第 8 章 積分 115
8.14 微分方程式
P.91で,簡単な微分方程式を学んだ。そのとき,
f′(x) =af(x) (8.139)
という微分方程式の解は
f(x) =f(0)eax (8.140)
と な る こ と を 式 (6.41) で 学 ん だ 。式 (8.140) が 式
(8.139) を満たすことは, 代入してみればすぐにわか
る。しかし, ここでは, そういう天下りなやり方を使わ ないで微分方程式の解を得る方法を学ぶ。
例えば,関数f(x)について,
f′(x)−2x−1 = 0 (8.141)
は,微分方程式である。といってもこれはf′(x) = 2x+ 1と同じだから,f(x)は2x+ 1の原始関数である。従っ て, 2x+ 1 を不定積分すれば解は求まる。従って, 式
8.14 微分方程式 133 (8.141)の解は,一般に,
f(x) =
∫
(2x+ 1)dx=x2+x+C (8.142) となる。ここでCは任意の定数(要するに積分定数)で ある。だから,x2+x+ 1,x2+x−5,x2+x+ 100な どは,いずれも式(8.141)の解である。このように,一般 に,微分方程式は複数の解を持つ。その「複数の解」は,
式(8.142)のように任意定数を含む式で一般的に書ける
ことが多い。そのような解を 一般解 という。
式(8.141)は, あまりに簡単な例である。この程度の
話なら,わざわざ微分方程式という概念を持ち出さない でも「積分」で十分である。しかし,これから学ぶ微分方 程式はそんなに単純な話ではない。例えば, 式(8.139) という微分方程式は,
f(x) =
∫
af(x)dx (8.143)
とできるはずだ。しかし,右辺の積分の中に, f(x)その ものが入ってしまっている。f(x)が欲しいのに,そのた めにはf(x)を積分しなければならない。これは困った (注: もちろん我々は既にこの微分方程式の解は式(8.140)で あることを知っているのだが,ここではあえてそれを知らない という前提で話をしている)。
実は,式(8.139)は,以下のような工夫で解くことがで きる:
まず, 微分の定義を思い出そう。すなわち, 十分0に 近い∆xについて,
f(x+ ∆x)≒f(x) +f′(x)∆x (8.144) である。これは,f(x+ ∆x)−f(x) = ∆f とおいて,
∆f ≒f′(x)∆x (8.145)
と書いても同じことである。ここで,式(8.139)を使っ てf′(x)を消去すると,
∆f ≒af(x)∆x (8.146)
となる。両辺をf(x)で割ると(以下,f(x)の”(x)”など は省略して書く),
∆f
f ≒a∆x (8.147)
となる。ここで,xがx0, x1, x2,· · · , xnのときに, f は それぞれf0, f1, f2,· · ·, fnであるとする。つまり,kを
0からnまでの整数として, fkはf(xk)のことである。
各xkとxk+1の間隔は十分に小さいとする。
∆fk =fk−fk−1 (8.148)
∆xk=xk−xk−1 (8.149)
とすれば, 上の式(8.147)より,
∆f1
f0 ≒a∆x1
∆f2
f1 ≒a∆x2
∆f3
f2 ≒a∆x3
· · ·
∆fn
fn−1 ≒a∆xn
となる。これを辺々, 足しあわせれば,
∑n k=1
∆fk fk−1
≒
∑n k=1
a∆xk (8.150)
となる。これは, ∆fkや∆xkを十分に小さくとれば,積 分の定義式(8.4)から*6,
∫ f(x) f(x0)
df f =
∫ x x0
a dx (8.151)
となる。ここで, xn をあらためて xとおいた。また,
∆がdに変わった瞬間に,近似等号”≒”は等号”=”に変 わった。
上の式の両辺の積分をそれぞれ実行すると次式に なる:
ln|f(x)| −ln|f(x0)|=a(x−x0) (8.152) この式は, 以下のように変形できる:
lnf(x) f(x0)
=a(x−x0) (8.153)
f(x) f(x0)
= exp{a(x−x0)} (8.154)
f(x)
f(x0)=±exp{a(x−x0)} (8.155) f(x) =±f(x0) exp{a(x−x0)} (8.156)
*6式 (8.150)左辺について, ∆fk が式(8.4) の∆xk に相当 し,fk−1 が式(8.4)のξk に相当し, 1/fk−1 が式(8.4)の f(ξk)に相当する。すると独立変数f に関する関数1/f の, f=f(x0)からf=f(x)までの積分となる。
ここでx=x0のとき両辺が一致するには,右辺のマイ ナスはありえない。従って,
f(x) =f(x0) exp{a(x−x0)} (8.157) これが,上の微分方程式(8.139)の解である。特に,x0= 0とすると,これは次式のようになる:
f(x) =f(0)eax (8.158)
(無事に式(8.140)が得られた!)
f(0)の値が何であっても,式(8.158)は解なので, 解 は無数にたくさんある。ところが,f(0)の値があらかじ め具体的に決まっていれば, 解はひとつに定まる。この ように,特定のxでのf(x)の値が決まっていれば*7,そ れが条件となって, その条件を満たす解は一つだけに絞 られる。このような条件を 初期条件(initial condition) という。
ところで, もし君が注意深い人ならば, 式(8.147)で,
「f = 0のときは”0での割り算”は許されないので, こ の変形は許されないのでは?」と思っただろう。その通 りである。しかしそれは, 結果的には, どうでもよくな る。というのも, あるxにおいてf(x) = 0ならば, 式 (8.139)に戻ると,f′(x) = 0である。従って, そのxに おいて,微小量dxについて,
f(x+dx) =f(x) +f′(x)dx=f(x) = 0 (8.159) となる。つまりxのすぐそば(x+dx)でもf = 0であ る。これを延々と繰り返して考えると,全てのxについ て, f(x) = 0となる。つまりf は恒等的に0に等しい, 定数関数となる。これは,式(8.158)でf(0) = 0とした 場合になっている。結果的に, うまくつじつまがあって いるのだ。そうだからといって, f = 0の場合を無視し て割り算をしてしまうのは, 論理的に正しくは無いのだ が, ここは結果オーライということで, 特段f = 0の場 合に言及することは不要としておこう。
上で述べた解法は, 説明のために, まわりくどく記 述した。ところが, f′(x)をdf /dxと書き換えれば, 式 (8.139)は
df
dx =af(x) (8.160)
と書くことができる。すると, 式(8.146)以降の議論は, 形式的にはdf /dxを分解して, df とdxをそれぞれ独
*7多くの場合,x= 0での値。
立した変数のように演算し, 積分に持ち込めるという ことがわかるだろう(わからない人は, とりあえずそう いうものだと思ってほしい)。つまり, この微分方程式 (8.139)すなわち式(8.160)は, 左辺にf とdfが, 右辺 にxとdxが, それぞれ集まるように整理して(係数a はどちらにあっても良い),
df
f =adx (8.161)
として,両辺に積分記号をくっつけて,
∫ df f =
∫
adx (8.162)
として,あとは両辺の積分を実行すればよい。
このように,dfやdxなどの微小量まで含めて, 2つの 変数(ここではf とx)を式の左辺と右辺に分離して寄 せ集めること(ここではf は左辺に,xは右辺に寄せ集 めた)を 変数分離 と呼ぶ*8。
変数分離したあとは, 各辺を積分すればよいのだが, その積分区間をどう設定するかという問題が残る。しか し実際にはあまり気にせず, とにかく積分定数を残して 不定積分してしまってもよい。そして最後に初期条件を 代入することで,残った積分定数を決定すればよい。
そういう手順で上の微分方程式をもういちど解くと, 以下のようになる(君が今後, このような微分方程式を 解くときには,以下のように考えればよい):
**微分方程式の変数分離解法(例) **
df
dx =af (8.163)
これを変数分離して, df
f =adx (8.164)
両辺を不定積分して,
∫ df f =
∫
adx (8.165)
この不定積分を実行して,
ln|f|=ax+C (8.166)
*8変数分離が可能な微分方程式のことを,「変数分離型微分方程 式」と呼ぶ。変数分離ができない微分方程式もたくさん存在す る。そういう微分方程式の場合は,別の解法を探さねばならな い。
8.15 ロジスティック方程式 135