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- 50 - 形式分類(鋳造有銎斧の細別形式)

セイマ・トルビノ、サムシ・キジロボ両鋳造有銎斧(以下、鋳造有銎斧の分析の項では有銎斧 と記す)の違いを認識したチェルヌィフの法量分析では一定の結果が出ておいる(図

3-27

の右上)。 また、チェルヌィフは全体の形状の差異、耳の孔の消滅(偽耳化)、を挙げている。さらに、図

3-29

の左の散布図は斧の長さと幅の相関であるが、セイマ・トルビノ有銎斧(●)に比べてサム シ・キジロボ有銎斧(+)は相関幅が広く、サムシ・キジロボ有銎斧では型式の規範が緩むこと が指摘されている。以上のように、両有銎斧はおおまかには区分できると思われるが、チェルヌ ィフはサムシ遺跡出土のものは無条件にこのグループに入れるなど、厳密な区分方法に関しては 示されていない。

先の有銎矛同様、セイマ・トルビノ、サムシ・キジロボ両有銎斧の区別よりも有銎斧全体を大 まかに区分することを考えよう。そこで、まず一見して変異の豊富そうな、耳の有無、帯の紋様、

図3-27 有銎斧の計測箇所

(a/b=X値 c/d=Y値)

図3-29 チェルヌィフらによる有銎斧の法量

(●がセイマ・トルビノ/+がサムシ・キジロボ青銅器群)

(上下の(幅同士でよく相関(右上))

図3-28 サムシ・キジロボ青銅器群の有銎斧

図3-25 有銎斧S類

(ロストフカ遺跡出土)

図3-26 EAMPの鋤

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紋様構成に注目する。耳はチェルヌィフの指摘するように多様な変異を持つが、まずは有無で二 分しよう。次に、紋様が付加されるセイマ・トルビノ有銎斧においては、銎部開口部付近に一周 帯が周り、その帯の下に連続する形で幾何学紋が線で表現される場合が大部分である。帯自体に は、刃に水平方向の併行線で表されるもの(1)、平行線の間にそれと垂直方向に狭い間隔で線が 入るもの(2)、平行線の間に垂直線以外の紋様(幾何学紋、点列紋など)が表されるもの(3)と いう変異がみられ、ないものは(0)とする。次に、帯の下にみられる幾何学紋の配置のパターン

(紋様自体の変異は問わない)であるが、幾何学紋と帯は接して施される場合が多い。帯の下に、

刃に水平方向付される

1

列の紋様をα、刃に垂直方向の

1

列の紋様をβとする。これらの幾何学 紋の線には、帯内部の垂直紋様の線から連続するものがあり、帯の続きとして幾何学紋が刻まれ た場合が多いと考えられる。αとβが一列ずつ組み合わさるものをα+βとし、αとβが離れる ものをα+β´とする。これら以外のややイレギュラーな紋様構成(例えばαが二列以上ある、

帯から離れたものなど)をθとし、紋様のないものは

0

とする。

無耳のものは、紋様なしが最も多く、その次にα、βおよびその組み合わせがみられ、θが最も 少ない。帯紋様では(1)、(2)が最も多く、その次に帯なし、(3)は

1

例のみである。一方で有 耳のものは紋様構成θが最も多く、無紋は少ない。帯紋様においても同様、無耳のものとは逆の 傾向を示している。各属性は明瞭に排他的ではないが、無耳(有銎斧Ⅰ類)、有耳(有銎斧Ⅱ類)

の大きく

2

グループに区分することは妥当であると考えられる。非常に大雑把にいうと、有銎斧

Ⅰ類は耳がなく、紋様についてはシンプルなものが多い。有銎斧Ⅱ類は耳があり、比較的装飾豊

図3-30 紋様構成の変異 図3-31 帯紋様の変異

表3-6 耳の有無と紋様構成、帯紋様の相関

紋様構成→

耳の有無 0 α β α +β α +β θ

↓ 無耳 132 37 7 9 11 1

有耳 7 12 5 7 2 22

帯紋様→

耳の有無 (0) (1) (2) (3)

↓ 無耳 29 77 83 3

有耳 0 9 25 22

以上の3属性を相関させたもの が、表

3-6

である。表裏で異なる紋 様を持つものが多少あるため、面ご とに集計している(従って、表の合 計 は 個 体 数 の ほ ぼ 倍 と な っ て い る)。表では、耳の有無によって大 まかに傾向が異なり、紋様構成では

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かなものが多い。なお、従来のサムシ・キジロボ有銎斧は偽耳を持つものが多く、ほとんどがⅡ 類に含まれる。

型式分類(有銎斧Ⅱ類の分類)

見られる帯の位置がセイマ・トルビノ有銎斧に比べて、サムシ・キジロボ有銎斧では下にあるこ とが看取される。そこで、器の最上部から帯の上部の長さと、全長の比率をX値と呼び、チェル ヌィフが使用した上部幅と刃部幅の比率をY値とし(図

3-27)、法量と耳の変異の相関を見てみ

よう(図

3-32)

。耳に関しては単耳(1)、両耳(2)、偽耳(3)に区分した。結果、単耳から偽耳

を伴うにつれて、グラフの左から右への漸移が認められる。耳による型式設定も考えられるが、

両耳と偽耳の重なる部分も大きいことから、X値

0.15

を基準にこれ以上を有銎斧Ⅱa類、未満を

Ⅱb類とする。サムシ・キジロボ青銅器群はおおよそⅡb類に相当する。

(2)編年と各系譜の派生関係

図3-32 Ⅱ類におけるX(横)、Y(縦)値と、耳形態の相関

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

単耳 両耳 偽耳

型式分類は有銎斧Ⅱ 類のみで可能である。

従来のサムシ・キジロ ボ有銎斧がⅡ類に含ま れることは上述のとお りであるが、サムシ・

キジロボ有銎斧の特徴 としてチェルヌィフが 指摘した耳や法量の変 化以外に、斧の上部に

図3-33 Ⅰ類におけるX(横)、Y(縦)値と、紋様構成の相関

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

無紋 α β α+β

有銎斧Ⅰ、 Ⅱ 類は斧全体の器 形では類似して おり、両縁が立 ち上がる特徴も 共有されるもの である。有銎斧

Ⅰ類には無紋の ものや紋様の比 較的単純なもの

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では有銎矛との数少ない共伴例を挙げておく。ミヌシンスク盆地のムルガデポでは有銎矛

A

類と、

有銎斧Ⅰ類が共に発見されている。また、ロストフカ墓地では、有銎矛

C

類と有銎斧Ⅱa類、そ して有銎矛

C

類と鋤状斧の共伴例が知られる。

(3)金属成分と型式

有銎斧に関しては、金属成分分析の数値まで公表されたものが少なく、チェルヌィフらが示し た各成分の有無の記載に従う。

型式ごとに比較すると(表

3-6、図 3-34)

、Ⅰ類では錫有りの割合が相対的に低いが、砒素有り の割合は高い。T 類(鍛造)は錫を含むものはなく、砒素を含む。一方で、Ⅱ類は殆どが錫を含 むもので、砒素を含むものは僅かである。S 類は錫を含むものが多いが、砒素を含むものも一定 程度存在する。

図3-34 セイマ・トルビノ有銎斧の変遷図

表3-7 セイマ・トルビノ有銎斧における金属成分の有無と型式の相関(左:砒素 右:錫)

砒素の有無→

型式 有 無

↓ T類 2

Ⅰ類 56 11

Ⅱa類 3

Ⅱb類 1 2

S類 3 3

錫の有無→

型式 有 無

↓ T類 2

Ⅰ類 28 42

Ⅱa類 3

Ⅱb類 3

S類 5 1

が多く、鍛造有銎斧は耳を持たないものであ るから、有銎斧Ⅱ類はⅠ類から発生した可能 性が高い。念のため、有銎斧Ⅰ類の紋様の多 少においてもⅡ類同様の変化が追えるかどう かを確認しよう(図

3-33)

。結果、紋様の多少 と法量との相関(例えば無紋から有紋への

X

値増大など)は確認できなかった。また、X 値

0.15

以上は有銎斧Ⅰ類ではわずかであるこ とも確認できた。従って、有銎斧Ⅱ類におけ る変化は当該形式における独特のものである ことが知られる。有銎斧Ⅰ類は紋様の変異が 比較的ランダムに現れる形式であり、その一 部から耳がつく系統のⅡ類が派生したと考え られるのである(図

3-34)。

有銎矛、有銎斧が同一の墓地から発見され ることは多いが、一括資料や層位によって以 上の型式編年を検証することは難しい。ここ では有

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図3-35 表4の図化(割合)(上:砒素、下:錫)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

T類 Ⅰ類 Ⅱa類 Ⅱb類 S類

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

T類 Ⅰ類 Ⅱa類 Ⅱb類 S類

表3-8 型式の分布(表上の番号は図3-21に対応)