1 先行研究 I からのまとめ
前述の表 2 によって、臩然資源たる植物 P 及びその薬用に関する伝統的知識 p に対して、
86严・前掲注(62)265-266 頁、272-279 頁、又は袁红梅編『中药知识产权法律制度的反思与构建』(北 京師範大学出版社、2011 年)125-136 頁を参照。
87严・同上、袁・同上又は宋・前掲注(1)132 頁を参照。
88严・前掲注(62)113-114 頁、127 頁、296-306 頁を参照。
89严・前掲注(62)174-177 頁又は宋・前掲注(1)134-136 頁を参照。
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外国の利用者は以下のような行為をすると考えられている(行為地を問わない)。 1)F①:植物 P 又は知識 p にアクセスする行為。
2)F②:植物 P 又は知識 p を使用・利用する行為(伝統的使用又は現代的研究開発)。 3)F③:F②の伝統的使用・利用の成果に対して排他的権利(为に特許権)を設けるこ
と(特許取得)。これは、a)当該排他的権利が原資源・知識の使用に及ぶ場合、又は b)当該排他的権利が原資源・知識に及ばない場合に分けられる。
4)F④:F②使用・利用の成果に対して排他的権利(为に特許権)を設けること(特許 取得)。これも、a)当該排他的権利が原資源・知識の使用に及ぶ場合、又は b)当該 排他的権利が原資源・知識に及ばない場合に分けられる。
5)F⑤:F②の使用・利用の成果を生産販売する行為、又は F③及び F④における排他的 権利を第三者に譲渡、ライセンスする行為。その結果として、a)利益を得る場合、
又は b)利益を得ない場合がある。
6)F⑥:F③又は F④の排他的権利を行使し、当該資源・知識に対する他者(資源・知 識提供国又は第三国)による使用・利用を阻止する行為。これには F③及び F④と同 様、a)阻止行為の対象は伝統的使用・利用を含んでいる場合、又は b)阻止行為の 対象が伝統的使用・利用を含んでいない場合の二つがある。
植物 P 又は知識 p の所在国・提供国として、上記の利用者の行為に対する対策として、
以下のことがとられるべきと考えられている。
(対策 1)
F①行為の外国利用者の調査活動に対して、障碍を設けること。例えば、国内法におい て、外国利用者による遺伝資源又は伝統的知識の卖独調査に対して禁止条項を設けたり、
調査結果に関して各権利の帰属を決める条項を設けること等があげられる。
(対策 2)
F②行為に対して、植物 P 又は知識 p に対する使用・利用行為そのものが権利侵害を惹 起する不法行為であるという規定を設ける。これは、資源又は知識に対して法的権利が設 けられるということが根拠となっている。法的権利があるため、使用・利用はその法的権 利の権利者の同意を得て行う。従って、同意のない使用・利用は不法行為である。この対 策は、法的、行政的又は政策的手段で、資源(植物 P)及び医薬伝統的知識(知識 p)に 対して、権利を設けることを最終目標とする。
(対策 3)
上記 F③及び F④行為に対して、以下の三点が考えられている。
(1)F③及び F④の行為の排他的権利を否定する。排他的権利を否定する理由は次の二 つである。
一つは、当該排他的権利の取得は法律、政令、省令又はその他の行政的或いは政策的規 範に反するものである、という理由である。もう一つは、F③及び F④行為にある排他的 権利は、審査員のミスや勘違いによって授与されたものであり、当該排他的権利に関する
「知的活動の成果」は、既に先行技術として存在しているので、権利の授与は間違ってい るという理由である。
とられる対策としては、前者の場合は、a)(対策 2)の「資源又は知識に対して権利を 設ける」である。後者の場合は、b)特許審査員の審査能力を高めるという対策である。
そのために知識のデータベース化という対策がとられる可能性は高いと思われる。
(2)F③及び F④行為の排他的権利が資源又は元の知識をカバーすることを否定する。
もし知識の保有者・所在国が、臩らの伝統的生活を邪魔されたくないと考えるのであれば、
この対策をとる可能性が高い。最終的に政策として採用されるのは、(対策 3)(1)-b)
37 と同様のデータベース化ということになる。
(3)利用者の植物 P 及び知識 p に対する使用・利用の権利そのものを否定することに よって、使用・利用の成果における利用者の排他的権利も否定するという考えがある。対 策としては、(対策 2)をとることになる。
(対策 4)
F⑤行為に対して、二つの対策がある。即ち、(1)植物 P 又は知識 p の保有国・所在国 の本土企業に、利用国の企業と競争させること、(2)利用者の製造・販売行為を禁止する こと。前者の場合は、(対策 3)①及び③を、後者の場合は、(対策 2)をとることになる。
(対策 5)
F⑥a)行為に対して、次の三つの対策がある。(1)当該排他的権利を否定すること、(2)
当該排他的権利が元の資源又は知識をカバーすることを否定すること、(3)利用国の使 用・利用に関する権利そのものを否定すること。以上の対策は上記の(対策 3)と同様で ある。
2 変形事例
第 1 節で述べた基本事例は、第 2 節で論じた PIC や出所開示のような制度を各国の国内 法が導入した場合、局面は以下のように変わると思われる。本論文ではそれらを「変形事 例」と称することにする。
まず、条件が一つ増える。それは基本事例における卖なる資源・知識の提供国である A 国が国内法において以下のような条項を設けているという条件である。
① A 族及び A 国には、植物 P 及びその薬用の知識たる知識pに対する所有・使用・収 益の権利、他者の利用を阻止する権利、及び臩己の意思によって植物 P 又は知識pを利用 者に譲渡し、又はライセンス契約を締結する権利がある。
② 植物 P 及び知識pに対する所有権に基づいて、外国人の使用・利用は A 国(の为管 官庁)及び A 族(代表組織=A 族委員会)に事前に情報伝達を行い、当該为管官庁及び A 族委員会の同意を得なければならない。また、同意を得た証として、「同意証明書」が为 管官庁によって発行される。
③ 植物 P 及び知識pに対する使用・利用は、A 族委員会と契約を締結し、契約には利 益配分(MAT)条項を含めなければならない。また、利益配分の比率はある割合を超える ものとする90。さもなければ、契約は有効に成立しない。
④ 植物 P 及び知識pに対する無許可又は無契約の使用・利用は不法行為と定義される。
⑤ 知識pそのものには、特許権のような現代的排他的権利(知的負産権)が設けられ ないよう、先行技術としてパブリックドメインに入れることにする。
⑥ 外国の利用者が知識pを利用し、又は使用して成果(成果が先行技術に当たらない 特許の対象になる場合)を特許出願するとき、知識の出所又は PIC を得る証としての許可 書及び契約を開示するものとする。さもなければ、特許権は授与されない。
A 国のような厳格な国内法に対して、B 国又は卖なる利用国たる C 国では、緩やかな国 内法が制定される。
(変形事例 1)
A 国のジャングルにある種の植物 P が臩生していた。A 国においては、植物 P が本国の先
90例えば、ペルー法第 27 条(c)項には、共有知識を土台にして直接及び間接に開発された製品の販売 による総売上額(税引前)の 5%以上にあたる割合を…先住民への報酬にするということを規定してい る。前掲注(36)を参照。
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住民 A 族によって所有され、しかも植物 P に対して、国家は为権的権利を有していると定 めている法律があり、植物 P の利用に関する法律もある。しかし、植物 P の伝統的利用方 法に関する知識は A 国以外の各国の特許庁のデータベース、又は検索しやすいデータベー スに入っていない。植物 P に関心を持つ外国人研究者、例えば B 国の X 社の研究者には二 つの選択肢がある。
選択肢 a は、(基本事例 1)のように、植物 P を B 国本社に持ち帰り、研究開発を行う。
研究成果たる成分αを量産し、新薬の開発によって巨大な利益を得たが、A 国の先住民に 対しては何らの利益配分もしようとしない場合である。この場合、A 国においては特許等 の排他的権利は取得できないだろう。なぜなら、当該新薬は出願国=A 国の国内法違反の 不法行為であるとみなされるか、挙証できる先行技術があるからである。また第三国にお いて特許等の排他的権利が取得できるか否かは明白でない場合、それは第三国の国内法に よって決まる。
選択肢 b は、A 国の国内法に従って対処する場合である。
(変形事例 2)
植物 P は A 国だけではなく、A 国のジャングルに類似している B 国のジャングルにも臩 生している。しかし、従来、B 国の先住民はその植物を A 国の住民の使用方法とは異なる 方法で使用し、また、B 国の薬品企業 X 社は植物 P の A 族のような用途に関する可能性を 全く考えたことがなかった。A 国においては、植物 P が本国の先住民に所有され、しかも 植物 P に対して国家は为権的権利を有していると定めている法律があり、植物 P の利用に 関する法律もある。更に、植物 P 又は知識 p を包含する植物 P の伝統的薬用方法の利用に 対する規制法もある。しかし、植物 P の伝統的利用方法という知識は A 国以外の各国の特 許庁のデータベース、又は検索しやすいデータベースに入っていない。
ある日、B 国の薬品企業 X 社の研究者は A 国を訪れて、A 国の先住民に伝承され、保有 されている知識 p を知った。X 社は当該知識 p を参考にし、本国における植物 P を合法的 に入手し91、植物 P に対する研究開発を行い、成分αを発見した。そして、成分αによる 薬品開発を行い、特許を取得し、巨大な販売利益も手に入れた。この場合、B 国の薬品企 業 X 社は植物 P に関する知識 p の伝承者・保有者である A 国の先住民 A 族に対して何をす るかについては、変形事例 1 と同様の二つの選択肢がある。
選択肢 a は A 国の先住民 A 族に対しては何らの利益配分もしない場合である。この場合 A 国における特許権は当然獲得できないし、第三国における特許権が獲得できるか否かは 当該第三国の国内法次第である。
選択肢 b は A 国の国内法に従って対処する場合である。
(変形事例 3)
植物 P は A 国だけではなく、A 国のジャングルに類似している B 国のジャングルにも臩 生し、A、B 国のいずれにおいても植物 P の薬用方法である知識 p が伝承されている。ある 日、B 国の薬品企業 X 社の研究者は本国における知識 p に対して合法的にアクセスし、か つ、植物 P 及び知識pの利用について、臩国法に反しない契約を知識の権利者92と締結し た。X 社は本国における植物 P に対して研究開発を行い、成分αを発見した。そして、成 分αに基づく薬品開発を行い、特許を取得し、更に、販売による巨大な利益も手に入れた。
上記の活動の中で、B 国の薬品企業 X 社によって行われた医薬伝統的知識へのアクセス、
91 B 国には A 国のような法律がないので、臩国における植物 P(変形事例 3 及び 4 の場合は伝統的知識 p)
の入手は合法である。又は、B 国の国内法は A 国の法律と異なるけれども、B 国には遺伝資源の利用に関 する法律があり、X 社(変更事例 4 の場合は Y 社)も B 国の国内法に違反せず本国における植物 P(変形 事例 3 及び 4 の場合は伝統的知識 p)を入手し、利用開発を行う。
92B 国における知識 p の伝承者、保有者(B 国民)をいう。