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定式化されるサービス業務

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 168-171)

ここでは、先に言及した研究活動に位置づけにくい外部共用の状況がなぜ生 じるのかについてラッシュとバーゴが展開するサービス・ドミナント・ロジック

(SDL)の議論を参照しつつ分析・検討する。

GDLはマーケティングの分野において、供給者の視点や価値観が重視される ことにより、供給者の視点や価値観が反映されにくいメカニズムを明らかにす るための概念として捉えられている。この考え方を、外部共用における施設側 担当者とユーザーの関係に適用すると、どのような見解が導けるだろうか。そ の見解の一つとして、施設側担当者とユーザーとの間にみられる「測定データ と利用料金の交換」を一例として挙げてみたい。この点に関して、例えばNMR 施設の研究者A1はインタビューの中で次のように述べる。

産業界ユーザーの中で、依頼者が施設に来ることなくサンプルだけ送 ってきて測定してほしいといわれるケースがある。確かに料金をもらっ て、測定方法や分析法などについて特段打ち合わせる必要もなければそ れだけで済んでしまう関係かもしれない。また、会社の所在地などもこ こから遠ければ、ちょくちょく来ることなど難しいかもしれない。しか し、そうした関係だと、料金をもらう以上の関係は生まれないので、最 先端の装置や人材を駆使して測定してあげることが本当にここの施設 のためにならないのではないか。

(研究者A1-05: 2017年1月26日実施。傍線部、筆者。)

外部共用活動は本来料金と引き換えに施設利用サービスを提供するのが本来の 目的であるにもかかわらず、研究者A1はそうした関係が施設のためにならない と危惧している。また、同位体顕微鏡施設でのインタビューの中で一般的な外部 共用が行う測定業務は分析会社が事業として行っている測定業務と同様に「測 定データをユーザーに返すだけで、算出されたデータに関するディスカッショ ンや分析はしない」(研究者I1-01: 2017年3月22日実施)のが通例であると いう見解を示している。

こうした関係は、行政が外部共用に対して行う支援の姿勢の中にも見ること ができる。NMR施設の調査における、行政が支援する外部共用の課題についての 議論の中で、研究者A2は次のように述べる。

・・・行政が外部共用に支援する事業は、論文の数しか見ないので基 本数の多寡を重視するものになっている。こうした考え方のもとで は、ユーザーからサンプルをもらって解析データを返し、その対価と して利用料をもらうやり取り。・・・表に見えるだけのアウトプット としては、利用料収入の多寡やどういった著名な論文にどれだけ掲載 されたのか、といった一部分であり、氷山の一角でしかない。

(研究者A2-04: 2017年3月27日実施、傍線部筆者。)

研究者A2によれば、行政が行う外部共用の支援は、施設が解析するデータと 引き換えに利用料金が支払われる関係のみを前提していることから、外部共用 のアウトプットが「利用料金の多寡」や「論文の掲載本数」といった量的な指 標のみに収れんされがちであると述べている。

GDL を参照しつつ、外部共用の関係に示したものが図 56である。ユーザーが 施設に依頼したサンプルと利用料を引き換えに、施設からは測定データがユー ザーに返される一方向的な関係によって説明される。施設における外部共用に みられるサービス業務は、単なる利用料金とデータのやり取りでしかないので、

アカデミアへの貢献を一義的なものとしてみる担当者のインセンティブを満た すことができない。

図 56 G-Dロジックから生じる外部共用のジレンマ

また、この一方向的な関係は施設が提示するサービス内容にも影響する。こ の型に準拠するならば、施設が提供するサービス内容はひとえに施設のみが一 方向的に決定する。この点に関して、小型中性子施設に対するインタビューの中 から見ることができる。研究者K2はインタビューの中で、既存施設の外部共用 に対するあり方について次のように述べている。

現在の大型研究基盤施設が行っている外部共用で多く見られるものと して、施設とユーザーの関係が決まりきったものがあるかもしれな い。具体的には、施設がユーザーに対して提供するサービスなど、や ることがお定まりのものが決まっていて、ユーザーもそれに決まった とおり指示に従うというもの。このフレームの中では、施設担当者は 基本ニーズの掘り起こしをしないで、既存の、主としてサイエンティ フィックな興味などに基づいた枠組みの中で次なる施設のスペックを 考えているが、それで本当によいのかと疑問に思うときがある。施設 側が装置のスペックから利用用途に至るまですべて考え、ユーザーは それに従う。世界唯一の装置であるから、また、規模も大きいので仕 方ないのかもしれない。しかし、それでは面白い課題はでてこない し、それは翻って科学業績を主とする装置にとっても良くないことに なるのではないか。(研究者K2-01: 2017年1月20日実施。傍線部、

筆者。)

施設側の担当者とユーザーの関係は、このインタビューによれば「施設がユーザ ーに対して提供するサービスなど、やることがお定まりのものが決まっていて、

ユーザーもそれに決まったとおり指示に従うというもの」であり、「このフレー ムの中では、施設担当者は基本ニーズの掘り起こしをしないで、既存の、主とし てサイエンティフィックな興味などに基づいた枠組みの中で次なる施設のスペ ックを考え」るスキームに示される関係に位置づけられる。また、このスキーム の中では「施設側が装置のスペックから利用用途に至るまですべて考え、ユーザ ーはそれに従う」ものであるとされる。この考え方によれば、外部共用施設の利 用は、施設側が提示する GDL の考え方を見ることができる。先に言及した科学 者と研究支援者の間にみられるヒエラルキーは、施設の利用という観点におい ては逆転し、施設側が利用者である科学者に利用の方針を指し示すのである。

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 168-171)