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微分の公式

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第 5 章 微分 65

5.5 微分の公式

ても, その関数のグラフが与えられれば, その関数の導 関数のグラフの概形を直感的に描くことができる。すな わち,関数上のいくつかの点での「接線の傾き」を考え て,それを別のグラフにプロットすればよいのだ。

● 問105 図5.6 に描かれた2つの関数について, そ れぞれ導関数の概形を重ねて描け。レポートを書くとき は, レポート用紙にまずこのグラフを写しとってから, それに重ねて描け。

-2 -1 1 2

-2 -1 1 2 x

y

O (1)

-2 -1 1 2

-2 -1 1 2 x

y

O (2)

図5.6 問105のグラフ。それぞれの導関数の概形を 描いてみよう。(1)のヒント:左右の端と中央(x= 0) で,接線の傾きは0になる。x <0では右上がりなの で接線の傾きはプラス。0< xでは右下がりなので接 線の傾きはマイナス。

5.5 微分の公式

実際に関数を微分するときは,微分係数(導関数)の定

義式(5.10)に遡ってやることは少ない。複雑な関数の

場合は前節でやったように数値微分を使うし, そうでな ければ, 以下に示すような, いくつかの便利な定理(公 式)を活用してちゃっちゃとやってしまうのだ。以下, f(x), g(x)を,任意の(微分可能な)関数とする。

微分の公式1: 足し算はバラせる

{f(x) +g(x)}=f(x) +g(x) (5.30) 証明: F(x) =f(x) +g(x)とおくと,

F(x+dx) =f(x+dx) +g(x+dx)

=f(x) +f(x)dx+g(x) +g(x)dx

=f(x) +g(x) +{f(x) +g(x)}dx

=F(x) +{f(x) +g(x)}dx (5.31) ここで, dxの係数に着目すると, 微分係数の定義から,

F(x) =f(x) +g(x)。 ■

例5.5 f(x) =x2+2xを微分しよう。公式1を使うと, f(x) = (x2+ 2x)= (x2)+ (2x) (5.32) となる。例5.2から, (x2) = 2xであり,式(5.22)から, (2x)= 2である。従って,

f(x) = 2x+ 2 (5.33)

となる。(例おわり)

微分の公式2: 定数倍は前に出せる aを定数として,

{af(x)}=af(x) (5.34) 証明: F(x) =af(x)とおくと,

F(x+dx) =af(x+dx) =a{f(x) +f(x)dx}

=af(x) +af(x)dx

=F(x) +af(x)dx (5.35) ここで, dxの係数に着目すると, 微分係数の定義から,

F(x) =af(x)。 ■

微分の公式1と2のような性質は, 数列の和Σにも あったこと(P.41)を覚えているだろうか? (線型性)

例5.6 f(x) = 3x2を微分しよう。公式2を使うと, f(x) = (3x2) = 3(x2) (5.36) となる。例5.2から, (x2) = 2xである。従って,

f(x) = 3(2x) = 6x (5.37)

となる。(例おわり)

例5.7 関数f(x) =x3+ 2x2+ 3x+ 1を微分しよう。

公式1,公式2より,

f(x) = (x3)+ 2(x2)+ 3(x)+ (1) (5.38) ここで, 右辺の(1) とは定数関数1(すべてのxに対し て定数1を対応させる関数)の微分であり, 式(5.23)よ り, もちろん0である。(x3) や(x2), (x)に式(5.26) を使うと,

= 3x2+ 4x+ 3 (5.39)

(例おわり)

● 問106 以下の関数を微分せよ: (1) f(x) =x2+x+ 1

(2) f(x) = 4x2+ 5x+ 6 (3) f(x) = 3x2+ 3x+ 4

(4) f(x) = 5/x(ヒント: 例5.4を使う) (5) f(x) =x−1/x

微分の公式3: 積の微分

{f(x)g(x)}=f(x)g(x) +f(x)g(x) (5.40) 証明: F(x) =f(x)g(x)とおくと,

F(x+dx) =f(x+dx)g(x+dx)

={f(x) +f(x)dx}{g(x) +g(x)dx}

=f(x)g(x) +f(x)g(x)dx +f(x)g(x)dx+f(x)g(x)dx2 ここで, dx2を無視し, さらに, dxの項を整理し, また, f(x)g(x)をF(x)で置き換えると,

F(x+dx) =F(x) +{f(x)g(x) +f(x)g(x)}dx dxの係数に着目すると,微分係数の定義から,

F(x) =f(x)g(x) +f(x)g(x) (5.41)

例5.8 関数F(x) = (x2+ 2)(x2+x+ 3)を微分しよ う。f(x) =x2+ 2, g(x) =x2+x+ 3として, 公式3

を使うと,

F(x) = (x2+ 2)(x2+x+ 3) + (x2+ 2)(x2+x+ 3)

= 2x(x2+x+ 3) + (x2+ 2)(2x+ 1)

= 4x3+ 3x2+ 10x+ 2 (5.42)

となる。一方,先に因数を展開してしまって, F(x) = (x4+x3+ 5x2+ 2x+ 6)

= (x4)+ (x3)+ 5(x2)+ 2(x)+ (6)

= 4x3+ 3x2+ 10x+ 2 (5.43) とすることもできる。どちらのやりかたでやっても, 答 えは一致する。このように, 数学は色んなやり方で正解 に到達できるものなのだ。(例おわり)

● 問107 以下の関数:

f(x) = (x2+x+ 1)(x2−x−2) (5.44) について,

(1) 2つの関数: x2+x+ 1とx2−x−2の積とみなし て,積の微分の公式を使って微分せよ。

(2) 因数を展開して(つまり掛け算を実行してカッコを 外して)から微分し, 前小問の結果と一致すること を確認せよ。

「関数f(x)」などの(x)を省略して書くことがよくあ る。式が単純になって見やすいし覚えやすい。公式1, 2, 3は,それぞれ以下のようになる:

(f+g) =f+g (5.45)

(af) =af (5.46)

(f g) =fg+f g (5.47) さて, 多くの学生がつまずくのが次の公式である。と いっても,しっかり説明を読めば難しくないはずだ。

微分の公式4: 合成関数の微分

{g(f(x))}=g(f(x))f(x) (5.48) 注: ここでg(f(x))は,g(x)の導関数g(x)のxの 部分にf(x)を代入したものであり, g(f(x))の導 関数ではない。

証明の前に例を示す:

例5.9 関 数 (x2 + 1)3 を 微 分 し よ う 。こ の 関 数 を,

g(x) =x3という関数のxの部分に,f(x) =x2+ 1と

5.5 微分の公式 73 いう関数を入れたもの」とみなす。g(x) = 3x2だから,

公式4より,

{(x2+ 1)3} ={(f(x))3}= 3(f(x))2f(x)

= 3(x2+ 1)2{(x2+ 1)}= 3(x2+ 1)2(2x)

= 6x(x2+ 1)2 (5.49)

となる。これで完了としてよいのだが, ここではあえて 式(5.49)を展開すると,

6x5+ 12x3+ 6x (5.50)

となる。一方, (x2+1)3を先に展開してから微分すると, {(x2+ 1)3}= (x6+ 3x4+ 3x2+ 1)

= 6x5+ 12x3+ 6x (5.51) となる。式(5.50), 式(5.51)は一致している(つじつま 合っている)。(例おわり)

この例は別に公式4を使わなくても, 式を展開してか ら普通に微分すれば解けた。しかし, 次の例のように, 公式4がどうしても必要になる場面もたくさんある: 例5.10 次の関数を微分しよう。

1

2x2+ 1 (5.52)

f(x) = 2x2+ 1, g(x) = 1/xとして,公式4を使おう。

式(5.28)よりg(x) =1/x2である。従って, { 1

2x2+ 1 }

= 1

(f(x))2 ×f(x)

= 1

(2x2+ 1)2 ×(2x2+ 1)

= 4x

(2x2+ 1)2 (5.53)

となる。(例おわり)

実際には, こういうふうにg(x)f(x)をわざわざ 作ったりしないで,頭の中でまず2x2+ 1をひとつの変 数とみなして全体を微分し,さらに2x2+ 1をxで微分 して掛け合わせ,いきなり式(5.53)の最後の行を暗算で 導出できるようになるのが望ましい。最初は難しいかも しれないが,慣れるまで練習しよう。

では公式4を証明しよう: F(x) =g(f(x))とおくと, F(x+dx) =g(f(x+dx))

=g(

f(x) +f(x)dx)

(5.54)

ここで, dxは0に限りなく近い微小量なので, それに f(x)を掛けた数, すなわちf(x)dxも, 0に限りなく近 い微小量とみなすことができる。そこで, 微分係数の定 義式(5.10) において, f(x)をg(x)とし,x0f(x)と し,dxf(x)dxとすれば,

g(

f(x) +f(x)dx)

=g(f(x)) +g(f(x)){f(x)dx} (5.55) となる。右辺第一項のg(f(x))は, もちろんF(x)であ る。従って,式(5.54)式(5.55)より,

F(x+dx) =F(x) +g(f(x))f(x)dx (5.56) dxの係数に着目すると,微分係数の定義から,

F(x) =g(f(x))f(x)。 ■

この公式は, 一見, 複雑そうに見えるが, 式(5.17)の ような書き方を使うと,

dg dx =dg

df df

dx (5.57)

と表せる。右辺に現れる2つの微分の掛け算を, 形式的 に, 微小量dg, df, dxの分数の掛け算とみなせば, 右辺 を約分したものが左辺になるだけだ。

● 問108 以下の関数を,合成関数の微分の公式を使っ て微分せよ:

(1) F(x) = (3x2+ 2)3 (2) F(x) = (x2+x+ 1)3

(3) F(x) = (x5+x4+x3+x2+x+ 1)2 (4) F(x) = (1 + 1/x)2

● 問109 関 数 u(x) の 逆 数 で あ ら わ さ れ る 関 数 1/u(x)の導関数は,以下で与えられることを示せ*4:

(1 u

)

=−u

u2 (5.58)

ヒント: g(x) = 1/x,f(x) =u(x)として公式4を使う。

● 問110 関 数 v(x)u(x) の 比 で 作 ら れ る 関 数 v(x)/u(x)の導関数は,以下で与えられることを示せ:

(v u

)

= vu−vu

u2 (5.59)

*4(5.58),(5.59)では関数u(x)の「(x)」を省略して書い ていることに注意せよ。

● 問111 以下の関数を微分せよ: (1)

f(x) = 1 1 +x2

(2)

f(x) = x 1 +x2 ヒント: (1)ではu(x) = 1 +x2 として式(5.58)を使 う。(2)ではu(x) = 1 +x2, v(x) = xとして式(5.59) を使う。

例5.11 1/xnを微分してみよう(nは1以上の整数の 定数とする)。この関数は,

g(x) =xn と,f(x) = 1 x の合成関数とみなせる。実際

g(f(x)) = (1

x )n

= 1

xn (5.60)

となる。ところで,式(5.26)よりg(x) = nxn1 であ り, 例5.4よりf(x) =1/x2だから, 式(5.48)より, 次式が成り立つ:

( 1 xn

)

=n (1

x

)n1(1 x

)

=n (1

x )n1(

1 x2

)

= n

xn+1 (5.61)

式(5.61)は次のように書き換えられる。

(xn)= −n xn1 (5.62) これは, 式(5.26)でn−nと置き換えたものに一致 する。もともと式(5.26)では,nを1以上の整数とした が, これで,定数nが負の整数のときも成り立つことが わかった。

次に学ぶ公式は, 公式4の応用だ。これはP.10で学 んだ対数を微分したりするのに使う(その話は後の章に 出てくる)。

微分の公式5: 逆関数の微分 g(x)f(x)の逆関数とすると

g(x) = 1

f(g(x)) (5.63)

注: ここでf(g(x))は,f(x)の導関数f(x)にg(x) を代入したものだ。f(g(x))の導関数ではない。

証明:

合成関数の微分より,

{f(g(x))} =f(g(x))g(x) (5.64) である。ところで, g(x)f(x)の逆関数なので, P.60 の式(4.38)より,恒等的にf(g(x)) =xである。従って, {f(g(x))} = (x)= 1 (5.65) 式(5.64)と式(5.65)より,

f(g(x))g(x) = 1 (5.66)

この両辺をf(g(x))で割れば, g(x) = 1

f(g(x)) (5.67)

となり,式(5.63)に一致する。 ■

例5.12 f(x) =x1/nを微分してみよう。ただしnは 1以上の整数とする。g(x) =xnとすると,g(f(x)) =x だから, g(x)f(x)は互いに逆関数。一方, g(x) = nxn1である。式(5.63)(逆関数の微分)より,

f(x) = 1

g(f(x))= 1

n(f(x))n1 = 1 n(x1/n)n1

= 1

nx(n1)/n = 1

nx(n1)/n

= 1

nx(1n)/n= 1

nx(1/n)1 (5.68) (例おわり)

式(5.68)は, 式(5.26)でnを1/nと置き換えたもの に一致する。これで, 式(5.26)は, 定数nが正の整数の 逆数のときも成り立つことがわかった。

式(5.26), 式(5.62), 式(5.68)からわかったように, 定数αが正の整数または負の整数または正の整数の逆 数のとき,

(xα)=αxα1 (5.69)

が成り立つ。そのことと合成関数の微分の公式を使え ば, αが負の整数の逆数のときや, 0以外の有理数(整数 どうしの比であらわされる数)のときもこれが成り立つ ことが証明できる。実数は有理数の極限としてあらわ されるので*5,有理数で成り立てば,実数でも成り立つ。

従って,以下の公式が成り立つ:

*5このあたりは高度な数学になるので,詳細はわからなくてもよ い。

5.6 線型近似 75

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