先行研究では、
⚫ アカデミアとインダストリは別個の価値軸や評価軸を持つものとして認識 され、これら異なる二つの価値観の融合や連携を推進することは難しい
⚫ 研究基盤施設においては分業が確立されており、基本的に研究支援者は知 識生産の直接のアクターになることはない
⚫ イノベーションハブの研究開発マネジメントとして期待されるアクター/
ユーザー共存型はインダストリがメインでアカデミアは想定していない ことが明らかにされた。
これまでアカデミアやインダストリが個別に研究開発を行ってきた背景にお いてはこうした整理で研究開発を行ってきた。しかしながら、イノベーション ハブにおいてはアカデミアのみならずインダストリにも貢献する姿勢やオープ ン・イノベーションを喚起するため知識生産のアクターの多様性をより尊重す るといった柔軟な姿勢が求められている。
今回整理した先行研究レビューで明らかにした既存アプローチでは、イノベ ーションハブに求められている柔軟な対応をとることは難しいのではないだろ うか。こうした状況を乗り越えるためにも、イノベーションハブの現場として の外部共用において、担当者が科学者/支援者の役割分担の二分法にとどまら ず、これらを超える関係性をどのように構築するのかを分析することが課題と なっている。
本稿では、こうした実務上の改善を目指すのみならず、学術的な知の更なる 活性化やイノベーションを促進する知識生産の形態の学術的な探求について新 たな観点を投げかけることとしたい。
事例
本稿では、外部共用を行っているあるいは行うことを検討している研究基盤 施設を対象として取り上げる。具体的には、公的研究機関におけるNMR施設・遺 伝子解析施設・大型放射光施設・小型中性子源施設、及びソフトウェア基盤・工 作部門である。
これらの施設のうち、理研のNMR施設と次世代シーケンサー施設については、
筆者が担当する事業所内の施設であることから、他施設よりもインタビュー調 査に加えて参与観察を中心としたエスノグラフィ調査を長期にわたって行うこ とができた。インタビューの実施時間は1回あたり概ね1-2時間程度であっ た。
これらの研究基盤施設におけるエスノグラフィ調査を通じて、得られた課題 や問題点などを中心に、外部共用を行う担当者が外部共用活動におけるサービ ス業務をどのようにとらえているのか、この業務を自身が日常行っている知識 生産活動の中でどのようなものとして位置付けているのか、についての観点か ら2014年~2017年にかけて30 名を超える外部共用を行う担当者や責任者に対 してインタビュー調査を行った(表 15)。
インタビューの質問項目としては、知識生産活動にサービス業務をどのよう に関連づけているのかを明らかにするため、
・外部共用をどのような背景から行っているのか?
・外部共用を進める際の問題や課題とは何か?
・外部共用を進めるための推進方策とは何か?
の観点を中心に調査を行った。
表 15 インタビューの実施概要
施設・部門 日程 対象
NMR(理研)
2016年5月9日
研究者A1 2016年5月27日
2016年8月29日 2017年1月5日 2017年1月26日 2016年9月13日
研究者A2 2016年11月22日
2017年3月8日 2017年3月27日
2016年8月29日
研究者A3 2017年6月20日
2016年4月22日 研究者A4 2016年6月27日
技師A1 2017年3月3日
NMR(北大)
2016年7月21日 研究者B1 2017年5月10日
研究者B2 2016年7月21日
2017年8月2日
NMR(阪大) 2016年10月7日 研究者C1
スプリング8 2016年6月1日 研究者D1 フォトンファクトリー 2016年10月26日 研究者E1 Swiss Light Source 2017年5月18日 研究者F1 スタンフォード大学 2016年5月20日 研究者G1 中性子施設 2017年5月18日 研究者H1
同位体顕微鏡施設
2017年3月22日
研究者I1 2016年7月22日
技師J1
小型中性子施設
2015年10月30日
研究者K1 2016年1月20日
2016年1月20日
研究者K2 2016年7月26日
工作・工学施設 2016年3月30日 研究者L1 2016年1月22日 研究者L2
次世代シーケンサー施設
2017年3月3日 研究者M1 2017年6月27日
研究者M2 2017年7月7日
2017年9月30日 2017年10月24日
2017年3月3日
技師M3 2017年3月7日
2018年7月5日 研究者N3