5生徒の感想にみる授業の成果
学習評価を補完するものとして感想文を回収した。その主たる内容を述べる。
◆歴史的文脈での理解について
次の質問に対する感想を記述させた。その主たる感想を表27に示す。
橋本宗吉は、エレキテル(まさつ静電気発生器)を作り様々な実験をおこなった。
また、高い松の木を利用してフランクリンのたこの実験と同Cような実験をおこな ったりもした。これはβ本の電気学のあけぼのとなったが、同時にホタルや、暗や みで犬や猫の目が光ることなどにもエレキテルをあてはめようとした。それまで魔 力や神秘的なカで語られ、科学的でない解釈をしていた現象に対して自分の解釈を つくり出したが、このような宗吉の姿勢をあなたはどう思いますか。
表27歴史的文脈(感想より)
ご人
,簡,
臼,
講
書
感想文では、表の「人間像」の欄に見られる記述の他、「積極的で勇気ある 人」 「努力家」 ヂ強引」 「頑固」など宗吉の人間的特徴にふれた内容が最も多
く見られた。 「日本の科学」と「文脈での理解」の欄は、ともに広い意味では f過程での理解」と考えられる。科学史事例学習とそれに基づく意見の交流な どから、科学に対する視野の拡大ぶ助長されると言える。
◆歴史的実験の追体験について
次の(1)と(2)の質問に対する感想を記述させた。
(1)授業で使った手作りのエレキテル(まさつ静電気発生器)について その主たる感想を表28に示す。
表28歴史的実験の追体験、その1(感想より)
響,:
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味:
遡、
1責
憲
努
弱電『
・この実験が一番面白かった。一一eeにして人間の体を回って感電したのがすごかっ
た。
・初めは全身にくると思っていたけど、手だけに来て意外と面白かった。
・前、友達と手が触れるときパチってなったことがあったんで、このエレキテルの実 験は興味深かった。マジでパチッとなったので驚いた。ひOを思いつきり打った時 みたいだった。
・やる前はとってもドキドキわくわくしていましたが、いざやるとなると恐さがおそ ってきたし、やってみると両手がカー杯誰かに引っ張られているような感じでとっ ても痛かったです。もうこんなこと二度とやるか!なんて思いましたが楽しかった
です。
・ふだん静電気なんかは服を着たら「バチッ」とかしか感じたことはなかったけど、
その発生器でクラス全員が手をつなぎ、クラス全員の体の中を電気が通るなんて すごいなと思った。すごく楽しかった。
・僕はエレキテルを自由研究で作ってみたいと思った。
・手首にしびれがきてとても痛かった。だけど、発明した人は1回や2回ではなく、
もっと多くあの痛みを受けていると思う。昔の実験は自分の体を犠牲にしているの で大変だなあ一と思った。
・エレキテルでの百人嚇は痛かった。実験するまではちょっとエレキテルの威力をな めていたけど、今は江戸時代の人が驚いたのも無理ないな、と思う。
・体の中で何かがバーンとはじけたような感じでした。でも、それで衝撃があるので 私も「これで病気が治る」といわれれ劇言じたかも。またやりたいです。
生徒たちは一一一diに、静電気の体感実験に驚きを示している。 「血管がはち切 れそうにビリッとした」「ひじのあたりがピンとなったj 「筋肉が一一waビクッ とした」 「少しの間、放心状態でした」など「スライドや絵で見るより、実物 の方がいいなあと思った」「すごい心に残る実験でした」というように直接体 験への感動を語っている。そして、この感動を、大阪の蘭学者・橋本宗吉の エレキテルを再現した装置で味わったことが、科学(電気)をいっそう身近 に感じる背景となっている。
(2)熱起電力を使ったオームの実験の再現について その主たる感想を表29に示す。
表29歴史的実験の追体験、その2(感想より)
驚
き.
と
輿 味
歴1
史∫
の1
』関 心『
科
学『,
科・
学.
者.
感』−1F想.,
・よくできていると思う。磁針を見るのにレンズがついているなんてすばらしいこと蔑それに接 触砥抗をなくす工夫とかして、いい装置だ,
・銅や氷というものは、普通に生活の中で使われているものなのに、それを工夫して、オームの法 則を発見するなんて、本当に信じられません。それも、1度や2度の実験ではなく、何百回もの 実験で見つけるのだから、その努力は私にはとてもまねできませ砿
・原理よりもどういうことを考えながらこれを作ったのか、そっちの方を知りたい。
・磁針を使って、抵抗が分かったのは、すコ・と思いますT.磁針をガラス(!?)の筒に入れて実験し たのは、びっくりし拙ガラスの筒に磁針を入れる理由を聞いたときは、もっとびっくりした,
レンズの下の部分の工夫もす }・と思った。理科室での実験は面白くて、興味深かったで丸
・電気の中にもいろいろな歴史があることを実感しました。こうやって見ていくと電気って楽し
い。
・この機械をよく見ると、とてもぬかりがなくすごいと思った。理科室で、同じ原理の磯計が動く 様子を見せてもらったけど、それで本当にこの機械ってすコ・んだなと改めて感じました。電気
をいつも何気なく使っているけど、使われる前の研究は、カエルの足がぴくぴくすることや、フ ランクリンの凧上げなど、大変だと思いました。電気を勉強して、電気の歴史とすごさが分かり ました。
・氷と沸とう水とで磁針が動いたから、びっくりした。オームは、こんな装置を思いついて実験を して自分の考えを確かめてしまったなんて、すホ・ことだと思った。科学者たちは、みんなこん な実験をして頑張っているんだなと思った。
・同じ原哩を使うと、装置は違ってても結菊ま同じなんだなあ一と思った。科学は原理を見つけ出 したら、いろんな実験ができるんだと思った。
オームの実験の再現は、簡易エレキテルでの静電気の体験と違い、「オーム の法則1という科学的知識の発見に直接結びついているため、生徒の受け止め 方も「驚きや興趣に終わらず、新たな感想を生んでいる。その一つは、科学 の歴史的展開に対する関心と、それを引き金とした学習対象そのものへの興 味・関心の拡がりである。表29の歴史への関心」の欄の記述は、そのこと を示している。あと一つは、本研究の主題でもある科学的理論や科学的知識の 性質や、実験と理論の関係について問題意識を育てる契機となっている点で
ある。表29のF科学と科学者」の欄の記述は、これを表していると考える。
◆授業全般について
その主たる感想を表30に示す。
表30 授業の全体的感想
授ご
業方 法
業
・内・容
三
徳.
層憾一三『
・授業はとても解りやすかった。配線のところが解らなかったけど、あの画用紙の絵を使った説明 が特に解りやすかった、
・QHE]}も良かったけど、やっぱり自分たちもやった実験の方が頭に残って良かった。
・理科の中でも歴史みたいなの、すっごく興味がなくて、覚えようともしなくて、でもWWで見て よく分かったし、いろいろ実験も楽しかった。私だけかもしれないけど、たくさんのプリント類 は大事な部分だけでいいと思う。読むのが大変だし・・
・カレゴールの鳴る実験が分かりやすくて楽しかった。だから班でこの実験をしたとき、結構分か りやすくてすぐに出来た。ああいうふうに銅と亜鉛と食塩水を重ねただけで音力鴫つたり、電卓 が使えたりするなんて、す戯・なあと思ってびっくりした。
・オルゴールの実験が面白かったので、回路図がちゃんと書けるようになった、
・フランクリンのところの説明(概念について)力帰し分かりにくかりた。でも、ガルヴァニとボ ルタの解釈のところは、最後にノートにまとめたりしてくれたので分かりやすかった。
・歴史を通して電気について学べたのが良かったです6電流計や電圧計の意味が分力、りにくかった です』しかし、ボルトの由来が分かって良かったですb
・普通やらないような科学者とかをやって面白かった。
・「電気1といえば難しくて飽きて嫌になるぐらいなのに、理科の授業がとても楽しく感じられま した。勉強という感じがしなかったので「え一、もう1時間たったん?]って感じでした。
・実験のとき楽しかった。自分で電気を作れて、科学者になった気門
・先生の授業は、何力電気に興味をわかせるような感じの授業だった。
・電気についての有名な入物のいろんな説明がとても解りやすく楽しかった。
今回の授業実践は、概して肯定的に受けとめられている。
授業の方法としては、3種類の演示実験と2種類の生徒実験を配置し、うち 第5時の生徒実験「ボルタの電池」では、使用する器具を与えただけで、あと は生徒の探究に委ねた。OHPシートや絵の入ったカードの使用も、生徒の理解 を促進したと言える。逆に、たくさんのプリントを配布したが、簡潔さという 点で課題を残した。
総じて、科学史事例を切り口にした授業実践は、表30の「授業内容」や「印 象」の欄に見られるように、生徒にとって新鮮でもあり、興味づけに 功し ていると考えられる。
6調査結果のまとめ
以上の調査結果と考察から、科学史事例を用いた授業実践は、次のような特 徴を持つと言える。
① 科学・科学者・科学的理論が生み出されてきた過程への興味を増大さ せ、ひいては科学の琶界に対する視野を拡大させる。
② 実験の目的や実験と理論の関係について問趨意識を育て、理解を促進 させる。
③ 科学的知識の性質に関する理解を堤進し、創造的営みとして科学を認 、識することに貢献する。
④総じて科学を多様で動的なイメージのもとに描き、適切な科学観の形 成に寄与する。
以上の積極的諸点を指摘することができる。