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日本人と一緒に活動や仕事をする時の行動や対処に関する質問の記述

第8章 【第4研究】外国人社員の「職場における学習」に対応する大学教育

8.1 研究方法

8.5.1 日本人と一緒に活動や仕事をする時の行動や対処に関する質問の記述

本人と一緒に活動や仕事をする時の行動や対処に関する質問」の因子分析を行った。8.5.1節 は、因子分析を実施する前の処理である。8.5.2節では因子分析の結果を提示する。

8.5.2 「職場における学習」の学習スタイルの検討

次に主因子法による回転なしの因子分析を行い、スクリープロットおよび固有値を得た。

固有値の変化は、3.567、1.293、.989、.625というものであった。3因子と4因子との差が.364 であり最も大きいことから、3因子構造が妥当であると考えられた。

そこで再度 3因子を仮定して、主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。主 因子法を選択したのは、サンプル数が51と限られているためである。また、得られた因子間 において相関が見られることが予測されるためプロマックス法を選択した。

その結果、質問項目9番の因子抽出後の共通性が.182と.200を下回っていた。この質問は

「仕事でわからないことは、先輩や上司に解決方法をすぐに聞く」という内容であった。こ れは外国人社員の職場に教育ないと語るコンフリクトに対する対処方法の一つであったが、

先輩や上司に解決方法を聞く行為自体がOJTに当たり、外国人社員が先輩に質問することが OJTであることに気づいていないという状況があった。こうした背景を鑑み、9番の項目を 除外することとした。

123478910111213 先輩や  を学ぶ1.508**.251.297*.279*.379**0.2.241.373**.418**.22 先輩や  を学ぶ.508**1.570**.326*-.122.262.165.360**.413**.247.169 自分で  .251.570**1.459**.002.364**.058.123.139.076.103 マニュ  る.297*.326*.459**1.287*.121.250.177.036.222.352* ことが  で解決  .279*-.122.002.287*1.080-.120.142.030.039.081 考えて  に頼む.379**.262.364**.121.081.118-.070.158.043-.030 先輩  に聞く.200.165.058.250-.120.1181.122.259.219.203 感じた  人に相 .241.360**.123.177.142-.070.1221.415**.591**.043 感じた 人に相 .373**.413**.139.036.030.158.259.415**1.439**.290* 感じた ない日 .418**.247.076.222.039.430.219.591**.439**1.300* 外国人 .220.169.103.352*.081-.030.203.043.290*.300*1 感じた 人に相 .376**.397**.261.393**.036.049.212.520**.372**.550**.241 感じた 人に相 .071.242.200.293*-.164-.216.171.281*.317*.273.337* 案や別 105054059222001058144153072033298*

表8.13 日本人と一緒に活動や仕事をする時の行動や対処に関する質問の相関係数

再度、12項目に対して、主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。回転前3 因子で12項目の全分散を説明する割合は46.02%になり、信頼度ではα係数が.713(下位尺 度は.599~.709)となったため、比較的満足のいく信頼性係数が得られたことが示された(表 8.15)。

これらの学習スタイルに関する3つの因子に対して、適応方法に関する名前をつけた。

まず、第一因子は、4つの因子から構成されている。1つ目は「日本の文化にストレスを感 じたら、活動や仕事と関係のない日本人に相談する」であり、2 つ目は「日本の文化にスト レ

表8.15 「日本人と一緒に活動や仕事をする時の行動や対処に関する質問」の

因子分析の結果(Promax回転)

スを感じたら、同じ活動をする日本人に相談する」であり、3 つ目は「日本の文化にストレ ス

を感じたら、同じ活動をする外国人に相談する」であり、4 つ目は「日本の文化にストレス を感じたら、異文化が分かる日本人に相談する」であった。このように日本の文化に対する 葛藤に対して相談をするという対処方法が集約された。これらの質問項目のすべてが外国人 社員の語りから作成された項目であった。これらの行動は、コンフリクトのある状況を他者 に話すことで理解する行為であると考えられるため、第一因子を「直接相談型」因子と命名 した。

第二因子は、4つの因子から構成されている。1つ目は、「活動や仕事のやり方は、自分で やりながら覚える」であり、2 つ目は「分からないことは一緒に考えてもらうよう先輩や上 司に頼む」であり、3つ目は「先輩や上司の行動を見てやり方を学ぶ」であり、4つ目は「活

I II III

12.日本の文化にストレスを感じたら、活動や仕事と関係のない日本人に相談する .805 -.079 -.005 10.日本の文化にストレスを感じたら、同じ活動をする日本人に相談する .684 -.103 .070 11.日本の文化にストレスを感じたら、同じ活動をする外国人に相談する .647 .104 -.119 14.日本の文化にストレスを感じたら、異文化が分かる日本人に相談する .542 .051 .337 3. 活動や仕事のやり方は、自分でやりながら覚える -.208 .713 .272 8. 分からないことは一緒に考えてもらうように先輩や上司に頼む -.050 .670 -.309 2. 活動や仕事のやり方は、先輩や上司の行動を見てやり方を学ぶ .242 .579 .078 1. 活動や仕事のやり方は、先輩や上司との会話からやり方を学ぶ .432 .503 -.208 15.日本の文化にストレスを感じたら、異文化が分かる外国人に相談する .251 -.162 .582 4. 活動や仕事のやり方は、マニュアルを読んで仕事を覚える -.114 .363 .552 19.仕事上の不満は新しい提案や別の方法で解決する -.121 -.103 .506 13.日本の文化にストレスを感じたら、活動や仕事と関係のない外国人に相談する .126 .012 .406 I 直接相談型 - .356 .441 II 観察・模倣型 - .301 III 分析・論理型

係数(.713 .559 .709 .592

動や仕事のやり方は、先輩や上司との会話からやり方を学ぶ」であった。これら4つの因子 は、すべて日本人上司や外国人社員と同期の日本人社員の語りから作成した項目であった。

これらの行動は、職場での人材育成にコンフリクトが起きずに学習が進む行動であることか ら、この第二因子を「観察・模倣型」と命名した。

第三因子は、4つの因子から構成されている。1つ目は、「日本の文化にストレスを感じた ら、異文化が分かる外国人に相談する」であり、2 つ目は「活動や仕事のやり方は、マニュ アルを読んで仕事を覚える」であり、3 つ目は「仕事上の不満は新しい提案や別の方法で解 決する」であり、4 つ目は「日本の文化にストレスを感じたら、活動や仕事と関係のない外 国人に相談する」である。そして、これら4項目すべてが、外国人社員の語りから作成され た項目であった。これらの行動を鑑みると、どれも客観的立場から状況を理解しようとする 行為であることが考えられる。具体的には、日本の文化にコンフリクトがある状況に対して

「異文化が分かる外国人」や「活動や仕事と関係のない外国人」に相談する方法と、「マニュ アルを読む」という方法によりコンフリクトのある状況を理解しようとしていることが考え られる。この行動は、外国人という立場としての客観的な考えを収集し、マニュアルを通し て日本側のルールややり方について理解をする行為であると考えられる。また、「仕事上の不 満は新しい提案や別の方法で解決する」という対処方法を取ることから、状況を前向きに変 化させていこうという姿勢であると考えられる。こうした行動は、合理的に状況を捉え誰も が納得する方法を模索しようとする行為であると考えられる。そのため、第三因子に対して

「分析・論理型」とラベルを付けた。

以上、因子分析を行った結果、「直接相談型」、「観察・模倣型」、「分析・論理型」という3 つの学習スタイルが得られた。

次節では、「直接相談型」、「観察・模倣型」、「分析・論理型」の学習スタイルが、大学教育 の科目とどのように対応しているのかについて分析を行う。

8.6 「直接相談型」、「観察・模倣型」、「分析・論理型」と大学教育の関連