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将来のフローとバランス

第 3 章 世界全体における核燃料のフローとバランス

2. 将来のフローとバランス

2. 将来のフローとバランス

コにおいては、アップレートにより設備容量が若干増加すると想定した。ブラジルでは2基2.0GWが稼働中で あり、建設を中断していたアングラ3号機も建設再開が決定され、2013年に運転が開始される予定である。今 後電力需要の伸びに伴い、発電設備容量は大幅に増大する可能性がある。また、アルゼンチンでは2基1GWの 原子炉が稼働中であり、そのうち1基は2030年より前に廃炉を迎えると考えられる。同国ではかつて3つめの プラントとして重水炉(アトーチャ2号)の建設を行っていたが、資金難等の理由により1994年以降建設が中 断されている。このプラントについては今後建設再開の動きも見られるが、ここでは主に資金面等の問題から実 際の建設は行われないものと想定した。

以上により、中南米での発電設備容量は低需要ケースで2010年の4GWから2035年には11GW、高需要ケ ースで22GWまで増大すると想定した。

(3) 欧州OECD

欧州ではかつて、1970年代から80年代にかけて多数の原子炉が建設され、発電設備容量が急速に拡大した。

その後原油価格の低迷に伴う原子力発電の経済性の悪化などから、原子力の新規建設は抑制され、複数の国にお いて以後段階的に原子力を廃止するものとする政策が取られるようになった。しかし近年では原油価格の再度の 高騰や地球温暖化への配慮から、再び原子力新設への機運が高まっている。

最大の原子力推進国であるフランスでは、今後も適宜リプレースを進めつつ高い原子力比率を維持するものと 見られる。また、イタリアではかつて稼動していた4基の原子炉が1990年までの間に全て廃炉とされ、長らく 原子力発電は行われてこなかったが、2009年になって原子力促進法案が上下院を通過し、今後フランスとの協力 により再び原子炉が建設される見通しとなった。

英国では2006年以降、長らく建設されてこなかった商業用原子炉の新設が具体的に検討されるようになった。

同国では今後、旧式の既存炉が大量に廃炉を迎えるが、それと平行して新型炉の導入が適宜行われるものと想定 される。また、スウェーデン・ドイツ等長らく脱原子力政策が採用されていた国においても、新たに原子力新設 を期待する声が多く見られている。少なくともこれらの国において、地球環境問題等への対処の必要性から、稼 働中のプラントの閉鎖は大幅に遅延することが想定される。

一方で長らく原子力に対して後ろ向きであった欧州において、新設に向けた動きはまだ始まったばかりであり、

かつ経済状況の悪化の影響もありさほど確固としたものとは言えない。また、現在欧州においてプラント建設の 能力を持つ企業はフランスのアレバ社のみであり、同社は今後新型の加圧式軽水炉であるEPRやATMEA-1を 中心に受注の拡大を想定しているものの、現在フィンランドで行われているEPRの建設がトラブルにより大幅 に遅延するなど建設が順調に進んでいるとは言えず、実際にどの程度までプラントの大量建設に応じ得るかにつ いては不透明さを免れない。

これらのことから、今後欧州においては一定程度において新規建設への動きが実現するものの、老朽化した既 存炉が大量に廃棄されざるを得ないことから、総体として発電設備容量は横ばい、もしくは微減する程度になる と考えられる。ここでは2010年の設備容量141GWに対し、2035年に低需要ケースで139GW、高需要ケース

で165GWになると想定した。

(4) 旧ソ連

旧ソ連地域において大きな発電設備容量をもつのは、ロシア及びウクライナである。ロシアは世界有数の石油・

ガス生産国であり、エネルギー資源を外交政策上の重要な手段と位置づけている。一方で、原子力については旧 ソ連時代より独自に研究・開発を継続してきた豊富な実績をもち、国家政策として国内で原子力発電を積極的に 拡大することで石油・ガスを輸出に回すと同時に、原子力自体の技術についても海外への進出を積極的に図る方 針である。同国の原子力政策を担う国策企業・ロスアトムは、従来の VVER と呼ばれる軽水炉を進化させた

VVER-1200や、海上浮遊型原子炉FNPPを開発しており、今後国内外で積極的に建設を行う方針である。ロシ

ア国内においては、今後2030年までに年間2~3GWものペースで新規原子炉を建設する計画もあり、既存炉の 廃炉を想定しても発電設備容量が大きく増大してゆくことは変らないと考えられる。

ウクライナにおいても今後発電用原子炉の新規建設を続けることが想定されており、2030年までに新たに14 基の発電プラントを新設するとの計画もある。但し同国で稼動している原子炉は全てロシア製のVVERであり、

今後西欧諸国を含む諸外国からの技術導入を計画しているものの、原子炉の大量増設をどこまで実現できるかに ついては、不明な部分が残る。

また、ウラン資源の重要な供給国であるカザフスタンは原子力を資源外交上重視し、日本を含む海外諸国と協 力を行うと同時に、原子力発電プラント技術自身をも積極的に移入し、新規のプラント建設を目指している。

これらの状況から、この地域においては、今後2035年までの間、特にロシアを中心とした発電設備容量の大 幅増強がなされるものと考えられる。ここでは2010年の37GWから、2035年に低需要ケースで72GWまで、

高需要ケースで87GWまで発電設備容量が拡大するとした。

(5) 中東・アフリカ・オセアニア

中東地域は言うまでもなく石油・ガスの大産出地域であるが、最近になってエネルギー資源の多角化や海水の 淡水化のための利用を目指し、多くの国で原子力の導入を検討し始めている。具体的な動きとしてはロシアから の軽水炉移入を行い、独自に原子力開発を続けるイランのみでなく、UAE、サウジアラビア、クウェート、ヨル ダンなど多くの諸国で新規建設が検討されており、UAE では韓国のプラントメーカーに発注して新規建設を行 うことが決定されている。ここでは2035年までに低需要ケースではイラン及びUAEにおいて新設、高需要ケ ースでは他の諸国でも建設が進むものと想定した。

アフリカ大陸では、南アフリカにおいて1984年よりフランス製の軽水炉が稼動している。同国はPBMR(ペ ブルベッド式モジュール炉)と呼ばれる独自開発のガス炉の導入を今後計画していたが、経済状況の悪化から計 画は頓挫している。ここでは2010年の1.9GWから低需要ケースでは2035年には3.5GWまで、高需要ケース では更にエジプトを加え10GWまで容量拡大が行われると想定した。

(6) アジア

欧米で原子力発電所の新設が止まっていた1990年代においても、アジアにおいては、日本・韓国を中心とし て原子力発電所の建設が続けられていた。最近になり中国・インドや東南アジア等の新興諸国において原子力発 電への関心が急速に高まっており、今後世界の原子力発電所新設の多くはアジアでなされる見込みである。

中国では従来2020年に40GWまで原子力発電設備容量を増設する計画を立てていたが、その後目標を70~

80GWまで上昇させ、これに向けて急速に原子炉建設を行っている。また、今後技術の移転・定着により独自に プラント建設能力を保有し、国内外で積極的に建設を行うことを目指している。

インドでは1974年に「平和的核爆発」と称する核実験を実施して以来西欧諸国との原子力協力は打ち切られ、

国内のウラン資源の供給不足等もあって原子力開発は停滞していたが、2008年には米国との間で原子力協定が正 式に発効し、西欧諸国からの民生用原子力に関する協力が得られる見通しとなった。これにより、同国では従来 から独自に開発を続けてきた重水炉・高速炉を用いたトリウムサイクル路線の研究開発は継続したまま、西欧諸 国からの技術支援により大型の軽水炉の導入を多数行う計画である。同国は未だにNPT(核拡散防止条約)に加 盟しておらず、今後も加盟する意思を全く見せないことから、国際政治上の問題は完全には解決されない可能性 もあるものの、米国・フランス・ロシア等の技術協力により今後発電設備容量を大きく伸ばしてゆくものと考え られる。

東南アジア諸国においても、原子力発電の新規建設に向けた動きが進みつつある。ベトナムでは従来より原子 力発電所新設のための調査や土地選定を進めており、今後日本やロシアの協力のもと、新規建設を進める方針で ある。また、フィリピンでマルコス政権時代に建設を進めたまま数十年間使用していなかったバターン原子力発 電所の改修・使用を検討しはじめた他、タイ、インドネシア、マレーシアの諸国で新規建設に向けて動き始めて おり、今後日本・韓国や欧米諸国からの支援を得て原子力導入を実現する可能性が高い。ここでは、新規建設に 向けて体制を整え計画を進行しているベトナム・タイ及びマレーシアにおいて、2035年までに新規発電所が運転 開始するものと想定した。

日本及び韓国は、原子力を脱炭素化のための重要な手段と位置づけ、今後も発電容量の拡大を続ける見通しで ある。特に日本においては、2020年までに9基、2030年までに14基以上の新増設を行う目標が定められてい る。一方で台湾においては、現在龍門1・2号機の建設が進められているものの、その後は脱原子力とする政策 が取られており、新設の見通しは立っていない。