の知見をレビューしたものである。

・濾胞腺腫については頭頸部外部照射4調査、I-131 内部被ばく2調査がレビューされた。平均 甲状腺線量は0.06~1.4 Gy、1 Gy当たりの過剰相対リスク(ERRGy)は、4調査で2~8で、線量

-反応関係は少なくても5 Gyまでは直線が合うようである。1調査では、6 Gy以上でリスクの 低下が示唆された。しかし、性、年齢あるいは経過時間によるリスクへの影響を評価できるよ うな調査はほとんどない。

・甲状腺結節に関しては、外部被ばく4調査、内部被ばく4調査がレビューされた。高線量では リスクは増加し、女性および被ばく後10 年以上の生存者は高リスクと思われた。低~中線量 では、1調査を除き、ERRGyは0.74~64で、線量-反応関係があった。南太平洋の核実験で被 ばくした住民の調査では、結節の増加はあるようだが、データが安定せず解析が難しい。結節 の診断基準の不統一がいろいろな調査結果の比較を難しくしている。

・甲状腺機能亢進症に関しては、治療線量 15 Gy以上でリスクの増加が示唆されたが、線量-反 応の大きさや様相はまだ明らかではない。原爆生存者の調査では、グレーブス病(バセドウ病)

発症のリスクの増加が示唆されたが有意ではなかった。環境中のI-131については2調査のみで、

1調査では影響が見られず、他の1調査では女性にのみ相関が示唆されたが有意ではなかった。

外部被ばく・I-131内部被ばく共に、中~低線量被ばくによる甲状腺機能亢進症発生のリスクに 関するデータは少ない。

・甲状腺機能低下症は、頭頸部に高線量放射線治療を受けた患者やI-131治療による内部被ばく患 者でみられる。多くは5年以内に発症するが20 年以上経ってから発症する例もある。中~低

線量放射線の外部または内部被ばくでも相関は見られるがデータの一貫性がなく、影響は明ら かではない。被ばくからの時間を除き、修飾要因(性、被ばく時年齢、等)の影響については あまりわかっていない。放射線リスクのより正確な様相は、はっきりしていない。

・放射線関連の甲状腺炎には急性甲状腺炎と慢性自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)があり、それ に関連する免疫異常がある。急性甲状腺炎は高線量被ばくの数ヶ月後から発生するが、線量依 存性は不明である。慢性自己免疫性甲状腺炎・関連する免疫異常に関し、5 調査のうち1調査 だけに線量と抗体陽性甲状腺機能低下症の相関がみられたが、低線量については未解決である。

機能的甲状腺疾患に関連する異常な自己免疫反応は一時的なもので臨床的な疾患に至らないと いう可能性が示唆されている。

・良性腺腫や機能的甲状腺疾患については国や地域の登録がないのでデータが限られ、調査結果 は確実ではない。検査方法や診断基準が統一されていないこと等による潜在的なバイアスもあ る。

【コメント】

本稿は、多くの調査結果をレビューしたものである。甲状腺は放射線高感受性という面から重 要ではあるが、これまでは「がん」が注目され、良性疾患についてはほとんど知られていない。

本レビューでは、限定的ではあるが検出力のある調査結果を集めている。高線量放射線(10 Gy~

数十Gy)により濾胞腺腫、良性結節、甲状腺機能低下症、急性甲状腺炎等が発生することは示さ れたが、低~中線量放射線による影響についてはまだまだ不明で調査の継続が必要である。しか し、調査ごとに異なる検査方法や診断基準の統一、登録制度など解決すべき課題も多く、問題提 起をしたレビューであると言えよう。

[Ⅲ] 胎児被ばくによる影響

1.概要(概評) (吉本泰彦委員)

放射線の胎芽、及び胎児への影響はICRP Publ. 90(2003年)に要約されている。100 mGy を十分下回る胎児線量に関しては、胚の致死的影響、及び奇形の放射線リスクは非常に小さい か期待されない(ICRP Publ. 103)。胎児被ばくの生涯がんリスクは、大きくて小児期早期の 被ばくのものと同様であろうとされる。なお、受胎前の放射線による次世代への遺伝的影響は 現在までヒトでは認められず、胎児被ばくとは区別すべきである。

重度精神遅滞: 100 mGyを超える胎児線量では異常な妊娠終結(死産、奇形、精神発達障害)

のリスクが器官形成期と胎児期の初めで最も高いと思われる。また、ニューロン成分が急速に 増殖し、ほとんどの神経芽細胞 (neuroblast) の大脳皮質への移動が起こる受胎後 8~15 週で 放射線感受性が高い。実際、後述するように胎内で原爆放射線に被ばくした子供で小頭症や重 度精神遅滞が見られた(Otake M and Schull WJ, 1984, PMID:6539140)。

がん: ICRPは100 mGy未満の胎児線量でも、妊娠のほぼ全期間を通して、胎芽/胎児はほぼ 同程度に、放射線のがん誘発リスクがあると想定している(ICRP Publ. 84)。胎内被ばくの最 大の症例-対照研究であるオックスフォード小児がん研究(OSCC)は10 mGy程度のX線に よりあらゆる種類の小児がんをほぼ同程度(約1.4倍)に増加させることを示した。Wakeford と Little (Wakeford R and Little MP 2003, PMID:12943238)は胎内原爆被爆者で小児がんの 増加が見られなかったとの調査結果はOSCCの調査結果と矛盾するものではないと結論した。

胎内被ばくによる生涯がんリスクのヒトデータは限られている。ICRPの2007年勧告では、胎 内被ばくによる放射線誘発がんリスクは小児期早期のそれと同程度と判断している。しかしな がら、胎内被爆者集団の過剰生涯がんリスクは小児期で被ばくした原爆被爆者のそれより低い 可能性も最新の報告(Preston DL et al., 2008, PMID:18334707)で示唆された。また、マウスの 動物実験でも胎仔被ばくによるがんリスクが若年期被ばくのリスクほど高くないことが知られ てきた(Nakano M et al., 2007, PMID:17523844; ICRP Publ. 90)。さらに、胎児期の被ばくに 関する動物実験では、器官形成期以前より、胎児期早期で放射線発がんの感受性が高いと推論 されている。(ICRP Publ. 90)

甲状腺がん:胎内被ばくによる部位別がん生涯リスクの推論はさらに不確実性が高い。ほとん どが非致死性の甲状腺がんと小児期の放射線被ばくの関連性は早くから懸念されていた。米国 のある病院で1932~1948年の診断時18歳未満の28例のがん症例の内、10例が生後4ヵ月か ら16ヵ月の乳幼児に胸腺の照射を受けていた。15歳未満で被ばくした5つのコホートの解析 で 5歳未満の被ばくで過剰相対リスクが最も高いとの証拠が見出された(Ron E et al., 1995,

PMID:7871153)。他方、本胎内原爆被爆者の甲状腺疾患の有病率の調査で確認された5例の甲

状腺がんの診断時年齢はすべて30歳以降の成人期のがんであるが、被ばく時の週齢は20週齢 までが2例、30週齢以降が3例であった。ヒトの甲状腺は約12週齢でその機能を開始するが、

細胞の増殖率は週齢11-20週で最も高いことが剖検例から最近示唆された。最近メタ・アナリ シス(例えば、Baker PJ and Hoel DG, 2007, PMID:17587361)の影響もあって、統計的に有意 でないリスク推定値もしばしば提示されることが多いが、その過度な解釈は避けるべきであろ う。

2.これまでの重要な研究

Otake M, Schull WJ :In utero exposure to A-bomb radiation and mental retardation; a reassessment.(原爆放射線への胎内被ばくと精神遅滞;再評価):British J Radiology, 57:

409-414, 1984. [PMID:6539140]

OtakeとSchullは胎内で原爆放射線に被ばくした子供の重度精神遅滞のリスクを評価した。

受胎後0~8週の被ばくでは重度精神遅滞は見られなかった。重度精神遅滞のリスクが最も強か ったのは受胎後8~15週の被ばくで、そのリスクはそれ以降の被ばくに比べて5倍以上高かっ た。この決定的な時期では被ばく線量と重度精神遅滞のリスクは線形の線量-反応関係を示し、

リスクは40%/ Gyであった。なお、15週以降の被ばくでは線量-反応関係は線形でなく、し

きい値が存在するようであった。

Yoshimoto Y, Kato H, Schull WJ.:Risk of cancer among children exposed in utero to A-bomb radiations, 1950-84.(原爆放射線へ胎内で被ばくした子供におけるがんリスク): Lancet, 2 (8612): 665-669, Sep 17;1998.[PMID: 2901525]

吉本らは広島・長崎での原爆投下により胎内で原爆放射線に被ばくした子供たちの被爆 40 年後のがん罹患率(1950~1984年、18例)を調査した。14歳までのがん、すなわち小児がんは2 例しか観察されなかったが、2例とも高線量の放射線に被ばくしていた。胎内で0.30+Gyの被 ばくを受けた場合、がんの発症時期が早まるだけではなく、その後も過剰リスクが観察された。

Delongchamp RR, Mabuchi K, Yoshimoto Y, Preston DL.:Cancer mortality among atomic bomb survivors exposed in utero or as young children, October 1950-May 1992.(胎内または 小児で被ばくした原爆被爆者のがん死亡率、1950 年 10 月~1992 年 5 月 ):Radiat Res., 147(3):385-395, Mar;1997.[PMID: 9052687]

Delongchamp らは胎内で 0.01Sv 以上の線量に被ばくした胎内原爆被爆者 807 人、線量が 0.01Sv以上の被ばく年齢6歳未満の原爆被爆者5545人、及び対照群(線量0.01Sv未満又は 非被ばく)10453人に関して1950~1992年のがん死亡率を解析した。解析は主に到達年齢17

~46 歳に生じたがん死亡に限定された。胎内原爆被爆者では10 人のがん死亡(白血病2例、

婦人科系のがん3例、消化器がん5例)が観察され、線量当たりの過剰相対リスク(ERR)は2.1 /Sv (90%信頼区間:0.2, 6.0)であった。この胎内原爆被爆者の過剰リスクは出生後5歳までに 被ばくした原爆被爆者のものと有意に異ならなかった。胎内原爆被爆者の僅か2例に基づく白 血病死亡率は対照群と比べて高かったが(P=0.054)、線量と有意に関連していなかった。男性 白血病 1 例を除く残り 9 例は女性であった、そして女性で有意な過剰がんリスクが観察され た;婦人科系のがん、及び消化管がんいずれにおいても有意。

Preston DL, Cullings H, Suyama A, Funamoto S, Nishi N, Soda M, Mabuchi K, Kodama K, Kasagi F, Shore RE. :Solid cancer incidence in atomic bomb survivors exposed in utero or as young children. (胎内または小児期で被ばくした原爆被爆者の固形がん罹患率):J Natl Cancer Inst., 100(6):428-436, Mar 19; 2008. [PMID: 18334707]

Prestonらは広島・長崎の胎内原爆被爆者2,452人と6歳未満で被ばくした原爆被爆者15,388

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