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情報装備の業種別効率性分析について 2 7

附論2−IT 化の経済分析の事例−

5.  情報装備の業種別効率性分析について 2 7

この分析は、各産業や企業が持つ情報システムに関する資本ストックを「情報装備ストック」とし て定義したうえで、(a)成長会計モデルを用いて、情報装備ストックが1人当たり付加価値にどのよう な影響を及ぼしてきたかを分析している。また、(b)DEA28モデルを用いて情報装備ストックの付加 価値額に対する効率性について分析している。さらに、DEAモデルの分析を一歩進めて(c)生産フ ロンティア関数モデルを用いて情報装備ストックを含めた投入要素の技術的非効率性と資源配分 上の非効率性を計測し、考察している。

いずれの分析も、(財)日本情報処理開発協会「情報化総合指標調査研究報告書」の方法を参 考にして、次のデータを使用している。データ期間は1982年度〜94年度である。

項目 使用データ

情報装備額 ハードウェア装備額とソフトウェア装備額の合計

ハードウェア装備額 情報処理実態調査の過去4年間の(a)減価償却費、(b)レンタル料、(c)リー ス料の合計

ソフトウェア装備額 情報処理実態調査の過去4年間の(a)外部要員人件費、(b)ソフトウェア委

託料・購入費、(c)パンチ委託料、(d)ソフトウェア使用料、(e)計算委託料、

(f)その他 ハードウェアのデフレ

ータ

(a)、(b):企業向けサービス価格指数の「電子計算機レンタル」、(c):同「電 子計算機・同関連機器リース」

ソフトウェアのデフレ ータ

(a)、(b):企業向けサービス価格指数の「ソフトウェア開発」、(c)、(d)、(e):同

「データ処理」、(f)建設統計月報の非住宅の建設工事デフレータ 情報装備率 情報装備額/産業別総従業員数(情報処理実態調査)を平滑化 付加価値生産性 付加価値/産業別就業者数(雇用動向調査)

付加価値 国民経済計算の雇用者所得、営業余剰、資本減耗引当を1990年基準の 国内総生産デフレータにより実質化し、その合計値を暦年から年度に機 械的に換算(1/4ずらす)

その他の資本ストック 長期遡及推計民間企業資本ストック(進捗ベース)−情報装備ストック 労働投入 産業別就業者数(雇用動向調査)、産業別月間総実労働時間(平成 2 年

毎月勤労統計年報)、各年度産業別月間総実労働時間指数(毎月勤労 統計年報)

注1. ここで4年間のデータを合計しているが、これは一般に4年といわれるシリコンサイクルに合

27 本資料は、平成13年10月11日の第4回研究会における坪根委員の報告を、事務局の責任 において本報告書の附論として要約・再編集したものである。報告時の内容とは若干異なる場合も ある。

28 DEA(Data Envelope Analysis)は、ORの分野で本来は個別企業の効率性分析に使われる手法 であるが、ここでは業種レベルのデータに適用した。

わせて装備が更新されると考えたためである。

注2. 大部分のデフレータは 1990年度以降しかないので、90〜92年度の平均的変化率を用いて 1982年度まで遡及した。

注3. 情報装備率は原数値では変動が大きいので、雇用動向調査の産業別就業者数を用いて 3 年移動累計平均をとって算出した。

以上のような各種の分析を行った結果は次のように要約できる。

(a) 成長会計モデルによれば、情報資本の付加価値生産性への貢献は産業別にばらつきがある ものの、分析対象期間において大きく寄与したということはできない。

(b) DEA モデルにおいても、D 効率値で測った効率性は各産業、各期間とも若干の非効率性が

認められる。情報装備ストックのスラックが存在している期間には、(労働投入との)限界代替率 を上回って情報装備ストックが増加しており、情報装備ストックのスラックが過剰な情報化投資 を測る手段として有効であることが示唆された。

(c) 生産フロンティア関数モデルからみた効率値もほぼ DEA モデルと同様の傾向を表している。

技術的非効率よりも資源配分上の非効率の方が大きく、日本的経営の非効率性を示唆してい るとも言える。

この研究から得られた、統計データに関するインプリケーションとしては、次のような事項が挙げ られる。

(a) インターネット普及期以降、直近までの情報装備ストックデータが必要である。情報処理実態 調査は1994年と95年の間に断層があるので注意を要する。

(b) 効率性分析は同一業種の多数の企業を対象にした分析に向いており、情報装備に関する業 種あるいは業態ごとのクロスセクションデータ、パネルデータが必要である。

(c) IT を活用するための企業組織の変革や労働力の質的向上を可能にするような知識の集積に

関するデータ(科学技術総合指標等)が必要である

  研究会においては、この報告に関して、次のような議論があった。

・ オープンソースのソフトウェアや、逆に、米国における光ファイバーのように、IT に関しては投 下した費用と実際の稼動状況が非常に違う場合もある。生産関数に関する伝統的な手法では 限界があり、統計面でどう捉えるかを考える必要がある。

・ IT 投資の範囲をコンピュータ等に限定せず、APS、ホスティング・サービス等の通信関係のサ ービスを提供するための投資も考慮する必要があるのではないか。それらのウェイトは高くなっ ているといわれている。

・ 設備の使い方によって稼働率、生産性が全く違ってくる。保守管理の費用をどれだけかけてい るかによっても違ってくるし、労働のスキルの問題も密接にかかわってくる。物理的なストックを そのまま分析に使うのは適当でない。現実に利用している量を捉えるべきだが、現実には難し

い。生産関数のアプローチに対して、費用関数からのアプローチも考えられる。

・ IT投資そのものと、それを活用する環境の両方を考慮する必要があるようだ。

・ ソフトウェア技術者に対する資格給のようなものは最近は減ってきており、資格は能力評価の 指標ではなくなっている。理由としては、資格が乱立したということや、資格と業務が乖離して いるというようなことが考えられる。また、熟練度と賃金は、特に企業が異なる場合は全くリンクし ていないようだ。

6. IT 革新における教育の重要性について−生産性上昇に関する人的資本の重要性−2 9  この研究は、東京大学の西村先生の研究室との共同研究である。IT 投資がTFPに与える影響 については、日米とも肯定的な結果は得られていない。一方、IT資本が価格低下により労働をスム ーズに代替していき、資本装備率が上昇することによって、労働生産性が上昇する効果(capital deepening)については、肯定的な結果が出ている。この研究では、日本では生産要素としての労 働の一部が短期的には固定要素となっている可能性が高いという問題を考慮しながら、教育レベ ル別の労働データを用いてIT投資との関係を分析した。

ITの範囲はOECDの定義に合わせた。使用した統計は、賃金構造基本調査、産業連関表の固 定資本マトリクス、情報処理実態調査である。労働のデータについては、基本的に教育別、年齢別、

生産・非生産別に分類している。教育別分類は、大卒以上を高学歴、未満を低学歴とし、年齢別 には40歳以上を熟年労働、未満を若年労働としている。全産業ベースでは、低学歴若年労働、低 学歴熟年労働、高学歴若年労働、高学歴熟年労働という分類であるが、製造業については別途、

低学歴生産労働、低学歴非生産労働、高学歴生産労働(若年)、高学歴生産労働(熟年)、高学歴 非生産労働(若年)、高学歴非生産労働(熟年)というデータ・セットも使用している。

IT資本については、5年ごとの産業連関表の固定資本マトリクスを元に情報処理実態調査(経済 産業省)を補完的に用いることでフローのIT 資本系列を作成し、実質化した上で恒久棚卸法に基 づいてストック系列に変換している。デフレータ−については、日銀の卸売物価では良い結果がで なかったので、Scheyer(1998)で使用されているデフレータ−をもとに、日本に適用してみた。資本 ストックを作成する際にも、適当な減耗率のデータがなく、多くの論文で使われている “Survey of Current Business”のデータを使った。

今回の実証分析の主な結論は以下の通りである。

(a) IT 利用産業、特に機械系の産業において、IT 資本と高学歴労働は補完関係にある。つまり、

これらの産業においてはIT化がさらに進展するためには高学歴労働の存在が必要となるわけ である。

(b) IT 資本は大卒未満の低学歴の労働に対して、代替的に働いていることが対象としているすべ

29 本資料は、平成13年8月28日の第2回研究会における峰滝委員の報告を、事務局の責任に おいて本報告書の附論として要約・再編集したものである。報告時の内容とは若干異なる場合もあ る。

ての産業で検証された。

(c) 低学歴労働はIT資本と高学歴労働の双方と代替的な関係にある。

データ制約の影響については、特にソフトウェア資本について、自社開発部分が入っていない ため実勢よりかなり過小になっている可能性が高い。特に90年代の推計結果に影響している危険 性がある。

研究会では、以上の報告に関して、次のような議論があった。

・ 労働投入としては派遣労働も考慮する必要があるが、統計上、派遣労働者に対する支払いは 人件費でなく雑費に入っている。また、アウトソーシングも生産関数の推計を難しくしているの ではないか。さらに、リース資本がどこで使われているかについては粗いデータしかない。固定 資本マトリクスは所有者主義で作成されており、こうした問題を抱えている。

・ 情報処理実態調査のリース項目(IT財)は急速に減少しており、今では全体の1%くらいしかな いのではないか。パソコンについては、税制の影響もあって、最近は2年くらいで更新するよう になっており、リースから購入に変わってきている。

・ 男女別の労働の分析も興味深いテーマである。

・ 年齢を40歳で区分したのは、いくつかのアンケート調査で、パソコンとインターネットの利用状 況等がかなり違っていたからである。

・ 推計への影響が最も大きいのはデフレーターであると思われる。また、減耗率、リースのデータ も重要である。デフレータ−と減耗率については、日本の公式データが欲しいところである。

7.IT 化が生産性に与える影響について3 0 

(1)IT化と生産性の関係

アメリカにおける生産性パラドックスの議論は、GDP統計の改定もあって、1990年代後半には生 産性の上昇が確認されたことから、一応決着がついたかに見える。しかし、生産性の上昇は IT 生 産部門の技術進歩によるものであって、IT 利用部門の生産性上昇には及んでいない、あるいは、

及んでいるとしても、それは資本深化によるものであって、IT 利用部門の技術進歩によるものでは ないという問 題を指摘する論者もある。もしもIT利用部門で技術進歩が生じているならば、IT利用 部門とIT 生産部門の間でイノベーションの連鎖が起こり、持続的な成長につながる可能性がある が、そうでないならば、IT 化の効果は投資が一巡すれば終息してしまう。以上のような議論を踏ま えると、IT化の生産性への効果を論ずる場合、IT利用部門がどのようにITを生産性上昇につなげ ようとしているのかを把握することが重要である。

一般的に、生産性に関する分析を行うには、マクロレベル、産業レベル、企業レベルの3つの方

30 本稿は経済企画庁調査局『政策効果分析レポート2000』所収の「IT化が生産性に与える効果