4 家計金融資産の概観
4.1 資産別・年齢階層別の推移(ストック)
4.1.3 年齢階層別の金融資産
世帯主年齢別に家計の金融資産の保有状況をみると、米国やイギリス、カナダでは年齢 が高くなるにつれて、金融資産を増加させている傾向が窺える(図表4.1.5)。その一方 で、日本の増加ペースは相対的に緩やかであり、高齢期(65歳以上)の金融資産の保有 額の水準もあまり高くない。
多くの国において、75歳以上になると、金融資産の減少がみられる一方で、日本には その傾向がみられない。この理由の一つとして、日本では、高齢期(65歳以上)に働い ている人が多いため、その分金融資産が増加している可能性がある。OECD統計によると、
日本の65歳以上男性の労働力率(65歳以上人口に占める65歳以上の労働力人口、2014 年)は30.2%と、米国(23.0%)、カナダ(18.2%)、イギリス(13.3%)、ドイツ(8.2%)、
フランス(3.4%)に比べて高かった。
図表4.1.5 世帯主年齢別の金融資産(左:平均値、右:中央値)
(資料)FRB, "Survey of Consumer Finances" (2013年)、ONS, "Wealth and Assets Survey"(2012-14年)、Deutsche Bundesbank, “Monthly report, Panel on household finances"(2014年), ECB, "Eurosystem Household Finance and Consumption Survey"(2010年)、ECB, "Eurosystem Household Finance and Consumption Survey"(2010 年)、Statistics Canada, "Survey of Financial Security"((2012年)、総務省『全国消費実態調査』(2009年)
(注1)平均値・中央値は文末【付録】を参照。
(注2)イギリス、カナダは65歳以上、イギリスの34歳未満は25歳未満と25-34歳の平均値。
日本
日本の世帯主年齢別の金融資産をみると、70歳以上の世帯が金融資産を大きく減少さ せていないのは、10年以上変わらない特徴である(図表4.1.6)。また、多くの世代で金 融資産が徐々に減少している。特に、40歳代は1999年に平均1,000万円以上の金融資産 を持っていたものの、2014年には1,000万円を下回るようになった。賃金の伸び悩みな どの影響があるとみられる。
0 2 4 6 8 10 12 14 16
34歳以下35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
米国 日本
カナダ ドイツ
(34歳以下=1.0)
(年齢) 0 1 2 3 4 5 6
34歳以下35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上 ドイツ フランス
(34歳以下=1.0) イギリス
(年齢)
金融資産の構成比をみると、普通口座の預貯金(通貨預貯金)の割合が高まっている一 方で、若年世代では生命保険などの割合も低下している。また、株式や債券などのリスク 資産は高齢者世帯ほど、金額、構成比ともに大きい傾向がある。
このように、日本では、現金・預金の割合が増加する一方で、定期預金が減少しており、
高齢者ほどリスク資産をもつ傾向がある。
図表4.1.6 世帯主年齢別の金融資産(日本)
(資料)総務省『全国消費実態調査』
(注)家計貯蓄現在高(二人以上世帯)
米国
米国では、退職口座や投資信託、株式などが拡大傾向にある(図表4.1.7)。かつては 高齢者ほど現金預金など安全資産が多かったものの、諸制度の整備などが進むにつれて、
家計のリスク資産保有の割合が高まった。
年齢別にみると、高齢期(65歳以上)に金融資産を減少する動きがみられる。主に、
退職口座の減少幅が大きい一方で、現金・預金がそれほど減少していないことから、蓄積 した金融資産を生活資金に充てている様子が窺える。また、高齢期には、債券を売却する 動きがあるものの、株式や投資信託などはそれほど減少していない。
株式や投資信託などの資産が増加しているのは、45〜54歳の期間である。この時期に は退職口座も増加している。
また、近年ほど若年世代(35歳未満)の株式保有割合が高まっている。2001年にはIT バブルも影響して、若年世代の株式の保有割合が増えた。その後のITバブルの崩壊、リ ーマンショック後に株価が下落したものの、2013年には1990年代よりも株式の保有割合
0 500 1000 1500 2000 2500
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上 通貨預貯金 定期預貯金 生命保険など 株式・株式投資信託 債券・公社債投資信託 貸付信託・金銭信託 その他
0 500 1000 1500 2000 2500
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
<1999年>
(万円)
0 20 40 60 80 100
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
(%)
0 500 1000 1500 2000 2500
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
<2004年>
(万円)
0 20 40 60 80 100
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
(%)
0 500 1000 1500 2000 2500
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
<2011年>
(万円)
0 20 40 60 80 100
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
(%)
0 500 1000 1500 2000 2500
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
<2014年>
(万円)
0 20 40 60 80 100
30 歳 未 満
30 〜 39 歳
40 〜 49 歳
50 〜 59 歳
60 〜 69 歳
70 歳 以 上
(%)
は高まっており、株式保有が家計に根付いていることが窺われる。こうした背景には、後 述するようなIRAや401(k)などの制度的な後押しもあったと考えられる。
図表4.1.7 世帯主年齢別の金融資産(米国)
(資料)FRB, "Survey of Consumer Finances"
(注1)図中の平均値はPercentage of families holding assetsとMean value of families holding assetsを乗じたもの
(注2)取引項目の分類については文末【付録】を参照。
イギリス
家計の金融資産について、ISA(Individual Savings Accounts、個人貯蓄口座)や投資信 託、英国債券などがリーマンショック後も堅調に伸びている(図表4.1.8)。同時に、国 内債券の構成比も高まっている。また、年齢別に純金融資産の保有状況をみると、高齢者 世代ほどネットでプラスの資産を持っている。
こうした変化の一因として、2009年にISAの恒久化や、2011年に子ども向けの税制優 遇つき個人貯蓄口座であるJunior ISAの導入など、より資産形成がしやすい枠組み整備が 進んだことがあげられる。また、2012年にDC型のNEST(国家雇用貯蓄信託)が新設 された上、NESTのホームページでは加入者に近い属性の人に関するケーススタディを掲 載するなど、制度の浸透を図ることで投資を促進させる取り組みもあることから、それら をきっかけにして職業DC年金が、若年世代を中心に増加してきたとみられる(図表4.1.9)。
0 20 40 60 80 100 120 140
現金預金 債券 株式 投資信託 退職口座 生命保険 その他
0 20 40 60 80 100 120 140
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
<1989年>
(1000ドル)
0 20 40 60 80 100
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
<1995年>
(1000ドル)
0 20 40 60 80 100
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
0 100 200 300 400
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
<2001年>
(1000ドル)
0 20 40 60 80 100
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
0 100 200 300 400 500
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
<2007年>
(1000ドル)
0 20 40 60 80 100
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
0 100 200 300 400 500 600
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
<2013年>
(1000ドル)
0 20 40 60 80 100
35歳未満 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%
)
図表4.1.8 イギリスの金融資産(中央値、左)と年齢別純金融資産の保有状況(右)
(資料)ONS, "Wealth in Great Britain Wave 4, 2012 to 2014"
(注)取引項目の分類については文末【付録】を参照。
図表4.1.9 世帯主年齢別の年金資産(イギリス)
(資料)ONS, "Wealth in Great Britain Wave 4, 2012 to 2014"
(注)取引項目の分類については文末【付録】を参照。
ドイツ
世帯主年齢別にみると、45〜54歳が最も株式などの割合が高い傾向がある(図表 4.1.10)。年齢が上がるにつれて株式や投資信託などリスク資産への資産配分が増加して おり、その傾向は65〜74歳まで続いている。75歳以上になると、貯蓄口座や債券などの 割合が高まっている。
その一方で、34歳以下や35〜44歳の若年世代では、私的年金・保険や投資信託などの 蓄積が始まっている。また、2001年の改革以降導入されたリースター年金等も若年世代 では金融資産形成において活用されていることがわかる。
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
当座預金口座 普通/貯蓄口座 ISA 国民貯蓄証券 英国株 保険商品 固定期間債券 従業員持株等 投資信託 海外株 英国債券 金融資産
2006年7月〜2008年6月 2008年7月〜2010年6月 2010年7月〜2012年6月 2012年7月〜2014年6月
(ポンド)
0 10 20 30 40
〜0 0〜500 500〜5,000 5,000〜12,500 12,500〜25,000 25,000〜50,000 50,000〜100,000 100,000〜
16歳未満 16〜24 25〜34 35〜44
(%)
0 10 20 30
〜0 0〜500 500〜5,000 5,000〜12,500 12,500〜25,000 25,000〜50,000 50,000〜100,000 100,000〜
45〜54 55〜64 65歳以上 平均
(%)
0 10 20 30 40
0 50 100 150 200
16〜24 25〜34 35〜44 45〜54 55〜64 65歳以上
2012年7月〜2014年6月 メディアン 2010年7月〜2012年6月 メディアン
2012年7月〜2014年6月 保有率 2010年7月〜2012年6月 保有率
0 5 10 15 20 25 30 35 40
200 4060 10080 120140 160180 200
16〜24 25〜34 35〜44 45〜54 55〜64 65歳以上
(千ポンド) (%)
<職業DB年金>
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
16〜24 25〜34 35〜44 45〜54 55〜64 65歳以上
(千ポンド) (%)
<職業DC年金>
02 46 810 1214 1618 20
0 10 20 30 40 50 60 70 80
16〜24 25〜34 35〜44 45〜54 55〜64 65歳以上
(千ポンド) (%)
<個人年金>
このように、ドイツの家計の金融資産形成では、年齢が上がるにつれて、リースター年 金等とともに、私的年金・保険を積み上げていき、その中で株式や投資信託などのリスク 資産も組み込みながら、増加させてきた様子がみられる。
図表4.1.10 世帯主年齢別の金融資産(ドイツ)
(資料)Deutsche Bundesbank, "Monthly Report, Panel on Household Finance (PHF)"(June 2013, March 2016)
(注)取引項目の分類については文末【付録】を参照。
カナダ
カナダの家計の金融資産の保有状況をみると、1999年から2012年にかけて、RRSP 等(私的退職年金)やEPP(職域退職年金)など年金関係の資産が現役世代において増 加してきた(図表4.1.11)。1992年の所得税改正もあって、401(k)に相当するRRSPが 増加している。RRSPは、1999年には55〜64歳よりも65歳の方が少なったのに対して、
2012年には55〜64歳と65歳以上がほぼ同額を保有している。2009年にスタートした
TFSA(Tax-free Savings Account、非課税貯蓄口座)は開始後間もないこともあり、その 貯蓄はまだ少ない。
0 20,000 40,000 60,000 80,000
34歳… 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳…
当座口座 貯蓄口座 投資信託 株式 債券
他の金融資産 現金 他の私的年金・保険 リースター年金等
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000
34歳以下 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(ユーロ) <2014年>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
34歳以下 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000
34歳以下 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(ユーロ) <2010/11年>
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
34歳以下 35〜44 45〜54 55〜64 65〜74 75歳以上
(%)
図表4.1.11 世帯主年齢別の金融資産(カナダ)
(資料)Statistics Canada, "Survey of Financial Security"
(注)取引項目の分類については文末【付録】を参照。