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第 5 章 肝細胞と星細胞の 2 種培養モデルにおける一酸化窒素の影響

5.2 実験方法

5.2.1 使用する細胞と細胞培養方法

肝細胞は第 3 章,第 4 章と同じラット肝細胞(RHT33)を使用した.星細胞 はラットから取り出した初代ラット星細胞(Veritas, Japan)を購入し実験に用い た.各細胞はコラーゲンコーティングしたカルチャーディッシュ上で一度培養 し細胞を増殖させた後,肝細胞と星細胞の 2 種培養モデルを作製した.細胞培

養には10% FBSと1% 抗生物質を含んだDMEMを使用した.細胞の培養は37℃,

5% CO2のインキュベーター内で行った.

5.2.2 肝細胞と星細胞の 2 種培養モデル作製方法

5.2.1 において増殖させた肝細胞と星細胞を 0.25%トリプシンによって剥がし

た.剥がした肝細胞を第4章で述べたNO負荷装置のPDMS上に1×106 cells/dish の濃度で播種した.播種1日後に,φ47 mmポリマー膜(GE Healthcare, Japan)

を肝細胞上に設置した.このポリマー膜には1 µm孔が存在しており,孔を通し て栄養源や酸素などの細胞培養に必要な物質が通過する.設置した膜の上に,

剥がした星細胞を5×105 cells/dishの濃度で播種した.星細胞を播種した4日後 に肝細胞と星細胞の 2 種培養モデル作製を終了した.作製した NO 負荷装置に おける2種培養モデルの概要図をFig. 5-1に示す.

第 3 章より,生体内の肝臓において NO は星細胞に接触したのち肝細胞に到 達すると推測される.しかし本実験の2種培養モデルでは,NOは肝細胞に接触 したのち星細胞に到達するものとなっており,これは生体内の構造を模擬して いない.これは作製した NO 負荷装置にて星細胞の上に肝細胞を播種すること が非常に難しいからである.星細胞数と肝細胞数は生体内の割合を考慮し,星 細胞数が肝細胞数に比べ少ない数に設定してある.この状態で星細胞を NO 負 荷装置に播種すると,細胞数が少ないため PDMS 培養面を星細胞で覆うことが 出来ず,肝細胞が播種された薄膜を星細胞の上に設置することが困難である.

さらに星細胞と薄膜の接触箇所が少ないため,培養中に薄膜が剥がれてしまい2 種培養モデルを作製することが不可能であった.したがって,本実験では 4 章 の実験と同じくNOガスの負荷方向は考慮しないものとした.

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Fig. 5-1 NO 負荷装置を用いた

肝細胞と星細胞の 2 種培養モデルの概要図 断面1

断面 2

(Fig. 4-2 と同じ NO 負荷装置)

5.2.3 一酸化窒素負荷条件と培養液による流れ負荷

使用するNOガスは第4章と同じものであり,NOとN2の混合ガスである.

細胞に負荷するNO濃度は,0, 0.5, 5, 25 ppmの4種類で,0 ppmは100% N2ガス である.ガスボンベからNO負荷装置のガス流路にガスを流し込み,その際の

ガス圧は0.3×106 Paに設定した.PDMSを透過して細胞に負荷されるNO濃度

は第4章と同じであり,4.3.1にて計算式と物性値を述べている.2種培養モデ ルに新鮮な培養液を流すために,第4章と同じ流れ負荷装置をNO負荷装置に 装着した.第5章での実験では培養液によって発生するせん断応力を0.008 Pa とし,静置培養を模擬した.これにより,せん断応力が各細胞に引き起こす影 響はないものとした.せん断応力及びNO負荷の時間は24時間とした.

5.2.4 細胞の免疫染色による画像撮影

肝細胞と星細胞が層状の立体構造となっているか確認するために,細胞の免 疫染色による画像撮影を行った.2種培養モデル作製後,リン酸緩衝液(PBS, Nissui Pharmaceutical, Japan)を5 mL用いて2度洗浄した.4%パラホルムアルデ ヒド溶液をモデルに5 mL添加し15分間冷蔵庫で放置し,細胞の固定を行った.

固定後PBS溶液にて2度洗浄し,PBSにウシ血清を3%の割合で溶かしブロッキ ング溶液をモデルに添加し,インキュベーター内で60分間放置した.ブロッキ ング完了後PBSで2度洗浄し,1次抗体を付加した.本研究で使用した1次抗 体は,mouse-anti-keratin 8(Funakoshi, Japan)とrabbit anti-desmin(Funakoshi) であり,keratin 8が肝細胞に,desminが星細胞に特異的に接着する抗体となっ ている.これらの抗体を1 mL PBSに溶かし,NO負荷装置上の2種培養モデル に添加し,4℃にて120分間放置した.その後,PBSにて2度洗浄し,2次抗体 を添加した.使用した2次抗体は,Alexa Fluor 594-conjugated anti-mouse IgG(Life Technologies, USA)とAlexa Fluor 488-conjugated anti-rabbit IgG(Life Technologies, USA)であった.これら2つの2次抗体をPBSに溶かし,モデルに添加し,4℃ にて120分間放置した.その後2度PBSで洗浄し,免疫染色を完了させた.画 像撮影には共焦点顕微鏡(C1; Nikon, Japan)を用い,ポリマー膜の上下25 µm

ずつ計50 µmの範囲を2 µm間隔で撮影した.この時使用した対物レンズの倍率

は10倍であった.

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5.2.5 肝細胞機能測定

肝細胞機能の測定は第 3 章,第 4 章と同じくアンモニアの代謝量を用いた.

測定方法と使用した機材は第3章と同じである.使用する培養液(17 mL)に1 mM 塩化アンモニウムを溶かし,24 時間負荷実験後に培養液を回収し,アンモ ニアテストワコー(和光純薬工業)を用いてアンモニア代謝量を測定した.

5.2.6 肝細胞増殖因子の産生量測定

肝細胞機能を向上させる物質の 1 つである肝細胞増殖因子(HGF)の産生量 を各条件にて調査した.24時間実験後,培養液を 1 mL 回収しmouse/Rat HGF Quantikine ELISA Kit(R&D Systems, USA)を用いて培養液中のHGF濃度を測定 した.以下に測定手順を述べる.

1. 各濃度のHGF標準液(0, 0.1, 0.3, 1, 3 ng/mL)と検体となる培養液を50 µL ずつ,HGF抗体が付着しているマイクロプレートのウェルに加える.加えた のち暗所にて室温で1時間放置する.

2. ウェル内の液体を取り除き,PBSにて5回洗浄する.

3. 全てのウェルに酵素標識モノクローナル抗体を 100 µL ずつ加え,暗所にて 室温で1時間放置する.

4. 2の行程と同じ洗浄をする.

5. 酵素基質液(発色剤含有)を 100 µL ずつ全てのウェルに加え,暗所にて室 温で30分放置する.

6. 反応停止剤を50 µLずつ全てのウェルに加える.

7. マイクロプレートリーダー(波長490 nm)にて吸光度を測定する.

8. 標準液の吸光度から検量線を作製し,検量線から検体のHGF濃度を求める.

5.2.7 一酸化窒素負荷による星細胞の状態変化

NO負荷時における星細胞の形態を調査した.第4章で作製したNO負荷装置 にコラーゲンコーティングし,星細胞だけを5×105 cells/dishの濃度で播種した.

各4つのNO濃度を24時間星細胞に負荷した.実験後,5.2.3で述べた免疫染色 を行った.ここでは星細胞だけなので,1次抗体はrabbit anti-desminのみを使用

し,2次抗体はAlexa Fluor 488-conjugated anti-rabbit IgGを用いた.免疫染色後,

共焦点顕微鏡にて星細胞の2次元画像を撮影した.撮影した画像からImageJ[79]

を用いて,細胞内に発現しているdesminの蛍光輝度を測定した.

5.2.8 一酸化窒素負荷と肝細胞増殖因子投与が代謝機能向上

に及ぼす影響

各条件で産生されたHGF濃度がアンモニア代謝機能向上を引き起こすか確認 するために,HGFを直接肝細胞に加え機能変化を測定した.HGF(R&D Systems,

USA)を1.0 mM塩化アンモニア入り培養液に溶かし,HGF濃度を0.3 ng/mLと

1.0 ng/mLになるよう調整した.肝細胞だけを培養したNO負荷装置を流れ負荷

装置と合体させ,流す培養液は上記の HGF入りを使用した.更に,NO 負荷時 において HGFが効果を発揮するかどうか調べるために,NO 負荷を行った.こ の時のNO濃度は今までと同じく4種類の濃度であった(0, 0.5, 5, 25 ppm).

5.2.9 統計処理

測定数値はmeans ± standard deviationで表現した.有意差検定はエクセルソ フト(Microsoft, USA)を用いてScheffe testによる一元配置分散分析で行った.

P < 0.05で有意差が存在するとした.

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