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第4章 カンボジア貧困層の経済状況と手洗いに用いる洗浄剤に関する調査

4.6 手洗いと家計支出状況に関する結果

4.6.4 家計支出額調査

ルー村とブーディンスラムの家計支出状況を把握するために、1ヶ月1人当たりの項目 別支出額を調査した結果を表 4-5 に示す。なお、項目別支出額の合計値を1ヶ月1人当たり の全家計支出額および収入額とみなした。

表4-5項目別支出額 支出項目

ルー村 (調査世帯数 70)

ブーディンスラム (調査世帯数 42) (ドル/人/月) (%) (ドル/人/月) (%) 全洗浄剤代 1.7 3.4 1.8 2.2 食費 23.2 48.4 38.0 46.6 教育費 5.0 10.6 20.5 25.4

医療費 3.4 7.0 4.9 6.1

石炭代 0.6 1.2 0.4 0.5

ガス代 1.0 2.0 2.6 3.3

電気代 1.9 4.0 5.7 7.0

水代 0.7 1.5 1.5 1.9

その他(娯楽費や 冠婚葬祭への出費 等)

10.5 21.9 5.6 7.0 全家計支出額 48 100 81 100

(出典:調査結果にもとづき筆者作成)

全洗浄剤代については両地区間に差は無いが、ルー村の全洗浄剤代の支出割合はブーデ ィンスラムに比べ高かった。これはルー村の全家計支出額がブーディンスラムの約2分の 1と低く、地区間で経済格差が生じているためである。また、両地区とも全洗浄剤への支出 が水への支出よりも多く、水に対しては支払い額が低いことがわかった。全洗浄剤や水への

支出割合の順位は他の支出項目と比べると低い。矢倉(2008)により「カンボジアには公的 な医療保険制度がないことで大きな医療費負担が家計の経済的没落の主要な契機となって いる」と述べられているように、本研究の調査対象地においても医療費への支出割合が6~

7 %と水や全洗浄剤への支出割合よりも高く、医療費も家計の負担となっていると考えら れる。さらに、ルー村では冠婚葬祭費への支出割合がブーディンスラムの約3倍と高く、そ の額はルー村の世帯1ヶ月当たりの食費の半分程度に相当する。

次に,適切な手洗い剤への移行および潜在需要の把握のために、1ヶ月1世帯当たりの全 家計支出額に対する全洗浄剤への支出額上限値を「手洗い剤への必要上限額」とし、さらに 全家計支出額に占める全洗浄剤の支出割合の上限を「手洗い剤への支出限度ライン」として 定義した。この仮説を用いると、図 4-11 と図 4-12 に示すとおり、各地域1点の例外を除 き、両地域の全洗浄剤に対する必要上限額は1ヶ月1世帯当たり 20 ドルであることがわか った。なお、各図に見られる点羅列は、聞き取り調査時に住民の口頭による自由回答方式の ためである。さらに、支出限度ラインはブーディンスラムで8%、ルー村で7 %であること が明らかとなった。このことから、全家計支出額がブーディンスラムで1ヶ月1世帯当たり 約 270 ドル以上、ルー村で1ヶ月 1 世帯当たり約 250 ドル以上の世帯は固形石けんから液 体石けんへ移行できる可能性があると考えられ、一方でこれらの金額以下かつ支出限度ラ イン以下に属する世帯では食器洗剤や洗濯洗剤から固形石けんに移行することができる可 能性があることが示唆された。

図 4-11 ルー村の手洗い剤への支出限度ライン 図 4-12 ブーディンスラムの手洗い剤への支出限度ライン

(出典:筆者作成) (出典:筆者作成)

0 5 10 15 20 25 30 35 40

0 500 1000 1500

全洗浄剤への支出額(ドル/世帯/月)

全家計支出額(ドル/世帯/月)

0 5 10 15 20 25 30 35 40

0 500 1000 1500

全洗浄剤への支出額(ドル/世帯/月)

全家計支出額(ドル/世帯/月)

全支出の8 %ライン 全支出の7 %ライン

図 4-13 に示す両地区の全家計支出額分布をみると、いずれの地区も支出額階層が低くな るにつれて回答者数が増加する傾向にあり、似通った分布の山を示す。また、図 4-14 に示 す家計支出額を収入額とみなし求めたジニ係数はルー村で 0.314、ブーディンスラムで 0.315 であり、各地区内の経済格差は小さいことがわかった。一方、世界の貧困ラインであ る1日1人当たり 1.25 ドル(2015 年現在)(WB,2010)から換算した1ヶ月1人当たり 37.5 ドル以下の人口割合は、ルー村で全体の約 50 %、ブーディンスラムで全体の約 20 %であり、

ルー村はブーディンスラムに比べ貧しい状況下にあるといえる。

ルー村では農業や牧畜業を営む上で衣服が汚れる機会が多いと考えられ、ブーディンス ラムに比べ洗濯を行う必要性が高く洗濯洗剤に対しての支出は多いと予想される。そのた め、ブーディンスラムより貧しいルー村では比較的高価な石けんを手洗いに使用する余裕 がなく、現状では洗濯洗剤を使用することになっていると考察される。

図 4-131ヶ月1人当たりの全家計支出額分布

(出典:調査結果にもとづき筆者作成)

0 3 6 9 12 15

0~9 10~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~89 90~99 100~109 110~119 120~129 130~139 140~149 150~159 160~169 170~179 180~189 190~199 200~209 210~219 220~229 230~239 240~249 250~259 260~269 270~279 280~289 290~299 300~309 310~319

回答者数(人)

全家計支出額(ドル/人/月)

ブーディンスラム(調査世帯数42)

ルー村(調査世帯数70)

図 4-14 ルー村とブーディンスラムのジニ係数およびローレンツ曲線

(出典:調査結果にもとづき筆者作成)