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原始関数と不定積分

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第 8 章 積分 115

8.5 原始関数と不定積分

f(x)を微分可能な関数とする。

x a

d

dtf(t)dt=f(x)−f(a) (8.22) 証明: まず,積分の定義より,

x a

d

dtf(t)dt

n k=1

fk)∆tk (8.23)

である。ここで t0 = a, tn = x, ∆tk = tk −tk1

であり, ξktk1 以上tk 以下の任意の数。ここで, ξk =tk1とする。∆tkが微小なとき, 微分係数の定義 から, f(tk)≒f(tk1) +f(tk1)∆tk が成り立つ。す なわち,

fk)∆tk =f(tk1)∆tkf(tk)−f(tk1) である。従って,式(8.23)右辺は,

n k=1

{f(tk)−f(tk1)}= f(t1) −f(t0) + f(t2) −f(t1) + · · ·

+f(tn1)−f(tn2) + f(tn) −f(tn1)

となる。この式は, 前後の行どうしで打ち消し合って, 最初と最後, つまりf(t0)とf(tn) しか残らず, 結局, f(tn)−f(t0),すなわちf(x)−f(a)になる。 ■ 公式7, 8を 解析学の基本定理 と呼ぶ。ある関数をど こかからxまで積分してxで微分すれば, もとの関数に なってしまう(公式7)し,ある関数を微分して積分して も, もとの関数に戻ってしまう(公式8)。つまり, 微分 と積分は, 互いに逆の操作である (あくまで今学んでい る範囲では)。

8.5 原始関数と不定積分

ここで話はちょっと変わり, 「原始関数」と「不定積 分」というものを学ぼう。この話は,後で関数の積分を 実際に計算する方法を学ぶための準備である。

ある関数F(x)を微分したら関数f(x)になるような とき,すなわち

d

dxF(x) =f(x) (8.24)

となるとき,F(x)をf(x)の原始関数 と呼ぶ(定義)。も

ちろん, このとき, f(x)はF(x)の導関数である。従っ て,原始関数は導関数の対義語である。

例8.1 d

dxx2= 2x (8.25)

従って,x2は2xの原始関数である。(例おわり) よくある間違い38 原始関数を原子関数と書いてしまう。

よくある間違い39 「F(x) を 微 分 し て f(x) に な る と き F(x)を原始関数と呼ぶ」... そう書いたら「F(x)をf(x)の 原始関数と呼ぶ」と言わねばなりません。原始関数は単体で成 立する概念ではありませんから。

ある関数f(x)の原始関数F(x)を一般的に求めるこ とを 不定積分 とよび,以下のように書き表す:

f(x)dx (8.26)

式(8.26)は式(8.4)の左辺とよく似た記号を使っている

し, 「不定」という語がついているものの「積分」とい う用語も使っている。しかし, 不定積分は「原始関数を 求めること」であり,式(8.4)で定義される「積分」とは 別物なのだ。式(8.4)の積分を 定積分 とも呼ぶのは,こ の「不定積分」との区別を明示するためである。とは言 うものの, 後で学ぶように, 定積分と不定積分の間には 実は密接な関係がある。だから, 慣習的には, 不定積分 も定積分もまとめて「積分」と呼ぶことも多い。

よくある間違い40 「F(x) =∫

f(x)dxとなるF(x)をf(x) の原始関数と呼ぶ」... それは不定積分の式ですね。不定積分 は「原始関数を求めること」です。この「定義」を言い換える と,「f(x)の原始関数を求めたらF(x)になるとき,F(x)を f(x)の原始関数という」となります。定義として変でしょ?

さて, 定数は微分したら0になるので, ある関数の原 始関数に, 定数を足したり引いたりしたものも原始関数 になる。

例8.2 d

dx(x2+ 3) = 2x (8.27)

従って,x2+ 3も2xの原始関数である。(例おわり) また,ある関数f(x)に2つの原始関数F(x), G(x)

あったとすると,その差F(x)−G(x)を微分すれば, d

dx{F(x)−G(x)}=F(x)−G(x) (8.28)

=f(x)−f(x) = 0 (8.29) となるので, F(x)−G(x)は定数である (微分して恒等 的に0になる関数は定数関数しかないので)。つまり,

積分の公式9: 原始関数の不定性

関数f(x)の原始関数がF(x)であるとき, それに 任意の定数Cを足した関数F(x) +Cも, f(x)の 原始関数である。また,逆に, f(x)の任意の2つの 原始関数の差は,定数である。

従って,原始関数は,定数の足し引きのぶんだけ,不確 定である。その不確定な定数のことを 積分定数 と呼び, 通常はCと書く。

不定積分は原始関数を 一般的に 求めることなので,答 えには常に積分定数Cをつけねばならない。

例8.3 2xの原始関数は, 一般的に, x2+C と書ける (Cは積分定数)。すなわち,

2x dx=x2+C (8.30)

(例おわり)

よくある間違い41 不定積分して,積分定数をつけ忘れる。

以後しばらく, 不定積分において重要な公式をいくつ か示す。これらの多くは, 定積分でも似たようなものが あったことに君は気づくだろう:

積分の公式10: xaの不定積分 a1以外の定数とすると,

xadx= 1

a+ 1xa+1+C (8.31) 証明: 微分で学んだように,=1ならば,実際,

d dx

( 1 a+ 1xa+1

)

=xa (8.32)

● 問197 上 の 公 式 を 利 用 し て 以 下 の 不 定 積 分 を 求 めよ。

(1)

x2dx

(2)

∫ 1 x2dx

(3)

dx

また, 積分の公式1, 2は, 不定積分についても成り立 つ。というのも,もしf(x), g(x)の原始関数がそれぞれ F(x), G(x)ならば,

(F(x) +G(x))=F(x) +G(x) =f(x) +g(x) (aF(x)) =aF(x) =af(x)

なので,F(x) +G(x)f(x) +g(x)の原始関数であり, aF(x)はaf(x)の原始関数である。従って,

積分の公式11: 線型性 aを任意の定数として,

∫ {f(x) +g(x)} dx=

f(x)dx+

g(x)dx (8.33)

af(x)dx=a

f(x)dx (8.34)

ただし, 右辺に任意の定数(積分定数)がついても かまわない。

よくある間違い42 式(8.33)の左辺を,∫

f(x) +g(x)dxと 書いてしまう... これはダメ。定積分でも不定積分でも意味 的・形式的には,dxf(x) +g(x)全体にかかる乗算なので, f(x) +g(x)は括弧( )に入れなければいけません。

例8.4 以下の不定積分を求めてみよう:

(2 + 3x)dx (8.35)

積分の公式11より, 与式は,

2dx+

3x dx= 2

dx+ 3

x dx (8.36) となる。右辺の各項に積分の公式10, つまり式(8.31) を使えば,与式は,

= 2(x+C1) + 3 (x2

2 +C2 )

(8.37) となる。ここでC1, C2は, それぞれ∫

dxと∫

x dxか ら生じる積分定数であり, それぞれ任意の実数である。

この式を整理すると,

= 2x+3x2

2 + 2C1+ 3C2 (8.38)

となる。ところが, C1, C2は任意の実数なので, 2C1+ 3C2も任意の実数である。従って2C1+ 3C2を改めて

8.5 原始関数と不定積分 123 Cとおけば,与式は

= 2x+3x2

2 +C (8.39)

となる。この例では説明のために積分定数のことを念入 りに書いたが,結局最後には積分定数は一つにまとまっ てしまった。従って,いくつかの関数の定数倍や和であ らわされる関数の不定積分は, それぞれの項を, 積分定 数をいったん忘れて不定積分し, 最後に全体でひとつの 積分定数をつけたせばよい。つまり,式(8.35)という問 に対して, 式(8.36), 式(8.37), 式(8.38)を省略してい きなり式(8.39)を答えてよい。(例おわり)

ここで注意: 不定積分の結果は元の関数の原始関数の はずだから,結果を微分したら元の関数に戻るはず。だ から, 不定積分の結果に自信が持てない場合は, その結 果を微分して元の関数に戻るかどうか確かめるとよい (ほとんどの場合, 関数は不定積分するより微分する方 が計算は簡単である)。不定積分に慣れていない人には, 特にそのことを強く勧めておく。

● 問198 以下の不定積分を求めよ。得られた原始関 数を微分し,被積分関数に戻ることを確認せよ。

(1 +x+x2)dx (8.40)

ところで, xa の不定積分に関する公式10は, a=1 のとき, つまり1/xについては使えない。なぜなら, こ

のときa+ 1 = 0となって「0での割り算」が発生して

しまうからである。ここで, 自然対数の微分, すなわち P.89式(6.29)を思いだそう:

(lnx)= 1

x (8.41)

これを使えば, 1/xの不定積分は以下のようになりそう な気がする*3:

dx

x = lnx+C (8.42)

ただし, lnxという関数は, 0 < xでしか成立しない。

しかし, 1/xという関数は,x <0でも成立する。では,

*3

1 xdx

dx

x と書く。

x <0も含めた1/xの不定積分はどうなるだろう? 答え は, ln(−x) +Cである(この場合, x <0だから, lnの 内側の−xは正である)。実際,これを微分してみると, 合成関数の微分より,

{ln(−x)}= (−x) 1

−x = 1

x (8.43)

となり,確かに1/xになる。つまり, 0< xのとき,

dx

x = lnx+C (8.44)

x <0のとき,

dx

x = ln(−x) +C (8.45) となる。いずれの場合も, 右辺のlnの内側は正なので, いっそ統一的に|x| と書いてしまおう。要するに, xが 正だろうが負だろうが,次式が成り立つ:

積分の公式12: 1/xの不定積分

dx

x = ln|x|+C (8.46)

よくある質問102 なんで絶対値が出てきたのか, 不思議で す...似たような話が,問141(3)で出てきたの,覚えてますか? よくある間違い43 1/xの不定積分で, lnの中の絶対値記号 を付け忘れる... これは毎年,多くの資源生を泣かせるミスで す(後で「微分方程式」を学ぶときに痛い目に会うのです)。 よくある質問103 1/xの不定積分はx0で1ではないので すか? ... 式(8.31)で,a=1のときですか? あそこには「a−1以外の定数とする」と書いてあったでしょ? それに,も しも無理やりa=1としたら,

x1dx= 1

−1 + 1x1+1+C

= 1

0x0+C= 1

0+C (これは間違い) のように, 「0での割り算」が出てきて, うまくいかないの です。

農学や環境科学などの応用分野では,この公式12は, 極めて重要である。というのも, 様々な現象を微分方程 式というツールで記述して解析しようとするとき, この 形の不定積分が, 頻繁にあらわれるからである。詳しく は第9章で学ぼう。

指数関数は, 微分しても指数関数だから, 不定積分も 簡単である:

積分の公式13: 指数関数の不定積分

expx dx= expx+C (8.47)

ところで, 関数 f(x)の原始関数が F(x) であると き, F(ax+b)x で微分すると(a, bは定数とする), af(ax+b)となる。従って,

f(ax+b)の原始関数は,F(ax+b)/a (8.48) となる。

例8.5 式(8.48)を使うと,

(3x+ 1)4dx= 1

3×5(3x+ 1)4+1+C (8.49)

=(3x+ 1)5

15 +C (8.50)

(例おわり)

注: 式(8.48)は「合成関数の微分」を逆にしたような

公式だが, あくまでf( )の中がax+bという形のとき にしか使えない。

よくある間違い44 以下のような誤りをする人が多い:

dx 1 +x2 = 1

2xln|1 +x2|+C これは間違い! 右辺をxで微分すると決して左辺には一致しない。この積分 は,後に問204で学ぶ。

今まで学んだ公式を組み合わせれば, 以下のような不 定積分ができる。それぞれ,右辺を微分して確認しよう。

例8.6

dx

x−1 = ln|x−1|+C (8.51)

dx

(2x+ 1)2 = 1

2(2x+ 1)+C (8.52)

exp 2x dx= exp 2x

2 +C (8.53)

● 問199 以下の不定積分を求めよ。得られた原始関 数を微分し,被積分関数に戻ることを確認せよ。

(1)

(2x+ 1)3dx (2)

dx x+ 1 (3)

dx 1−x

(4)

exp(−x)dx

(5)

exp(x+ 1)dx

よくある間違い45 この問題の(3)を, ln|1−x|+Cと答 えてしまう... これも毎年,多くの資源生を泣かせるミスです。

これを微分すると,−1/(1−x)になってしまう! よくわから ない,という人は,問141(6)を復習しよう。

こんどは三角関数の不定積分を考えよう。P.108 の 式(7.61), 式(7.62)より, (sinx) = cosx, (cosx) =

sinxだから,

積分の公式14: 三角関数の不定積分

cosx dx= sinx+C (8.54)

sinx dx=cosx+C (8.55)

となることはすぐわかる。sinxやcosxの累乗や積を 含むような関数は, 倍角公式などを使ってシンプルな形 に変形してから不定積分する。

例8.7

cosxsinx dx=

∫ sin 2x

2 dx=cos 2x

4 +C

ここで, P.104の式(7.36)を使った。ちなみにこの不定 積分は,後でP.127問203で学ぶように,「置換積分」と いう方法でも可能。 (例おわり)

例8.8

cos2x dx=

∫ 1 + cos 2x

2 dx= x

2 +sin 2x

4 +C

ここで, P.104の式(7.37)を使った。(例おわり)

例8.9

sin2x dx=

∫ 1cos 2x

2 dx= x

2 sin 2x

4 +C

ここで, P.104の式(7.38)を使った。(例おわり) 以上のような不定積分は, 勘と慣れがあれば, なんと かできるだろう。しかし, 一般に, どんな関数でもきれ いに不定積分できるわけではない。ちょっと複雑な関数 になると, その不定積分は不可能になるか, できても職 人芸になる。不定積分できるのは, 被積分関数が単純で

8.6 部分分数分解 125

ドキュメント内 /02/18 (ページ 133-137)