第4章 カンボジア貧困層の経済状況と手洗いに用いる洗浄剤に関する調査
4.6 手洗いと家計支出状況に関する結果
4.6.2 手指汚染除去率検査
表 4-2 に示した全洗浄剤8品目の内、保有世帯割合が比較的高く、特に手洗いへの使用世 帯割合が高い液体石けん、固形石けん、食器洗剤、洗濯洗剤を手洗い剤4品目と定義し、本 研究の分析対象とした。これら手洗い剤4品目の手指除去効果を比較するため、検査に協力 的であった被験者 36 名を対象に手指汚染度検査を行った。この被験者別の手指汚染度除去 率は表 4-3 に示すとおりである。また、手洗い剤4品目による手洗い前後の手指汚染度平均 値とこの平均値から算出された手指汚染除去率については表 4-4 に示す。
液体石けんの手指汚染除去率が 80 %以上を示した被験者は6名(約 43 %)であり、最も 高い除去率では約 90 %に及んだ(表 4-3)。また、固形石けんを使用した被験者全員の手指 汚染除去率は 80 %以上と食器洗剤や洗濯洗剤に比べ高かった。
表 4-3 被験者別の手指汚染度除去率 被験者番号 液体石けん(%) 固形石けん
(%) 食器洗剤
(%) 洗濯洗剤 (%)
(水のみ)未使用 (%) 1 81.9 90.9 77.6 44.9 -22.5 2 68.5 80.6 26.8 86.5 20.6 3 81.0 85.6 80.5 58.4 -29.1 4 78.4 86.5 73.4 89.5 -49.1
5 75.8 17.2 51.3
6 81.2 66.0
7 92.5 81.3
8 72.0 84.5
9 76.2 34.5
10 81.2 11 66.9 12 75.6 13 82.3 14 72.7
(出典:調査結果にもとづき筆者作成)
手洗い前後の手指汚染度平均値の有意確率(両側)はいずれも有意水準 0.05 以下となり、
手洗い剤4品目による手洗い前後の手指汚染度には統計的に有意な差がみられた。また、多 重検定法により、手洗い剤4品目と水洗いによる手指汚染除去率には有意な差がみられた が、手洗い剤4品目の手指汚染除去率には有意な差はみられなかった。しかしながら、表 4-4 や図 4-4-8 に示すように、液体石けんと固形石けんの手指汚染除去率のばらつきは小さいこ とから、これら石けん類の手指汚染除去効果は食器洗剤や洗濯洗剤に比べ安定していると 考えられる。特に、固形石けんによる手洗いの手指汚染除去率は水のみの手洗いに比べ約6 倍と高く、手洗いには液体石けんや固形石けんが適正であることが示された。しかし、固形 石けんは手指汚染除去率が高いものの、それを介してヒトからヒトへ病原菌が移動すると いう交差感染を生じる可能性があるため、本研究では液体石けんが最も手洗いに適正な手 洗い剤と位置づけることとした。なお,未だ食器洗剤による手荒れの危険性は顕在化してお
能性があると考えられたが、この調査の被験者らの手指に手荒れはみられなかった。このこ とは、彼らが食器洗剤や洗濯洗剤を手洗いに使用する際、極少量を指先に付着させて手洗い を行っているためだと考えられる。
以上のことから、現地で入手可能な石けん類が手洗いに適正であることが示され、食器洗 剤や洗濯洗剤を使用した手洗いおよび水のみによる手洗いから適正な石けんを使用した手 洗いへ移行させる必要があると考えられた。
表4-4手洗い剤別手指汚染除去率 手洗い剤4品目 被験者
数
(人)
手洗い前の 手指汚染度
平均値
(RLU)
手洗い後の 手指汚染度
平均値
(RLU)
有意確率 手指汚染除去率(%)
A B (A-B)
×100/A 標準偏差 液体石けん 14 35,300 7,200 0.0029 80 6.3 固形石けん 4 24,900 3,700 0.0111 85 3.7 食器洗剤 9 41,000 13,500 0.0329 67 24.9 洗濯洗剤 4 54,010 19,300 0.0043 64 18.8 未使用
(水のみ) 5 27,600 23,700 0.4775 14 36.5
(出典:調査結果にもとづき筆者作成)
図 4-8 手洗い剤4品目と水洗いによる手指汚染度除去率のばらつき
(出典:調査結果にもとづき筆者作成)
-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 2 4 6 8 10 12 14 16
手指汚染度除去率(%)
液体石鹸 固形石鹸 食器用洗剤 洗濯用洗剤 水洗い