1. ウラン粗精錬寡占度分析
1-1 ウラン粗精錬(ウラン精鉱)施設の国別設備容量
第1章で述べてきた世界のウラン生産国別・企業別のウラン粗精錬工場設備容量の集計を表2-1-1に示す。
表2-1-1 世界の粗精錬工場一覧
和名
ヒースゲート社 Beverley 1,000
WMCリソーシス Olympic Dam 3,930
オーストラリアエネルギー資源株式会社 Ranger 4,660
アレバNC社 McClean Lake 3,075
カメコ社(Key Lake) McArthur River 7,200
カメコ社(Rabbit Lake) Rabitt Lake 2,300
デニソン社 ユタ州White Mesa 3,629
ワイオミング州Smith Ranch/Highland 907
ネブラスカ州Crow Butte 454
メステナ社 テキサス州Alta Mesa 680
Inkai 4,000
Southern Moinkum 1,000
Eastern Moinkum 1,000
Zarechnoye 1,000
Inkai 2,000
Central Mynkuduk 2,000
Budenovskoye 1,000
Tortkuduk 2,000
Kanzhugan 300
West Mynkuduk 1,000
Kharassan 3,000
Irkol 750
Semizbai 500
Budenovskoye 1,000
Budenovskoye 2,000
Kharassan 2,000
Southern Zarechnoye 1,000
東シベリア・ザバイカリスク地方 3,000
ウラル地方南部クルガンスク地方 800
東シベリア・ブリヤート共和国 1,000
ロシア極東サハ共和国 5,000
ロシア極東サハ共和国 100
東シベリア・ザバイカリスク地方 600
東シベリア・ザバイカリスク地方 600
ウクライナ ヴォストゴーク社 Vody市, ドネプロペトロフスク州 830
ウズベキスタン ナボイ社 Navoi 3,000
キルギス ザレチノエ社 Kara Balta 2,000
ナミビア ロッシングウラン株式会社 Roessing 4,000
アクータ鉱石会社 Akouta 1,500
ソメール社 Arlit 1,500
Fuzhou (撫州) 300
Chongyi (崇義) 120
Lantian (藍田) 100
Yining (伊寧) 300
Benxi (本渓) 120
Qinglong(青龍) 100
Shaoguan(韶関) 160
Tengchong(腾冲) 20
Jaduguda州Purbi Singhbhum district 175 Jharkhand州 East Singhbhum district 190
ブラジル ブラジル原子力工業 Caetite 400
Ardakan 15
Gchine 21
アルゼンチン アルゼンチン原子力委員会 Cordoba 150
チェコ ディアモ国営企業 Dolni Rozinka 400
南アフリカ アングロゴールド鉱山会社 Vaal Reefs 1,272
合計 81,158
中国核工業総公司
インドウラン株式会社
イラン原子力省 カザトムプロム社
年間生産容量
(tU)
オペレーターまたはプロジェクト名 所在地
ロシア アトムレッドメットゾラタ社(ロスアトム)
カメコ社 国名
イラン カナダ
米国
カザフスタン オーストラリア
ニジェール
中国
インド
(出所) 原子力ポケットブック2010、IAEA、Uranium 2009、各社ホームページより作成
これをウラン粗精錬工場が立地している国別に集約すると、図 2-1-1 の通りとなる。世界の総計設備容量
81,158tU/年のうち、最大の国はカザフスタンで25,550tU/年(31%)、2位はカナダの12,575tU/年(15%)、3
位はロシアの11,100tU/年(14%)、以下オーストラリア、米国と続く。ウラン鉱山の処理能力とウラン粗精錬工 場の設備容量とは必ずしも1:1には対応しないが、やはりウラン資源量の多い国、近年鉱山開発を積極的に行 っている国が大きなシェアを占めている。
1-2 ウラン粗精錬(ウラン精鉱)施設の企業別設備容量 次に、ウラン粗精錬施設の設備容量を、
その施設が立地している国ではなく、施 設の所有者による持分比率で企業別に集 約すると、図2-1-2の通りとなる。世界 の総設備容量81,158tU/年のうち1位は カナダのカメコ社の12,631tU/年(16%)
であり、2 位はロシアのロスアトムで 11,100tU/年(14%)、3 位はカザトムプ ロム社9.035tU/年(11%)、4位はAreva
社 7,094tU/年(9%)となっている。カ
メコ社が企業別でトップなのは、本国カ ナダ及び米国の権益を多く有しているこ とに加え、カザフスタン等のウラン資源 国にも権益を有していることが大きい。
国別生産能力では世界の約3割を占める カザフスタンのカザトムプロム社が企業
別では11%になっているのは、カメコ・
Arevaのほか、日本・韓国・ロシア等世
界の主要な原子力企業が権益を有してい るためである。
カザフスタン 31%
カナダ ロシア 15%
14%
オーストラリア 12%
米国 7%
その他 21%
ウラン粗精錬 生産能力 総計:81,158tU/年
図2-1-1 国別ウラン粗精錬施設シェア
Areva 9%
Cameco 16%
Kazatomprom 11%
Rosatom 14%
Others 50%
ウラン粗精錬 生産能力 総計:81,158tU/年
2. 転換役務寡占度分析
表2-2-1に世界の主なウラン転換施設
一覧を示す。世界の転換需要のほぼ 100%をカメコ、Areva、Coverdyn(米 国)、ロスアトム(ロシア)、NDA(英)
の5社が供給している。
このうちスプリングフィールドの
BNFL は 英 国 NDA(Nuclear
Decommissioning Authority)が所有し ているが、運営はWestinghouseが行って いる。ただし転換役務はCAMECOが
2005年3月BNFLとの契約に基づき転
換役務を委託し、CAMECOの転換能力 に算入されている197。
図2-1-2 企業別ウラン粗精錬施設シェア
生産
197これはBNFLが2006年にSpringfield の転換工場の閉鎖を計画していた時に、転換能力不足の為Blind Riverでウラン精鉱のフル ができていなかったCAMECOが自社のPort hope工場の能力不足の為、BNFLのSpring Field工場での転換を委託したもの。し
表2-2-1 世界の主要なウラン転換施設一覧
和名 和名
アメリカ コンバーダイン メトロポリス 17,600 UF6、出所:World Nuclear Association 2010 イギリス 英国原子燃料公社(NDA) スプリングフィールド 6,000 全てCameco向け、出所:IAEA INFCIS
14,000天然U 350 回収U
12,500 UF6(転換)出所:Cameco HP 2,800 UO2(再転換)出所:Cameco HP アトムエネルゴプロム(アンガルス
ク電解化学コンビナート) アンガルスク 18700**
アトムエネルゴプロム(エレクトロス
タル) モスクワ 700**
アトムエネルゴプロム(シベリア化
学コンビナート) セヴェルスク ?
中国 中国核工業総公司 蘭州 1,000 出所:原子力ハンドブック2010
イラン イラン原子力庁 イスファハン 不明
フランス
国名 年間生産能力
(tU) 備考
ピエールラット
オペレーター 所在地
アレバNC社
カナダ カメコ社
*Euratom Supply Agency 2009によると、2009年時点で Atomenergoprom全体の転換量は、25,000tUである;
**http://www.world-nuclear.org;
ロシア*
ポートホープ
これを企業別に集約すると、図2-2-1の通り となる。世界の総計設備容量 76,450tU/年のう ち、最大はロシアのアトムエネルゴプロム社で 25,000tU/年(33%)、2 位は米国 Converdyn 社の 17,600tU/年(23%)、3 位は Areva の 14,350tU/年(19%)、カメコは4位で12,500tU/
年(16%)である。転換工程は技術的には濃縮 ほど困難ではなく参入障壁は低いが、溶媒の量 が多く規模の経済が必要なこと、ウラン粗精錬 施設あるいは濃縮施設のどちらかが隣接してい れば有利なことなどから、寡占度が高いものと 考えられる。
Cameco 16%
Atomenergo prom
33%
その他 9%
Converdyn 23%
Areva NC 19%
76,450tU/年 (2010年)
3. 濃縮役務寡占度分析
天然ウランを原子炉に装荷する前に、U235とU238の同位体のわずかな質量数差を利用してU235の割合 を高める作業、すなわち濃縮が行われる。表2-3-1に世界の主なウラン濃縮施設一覧を示す。
図2-2-1 企業別ウラン転換施設シェア
たが
てい
ってBNFLの転換能力はCAMECOの転換能力とみなされる。なお、UrencoのCapenhurst 工場では再転換工場の建設を計画し るとの情報もある。
表2-3-1 世界の主な濃縮施設一覧
国名 会社名 所在地 濃縮法 年間生産容量
(tSWU/年) 備考
パデューカ ガス拡散法 11,300
パイクトン(American Centrifuge Plant) 遠心分離法 3,800 建設中
Urenco ユーニス(Louisiana Energy Services) 遠心分離法 5,700 2010年6月操業開始、2015年フ
ル操業予定 出所:Urenco HP
Areva NC アイダホフォールズ(Eagle Rock) 遠心分離法 6,600 計画中、2011年着工・2014年操
業開始予定 出所:Areva HP
GE Hitachi Nuclear Energy ウィルミントン(Global Laser Enrichment) レーザー法 6,000
2010年試験運転開始、2012年 商業運転開始予定 出所:GE Hitachi Nuclear Energy フランス他4カ国 Eurodif(Areva NC他) ジョルジュベス(トリカスタン) ガス拡散法 10,800
フランス Areva NC ジョルジュベスII(トリカスタン) 遠心分離法 7,500 2010年12月14日、本格操業開
始。出所:Areva NC カーペンハースト(イギリス) 遠心分離法 5,050 出所:Urenco アルメロ(オランダ) 遠心分離法 4,400 出所:Urenco グロナウ(ドイ ツ) 遠心分離法 2,750 出所:Urenco
日本 日本原燃 青森県六ヶ所村 遠心分離法 1,050 将来1,500tSWU/年
アンガルスク電解化学コンビナート アンガルスク 遠心分離法 2,500
ウラル電気化学コンビナート ノヴォウラルスク 遠心分離法 13,200
生産合同電気化学コンビナート ゼレノゴルスク 遠心分離法 7,800
シベリア化学コンビナート セヴェルスク 遠心分離法 3,700
蘭州 遠心分離法 500
漢中 遠心分離法 500
インド インド原子力庁 Ratnahalli 遠心分離法 25
ナタンツ 遠心分離法 パイロットプラント(PFEP)
ナタンツ 遠心分離法 P1型遠心分離機は2010年現在
6000台。
将来は6万台に増設予定。
コム 遠心分離法 パイロットプラントを建設中
ブラジル ブラジル原子力工業(INB) Fábrica de Combustível Nuclear 遠心分離法 200
2012年完成予定(当初 115tSWU/年→200tSWU/年)
出所:INB、WNA
パキスタン カフタ 遠心分離法 5
北朝鮮 寧辺郡西位里 遠心分離法 不明
(出所)特に注記した以外は原子力ポケットブック2010年版
合計27,200tSWU/年 セヴェルスクでは再処理回収ウ ランの濃縮も実施
Urenco
中国核工業総公司(CNNC)
イラン 不明
中国 アメリカ
USEC
イギリス・オランダ・ドイツ
ロシア
AtomE nergoP rom 38%
USEC 16%
Areva NC 26%
Urenco 17%
Others 3%
71,050tSWU/年
(2010年)
Other s 3%
Urenc o 20%
USEC
17% Areva
NC 28%
Atom Energ ygoPr om 32%
87,600tSWU/年
(2015年)
図2-3-1企業別ウラン濃縮シェア(2010年) 図2-3-2 企業別ウラン濃縮シェア(2015年)
これを企業別に集約すると、図2-3-1の通りとなる。世界の総計設備容量71,050tSWU/年のうち、最大はロシ アのアトムエネルゴプロム社で27,200tU/年(38%)、2位はAreva社の18,300tSWU/年(27%)、3位はUrenco
の12,200tSWU/年(17%)、4位はUSECの11,300tSWU/年(16%)である。ウラン濃縮は技術的にも困難な
上、核拡散防止の観点から技術を開発・実用化できる国は限られており、それが寡占化の進んできた最大の理由 である。
なお、近年、UrencoやAreva等各社が施設の拡張あるいは新設計画を進めており、2010年6月に米国でUrenoc
の新規建設工場が部分操業を開始するなど、今後各国で増設が相次ぐ見通しである。その見通しを反映した2015 年の予測シェアを図2-3-2に示す。大規模な増設計画を発表しているArevaやUrencoのシェアが増加し、相対 的にロシア企業のシェアは現在の4割から3割に低下する見通しである。ただし、現時点では具体的な情報の無 いロシアや中国等での拡張計画が含まれておらず、これらの増設計画が具体化すれば、またシェアも変わってく ることに留意が必要であろう。
4. 再転換役務
低濃縮ウランのUF6を、濃縮度を調整の上、二酸化ウラン(UO2)へ転換することを再転換と呼び、燃料成型 加工工程の一部とみなされている。
日本国内には再転換工場は二つあったが、JCOが臨界事故により操業を止めたため、日本では現在は三菱原子 燃料工業(株)のみが PWR 型原子炉の燃料のみの為の再転換を行い、BWR 向け燃料については米国の2社
(GNF-J)及びシーメンス系のSiemens Power Cooperationに委託している。再転換は成型加工の業務範囲内 であることから、再転換の発注は成型加工会社がこれら海外の再転換業者に発注している。
再転換は成型加工の一部として行われるのみならず、濃縮後に副生産物として得られる劣化ウラン(テイルと 呼ばれる)を貯蔵するために、UF6からウラン酸化物へ戻す際にも行われる。UrencoのCapenhurst 工場や、米 国のUrenco濃縮工場LESにおいてもこのテイルの安全貯蔵の為の再転換を計画しており、この再転換プロジェク トにArevaも参加することが2005年に合意されているとのことである。
5. ウラン燃料成型加工役務寡占度分析
原子炉装荷前の最終工程の燃料成型加工において、各種の原子炉で使用可能なように構造・材質を適合させた 燃料集合体が製造される。
軽水炉(PWR、BWR)用燃料の加工施設では、ペレット製造工程、燃料棒加工工程、集合体組立工程を経て
燃料集合体が製造される。ペレット製造工程では、再転換で得られた二酸化ウラン(UO2)粉末を圧縮成型して 円筒形状の成形体にし、これを高温で焼き固めてペレットにする。燃料棒加工工程では、ペレットをジルコニウ ム合金でできた被覆管に装填し、両端に金属栓を溶接して密封した燃料棒に加工する。集合体組立工程では、燃 料棒を原子炉に装荷できるように組み立てる。
カナダ型重水炉(CANDU炉)用燃料の加工施設では、転換で得られた天然UO2粉末から、ペレット、燃料棒 を経由して燃料集合体を組み立てる。ガス冷却炉(マグノックス炉)用燃料の加工施設では、転換で得られた四 フッ化ウラン(UF4)を原料として、これをマグネシウムまたはカルシウムで還元して天然金属ウランとし、こ れを棒状に加工後、外面をマグネシウム合金で被覆して燃料集合体とする。
世界の主要なウラン燃料加工施設(軽水炉用燃料)を表2-5-1に示す。