5. 調査結果
5.2 現地調査結果の検討
5.2.5 底質
(1) 中央粒径
本年度と2088年7月、2010年7月の現地調査による底質の中央粒径は細砂、中砂が 主体で撤去前から大きな変化はない。
(2) 有機物等(含有量)
本年度と2008年7月、2010年7月の現地調査による有機体炭素の調査結果(含有量)
は図5.2-11のとおりであり、有機体炭素については撤去前から大きな変化はない。
図5.2-11 底質調査結果(有機物態炭素)の比較
有機物に関連する項目である COD、強熱減量についても、大きな変化は認められな い。
しかしながら、硫化物については、撤去直後の調査定点 SW1 のみで高い傾向が認め られた。図5.2-12に、硫化物の含有量を調査定点別に比較した図を示した。
127 硫化物
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
E1 E2 E3 N1 N2 N3 NE2 NE3 S1 S2 S3 SE1 SW1 SW2 SW3 W1 W2 W3 調査定点
硫化物(mg/g)
H20 H22 H24 定量限界値 0.01
図5.2-12 硫化物の調査定点別調査結果
平成 20 年度の硫化物に関する調査結果についてスミルノフ・グラブス検定により調 査定点間の差の検定を行ったところ、調査定点SW1の結果は優位水準5%で他の調査定 点との間に差が認められた。
施設の下流側で施設に近い調査定点SW1及びS1並びにSW2、S2の4調査定点のみ が、撤去工事直後の調査ではその他の調査定点と比べて高い傾向が認められた結果から は、撤去工事に伴いジャケットに付着していた生物等が剥離、落下したため硫化物の値 が一時的に高くなった可能性が考えられた。
しかしながら、硫化物の含有量と関連があると考えられる有機体炭素量、COD、強熱 減量は他の調査定点と差が認められなかった。また、底層の溶存酸素量は 7.5mg/Lで、
貧酸素状態ではない。以上のことから、この硫化物の変動は、ジャケットの付着生物等 が落下したことにより、海底環境の有機物が増加した結果、一時的に高くなったもので はないと判断され、撤去工事の影響による可能性は小さいと考えられた。
(社団法人)日本水産資源保護協会による「水産用水基準(2005年)」では、底質に 関する基準として「硫化物は0.2mg/g以下」と規定しており、撤去直後に調査定点SW1 において観測された0.09mg/gはこの基準と比較して高い値ではないと判断できる。
128
最小 最大 平均 最小 最大 平均
カドミウム (mg/kg) <0.05 0.10 0.06* <0.05 0.10 0.06* 0.05 シアン化合物 (mg/kg) <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 0.5
鉛 (mg/kg) 2.1 24.0 6.3 5.5 9.3 7.1 0.2
六価クロム (mg/kg) <1.0 <1.0 <1.0 <1.0 <1.0 <1.0 1
ひ素 (mg/kg) 1.2 3.8 2.2 1.5 2.7 2.2 0.5
総水銀 (mg/kg) <0.01 0.02 0.01* <0.01 0.03 0.02* 0.01
アルキル水銀 (mg/kg) <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01 ポリ塩化ビフェニル (mg/kg) <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01
銅 (mg/kg) 2.6 9.9 4.4 5.1 10.0 6.7 0.5
亜鉛 (mg/kg) 33.0 130.0 51.3 35.0 60.0 47.8 0.2
ふっ素化合物 (mg/kg) 36 75 63 52 86 69 5
セシウム134 (Bq/kg) - - - 8 25 16 1
セシウム137 (Bq/kg) - - - 15 43 31 1
*は、定量下限値以下の値を定量下限値として算出した平均値
定量下限値 平成22年7月 平成24年8月
項 目
最小 最大 平均 最小 最大 平均
カドミウム又はその化合物 (mg/L) <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 0.005 シアン化合物 (mg/L) <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.1 有機りん化合物 (mg/L) <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.1 鉛又はその化合物 (mg/L) <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 0.05 六価クロム又はその化合物 (mg/L) <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 0.02 ひ素又はその化合物 (mg/L) <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 0.02 水銀又はその化合物 (mg/L) <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0005 アルキル水銀化合物 (mg/L) <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0005 ポリ塩化ビフェニル (mg/L) <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0005 銅又はその化合物 (mg/L) <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 0.05 亜鉛又はその化合物 (mg/L) <0.02 0.06 0.04* 0.02 0.03 0.02 0.02 ふっ化物 (mg/L) 0.2 0.5 0.2 0.2 0.3 0.3 0.1 注)*定量下限値以下の値を定量下限値として算出した平均値
平成22年7月 平成24年8月
項 目 定量下限値
(3) 金属類等(含有量、溶出試験)
本年度と2010年7月の現地調査による金属類の結果(含有量、溶出試験)は表5.2-5(1)
~(2)のとおりである。溶出試験結果については、ほとんどが定量下限未満で、数値が検 出された地点でもその値は低いものであり、撤去前から大きな変化はない。
表5.2-4(1) 底質調査結果(金属類等、含有量)の比較
表5.2-4(2) 底質調査結果(金属類等、溶出試験)の比較
129 カドミウム
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50
E1 E2 E3 N1 N2 N3 NE2 NE3 S1 S2 S3 SE1 SW1 SW2 SW3 W1 W2 W3 調査定点
カドミウム(mg/kg)
H20 H22 H24 定量限界値 0.05
金属類等の含有量については、カドミウム、鉛、銅、亜鉛の4項目において、調査時 期別あるいは調査定点別に比較すると特徴的な結果が得られた。
カドミウムの分析結果の比較を図5.2-13に示す。
図5.2-13 カドミウム含有量の調査結果
カドミウムについては、撤去前の調査結果は、撤去直後、残留時と比較すると全ての 調査定点で高い。撤去前の平成20年度における調査結果の平均値を、平成22年度及び 本年度のそれぞれの平均値と、平均値の差の検定(t検定及びF検定)により比較すると、
いずれの検定でも有位水準5%で差が認められた。
影響要因が発生しない撤去前に高い傾向であり、影響要因が発生した後の調査結果で はいずれも撤去前よりも低いことから、カドミウムの値の変化については、海洋掘採施 設の撤去あるいは残留の影響の可能性は低いと考えられる。
環境庁(当時)が平成 7 年度に実施した海洋環境保全調査の結果を見ると、東京湾、
伊勢湾などではカドミウムの含有量が1.0mg/kgを超える値も観測されている。
高い傾向にある平成 20 年度の撤去前調査におけるカドミウム含有量の平均値は約
0.3mg/kgであり、東京湾、伊勢湾の値と比べれば約1/3程度であることから、底質が汚
染されていたような状況ではないと判断される。
130 鉛
0 5 10 15 20 25 30
E1 E2 E3 N1 N2 N3 NE2 NE3 S1 S2 S3 SE1 SW1 SW2 SW3 W1 W2 W3 調査定点
鉛(mg/kg)
H20 H22 H24 定量限界値 0.2
鉛の分析結果の比較を図5.2-14に示す。
図5.2-14 鉛含有量の調査結果
鉛については、撤去直後の平成22年度調査の調査定点SW1で高い傾向が認められる。
平成 22 年度の調査結果のうち、鉛含有量の測定結果を調査定点間で比較するためにス ミルノフ・グラブス検定を行ったところ、調査定点SW1の結果は優位水準5%で他の測 定結果との差が認められた。
調査定点SW1については、施設の下流側で最も施設に近い調査定点であり、この調査 定点のみで鉛含有量が高かったことは、海洋掘採施設の撤去及び横倒しに伴う底泥の巻 上げ等の影響で一時的に鉛含有量が高くなった可能性が考えられた。
環境庁(当時)が平成 7 年度に実施した海洋環境保全調査の結果を見ると、東京湾、
伊勢湾などでは鉛の含有量平均値が30mg/kgを超えていることから、高い傾向にあった 撤去直後のSW1の分析値24mg/kgは、東京湾、伊勢湾と比較して高い値であるとは言 えず、底質が汚染されていたような状況ではないと判断される。
銅の分析結果の比較を図5.2-15に示す。
131 銅
0 2 4 6 8 10 12
E1 E2 E3 N1 N2 N3 NE2 NE3 S1 S2 S3 SE1 SW1 SW2 SW3 W1 W2 W3 調査定点
銅(mg/kg)
H20 H22 H24 定量限界値 0.5
図5.2-15 銅含有量の調査結果
銅については、撤去前については調査定点 S1 で高い傾向が認められ、撤去直後につ いては調査定点S1に加えて調査定点SW1も他の調査定点と比べて高い傾向が認められ る。また、残留時は撤去前、及び撤去直後よりも銅含有量の高い調査定点が多い。
しかしながら、残留時のデータを調査定点間で比べてみると、施設に近い調査定点N1 や調査定点S1よりも、施設から離れた調査定点N3や調査定点S3の方が高いなど、施設 の距離と銅の濃度の間に明確な関係は見出せない。また、施設の下流側で最も施設に近 い調査定点S1のデータを調査年次の間で比較すると、撤去前が最も高く、撤去直後、残 留時と順に低下している。これらのことから、銅の含有量の変化については、施設の撤 去工事、あるいは残留の影響による可能性は小さいと考えられ、当該海域の海底はおよ
そ6mg/kgを中心として銅の含有量には幅のある底質環境である、と推測される。
環境庁(当時)が平成 7 年度に実施した海洋環境保全調査の結果を見ると、東京湾、
伊勢湾などでは銅の含有量は約10mg/kg~30mg/kgであり、これらの値と比べると、い ずれの調査結果も高い値とは言えず、底質が汚染されていたような状況ではないと判断 される。
132 亜鉛
0 20 40 60 80 100 120 140
E1 E2 E3 N1 N2 N3 NE2 NE3 S1 S2 S3 SE1 SW1 SW2 SW3 W1 W2 W3 調査定点
亜鉛(mg/kg)
H20 H22 H24 定量限界値 0.2
亜鉛の分析結果の比較を図5.2-16に示す。
図5.2-16 亜鉛含有量の調査結果
亜鉛については、鉛と同様に撤去直後の調査定点SW1のみで高い傾向が認められる。
平成 22 年度の調査結果うち、亜鉛含有量の測定結果を調査定点間で比較するために スミルノフ・グラブス検定を行ったところ、調査定点SW1の結果は優位水準5%で他の 調査定点との間に差が認められた。
施設の下流側で最も施設に近い調査定点SW1のみで、撤去工事直後の一時期でのみ高 い傾向が認められた結果から、撤去工事及び横倒しに伴う底泥の巻上げ等の影響で一時 的に亜鉛含有量が高くなった可能性が考えられた。
亜鉛含有量に関して他海域での調査結果を見ると、環境庁(当時)が平成7年度に実 施した海洋環境保全調査の結果では、東京湾及びその周辺海域における亜鉛の測定値は
16~400mg/kg と幅が広く、これらの値と比較して撤去直後に調査定点 SW1 で観測さ
れた130mg/kgという値は、特異に高い値ではないと判断できる。
以上のように、硫化物、カドミウム、鉛、銅、亜鉛の5項目については、特徴的なデ ータが観測された。このうち鉛、亜鉛の2項目については、撤去直後に行った調査での み高い傾向が認められたことから、工事による影響の可能性が考えられた。