第3章 電子商取引を支える技術的、商業的、社会的なインフラ 表1 電子商取引: 主な政策的課題
9. 卸売物価指数における品質調整について 9
(4)品質調整効果
品質調整をやらなかった場合とやった場合の伸び率を比べると、国内卸売物価の場合、品質調 整によって概ね 0.4%くらい価格が低下している。グループ別には、一番大きいのが輸送用機器で、
ほかに精密機器、電気機器、一般機器等が比較的大きい。自動車は、表面の価格はあまり動かず、
新製品が出る際の機能向上という形で、技術進歩の効果(実質値下げ効果)が大きく出る。一方、
CSPIの方はあまり影響がない。ただし、パソコン等のリース価格がWPIの品質調整によって下がっ ていることを考慮に入れると、その分の間接的な効果が、寄与度にして 0.3%のマイナスになる。こ れを総平均の0.1%に加えてやるとマイナス0.2%となる。しかし、それでも、品質調整の効果はWPI よりも小さめだということになる。これは製造業とサービス業の生産性の違いをある程度反映したも のと考えられるかもしれない。
(5)IT関連財価格の推移
パソコンの価格は、これまで汎用コンピュータと合算した指数(電子計算機本体)の形でしか公 表していなかったため、この指数をみたユーザーから、下がり方が小さいのではないかと批判され ていたが、今回、報告企業の協力を得て、分離して公表できることになった。95 年の指数レベルを 100とすると、かなりの勢いで低下しており、2001年には20を割り込んでいる。米国のBLSが出し ているパソコンの価格と比べてみても、同じように大きく下がっている。また、入出力装置、携帯電 話、ビデオプレーヤー、ビデオカメラ、カーナビゲーション、集積回路、電子応用玩具(テレビゲー ム)もパソコンほどではないが、かなり下がっている。なお、集積回路については、傾向としては下 がっているが、半導体サイクルの影響も見られる。
(6)IT関連サービス価格の推移
国内・国際電気通信(固定電話)は、通信全体ほど下がってはいないが、最近はマイラインの競 争もあって下げ幅が大きくなっている。移動通信は、95年を100とすると、2000年には60を割り込 んでいる。アクセスチャージ(通信業者間の接続料金)は、最近になって特に大幅に下がっている。
電子計算機・同関連機器リースは、パソコン価格の低下に伴って下がっている。
(7)次期改定時に導入を検討しているIT 関連商品
ITは変化が激しいので、物価統計を作成する上でどういう商品をとればいいのかという問題があ る。物価指数は、現在は95年基準で、来年の末から2000年基準に切り替える予定になっている。
その際に次のような IT関連商品の導入や調査内容の拡充を行うことを検討している。
・ 新規に調査を開始する商品(案)
DVDビデオ、携帯情報端末、ゲーム用ソフトウェア
・ これまでの分類を分割して調査内容を拡充する商品
電子計算機本体をパソコンと汎用コンピュータ・サーバーに分割するほか、外部記憶装置、入出
力装置、搬送装置、ビデオカメラ、集積回路も分割する。
(8)現在認識している品質調整の課題
IT を背景として商品が多様化していく中で、どうやって価格を捕捉していくかということについて は、2つの問題点を認識している。第1点は、経済学的な特性という概念と実務上の品目は必ずし も一致しないということである。パソコンと携帯情報端末のように共通の機能があって、複数の品目 で代替可能な財・サービスを提供していく場合もあるし、携帯電話のように、移動電話サービスと情 報提供サービスという複数の品目にまたがる機能が融合して提供される場合もある。最近では、オ ーダーメード商品が非常に増えてきており、これはさらに難しい。IT は特性と品目のずれが生じる 触媒のようになっている。
第2点は、特性を把握することの難しさである。新機能、新製品が次々に登場してきており、それ によって価値、効用がどのくらい増加したのかを計測することが難しい。特にサービス分野では非 常に難しい。
それ以外にも、IT 関連の財・サービスの問題に限定して考えると、コスト評価の手法に関して非 常に難しい問題が出てくる。コストで機能の追加分を捉えるということは価格が完全競争で一義的 に決まることが前提になっているが、収穫逓増の世界になってくると限界コストを計算することが非 常に難しくなるからである。
今後とも、学者や海外統計機関との情報交換等を通じて、品質調整法の研究を深めながら、
様々な手法を駆使して品質調整に積極的に取り組んでいくとともに、実際の適用実績や研究成果 等の情報公開にも努めていくこととしたい。
研究会では、以上の報告に関して、次のような議論があった。
・ 効用の変化を考慮した価格指数を推定するTrajtenberg等のアプローチもあるが、膨大なデー タの収集、効用関数に関する推計誤差の評価といった実務的な問題がクリアされていない。
・ ソフトウェア(開発サービス)の価格は人件費のコストから計算しており、それ以外の情報は使っ ていない。標準的なテストによりソフトの性能を評価するという方法も考えられるが、パソコンと 同程度の特性データがそろえばできるかもしれない。
・ 消費者物価が家計の購入価格を捉えるのに対し、卸売物価は企業間取引の価格を捉える。し かし、ネット取引やSOHO のような企業と家計を区別しにくい取引形態が多くなってくると、こう した仕分けが難しくなってくるのではないか。
・ ネットワーク上の取引は、まだその商品の「主な取引チャネル」にまでは成長していないため、
卸売物価指数の調査価格としては、今のところ採用していない。