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 複雑で深刻な現代的諸問題に直面している地球環境に対して、様々な警告が なされている。この2月に「21世紀へのメッセージ」を発表する予定の「21 世紀危機警告委員会」の創設などもその現れの一つであろう(82)。「新世紀を目 前にして、世界は重大な危機に直面している。破壊が進む自然環境、食:料・エ ネルギー資源の偏在、人口の急増など、人類の生存を左右する不安定要因が、

圧倒的な勢いで広がり始めている。どうしたらこれを押し戻すことができるの か。私たちの政治、経済、社会、科学は、栽たな挑戦に立ち上がらねばならな い」というのが、委員会創設の意図である。この地球環境の危機を呼び込んだ 動因としても、危機を乗り越えていく原動力としても、科学は大きな位置を占

めている。

 また、目を転じて科学の内側の世界を覗いても、警告が発せられている。池 内は、「圃大学における科学教育は専門に閉じた知識の切り売りでしかなく、

科学者教育はいっさいなされていない」と指摘する。 「大学でなすべき科学教 育は、科学の営みで発見されてきた原理や法則のみならず、それがいかに技術 化され、社会や人々の生活にどのような影響を及ぼしているかを見抜く目を養

うことであるべきだろう」とも指摘する。

 このような科学をめぐる切実な状況の中で、STS的アプローチが具体化され 実践されてもいるが、中学生の科学教育(理科教育)においては、それらとの 二二も視野に含めながら、適切な科学観の育成をひとつの大きな目標に掲げる 必要があると考える。本研究は、その目標を達成するうえで、科学史事例を用 いた授業実践が有効であることを示した。

 そこで最後に、授業実践を一般化するために、以下の提言を行う。

提言1.科学史事例教材の開発とネットワークを構築すること。

限界がある。各個人が興味を持つ単元に関わる科学史事例の学習や発掘に取り 組み、その教材化の可能性や実践を交流しあうことがどうしても必要である。

そのために、様々な地域・レベルでネットワークを構成していくことが大切で ある。その場合、大学や地域の教育センターの役割が大きいと言える。

提言2.歴史的実験の背景や過程を再評価し、授業に導入すること。

 本研究では、エレキテルによる静電:気の体験や、熱電対を用いたオームの実 験の再現に取り組んだ。結果としての科学学習から、過程としての科学学習に 転換していくうえで、歴史的実験の再現は意味を持っている。また、科学者の 汗まみれの奮闘や想像力を身近に感じたり、過去の科学者たちの感動が自分た ちの感動と重なり合うことで、探究の過程で同じ出発点に立っている感覚を生 んだりできることから、歴史的実験の再現は評価されるべきである。

提言3.教科内容とのリンクや時間的制約の問題を考慮すること。

 科学史事例を用いた授業が、教科内容から遊離していては、その実行力を低 める結果となる。ボルタの電池の実験が、回路学習にスムーズに展開していっ たように、教科内容とのリンクを考慮することが大切である。

 同時に、科学史事例を意図を持って位置づけることも必要である。一つの科 学的概念を獲得させるためなのか、科学の創造的営みに焦点をあわせるためな のか、など適所に位置づけた実践を考慮することは、有限な授業時数の面から

も必要である。

 本研究の成果に立った提言は以上である。地球と科学の未来を絶えず心に留 めながら、中学生の科学観形成に向けて実践を継続していきたいと考える。

謝辞

 本研究は、1995年4月より2年間にわたり、兵庫教育大学大学院自然系理科 教育講座松本研究室で行ったものである。

 本研究をすすめるにあたって、絶えず暖かく御指導いただきました松本伸示 助教授に心から感謝し、御礼申し上げます。

 また、主任指導教官として御指導いただきました佐藤 光教授に厚く御礼申

し上げます。

 さらに、本研究に貴重な御助言や資料を賜りました玉井輝男教授ならびに尾 關 徹助教授をはじめ本学の諸先生方に深く御礼申し上げます。

 また、親切な御指導ならびに資料を賜りました大阪教育大学教授・鈴木善次 先生、愛媛大学助教授・丹沢哲郎先生、大阪府教育センター主任研究員・東 徹 先生に心から御礼申し上げます。

 また、調査と授業実践にあたり快く御協力いただきました大阪府茨木市立言 中学校の校長先生をはじめ、諸先生方、生徒のみなさんに心より感謝申し上げ

ます。

 そして率直で有益な御助書をいただきました松本研究室の皆様に心より感謝 いたします。なお、こうした多くの皆様の御支援御協力の影で、妻潤子と家族 の協力も忘れることができません。記して、感謝します。

 本研究が、多くの皆様の御支援のもとに、こうして完遂いたしましたことを 厚くお礼申し上げます。

 最後になりましたが、このたび研究の機会を与えていただきました大阪府教 育委員会、茨木市教育委員会、そして茨木市立東中学校の教職員の皆様に心か

ら御礼申し上げます。本学で学んだことを今後の教育実践に生かすべく、さら に研鎭に励む所存であります。

引用文献・参考文献

(1)国際理科教育調査 IEA日本国内委員会報告書(1973),

 山崎敬人(1993) 「科学観調査 理科」『理科、数学の到達度とそれに影響を与える  諸因子との関連に関する長期的追跡研:究』 国立教育研究所

(2)中山迅(1996)「 科学者の研究 についての児童・生徒のイメージ(2)」

 日本理科教育学会第46回全国大会要項,

 田村洋子(1995) 「中学生の Science に関するイメージの男女差について」

 日本教科教育学会誌21回全国大会発表資料

(3)「朝日新聞」1996.11.21

(4)L,E. Klopfer(渡辺正雄訳、1976)『HOSC物理』講談社 p.1

(5)例えば、池田幸夫(1994) 「新科学哲学に基づいた科学教育プログラムの実践的研究  一ケプラーの法則一」科学教育研究Vo1.18, No.2 pp.67−73

(6)小野禎文く1996) 「高校生・大学生・一般人の持つ科学観に関する研究」

 日本科学教育学会年間論文集20

(7)藤村 淳:(1995)「現代科学技術の諸相」『科学技術史』放送大学教育振興会 b.330

(8)田中 正(1995)『物理学と自然の哲学』新日本出版社pp.57−58

(9)松原道男(1994) 「.自然科学の菊牲と方法」 『理科教育法』三晃書房 p.22

(1。)梅原 猛:「朝日新聞」1993.6. 13,

(11)野田又夫(1996)『デカルト』岩波書店p. 6

(12)小川正賢(1992) 「探究学習論」『理科教育学講座 第5巻』東洋館 p.34

(13)松原道男(1994)前掲(9)p.26

(14)村上陽一郎(1979) 『新しい科学論過講談社lp.158

(15)村上陽一郎(1979)前掲(14)pp、164−165

(16)村上陽一郎(1979)前掲(14)p.166

(17)村上陽一郎(1979)前掲(14)p.181

(18)秋間 実く1971) 『現代科学と唯物論』新日本出版社p,127

(!9)村上陽一郎(1979)前掲(14)p.174

(20)大沼正則(1987) 「科学論における相対主義」 『科学と思想』新日本出版社:

 No. 65 pp. 7−8

(21)内井惣七(1996) 『科学哲学入門』世界思想社 p.154

(22)内井惣七(1996)前掲(21)pp.147−148

(23)A.F. Cha抽ers(高田・佐野共訳,1995)『科学論の展開』恒星社厚生閣 p.37

〈24)A.F. Chalmers(1995)前掲(23)p. 39

(25)内井惣七(1996)前掲(21)p.55

(26)松原道男(1994)前掲(9)p.26

(27)松原道男(1994)前掲(9)p. 26

(28)村上陽一郎(1979)前掲(14)p.191

(29)肱岡義人(1987) 「科学の発展とは何か」『科学更』青木書店 p.56

(30)前田安生(1991)「科学の方法とは」茨城大学教育学部紀要(教育科学) 40号 p.23

(31)佐藤文隆(1995) 『科学と幸福』岩波書店 pp.103−104

(32)佐藤文隆(1995)前掲(31)pp.128−129

(33)佐藤文隆(1995)前掲(31)pp,126−127

(34)肱岡義人(1987)前掲(29)pp.54−55

(3s)大沼正則(1986)『科学史を考える』大月書店 p.61

(36)村上Wa一・一郎(1984)『動的世界像としての科学』新曜社pp. 215−217

(37)藤村 淳(1995)前掲(7)p. 331

(38)N. B. Songer, M. C. Linn (1991):How DO Students  Views of Science Influence  Knowledge Integrat i on?, JOURNAL OF RESEARCH IN SCIENCE TEACHING,

 Vol. 28, NO. 9, pp. 761−784

(39>鶴岡義彦(1983) 「科学教育における科学事例史筆(1)」日本理科教育学会  研究紀要Vo1。24, No.2, pp.67−74

(40)J.B. Conant(1951)Science and Co㎜on Sense, Yale Univ. Press(佐々木・伏見  共訳,1960,『常識から科学へ』白揚社pp.25−26)

(41)」、B. Conant前掲(40)P.56

(42)J.B. Conant前掲(40)p.50

3)J. B. Conant (1947) Ofi Understanding Science−An Historical Approach, Yale Univ.

 Press, p.98

(44)」.B. Conant前掲く43)PP. IOO−106

(45)鈴木善次(1970)『生物学のあゆみ一理科教育のための科学史3』第一一一tai規 p.17

(46)鈴木善次(1970)前掲(45)p.19

(47)小川正賢(1993)『科学・技術・社会(STS)を考える一シスコン・イン・スクール』

 東洋館  P.194

(姻伊藤信隆(1983) 「理科教育における科学史活用の意義」理科の教育

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(49)例えば、日本化学会編(1982) 「化学教育」V◎1.30,No.2〜3参考 く50)1.WiRchester (1989):Editorial  History, Science, and Science Teaching  Interchange Vol. 20, No, 2, Sumrr}er, pp. i−iv

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(52)BSCS (1992) Teaching About the History and Nature of Science and Technology:

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(53)高橋哲朗(1985)『教師のための科学史教育入門』薪生出版

画ダンネマン(安田徳太郎訳・編著、1979)『新訳 ダンネマン大自然科学史』

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(55)板倉聖宣(1970) 「本格的な物理教育は何時からはじめるべきか」物理教育

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(56)池田幸夫(1994)前掲(5)pp.67−73

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(57)朝永振一郎(1979)『物理学とはなんだろうか(上)』岩波新書 p.48

(58)竹岡西門(ig94) 「江戸時代の電気箋験を取り上げた授業例」

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(59)東 徹(1994) 「わが国の科学史からの事例を活用した理科教育」

 研究成果報告書 大阪府教育センター pp.21−27

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(61)井原聰(1987)「近代力学・天文学の成立と科学史」『科学史』青木書店p.68,p.73

(62)」.Solomon (1991) Exploring the Nature of Science, Nelson Blackie

(63)」.Solomon. et al (1992) Teaching About the Nature of Science throl」gh History:

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