第 4 章 漏れ波型ばく露装置の開発 28
4.4 放射型ばく露装置に対する漏れ波型ばく露装置の有効性
第4 章 漏れ波型ばく露装置の開発
4.4放射型ばく露装置に対する漏れ波型ばく露装置の有効性
開発した漏れ波型ばく露装置のばく露の均一性は,Ave. ± 5 dBの指標を用いて,先行研究 の近傍界ばく露装置に比べ高い [20].漏れ波型ばく露装置にばく露される殆どの細胞は,空 間平均値± 5 dB の範囲でばく露される.漏れ波型ばく露装置の電界分布の最大値と最小値 の差と相対標準偏差は,提案されている均一度の30% よりも大きい値である.均一度の指 標の特性は,培地内底面の電界分布にみられるスペックル状のパターンにより影響されてい る.スペックルの幅は 5–10 dBで, Ave. ± 5 dBの幅とほぼ近い.ばく露量の一様性は,ス ペックル状のパターンの変動を低減すると向上する.
表4.4. 周波数60 GHzにおける培地内底面での電界分布の統計量 [20, 40]. 定義は本文中に示す.
ばく露装置 容器直径 RSD Max.-to-Min. Ave. ±3 dB Ave. ±5 dB 吸収電力効率 平板アプリケータ 90 mm 76% 37.2 dB 70% 89% 54%
方形ホーン(far field) [40] 15 mm (no data) 2.7 dB (no data) (no data) 10–15%∗ 方形ホーン(fresnel region) [20] 35 mm 28% 14.8 dB 73% 83% 44%
第3章の放射型ばく露装置 52 mm 44% 9.4 dB 88% 99% 52%
∗ 効率は文献[20]での推定値.
表 4.4 は,培地内の吸収電力の効率について先行研究の放射型ばく露装置 [20, 40] の性能 を示す.培地内の吸収電力の効率は,入力電力に対し,培地内に吸収される全電力の比率 とした.吸収電力の効率は,先行研究による放射型ばく露装置 [20] で 44%であった.比較 した放射型ばく露装置の培養容器とホーンアンテナの開口面の離隔距離は,25 mm でフレ ネル領域である [20].別の先行研究の遠方界領域のばく露装置は,さらに吸収電力の効率が
低い [20].漏れ波型ばく露装置の吸収電力の効率は54%で,先行研究に比べて高い効率と
なった.
表 4.4には,さらに,各ばく露装置のばく露される面積である,使用される培養容器の直 径を示す.ばく露装置の目標の一つは,一定の幅の強度の電波を,十分に細胞が存在する 面積内に照射することである.ばく露する面積は,50 cm2が必要とされている [29].漏れ 波型ばく露装置のばく露面積 64 cm2は,他の放射型ばく露装置に比べて広く,必要なばく 露面積以上となった.本検討で比較しなかった開放終端導波管アプリケータは,狭いビー ム幅で高強度に細胞をばく露する装置として開発されている [62, 63].開放終端導波管アプ リケータの吸収電力の効率は高いが,そのばく露面積は導波管近傍に限られるため小さい.
開放終端導波管アプリケータは,培養容器全体を照射する目標でないため,比較対象に選ば なかった.
漏れ波型ばく露装置の利点は,電力効率の低減がなく,アプリケータの基板へ温度制御素
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第4 章 漏れ波型ばく露装置の開発
子を直接的に取り付けできることである.一方,放射型ばく露装置の課題点は,放熱素子の 取り付けが容易でないことである.図4.7には,ヒートシンクを取り付けた際の放熱効果を 調べるために,入力電力変化時の定常状態での温度測定結果を示した.温度測定時の漏れ波 型ばく露装置は,商用のインキュベータ (BNR-110, ESPEC Corp., Osaka) の室温 37◦Cに設 定した中に設置した.温度測定器は,蛍光式光ファイバー温度計 (FL-2000, 安立計器株式会 社) を用いた.定常状態は,ばく露開始 50 分後とした.定常状態での温度上昇 ∆T と入力 電力 ∆Pin の比∆T /∆Pin は,線形に近似した直線の傾きから,2.3 ◦C/Wとなった.ヒート シンク (17F146L150, LSI Cooler Co., Ltd., Tokyo)を取り付けた場合,∆T /∆Pinは1.3◦C/W となった.ヒートシンクは,アルミニウム製で,ヒートシンクの冷却方法は,自然空冷とし た.ヒートシンクを取り付けたときの温度上昇は,ヒートシンクがない場合に比べ40%低 減された.能動的に放熱する場合は,ペルチェ素子などの温度制御素子でさらに温度上昇が 低減できる.
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図 4.7. 入力電力に対する定常状態での温度上昇値.定常状態は,ばく露開始 50分後とした.
漏れ波を用いたばく露装置の構造は,周波数 60 GHz 以外の超高周波にも適用できる.他 の周波数に対するばく露装置の寸法は,適度に修正が必要になる.例えば,さらに高い周波 数に対しては,inlet waveguideの長さを短くする必要性があると考えられる.周波数ととも に,ポスト壁導波路の伝送損失は,増加する傾向がある [59].