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情報構造からみた「文脈参照現場指示用法」の性質

ドキュメント内 現代ビルマ語における指示詞の研究 (ページ 69-72)

3. 口語体ビルマ語の指示詞

3.5. 口語体にみられる「文脈参照現場指示」

3.5.5. 情報構造からみた「文脈参照現場指示用法」の性質

文脈参照現場指示でないことは明らかである。一方、(84)と(85)も眼前にある指示対象を直 接指し示すのでdàが使われるはずであるが、潜在的な先行文脈があるためʔɛ́dàが用いられ ている。ただし(84)は心理的要因も同時に働いていると考えられる。つまり文脈参照現場指 示であるということは心理的な要因が同時に働いていることを排除するものではない。し かし(85)の例では心理的要因は一切働いておらず、文脈参照をしているがゆえにʔɛ́dàが選択 されたと考えられる。ただし、ʔɛ́dàがこのように文脈的情報にかかわるものによると思われ

るのは3.5.2で触れたように-lèや-pɔ̂を伴わない場合のみ有効である。

3.5.6. 「文脈参照現場指示」のまとめ

3.5節では物理的に話し手の近くにある対象物を指すʔɛ́dì/ ʔɛ́dàについての考察を行った。

その結果、これまでよく知られている現場指示(直示)と文脈指示という用法の分類基準の

みでʔɛ́dì/ ʔɛ́dà を説明するには不充分であることが分かった。本来現場指示は先行文脈を必

要とせず、現場・眼前にある指示対象を何の前提もなしに直接指し示す。しかしながら、ビ

ルマ語のʔɛ́dì/ ʔɛ́dà には、これまでの現場指示の基準に従って説明できる場合もあれば、そ

うでない場合も観察される。後者はこれまでのビルマ語研究で指摘されたことのない現象 であり、このような例は日本語の指示詞「コレ」にもみられることを指摘した(3.5.3.3を参 照)。

以上、口語ビルマ語の指示詞の現場指示機能を再検討し、ʔɛ́dì/ ʔɛ́dà に現場指示用法があ ることを示した。また、現場の指示対象を直接に指し示す場合に用いられる指示詞は発話の 冒頭に置かれて使用されたとしても、純粋に現場指示(直示)とは認めがたい潜在的な先行 文脈を受ける例があるということを指摘した。

次の表 20はビルマ語の純粋な現場指示と文脈参照現場指示を整理したものである。

表 20 純粋な現場指示と文脈参照現場指示の分類 (1) 心理的要因が働かない場合

距離

純粋な現場指示 文脈参照現場指示 位置 非位置 非位置 心理

-lè/-pɔ̂を伴う -lè/-pɔ̂を伴わない

近い 近称 dì dà dà ×

遠い 遠称 ② ʔɛ́dì ʔɛ́dà ʔɛ́dà ʔɛ́dà

① hò hòhà hòhà ×

(2) 心理的要因が働く場合

距離

純粋な現場指示 文脈参照現場指示 位置 非位置 非位置 心理

-lè/-pɔ̂を伴う -lè/-pɔ̂を伴わない

近い 近称 dì dà dà × 親近感

遠い 遠称

② ʔɛ́dì ʔɛ́dà ʔɛ́dà ʔɛ́dà 疎遠感

① × × hòhà × 関係なし

以上、本章では、口語体ビルマ語にみられる現場指示、文脈指示と、文脈参照現場指示に

ついての考察を行い、口語体指示詞の機能を明らかにした。次の第4章では、文語体指示詞 についての考察を行う。

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